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むち打ち症患者の奇妙な症状
42歳の女性が運転中、交差点から飛び出してきた車に急ブレーキをかけたが、間に合わずに衝突事故になった。
直後から頭が重く、両上肢のだるさが出る。次第に咳き込むようになった。
そのうち奇妙なことに、ゲップともつかず、吐き気ともつかず、上気道から空気が逆流するような不随意の反復する運動が起こるようになった。

整形外科を受診すると、先生から「こんなの整形外科の分野なのか?!」と投げやりに言われて、彼女はカチンときたらしい。
それでも、しかるべき科を紹介してくれるわけでもなく、お薬と電気治療を勧められたようだ。
「事故にあって来たのに、それはないだろう」と、勧められたお薬も電気治療も断ってしまったと言う。
この奇妙な症状は、ますますひどくなっていった。

当院にみえたときにも、頻繁に咳をしていた。
その咳きも、身体のどこに触れても発作のように咳が出る。足首の背屈でも伸展でも咳き込む。頭部、顔面や前頚部、腹部に軽く触れても起こる。
そのうち不随意に、ウッパー、ルッパーとまるで金魚の口パクのようになってしまう。
私が「まるでウーパー・ルーパーみたいだなぁ~」と言ったら、彼女は「可愛い名前をありがとう」と笑ったが、実際、笑い事ではないのだ。

咳は膜系の障害のように思えたが、ウーパー・ルーパーには悩まされた。
何しろ不随意に起こるので、それがどんな状況で起こるのか分からない。不随意の動きには痛みは伴わない。
先ずは膜系をターゲットに治療をすすめることにした。そのうちに例の不随意の動きの状況が見えてくるかもしれないと踏んだのである。

案の定、咳は5割がた落ち着いてきたが、それでも何かすっきりしない。
不随意の動きも活路を見出せない。どうも頚部の屈曲・伸展の動きに関係して起こることが多いようだ。その上、舌を左側方に出させても、眼球運動で左上方への動きでもぶれている。当然、筋の抑制も起こる。
それで、頭蓋と顎関節の調整をするようにしたが、咳き込みが起こってままならない。ふと、下顎下に触れたとたんに、ウーパー・ルーパーがはじまった。はじめて刺激と現象が一致した。何度も再現された。どうも前頚部の下顎下に問題があるようだ。
いろいろ手を尽くしたが好転する気配もない。

途方に暮れて、単純に考えた。直接、圧刺激を下顎下筋群(顎二腹筋や舌骨上筋群)に加えた。すると、筋の痙攣が起こり、押した指を跳ね返すほどの暴れようである。まるでそこに別の生き物が生息しているかのように、どんどん指を押し返してくる。
私はその反動に負けないように力を緩めることなく押し続けた。1分位も押していただろうか、次第に反発してくる間隔があいてきて、2分くらいで痙攣がおさまった。
すると、身体に接触してもほとんど咳こまなくなり、動きでもウーパー・ルーパーが起こらなくなった。

それから4日目の今日、不随意の動きは日常でも起こらなくなり、咳も8割がた出なくなった、と報告された。でも、下顎下の筋群を押圧すると、まだ痙攣が起こる。ウーパー・ルーパーの機序はわからないが、良くなる兆しが見えただけでホッとした。
まるで、のど版「エクソシスト」のような症状だった。
人体はほんとに不思議です。
# by m_chiro | 2008-08-08 23:42 | 症例
九州カイロ同友会の夏期合宿(柳川)に招かれて
8月2日から九州カイロプラクティック同友会の招きで、福岡県の柳川市に出かけてきました。この会は、学兄・馬場信年先生が創設し牽引してこられた組織で、今回は夏期合宿研修でした。福岡空港で馬場先生と落ち合い、電車で柳川へ。

柳川から合宿研修会場である「かんぽの宿・柳川」へは、舟でお堀を下りました。
水郷柳川は、今でも掘割が縦横に走っています。そこを「どんこ舟」で、船頭さんの竿にまかせての70分ほどの川下りです。
日差しが猛烈で、笠をかむって乗り込んだのですが、結構、川風があり吹き飛ばされそうな場面も。緑の田んぼを風が渡る風情も見られていいものでした。
舟を降りて、「北原白秋の生家」と「御花邸」を見学。
日が暮れて、先ずはの「懇親会」です。珍味づくしの有明料理にはじまって、天然うなぎの蒲焼、柳川どじょう鍋と、よくも食べられました。珍味に美酒と大歓待を受けました。
部屋に帰ってからも、夜遅くまで話が尽きず賑やかなひと時でした。
同友会の皆さん、本当に有難うございました。

翌日は、研修会本番です。
テーマは症例報告会ですが、そこで「症例検討に対するモデル」の提案とその模擬をしてきました。
内容の一つに、「除外診断」を入れました。
特に、痛みの除外では「1.癌、2、感染、3.骨折」です。身体所見では、馬尾神経圧迫障害、特に肛門周辺のサドル麻痺、尿閉や頻尿などの膀胱直腸障害、下肢のひどい神経症状など、除外診断の所なども挿入しました。
私は、今年2人を除外診断して病院の専門医に紹介しました。
二人とも夜間痛のある下肢痛でした。結果は、残念ながら癌性の痛みでした。
その経過も解説しながら、除外診断が大切であることを話しました。夜間の安静時痛の感度は0.90、特異度は0.46です。感度の高い症状です。
提案したモデルでは、症例検討の模擬をしながら、参加者も報告者と一緒に推論していきます。
報告者は「検事」で、参加者は「弁護士」、座長はさしずめ「裁判官」といったところでしょうか。
みなさんがそれぞれ意見を出すようになり、盛り上がりました。
どうなるかと思いましたが、うれしい結果でした。

以下は、舟下りと柳川観光の写真です。
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こんな狭い水路も巧みに通り抜けます。
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舟を下りて、北原白秋の生家見学。

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お花邸。ソテツの巨木が見事でした。
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宿泊・会場となった「かんぽの宿・柳川」。「かっぱ」を模した建物だそうです。
# by m_chiro | 2008-08-06 01:45 | 雑記
痛み学「NOTE」⑯ 痛みに特異的な受容器がみつかった
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

⑮ 痛みに特異的な受容器がみつかった

ここまで痛覚の伝達/伝導路と鎮痛ルートについてみてきた。
今度は、この痛覚の入力部である受容器の存在について考えてみたい。

19世紀末から20世紀にかけて神経組織医学の研究が著しく進み、いろいろな感覚受容器が発見されている。それまでは痛みの概念も時代とともに変遷してきた。

例えば、アリストテレスは「痛みは感覚ではなく不快な情動」であるとして「心臓説」を唱えたし、ダ・ヴィンチは「脳室説」を主張した。
デカルトが痛覚系の本質的な発想を行ったのは17世紀のことだった。
痛みは足先に飛び散った火の粉のエネルギーが、体内の管を通って頭の中の鐘を揺らした結果生じる、というものである。

今日では「痛み刺激を感じるところはどこか?」と問えば、それは痛覚受容器であるとなる。
その受容器は、皮膚や他の組織などに枝分かれした神経の終末部にある。
痛み刺激によって終末の受容器に興奮が起こると、その痛点から上行性の伝導経路に乗って脳へ伝えられる。
そして脳で「痛み」として認知される。
痛覚受容器が侵害を受けた部位が痛みの「第一現場」で、その痛みを認知する脳の部位が「第二現場」だ、という話である。
ここは重要な押さえどころである。

もう一つの争点は、痛みの「特異的な受容器」の存在である。
19世紀末からは「非特異説」が形を変えて度々提唱されていく。
受容器の特異性とは無関係に、どんな受容器でも過度の刺激を感知すれば痛み感覚になるとする「強度説」、あらゆる種類の感覚は神経インパルスの時間的・空間的な興奮パターンにより生じる「パターン説」へと展開された。

「非特異説」が覆された背景には、20世紀後半に2種類の受容器の発見があった。
一つは「機械的受容器」で、もう一つが「ポリモーダル受容器」である。

例えば、こんな実験報告がある。
刺激素子を鈍磨と鋭利な素子に分けて、圧迫による反応で比較すると、「機械受容器」の遅順応性タイプでは優位な差はなかった。
一方、高閾値タイプでは、鋭利な刺激素子を用いると微弱な力による刺激でも放電反応がみられた。

この実験から、「高閾値機械受容器」は痛覚専任の特異的な受容器であることわかる。
これは一次痛を伝える速い痛みの受容器であるが、痛覚受容器の存在が明らかになったからといって、病態時の痛みが解明されたというわけではない。
# by m_chiro | 2008-08-01 16:39 | 痛み学NOTE
大阪で出会った詩
26日(土)から、大阪に出かけました。
伊丹空港に着くと、外はジリジリと焼けるような暑さ。
空港からリムジンバスで「なんば」に向かう。
バスの座席にパンフが幾種か差し込まれていて、その中に「Limo.Press 38」というタイトルの大阪空港交通(OKK)通信が入っていました。

表紙2を開くと、福岡出身の版画家・矢野薫さんの「ciel(空)」という題名のカラーエッチングがあり、まるで子供が書いたような頼りなげな鳥が赤の線画で青地に描かれています。
その絵の上に、三宅伸治さんというミュージシャンの「平気」という詩が載っていました。
いつも不安げなあなたに、そして自分を見失いそうなあなたに、少しでも力を与えられるかな、と思って引用します。
読んでいると、自然にリズムが湧いてきそうな詩でした。
その上、「平気」が頭の中に蔓延りそうになります。

「平気」      三宅伸治
眠れない夜も 平気 平気 つらい朝も 平気 平気
何を思われても 平気 平気
いつも自分を信じていよう
青い空を思い出して 君がくれた言葉を想い出して
胸を張って歩く きっと平気 平気
年を重ねても 平気 平気 体は元気で 平気 平気
友達と笑って 平気 平気
いつも自分を信じていよう
星空を見上げれば 君といた夜を想い出して
眠りにつこう きっと平気 平気
眠れない夜も 平気 平気 つらい朝も 平気 平気
人生は悲喜こもごも 気分次第で 平気 平気
もう大丈夫 平気 平気
もう大丈夫 平気 平気
何があっても 平気 平気
いつも自分を信じていよう いつも自分を信じていよう

# by m_chiro | 2008-07-28 23:49 | 雑記
梅干を作る
やっと晴れ間がでるようになったので、漬けておいた梅を天日に当てた。
梅もシソも地元産のものだ。写真の梅は「おばこ梅」。小ぶりの梅である。
患者さんが庭で採れた梅を持ってきてくれた。
いつもは「節田梅」という大粒の梅を使っている。
梅干を作る_c0113928_237211.jpg


塩はこだわって、この近海の海水から作ったものを使った。
梅干には塩が肝心らしい。
なにしろ、梅干は10年周期でパワーアップしていくのだそうだ。
塩とクエン酸が発酵して徐々に徐々に力が増していくのが10年周期なので、10年経つと梅の酸っぱさとか、塩からさという自己主張がなくなり、まろやかになる、と言う。
その時に問題になるのが、塩分濃度らしい。昔から梅干は30%濃度なのだそうで、それ以下だと百年も持たないのだそうだ。
試してみたいとは思うのだが、一年で食べつくしてしまう。
だから、そんなに永く置いておこうとする暇もない。
したがって、塩分濃度も18%くらいで十分だ。
梅干の味は、海水の「にがり」成分が隠しどころらしい。
だから自然塩が一番である。

多く作ろうと思っても、梅干を作るのは手間ひまがいる。
作ってみて、こんなに手間のかかるものなのか、とはじめて気がついた。
農林省の「日本農林規格」では「梅干とは、梅を塩漬けにして干したもの」と規定している。
だから、調味料で漬けたものは、「梅漬け」と区別して表示されている。
したがって、「天日干し」でなければ「梅干し」ではないのだ。
シソは着色に欠かせない。
シソにもこだわると、栽培した土壌によっても発色が違うらしい。
そこまでは手が回らない。

クレブス回路(クエン酸サイクル)の発見者でノーベル生理学賞を受賞したH.A.クレブス博士は、その学説の発見に梅干しがヒントとなったとか。
本当かどうかは別にして、クエン酸は老廃物を分離して排出する作用があるとかで、毎日継続して摂る事が大事らしい。
私の梅干し作りのバイブルは、「宿福の梅ばなし」である。
梅干を作る_c0113928_2310465.jpg

乗松祥子さんという「梅おばさん」が書いた本だ。
乗松さんは茶懐石料理「辻留」銀座店に20年間勤務して梅仕事に目覚めたという方である。
書かれている通りに事を運ぶことはできないが、私も梅干作り6年目を迎えた。
年々、奥が深かまる。
ただ今、楽しみながら挑戦中!
# by m_chiro | 2008-07-25 23:11 | 雑記



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