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1 関連痛のメカニズム❷ 内臓―体性痛だけが関連痛ではない そもそも内臓疾患からの関連痛を、最初に脊髄における「収束説」で説明したのはMackenzieの「収束―促通(facilitation)説」(1893)だった。 「促通」とは、「2つの刺激が組み合わさると、単独での刺激の効果よりも大きな効果が起こる現象」を指している。 Mackenzieは、なぜ「投射」ではなく「促通」説を持ち出したのだろう。 彼は、内臓からの痛み症状となるインパルスは脊髄視床路ニューロンに接続されていない、と見ていたからである。 今となっては、この時点で誤りであったことになる。 それゆえにMackenzieは、内臓疾患による求心性インパルスが脊髄分節で収束されて「過敏性焦点」が作られる、という推論を構築したのである。 これで皮膚への関連痛に見られる痛覚過敏の病態が説明可能となった。 Mackenzieの仮説では、関連痛そのもののメカニズムを説明しきれなかったが、それでも「過敏性焦点」を想定し、さらには「軸策反射説」を導入して、関連領域の痛覚過敏や炎症のメカニズムを説明することに貢献したと言えるだろう。 一方、Ruchの「収束―投射説」では、末梢での痛覚過敏や浮腫を説明することができなかった。 この疑問を穴埋めしたのが、「過敏焦点」や「軸策反射」という病態機序だったということになる。 こうして見ていくと、発表されてきた関連痛のメカニズムは、内臓疾患からの関連痛を前提として構築されているように思える。
「末梢説」では、例えば腹筋下部に生じたトリガーポイント(TrP)は、虫垂炎の関連痛であるかのように嘘をつく。 虫垂炎で最初に出る痛みは、実際に内臓からの痛みである。 ここからの痛み信号が脊髄に送られると後根反射が起こるとされる。 このインパルスが末梢に逆行して化学物質を放出し、周辺組織の皮膚や皮下組織に関連痛をつくり出すのである。 これが「末梢説」の代表的な仮説「腸膜皮膚反射説」(Morley;1931)である。 しかしながら後根反射が起こるとするエビデンスは存在しない。 どう見ても、筋・筋膜トリガーポイントがつくる関連痛の説明には成り得ていないからである。 したがって関連痛のメカニズムは、「内臓ー体性関連痛」と「神経根障害性(神経損傷による)関連痛」、「筋性の関連痛」は、それぞれ別ルートの機序を考える必要があるだろう。 ▲
by m_chiro
| 2018-10-10 08:52
| 痛み考
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