目から鱗の「ニ軸動作」
京都大学の小田伸午教授のレクチャーを受けた。
テーマは、「常歩(なみあし)式・身体動作上達法」で、身体動作の基本となる「二軸動作」を学んだ。例えば、歩行での中心軸による「一直線歩行」と、二軸による「二直線歩行」が基本形となる。散歩が日課の私には、目から鱗の身体動作法だった。

常歩による二軸の走歩行とは、どんな動作か。端的にいえば、一直線走歩行でのロスを取り除いた走歩行ということだろう。
二軸理論による走歩行は、二直線走歩行が基本である。
一直線走歩行は、骨盤と肩を左右交互にねじりながら足をクロスに動かす。ところが、二直線走歩行は、骨盤の幅を保持したままそれぞれの足を直線的に運ぶ方法と言える。
 
基本的には、それぞれの足が二直線上を進むことによって、体幹が捻られず足がターンオーバーする。しかし、二直線上を進むだけでは合理的な走歩行にはらない。

重要なのは骨盤の動きで、一直線走歩行での脚と骨盤の動く方向を思い出してほしい。脚と同側の骨盤はほぼ同方向に動く。右足が前方に振り出され、左足が着地している間は骨盤の左側(左腰)が後方に動く。

ところが、二軸理論での走歩行では骨盤の動きが違ってくる。例えば、左足が着地し右足が振り出されるときには骨盤(左腰)も後方に動くが、接地期の途中から骨盤(左腰)が前方へ動く。着地足側の骨盤(腰)が途中から前方へ動く(あるいは前方へ動く力が加わる)。この骨盤の動きによって、着地した足が地面を離れた後のターンオーバーが可能になる。

それでも、この骨盤の動きも意識してできるものではない。骨盤の動きを気にしていたら歩くことはできない。
ということで、泥棒の抜き足差し足の歩きを真似ていると上手く行きそう。

歩き始めの頃は、この基本形である「二軸歩行」がみられる。

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「スポーツ選手なら知っておきたいからだのこと」(大修館書店)より

いつから、中心軸による捻じれの歩行がはじまったのだろう。
おそらく、小学校へ入学後、行進の練習が行われるようになると、この一軸歩行が強制されて出来上がったのかもしれない。

ある週刊誌に見開きの広告を見つけた。広告主は、偽装で話題になった「赤福」である。話題に上る前の広告だった。その広告の写真は、小学校の運動会での走行の様子が大きく掲載されていて、私の目を引いた。典型的な一軸走行と二軸走行が、まるで対照見本のように映し出されていた。


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こんなに典型的に違った身体動作が行われているんことを再認識。合理的な身体動作を身につけたいものです。

詳しくは、小田伸午先生のHP、「常足秘宝館」へ。
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# by m_chiro | 2007-12-11 00:50 | 雑記 | Trackback | Comments(9)
痛み学NOTE⑥ TMSも痛風も「侵害受容性疼痛」である
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

⑥ TMSも痛風も「侵害受容性疼痛」である

実際のところ、痛みを生理学の視点から捉えることに意識が向くようになったきっかけは、J.E.Sarno,M.D.の「TMS理論:Tension Myosits Syndrome(緊張性筋炎症候群)」である。それも10年来続いた私の腰痛が極限に至り、ほぼ1ヶ月も寝込んだことが痛みを考え直す契機となった。

Sarnoは、「Mind Over Back Pain:背腰痛を支配する心」というTMSに関する著書を1984年に発表し、1991年には「Healing Back Pain:The Mind-Body Connection」を発刊してベストセラーになった。それだけでなく、アメリカでは30万人以上の腰痛患者が、指一本触れることなくTMS理論を受け入れることで治った、と話題にもなった。私もTMS理論をカイロ業界などの雑誌に書き、講演等で紹介したこともある。

TMS理論とは「心の緊張が痛みをつくる」ことを生理学的に仮説したものである。では、TMSは一体「痛みのカテゴリー」のどこに分類されるべきものなのだろうか。よもや、「心因性疼痛」とは考えてほしくない。TMSはまぎれもなく「侵害受容性疼痛」なのである。

私たちはどのようにして痛みを感じるのだろう。簡単に言えば、身体に無数に存在する痛覚受容器が、機械的刺激あるいは熱、あるいは化学的刺激によって侵害されることで興奮し、その信号が脳に送られて「痛み」として認知されるということになる。これが「侵害受容性疼痛」である。

TMSの場合は、交感神経系の緊張によって細動脈が収縮し、酸欠状態となって痛み物質を誘発する。それが受容器を侵害し圧痛点をつくる。したがってTMSは侵害受容性疼痛であり、徒手療法にもよく反応するのである。そんなわけで、痛みには心理・社会的側面からのフォローが不可欠とされている。

「心身症」とされる疾患にも、痛み症状を持つ疾患名が見受けられる。日本心身医学会の定義によれば、心身症とは、その発症や経過に心理・社会的要因が密接に関係するもので、器質的あるいは機能的障害が認められる病態である。

例えば、「痛風」も強い痛みを訴える整形外科領域の心身症とされている。痛風は身体の中に尿酸がたまる病気で、尿酸値の基準が最も有力な診断の手がかりであるが、尿酸は単なる暴飲暴食が誘因とは限らない。腎臓障害とそれに関連する循環器の疾患も内包していたりする。また、尿酸の排泄を抑制する作用を持つ投薬が行われていても発症する。それでも痛風が心身症とされるのは、身体的・精神的ストレスによっても尿酸が誘発されるからである。その痛みも、痛みの分類にしたがえば、尿酸による「侵害受容性疼痛」に他ならない。
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# by m_chiro | 2007-12-08 22:41 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(2)
患者の「自助努力」を処方する治療家でありたい
構造的異常を痛みの原因にしない②
日常生活の癖が原因でいつのまにかヘルニアが生じる
ヘルニアがあっても痛くない人は筋痛(スパズム)が起きていないのです。ヘルニアのサイドと痛みのサイドが有意に一致する率が高いのであれば、体の歪みの癖(筋肉の短縮、痛みを避ける体位)と関係している可能性があります。
このあたりは研究してみるべきです。手技療法家のご意見は?


体癖傾向や習慣性姿位は、手技療法家にとってとても重要な研究課題だと思います。

こうした体癖傾向は筋肉を短縮させる、あるいは逆に筋肉の正常な収縮度を失わせることにつながりやすく、それが代償性の運動連鎖や機能連鎖を引き起こすことになると考えます。

そこに何かが引き金になって、スパズムが起こると「痛み」となる。

おそらく、痛みは最終警告なのでしょう。事前の警告が発信されているはずなのに、皮質有意の人間の脳は自分の都合で対応してしまいます。本能的な警告系の受信を無視しているか、気づかないのかもしれません。

ペットの猫や犬の生き様を観察していると、動物は自らさまざまな身体の変化に対応して自助努力をしていることに気づかされます。調子が悪いと、食事をもとらずにじっとうずくまったまま動こうともしません。回復が訪れるのを待っているかのようです。我が家のペットには、庭の土に穴を掘って、その中に身体を入れて休めていた猫もいました。回復するまで3~4日も、そんな暮らしをしていたのです。

ところが、人間は予定や仕事を優先させて、ついつい無理を重ねてしまいます。警告の受信は退化して役に立っていないか、無視されるのでしょう。

子供を叱るときでも、最初はやさしく言って注意します。それでも聞かないと、大きな声で注意します。次には、怒鳴ります。最後は「ゴツン!」です。最終警告です。
同様に、痛みには事前の警告があるものと思うのです。最終警告の「痛み」が発信される前に、その事前にも対応したいものです。

体癖傾向や習慣性姿位に注意してあげることは、患者の自助努力を促す一つの有り方でもあるでしょう。最も、それ以前になぜそのような体癖や習慣が起こるのかが問題とされなければなりませんが...。

ともかく、患者の自助努力を促すために、体癖傾向や習慣的姿位を指摘することは大切なことと考えます。身体の運動学や動態学的分析を行い、筋のトーンをみると推理できます。その推測に基づいて、必要な在宅のストレッチやエクササイズ等などを指導する。

医師が薬を処方するように、「自助努力」を処方する治療家でありたい、と思います。
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# by m_chiro | 2007-12-07 11:05 | 雑記 | Trackback | Comments(5)
痛み学NOTE⑤ 心因性疼痛の怪
⑤ 心因性疼痛の怪

心因性疼痛

心因性?精神論?違います。痛みのメカニズムです


確かに、胡散臭いのは「心因性疼痛」である。「心因性」という痛みの分類名称が、果たして的を得たものかどうかさえ疑わしい。

痛みには両義性があると定義されているわけで、そうなると痛みには常に「心」の側面がついてまわる。

純粋に心に起因する痛みの線引きは何を基準にして行われるのだろう。それすら不鮮明で、心因性という用語だけが一人歩きしているように感じられてならない。

おそらく、生物医学モデルで説明のつかない痛みがあり、その病態を精神医学的疾患として理解されてきた背景があるのだろう。

精神疾患の診断基準(DSM)では、1980年に初めて痛みを「心因性疼痛障害」として、精神障害のひとつに認めている。それも1987年には「身体表現性疼痛障害」と改定され、94年以降は「疼痛性障害」とされた。ここにも混迷の跡が窺える。

上記のブログにもあるように、「心因性」を冠する疾患・症状名は多い。それも眼に見える心因性の症状である。心因性蕁麻疹、心因性嘔吐、心因性の咳や下痢なども実存する。つまり眼で見ることができる。

ところが、痛みには視覚系の原理が通用しないから厄介である。
視覚系は構造主義の原理なので、親近性があるのは実存主義だけである。
瞬間か永遠か、どちらかである。
痛みが実存しているかどうかは知る由もない。
だから、心因性疼痛の分類は胡散臭い。

ミステリー作家の夏樹静子が、自らの腰痛の闘病記を「椅子がこわい ―私の腰痛放浪記―」という本にした。
現代医学でもあらゆる代替療法でも治療すべき悪いところがない、とされた重度の腰痛が、心療内科医の行う森田療法で治ったのである。
このことを知れば、脳内の内的な要因で起こる「心因性」なる痛みの存在を否定することはできないようだ。それでも、どうもその呼び名だけは腑に落ちない、と私も思う。
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# by m_chiro | 2007-12-05 23:41 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(5)
三代受け継いだ松葉杖
構造的異常を痛みの原因にしない③

半月板の手術のあと膝痛が続いている人をしばしば見かけます。それは関節鏡を使った半月板の手術を得意とする病院があるからでしょう。半月板が悪いから膝痛があるという理論はなりたちません。痛みのない膝でも半月板が損傷している膝はよくあることです。

痛みの本態はこれらの筋肉の筋筋膜性疼痛症候群だとおもいます。筋肉に対してトリガーポイントブロックやマッサージ、電気治療、ストレッチをしてやれば症状は改善します。
筋痛→筋短縮→膝アライメントの変化→半月板の障害、このように半月板の障害は痛みの原因というよりは、結果とみたほうが理にかなっているのかもしれません。
私も、関節鏡を使った手術のあとに続いている膝痛の人をみました。
今年の7月に、松葉杖をついて50代の婦人がやってきました。随分年季の入った古びた松葉杖でした。聞くと、祖父の代から、父親そして自分と三代にわたって使い続けてきた杖だそうです。豪雪の山間部から、はるばるやってきました。

彼女は、今年の2月にあまりにも多い積雪に、屋根の雪おろしをする羽目になったそうです。屋根の不安定なところでの作業がこたえたのか、その翌日から右膝に強い痛みが走るようになりました。次第に膝がはれてきたので、整形外科を受診すると、レントゲン写真で膝の関節軟骨が減っていると言われました。

水を2回抜いてもらい、さらに週一回のステロイド注射を続けたのですが、経過は思わしくありませんでした。とうとう仕事に出るのもつらくなり、5月末には入院・手術になったそうです。

入院中、内視鏡で傷めた半月板を取り除き、更に関節の内部をきれいに掃除してもらう。その時はとてもつらい状態だったようですが、入院生活で無理をしないように努めたこともあって6月中旬頃には松葉杖を使わずに歩けるようになる。その後も、とにかく無理をしないように心がけてきたのだと言います。

ところが、6月末頃になって、また痛みだしました。その後も注射を週一回続けてきたのに、また松葉杖のお世話にならないと、歩くのもままならなくなった。

彼女は見るからに痛々しい感じで、松葉杖をついてやってきました。最初のきっかけは、本人も感じているように屋根の雪おろしでしょう。三代も松葉杖を使ってきたと言うから、豪雪地帯の雪下ろしは不安定な場所での大変な作業なのだと思います。大変なその時に何が起こったのかと言えば、無理な体勢で右膝に負担をかけて、膝周辺の筋・筋膜や軟骨組織に微損傷ができたものと想像できます。

彼女の膝周辺にも、図のような圧痛点がいくつもありました。面白いことに、膝蓋骨上の筋膜に一ヶ所ピンポイントでとても強い圧痛があり、「こんなところにも!」と思ったのを覚えています。

歩行が完全になるまでに20日間ほどかかりましたが、日常生活にも支障なく、仕事にも復帰しました。
構造を診る前に、先ずは筋・筋膜に注目すべきだと痛感します。
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# by m_chiro | 2007-12-04 15:48 | 症例 | Trackback | Comments(1)



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