タグ:定義 ( 2 ) タグの人気記事
関連痛のメカニズム❶

関連痛のメカニズム❶

「収束―投射説」


組織に損傷が起こると、その部位に痛みが起こる。

要するに、痛みの原因となる部位と痛みの場所はイコールだということになる。

この考え方は、「損傷モデル」として長い間支配的な概念になった。

だから、痛み訴える部位に何らかの損傷があるとみて治療することになる。


ところが、痛みの部位とその原因となる部位が一致しないことがある。

それが「関連痛」の存在だった。関連痛の定義は、次の以下の通りである。


「内臓疾患により内臓に侵害刺激が加えられた際に、その内臓と離れた位置にあるにもかかわらず、皮膚表面や筋肉に特別過敏な感覚や痛みをかんじることがあり、この現象を関連痛と呼ぶ。」

                (「痛みの概念の整理」花岡一雄編著)

関連痛の概念は、1984年に発表したMartynの論文「炎症性疼痛における生理学的意味」に始まるらしい。

1893年には、英国の神経学者Henry Headが内臓疾患からの関連痛として「ヘッド帯」なるものを学位論文して発表した。

その中で、内臓疾患の関連痛は皮膚節(デルマトーム)に現れるとしたのである。


また生食を筋肉に注入すると、注入部位だけでなく離れた部位に痛みが放散することを明らかにしたのはT.Lewisとされている1938)。

 

同じ手法で高張食塩水を注入して、関連痛は筋肉などの組織の過敏点から生じるとしたのはJ.H.Kellgrenである。

この体性からの関連痛は、局所麻酔で治まることを両者が報告している。

(こうした関連痛の歴史的背景については、小山なつ著「痛みと鎮痛の基礎知識」上・下巻に詳しい。)


関連痛のメカニズムには諸説ある。

大別すると、末梢神経における機序にその根拠を求めた「末梢説」と、中枢神経での機序に求めた「中枢説」に分けられる。

中枢神経系に関連痛の根拠を求めた「中枢説」でよく知られているのはRuch「収束―投射説(1947)である。

c0113928_16375321.jpg


「収束―投射 (projection)説」は、脊髄における痛覚伝道路である二次ニューロンに内臓からの痛覚一次ニューロンと、皮膚からの痛覚一次ニューロンが収束しているために関連痛が起こる、とする説である。


内臓からの痛みは局在が明瞭ではない。

ところが皮膚では局在が明瞭である。

皮膚はヒトの身体と外界との境界をなしていて、多くの刺激を感受し、情報網も多い。

したがって、脳は皮膚からの情報を優位に結びつけやすいのだろう。

ヒトの持つ学習能の所作なのかもしれない。





[PR]
by m_chiro | 2018-09-27 16:39 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
慢性疼痛治療ガイドライン
c0113928_21582184.jpg「慢性疼痛治療ガイドライン」発刊される

2018年3月、痛みに関連する7学会のメンバーが結集し作り上げた「慢性疼痛治療ガイドライン」(監修:厚生労働行政推進調査事業費補助金慢性の痛み政策研究事業「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」研究班、編集:慢性疼痛治療ガイドライン作成ワーキンググループ)が発刊された。



エアポケットとなっていた慢性疼痛

これまで、種々の疾患(がん、生活習慣病、感染症、精神疾患、難病など)への対策が日本政府により行われてきたが、慢性疼痛に対する施策は、エアポケットのように抜け落ちていた。しかし、最近、慢性疼痛に対する施策も国の事業として進められるようになり、前述の研究班とワーキンググループにより、All Japanのガイドラインが策定された。


エビデンスレベルは4段階、推奨度は2段階で評価


CQに対するAnswerの部分には、推奨度およびエビデンスレベルが記されている。
推奨度は、「1:する(しない)ことを強く推奨する」「2:する(しない)ことを弱く推奨する(提案する)」の2通りで提示されている。
エビデンスレベルは、「A(強):効果の推定値に強く確信がある」「B(中):効果の推定値に中程度の確信がある」「C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である」「D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」と規定された。


慢性疼痛とは

慢性疼痛は、国際疼痛学会(IASP)で「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」とされている。慢性疼痛には「侵害受容性」「神経障害性」「心理社会的」などの要因があるが、これらは密接に関連している場合が多く、痛み以外に多彩な症状・徴候を伴っていることも多い。
そのため、本ガイドラインでは、慢性疼痛の診断において最も重要なことは、正確な病態把握とされた。
また、慢性疼痛の治療は、痛みの軽減が目標の1つであるが第一目標ではなく、作用をできるだけ少なくしながら痛みの管理を行い、QOLやADLを向上させることが重要であると記載されている

薬物療法の推奨度が詳細に示されている

本ガイドラインでは、薬物療法の項に最も多くの紙面が割かれている。なお、本ガイドラインでは、「医療者は各項の推奨度のレベルのみを一読するのではなく、CQの本文、要約、解説を十分に読み込んだ上での試行・処方などを検討するようにお願いしたい」「一部、現在(平成30年3月現在)の保険診療上適応のない薬物や手技もあるが、薬物療法においては、添付文書などを熟読の上、治療に当たることが望ましい」と記載されている。

主な薬剤の推奨度、エビデンス総体の総括は以下のとおり。

●非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)神経障害性疼痛:2D(使用しないことを弱く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2B(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:2C(使用しないことを弱く推奨する)

●アセトアミノフェン

運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:2D(使用しないことを弱く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:1A(使用することを強く推奨する)
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

●プレガバリン
運動器疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)
神経障害性疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2C(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:1A(使用することを強く推奨する)

●デュロキセチン
運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2C(使用することを弱く推奨する)
線維筋痛症:1A(使用することを強く推奨する)

●抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬物)
運動器疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)(エチゾラム)
神経障害性疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)
           (緊張型頭痛:エチゾラム、アルプラゾラム)
           (口腔顔面痛:ジアゼパム、クロナゼパム)
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

●トラマドール
運動器疼痛:1B(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:1B(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:推奨度なし
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

心理療法・集学的療法の推奨度も記載心理療法として取り上げられた心理教育、行動療法、認知行動療法、マインドフルネス、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、いずれも推奨度1(行うことを強く推奨する)とされている。
また、最近話題の集学的治療や集団認知行動療法(集団教育行動指導)も推奨度1(施行することを強く推奨する)とされ、その重要性が示されている。





[PR]
by m_chiro | 2018-05-23 22:09 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)



守屋カイロプラクティック・オフィスのブログです
外部リンク
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のコメント
最新のトラックバック
ほとんどがMPSなんだけ..
from 心療整形外科
月経が再開した
from 心療整形外科
TPは痛みの現場ですらな..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
脊椎麻酔後頭痛について
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
起立性頭痛
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
「5%の中に本当の椎間板..
from 心療整形外科
髄液循環系と揺らしメモ
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
医師はユニコーン(架空の..
from 心療整形外科
末梢神経の周膜と上膜にも..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
また勉強になりました。
from 漢のブログ
ライフログ
検索
タグ