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関連痛のメカニズム❸

関連痛のメカニズム❸

異所性興奮と体性関連痛


これまでに述べたように、小殿筋トリガーポイント(TrP)は「坐骨神経痛」だ、と嘘をついていることがある。

これは筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とされ、体性関連痛の範疇に入る病態である。


ところが、その体性関連痛のメカニズムとなると、その機序は決して明らかとはいえない。

筋膜痛や線維筋痛症のような筋肉に起因する病態には複雑な病態生理学があり、その研究解明は後れを取っているのが現状のようだ。


腰下肢痛は、カイロプラクティックの臨床の現場でもよく見られる症状である。

厄介なことに、痛みを訴えている部位が必ずしも治療部位とは限らないことが多く、この問題は本当にややこしい。


かつて腰下肢痛と言えば、すなわち神経の圧迫や絞扼と相場が決まっていた。

つまりは「根性痛」とみなしていたのである。

不思議なことに、圧迫された神経根部で「感覚神経だけが障害され運動神経には影響が及ばない」とされていることにも疑問を消し去ることはできないだろう。

それでも「後根神経節(DRG)の感受性は過敏である」を根拠に説明づけられている。


しかしながら、どう考えても侵害部位から逆行性に痛みが伝達される仕組みは理解できない。


だから根性痛は「異所性興奮」という神経損傷モデルで説明せざるを得ないのだろう。

こうした神経障害に伴う痛みには中枢性と末梢性があり、病態生理学的には「5つの基本的機序」(「痛み学―臨床のためのテキスト」409頁)が提示されている。


それによると、

1)痛みに感受性のあるニューロンへの直接の刺激、

2)損傷された神経の自発発火、

3)中枢神経系の感作と求心路遮断による神経系の再構築、

4)内因性の疼痛抑制系の破綻、

5)交感神経依存性疼痛

5つで、この基本的機序が単独あるいは複合して痛覚伝導系が障害されて発症するとしている。

多様な発症機序ではあるが、症状には類似点があるようだ。


それは次の3つの症状に要約されている。

① 灼けつくような、突き刺すような痛み、

② 発作性あるいは間欠性の痛み、

③ 感覚変容(触刺激に過敏、冷刺激に対する灼けつくような感覚、無感覚部痛)

3症状で、発汗過多、皮膚温の変化、萎縮性変化(爪、皮膚、筋、骨など萎縮)が見られることもある、とされている。


これらは病態モデルを使った動物実験でも明らかである。

あるいは広作動域ニューロンから下肢痛として脳に投射された痛みということもあり得るだろう。


広作動域ニューロンが感作あるいは反応性が亢進すると、非侵害性の刺激(温熱や触刺激)でも痛みが生じるようになる。

このことは正常な組織に対する刺激によっても痛みを誘発するという病態を意味している。


だとすれば、神経障害性の痛みは必ずしも痛み症状だけとは限らないとみるべきだろう。

おそらく異常な感覚の変容が伴うはずである。

あるいは痛みは一過性の強力なもので、まもなく異常感覚や神経麻痺症状が起こるかもしれない。


そう考えると、純粋に末梢への痛みだけが訴えられているケースでは、関連痛を想定して治療対応することが賢明であろうと思う。

関連痛と神経障害性疼痛とでは、圧倒的に筋・筋膜障害による関連痛が多いのである。

このことは徒手療法の臨床現場で、特に感じることでもある。


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by m_chiro | 2018-10-20 15:32 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
関連痛のメカニズム❶

関連痛のメカニズム❶

「収束―投射説」


組織に損傷が起こると、その部位に痛みが起こる。

要するに、痛みの原因となる部位と痛みの場所はイコールだということになる。

この考え方は、「損傷モデル」として長い間支配的な概念になった。

だから、痛み訴える部位に何らかの損傷があるとみて治療することになる。


ところが、痛みの部位とその原因となる部位が一致しないことがある。

それが「関連痛」の存在だった。関連痛の定義は、次の以下の通りである。


「内臓疾患により内臓に侵害刺激が加えられた際に、その内臓と離れた位置にあるにもかかわらず、皮膚表面や筋肉に特別過敏な感覚や痛みをかんじることがあり、この現象を関連痛と呼ぶ。」

                (「痛みの概念の整理」花岡一雄編著)

関連痛の概念は、1984年に発表したMartynの論文「炎症性疼痛における生理学的意味」に始まるらしい。

1893年には、英国の神経学者Henry Headが内臓疾患からの関連痛として「ヘッド帯」なるものを学位論文して発表した。

その中で、内臓疾患の関連痛は皮膚節(デルマトーム)に現れるとしたのである。


また生食を筋肉に注入すると、注入部位だけでなく離れた部位に痛みが放散することを明らかにしたのはT.Lewisとされている1938)。

 

同じ手法で高張食塩水を注入して、関連痛は筋肉などの組織の過敏点から生じるとしたのはJ.H.Kellgrenである。

この体性からの関連痛は、局所麻酔で治まることを両者が報告している。

(こうした関連痛の歴史的背景については、小山なつ著「痛みと鎮痛の基礎知識」上・下巻に詳しい。)


関連痛のメカニズムには諸説ある。

大別すると、末梢神経における機序にその根拠を求めた「末梢説」と、中枢神経での機序に求めた「中枢説」に分けられる。

中枢神経系に関連痛の根拠を求めた「中枢説」でよく知られているのはRuch「収束―投射説(1947)である。

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「収束―投射 (projection)説」は、脊髄における痛覚伝道路である二次ニューロンに内臓からの痛覚一次ニューロンと、皮膚からの痛覚一次ニューロンが収束しているために関連痛が起こる、とする説である。


内臓からの痛みは局在が明瞭ではない。

ところが皮膚では局在が明瞭である。

皮膚はヒトの身体と外界との境界をなしていて、多くの刺激を感受し、情報網も多い。

したがって、脳は皮膚からの情報を優位に結びつけやすいのだろう。

ヒトの持つ学習能の所作なのかもしれない。





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by m_chiro | 2018-09-27 16:39 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「世界一辛いトウガラシで激しい頭痛、脳動脈に異常も」
「思い当たることもないのに...」と言いながら痛みを訴える患者さんには、前夜にの食事の内容を聴きとると思わぬ関連に突き当たることがある。
例えば、食べすぎなどで内臓膜に緊張をもたらすと、膜系の連鎖から関連痛の誘因になることも臨床ではよく経験するところだ。
あるいは「そう言えば、前の晩に韓国鍋の激辛料理を食べた...」とか、激辛食を食べ過ぎても痛みの誘因となる。
下記の記事はBMJ症例報告からの内容である。
世界一辛いトウガラシ「キャロライナ・リーバー」を食べて可逆性の脳血管攣縮症候群による雷鳴頭痛を警告したものである。
世界一辛くなくてもカプサイシンが誘因となる関連痛にも気をつけたいものである。

「世界一辛いトウガラシ(キャロライナ・リーバー)で激しい頭痛、脳動脈に異常も」An unusul cause of thunderclap headache after eating the hottest pepper in the world-"The Carolina Reaper"


トウガラシを食べると救急科を受診しなければならないレベルの激しい頭痛が起こる可能性があることを、覚えておいた方が良いかもしれない

トウガラシを食べるコンテストに参加した男性が、世界で最も辛いとされている種類のトウガラシを食べた後に「雷鳴頭痛」と呼ばれる激しい頭痛に苦しんだとする報告書が「BMJ Case Reports49日オンライン版に掲載された。


CT検査では脳動脈の一部の攣縮が認められ、男性は可逆性脳血管攣縮症候群(RCSVと診断されたという。

報告書を執筆した米バセット・メディカルセンターのEdward Bischof氏らによると、この男性は34歳。

ニューヨーク州で開かれたトウガラシを食べるコンテストで、世界で最も辛いトウガラシとされる「キャロライナ・リーパー」という種類のトウガラシを食べたという。

その直後に男性は吐き気を催し、さらに数日間にわたって激しい首の痛みと頭痛が数秒間持続する症状が繰り返しみられた。


男性は救急科を受診し、さまざまな神経症状の検査を受けたが、異常はなかった。

しかし、CT検査で脳動脈の一部の攣縮が認められ、RCVSによる雷鳴頭痛と診断された。

その後、この男性の症状は自然消失し、5週間後のCT検査では脳動脈が正常に戻っていたという。


RCVSには必ずしも明確な原因があるわけではないが、特定の処方薬や違法ドラッグに反応して発症する場合がある。

Bischof氏らによれば、トウガラシの摂取によるRCVS発症例の報告はこれまでなかったが、以前からカイエンペッパーの摂取が冠動脈の攣縮や急性心筋梗塞と関連していることが報告されている。


今回の症例報告について、米ノースウェル・ヘルス頭痛センター所長のNoah Rosen氏は「可逆的だが危険な脳動脈の攣縮に抗うつ薬や精神刺激薬、マリファナが関連することは分かっていたが、今回の報告からカプサイシンも関連する可能性が示された」と説明。

その上で「治療は対症療法しかないため、問題を起こしうるこれらの物質の摂取を避けるしかない。したがって、世界一辛いトウガラシを食べようとしているなら、それは考え直した方が良い」と話している。



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by m_chiro | 2018-04-26 22:43 | 学術記事 | Trackback | Comments(2)



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