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腰痛、関連痛、根性痛の生理学的定義 ❺考察(discussion)
腰痛、関連痛、根性痛の生理学的定義
❺考察(discussion)
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                                Nikolai Bogduk博士(解剖学者)
"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
論文の最後に、「考察」が述べられていたので要点を箇条書きにし備忘録として残す。(文責;守屋徹)

考察(Discussion)

1.「根性痛」と「体性関連痛」を鑑別できないと誤診や誤治療が行われる可能性がある。

2.腰背部痛や体性関連痛は一般的な病態であるが、根性痛は一般的ではない

3.根性痛がしっかりと定義されていることを前提にすれば、その罹患率は12%以下である。

4.根性痛に混在した体性関連痛が軽減されてくると、根性痛の痛みがより一般的であるといった誤った印象を引き起こしかねない。

5.過去に体性関連痛が根性痛と誤診された可能性が高いため、根性痛の有病率の研究は信頼できない

6.臨床管理上では画像によって原因病変を確立することが多いため、その画像は根性痛と根性症の検査として正当化されている。その画像は体性関連痛には適応されない。単純X-ray、MRIやCTスキャンによって、体性関連痛の原因を明らかにすることはできない。それで大概は「偽陽性」と解釈するリスクを伴う。

7.患者が身体的に痛みを訴えている場合、退行性変化、椎間板膨隆および神経根圧迫の可能性を見つけることは診断上重要ではない。

8.体性関連痛が根性痛と誤認された場合、侵害受容性疼痛、体性関連痛は神経損傷を伴わないので、神経学的症状または徴候を予期する根拠はない。特にアロデニアは特徴ではない(実際、侵害受容性腰痛の場合にアロデニアの記録はない)。逆に、根性痛と根性症は神経幹の病理を伴うので、神経が真に障害を被っていれば理論的にはアロデニアの可能性がある。しかし単純な圧迫や炎症ではなく、真に神経損傷(nerve damage)や神経障害(neuropathy)がない限り、アロデニアは根性痛や根性症の典型的な特徴ではない。病態が曖昧でなければ、臨床実習は簡単である。

9.下肢への激痛に悩まされている患者は快適に眠ることが出来ず、下肢には麻痺または衰弱があり、明らかに根性痛および根性症がある。腰背部に痛みがあり、臀部と大腿に拡がるが、刺すような痛み(激痛;lancinating pain)はなく、神経学的症状もない患者は侵害受容性腰痛および体性関連痛を伴う。

10.患者に混在した病態があると鑑別には困難生じる。例えば、椎間板内部の破壊のために侵害受容性の腰背部痛を起こす可能性がある。この痛みは下肢にも伝わる可能性があり、そのケースでは体性関連痛と呼ばれる。ただし、椎間板ヘルニアになったり、炎症性化学物質を近くの神経根に漏らしたりすることがある。こうした神経根への化学的な刺激は、根性痛を引き起こす。さらに神経根が腫れて伝導ブロックが起こると、根性症が起こることがある。それぞれの機能は別々の原因とメカニズムを持っている。したがって個別の調査と治療が要求される。

11.椎間板切除術は高い確率で下肢痛の緩和に成功しているが、腰背部痛は残る。このことは実際に外科医が通常経験することである。

12.特定の用語というものは誤解を招き、役に立たないものである。「腰痛-坐骨神経痛」と呼ばれる特異症状はない。この用語は、患者が両方の症状を引き起こす単一の病態を持っていることを意味しており、これは正しくない。患者は腰痛になることもあれば、坐骨神経痛になることもある。(異なる病態の混在を意味するものであろう)2つの症状は、別々のメカニズムと原因である。ひとつの病態の機能、原因およびメカニズムは、他の病態に帰属することはできない。

13.椎間板ヘルニアは、根性痛の最も一般的な原因であるが、腰痛の一般的な原因ではない

14.侵害受容性腰痛の大多数の患者は「根性痛」を発症してはいない。擬坐骨神経痛あるいは僞関節痛の用語を用いる必要はなく、これらの症状については何ら問題はない。これらは体性関連痛にとってよけいな同義語であり、時には末梢神経の絞扼であり、いずれも下肢で知覚される以外は根性痛と共通するものはない。なぜなら、体性関連痛は根性痛より一般的であるため、これらの用語は、体性関連痛のよけいな同義語である。そして時には下肢の末梢神経の絞扼であり、いずれも下肢で知覚される以外は、根性痛痛と同じものではない。実際に体性関連痛は根性痛よりもはるかに一般的であるため、性痛をいくつかの変則したものとして分類するのではなく、体性関連痛として分類されるべきである。
15.医師が体性関連痛と根性痛を混同しなくなれば患者の数も少なくなり、医原性の問題が続くことはない。基礎科学者がこの区別を理解すれば、神経学的異常を持たない侵害受容性腰痛の動物モデルが開発されるだろう。


# by m_chiro | 2018-12-10 11:57 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義 ❹神経根症(radiculopathy)
腰痛、関連痛、根性痛の生理学的定義
❹神経根症(radiculopathy)
"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
以下は、そのタイトルとURLである。

"On the definitions and physiology of back pain, referred pain, and radicular pain."

(https://www.semanticscholar.org/paper/On-the-definitions-and-physiology-of-back-pain%2C-and-Bogduk/b4c9d97a2ba23d21cf8fd50e215d8da5544c7b9b)

要点をまとめて備忘録として残す。
4.神経根症(radiculopathy)

これは別個の病態である。
定義;伝導が脊髄神経または根に沿ってブロックされている神経学的状態である。

*感覚神経が遮断されると、しびれ感が症状が徴候になる。

*運動神経繊維がブロックされると、麻痺(numbness)が起こる。
(注)numbness;しびれ感、麻痺、無感覚(感覚異常の不明確な用語で、異常感覚に加えて感覚の消失や低下も含む);ステッドマン医学大辞典4版より

*反射の減少は感覚と運動神経がブロックされたときに起こる。

*無感覚はデルマトーム(皮膚節)の分布にあり、弱化はマイオトーム(筋節)の存在する。

*しかしながら、神経根症(radiculopathy)は痛みによる定義ではない。
*それは客観的な神経学的徴候によって定義されるのである。

*神経根症と神経根痛は一般的に混在性に発症するが、痛みがない場合には「神経根症」が起こり、神経根症がない場合には「神経根痛」が生じる。

*慎重な臨床検査は、「神経根症」を診断する最良のツールである。

*電気生理学的検査は滅多に必要はない。
*いずれにしろ、神経根痛の分節起源はその分布から決定できる、というのは真実ではない。

*L4,L5およびS1の神経根痛のパターンはお互いに区別することはできない。
「神経根痛」と「神経根症」がコンビネーションで発症したケースでのみ、分節を推定することが出来る。
その場合でも、起源となった分節を決定できるのは痛みの分布ではなく、デルマトーム分布における麻痺の分布である。

# by m_chiro | 2018-11-22 09:53 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義 ❸神経根性痛(radicular pain)
腰痛、関連痛、神経根性痛の生理学的定義
❸神経根性痛(radicular pain)
"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
以下は、そのタイトルとURLである。

"On the definitions and physiology of back pain, referred pain, and radicular pain."

(https://www.semanticscholar.org/paper/On-the-definitions-and-physiology-of-back-pain%2C-and-Bogduk/b4c9d97a2ba23d21cf8fd50e215d8da5544c7b9b)

要点をまとめて備忘録として残す。
3.神経根痛(radicular pain);神経根痛は、メカニズム的あるいは臨床的に体性関連痛とは異なる。 
 定義:「生理学的に、後根あるいはその神経節から発生する異所性発火によって誘発される痛みである。」

*椎間板ヘルニアが最も一般的な原因であり、影響を受けた神経の炎症が重要な病態生理学的プロセスであると思われる

*神経根痛の臨床的特徴は、椎間板ヘルニアの手術を受けた研究で確立された。
 研究のひとつ;椎間板ヘルニアの手術を受けた覚醒している患者で、罹患した神経および隣接する神経を鉗子で圧迫してチャレンジした。
 別の研究;縫合の糸は神経の周囲に置かれ、その傷口から引き出され、続いて引っ張られる。
 誘発される痛みは特有なものであった。
 それは不快感があり、下肢の長さに沿って幅2~3インチ(約5~8cm)以下のバンド状に移動した。
 これは神経根を刺激してつくられる唯一のタイプの痛みである(「根性痛」として解釈されるべきタイプの痛み)。
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*重要なこと;正常な神経根を圧迫したり、引っ張ったりしても神経根痛は生じない。
 以前に、神経根に炎症があった場合にのみ、機械的刺激が神経根痛を誘発する。

*圧縮刺激単独では痛みを伴うが、それは後根神経節が関与していると思われる(動物実験での支持)。

*動物実験;根性痛の神経生理学的相関をもたらした。
正常な神経根を圧迫すると瞬間的な放出のみが誘発されるが、後根神経節 を圧迫したり、炎症を起こしている後根を圧迫するとAbおよびAδおよびC線維の放電を誘発する。したがって根性痛は、侵害受容性求心性線維の発火というよりも、突き刺すような(lancinating)、ショッキング、電気的(electric)という方が合っている。
これは傷害された神経における異所性発火のためである。
誘発された感覚 はとても不快であるが、古典的侵害受容性の意味では「正確には痛みではない」
灼熱感、ショッキング、または電気の性質は、求心性侵害受容性放電以上のものと一致する。
それにもかかわらず、英語にはより正確な言葉がないため、この感覚は痛みと呼ばれることがある。

*坐骨神経痛は不可解な用語である。
 (これは痛みのメカニズムが理解されていなかった時代に由来しているためである。)
 その言及されてきた痛みは、痛みの領域を通過した末梢神経の刺激に起因するものであった。
 IASPは「根性痛」の用語に置き換えることを推奨している。

# by m_chiro | 2018-11-20 11:01 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義 ❷体性関連痛
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義
❷体性関連痛

"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
以下は、そのタイトルとURLである。

"On the definitions and physiology of back pain, referred pain, and radicular pain."

(https://www.semanticscholar.org/paper/On-the-definitions-and-physiology-of-back-pain%2C-and-Bogduk/b4c9d97a2ba23d21cf8fd50e215d8da5544c7b9b)

要点をまとめて備忘録として残す。
3.体性関連痛(somatic referred pain):定義上の核心;腰椎の構造上における有害な刺激は背部痛に加えて関連痛を生じることがある。

痛みは下肢に拡がり、有害な刺激の部位を支配する神経以外の神経に支配されて いる領域で知覚される。

*痛みの根源が腰椎の体性組織にあるので、「体性関連痛」と呼ぶ。

*したがって「内臓関連痛(visceral referred pain)」、「神経根痛(radicular pain)」と区別する。

*「体性関連痛(somatic referred pain)」は神経根の刺激を伴わない。

*これは椎間板、椎間関節、仙腸関節などの脊椎構造内の神経終末の有害な刺激によってつくられる。

そのメカニズムは侵害受容性の収束である(下肢の領域に対して起こる脊髄2次ニューロンの求心性細胞への)

*原則的に、体性関連痛は同じ分節からの線維と部分的支配を共有する領域で知覚される。

*しかしながら、体性関連痛神経根の圧迫によるものではないために神経学的徴候はない。

体性関連痛は鈍い(dull)痛み、苦痛、時には広がる圧迫感として愁訴される。

*部位を限局することが難しく広範囲に及ぶ。

*落ち着いてしまうと、部位が固定される傾向があり、患者は患部の境界を分けることが難しいことが多いものの、その中心(コア)的部位を確実に識別すること   が出来るようになる。

*だが、そのパターンは患者間で一貫性がない(過去には疼痛パターンの分節マップが提示されたが、このパターンは皮膚節のものではない;図1)。

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*提示されたパターン図は下肢の部分的な神経支配に対応し、筋肉や関節のようでもある。

*さらに、体性関連痛は臀部および近位大腿部に最も集中する傾向があるが、足まで延びることもある。(このような分布は正常被験者の実験での椎間関節と椎間板への刺激で誘発される。椎間関節への麻酔により安定させることが出来る。)

*これらの実験と一致するようなデータでは、下肢に拡がる比較的固定された部位に関連した鈍い痛みが患者に発生したときは「体性関連痛」と認識すべきである。


# by m_chiro | 2018-11-19 11:02 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義 ❶侵害受容性腰痛
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義
侵害受容性腰痛

"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
以下は、そのタイトルとURLである。

"On the definitions and physiology of back pain, referred pain, and radicular pain."

(https://www.semanticscholar.org/paper/On-the-definitions-and-physiology-of-back-pain%2C-and-Bogduk/b4c9d97a2ba23d21cf8fd50e215d8da5544c7b9b)

要点をまとめて備忘録として残す。

1.Introduction
腰背部痛(back pain)、関連痛(referred pain)、神経根痛(radicular pain)、神経根症(radiculopathy)の定義が臨床家の間で混乱したままである。
IASP(国際疼痛学会)の努力が、臨床家に浸透しているとは言い難い現状がある。
したがって依然として混乱がある。
この混乱は継承され続けている。
それは医学教育においても、出版物や臨床上においても同様である。

2.侵害受容性要背部痛定義上、「腰背部の構造上に有害な刺激が加わったことによって引き起こされる痛み」でなければならない。
*有害な刺激とは何か。
*原初の研究では、背部の筋あるいは棘間靭帯の刺激とされていた。
*その後研究では、椎間関節、仙腸関節の拡張(造影剤の注射)、硬膜の機械的、化学的刺激、椎間板後面の刺激などが考慮されている。

*これらの実験研究により有害な刺激は腰背部痛を引き起こすとされており、それは「侵害受容性の腰背部痛」である。

# by m_chiro | 2018-11-17 10:39 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)



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