最初の疑問
なぜ、病気になる人とならない人がいるのだろう? 
なぜ、早く回復する人と、いつまでも病を抱えている人がいるのだろうか? 

このことは消えることのない疑問でした。思えば、カイロプラクティックの創始者であるD.D.パーマーが、同じ疑問から出発して、背骨のちょっとした狂いが神経の緊張度を変えるのだ、という考え方にたどりついたのです。

でも、長年治療しながら思います。それでもなんで痛みが出るの? 思い当たる原因もないのに! なんで体調が悪くなるの? なんで? なんで? と思ってしまいます。

こんなに医学が進歩したと言うのに、なぜ病気になるのか、本当のところはよくわからないのです。腰痛の原因でさえも良くわからないのです。「そんな馬鹿な!」と、思うかもしれませんが、事実です。同じ生活をしていながら、風邪をひく人もいれば、まったく問題なく過ごす人もいるじゃないですか、身近に。

からだのどこが悪いのだろうか?と、局所の異常を探しても良くわからない。病院で検査をしても「問題ありません」、と言われる。でも具合が悪い。挙句の果てに「自律神経失調症」だの、「更年期症状」だの、あるいは「骨が変形している」と決めつけられるのですが、分かったようでいて良く分からない。それって年のせい? と納得させるしかないのでしょうか。

骨が変形すると本当に痛みが出るの? 老人でも元気な人の骨は変形してないの?

もっと不思議なのは、なんで治ったのか分からない。結局、勝手に治った、という結論になる。それはあんまりだ、と言うので「自然治癒力」のおかげだということになる。でも自然治癒力って何? 治った人はいいけれど、治らなかった人には自然治癒力がないの? 自然治癒力のある人と、ない人がいるわけ?

人のからだは本当に複雑です。まるでブラックボックスです。21世紀を境にして、からだのことも随分と分かるようになってきました。脳のこと、遺伝子のことなどなど、見方や考え方を変える解明も進んできました。

リチャード・ドーキンスという学者が「利己的な遺伝子」という有名な本を書きました。遺伝子から人間をみたのです。「生命体は遺伝子が自らをコピーし続けていくための乗り物に過ぎない」とドーキンス博士は言います。すると、われわれは遺伝子の奴隷なのでしょうか? 遺伝子によってすべてが決められているのでしょうか?

そんな生命に関するさまざまな疑問の根源を考えてみたいと思います。
# by m_chiro | 2007-11-28 22:13 | BASE論考 | Trackback | Comments(0)
今回は、脊柱管狭窄症の痛み?
64歳の男性・Iさんの腰殿部痛と左下肢痛の例。

平成16年に、頚から肩・上肢の痛みで「環軸椎亜脱臼」と診断されて手術。
平成18年11月には、両側の腰下肢痛で腰部椎間板ヘルニアの手術。
「その都度、整形外科の手術で助けられた」そうだ。
兎も角、「それはよかったですね」。

ヘルニアの手術から1年経たずに、今年の7月末から両殿部痛と左下肢痛に苦しむ。
今度の診断は「脊柱管狭窄症」である。

手術が必要だが、昨年手術したばかりだから今回は様子をみましょう、ということで入院治療になった。1ヶ月の入院期間中、ブロック注射を行う。

痛みに変化はない。結局、坐薬と鎮痛剤、シップ薬を処方されて通院治療に変わる。

このままでは仕事に復帰できない。
頼りにしていた整形外科医に投げ出された思いで、他の方法を試そうと来院する。

痛む側を上にして、股関節を屈曲させた側臥位でないと痛みをしのげない。

これは中殿筋障害の特徴的な姿のようだ。
股関節を屈曲する方が楽だというのは、大殿筋の緊張はないのだろう。
こうしたケースでは、圧痛が深部にあるため見逃しやすい。
中殿筋の障害は仙腸関節に関連痛を起こすこともあり、深部にある本命の中殿筋TrPを見逃してしまうことがある。

そんなわけで「増悪因子と寛解因子」は治療の必須聞き取り項目である。
負荷が加わる組織や寛解される組織が特定しやすく、治療のターゲットをしぼりやすくなるのだ。

やはり、中殿筋に強いTrPがあった。腸腰筋付着部周辺にはバンド状に圧痛と拘縮した組織が触れる。リリースしていくと、1週間ほどで跛行もなくなり随分と動作も楽になって、仕事をはじめるまでになった。

根性痛や狭窄症の痛みと言われるものは、本当に怪しい。
# by m_chiro | 2007-11-27 22:35 | 症例 | Trackback(1) | Comments(0)
「腰の骨にトゲが出来て、神経が圧迫された」と診断された症状
お盆すぎから、右殿部から下腿にかけての痺れと痛みに襲われ、頻繁に強い症状が出るようになったMさん(男性、49歳)は、整形外科で「骨棘が神経を圧迫している」と診断される。

もう2ヶ月になるというのに、跛行する上に腰を伸ばしては歩けない。
デスクワークなので何とか仕事は続けているが、最近は頻繁にそんな状態になる、と言う。

「自分では何で痛くなったのかと思う?」と聞いたら、「お盆前に登山をしたが、その時は大丈夫だった。よく山には行くので、思い当たることは登山しかない」そうだ。

腓腹筋に顕著な再現性の圧痛、外側広筋や腸腰筋付着部にもTrPがある。
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リリースすると腰を伸ばして歩行できるようになった。

1週間で跛行なしで支障がなくなり、10日目を過ぎて平常の状態に回復した。
治療と併せて在宅でのストレッチ運動を指導した。

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腓腹筋」のストレッチは方法に注意が必要である。×印の方法にならないようにアドバイスが必要。

問題は筋・筋膜にあるので、「腰の骨にトゲが出来て、神経が圧迫された」症状などではない。
うまくリリースできれば、割合早くに解決するはずです。
# by m_chiro | 2007-11-26 22:24 | 症例 | Trackback | Comments(0)
勇気とやさしさをもらえる詩
同郷の詩人・吉野弘さんの詩に「生命は」がある。
私はこの詩が大好きで、自信をなくしたり、へこんだり、自分を見失いそうになった時など、よく読み返す。
前に進む勇気を、小さな命へのやさしさを、私はいつもこの詩にもらってきた。
なんど読み返しても、やさしくて、力強くて、ほのぼのとさせられる。
小さなもののけな気さ、ささやかなものの存在感を再認識させられる。
「ありがとう」がこだましてくるような詩だ。

「生命は」    吉野 弘

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない

# by m_chiro | 2007-11-25 00:53 | 雑記 | Trackback | Comments(3)
痛み学NOTE③ 痛みが必須のバイタルチェックになった
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

③ 痛みが必須のバイタルチェックになった

 痛みの尺度を、QOL評価尺度に置き換えて評価する動きがではじめた。代表的なものがRDQ(Roland-Morris Disability Questionnarie)で、これは腰痛の特異的なQOL尺度である。

 開発したのはRoland博士とMorris博士で、多くの国で活用されている。日本でも今年2004年3月に日本版マニュアルが発表された。背景には、やはりアメリカの動向がある。

 2004年に刊行された腰痛に関するRDQマニュアルは24項目の質問にイエス・ノーで答えるものである。痛みの個人差にかかわりなく、腰痛による生活の質(QOL)を評価することで個々の患者の活動状況を知り、その腰痛の程度が割り出されるアンケート様式である。

 こうしてアメリカの「痛み10年宣言」は、痛みを確かな治療対象として俎上に乗せ、医療の現場にも変化をもたらした。医療に義務づけられたバイタルチェックが現行の4項目(体温、血圧、心拍、呼吸数)から、痛みを加えた5項目チェック(Fifth Vital Sign)が義務づけられることになったのである(アメリカ医療施設評価合同委員会:JCAHO)。

 今やアメリカでは「痛み」に対する治療基準が設けられ、痛みの治療が重要な医療行為であるというコンセンサスが得られた。それが21世紀に入って決められたことにあらためて驚くと同時に、鎮痛に対する医療の役割を再認識しなければならない時代になったことに気づかされる。

 痛みの定量化は、今や避けては通れない評価尺度でもある。RDQもそのひとつとして汎用されているのであろう。
 
# by m_chiro | 2007-11-23 23:33 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(2)



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