人気ブログランキング | 話題のタグを見る
加茂先生著書の書評
科学新聞社が発刊する「カイロ・ジャーナル」に、加茂先生の著書「トリガーポイントブロックで腰痛は治る」が第64号に取り上げられ、書評が掲載されていた。
一般に流通する新聞ではないので、参考の為に書評記事の全文を紹介しておきたい。

腰痛原因は筋スパズム奮闘数十年で治療法確立

徒手療法家なら、「トリガーポイントブロックで腰痛は治る!」と言われても、「そういう腰痛もあるでしょうね」程度が普通の反応だろうか。しかし、本書は、数ある「これで腰痛は治ります」タイプの本として見過ごすことはできない。腰痛とは何か、痛みはどこから来るのか、という問題に真っ向から取り組み、数十年にわたる臨床現場での奮闘から導かれた治療報告と提言だからである。
加茂整形外科医院院長の著書は臨床医として、現在の一般的な整形外科で行われる診断と治療に疑問を投げかける。整形外科に腰痛で来院すると、必ずレントゲンを撮られ、さらにMRIなどを撮り、そこに映る骨の変形やヘルニア、狭窄が痛みやしびれの原因と説明される。しかし、例えばヘルニアに関しては①ヘルニアの手術をしてもよくならないことがある②健常人でもヘルニアはある③痛みがあってもヘルニアがないことがある④保存的療法で簡単に治ることがある、との理由から、痛みの原因をヘルニアとする理論はつじつまが合わないことを説明する。
そしてほとんどの腰痛、筋骨格系の痛みの原因は、筋肉のスパズムである、と言い切る。様々な症状を伴った重症症状の原因が筋スパズムで、その病名として線維筋痛症(MPS)が当てはまるという説明は「パンチに欠ける」ということは著者も認めている。自律神経失調症、過敏性腸症候群、緊張型頭痛など、様々な“病気”を伴って、長い期間慢性痛に悩まされてきた症状の原因が筋肉の状態だったとはあまりにもシンプル過ぎるのである。しかし、問題の筋肉を突き止め、そこへブロック注射をし、確実に、時には劇的に症状をよくすることで、著者は原因を確信するのである。
「画像上にヘルニアがあるとか、狭窄や変形があるということと、痛みやその他の症状とは無関係である」ということは、カイロプラクティック大学では口が酸っぱくなるほど教えられる。画像診断を決定するためのガイドラインにも書かれている。カイロ大学で教えているのだから、当然医学部でも知識として教えられている。本書の中にも、画像の異常が痛みに結びつくとは限らないことは、ほとんどの医師が知っていると書かれている。しかし、事実に反する説明と治療が大多数の現場で行われている。その理由として、本書は医療保険システムの問題も指摘する。
しかし、痛みと画像上の発見とは相関しないということが、治療現場で無視される理由は、現行の治療以外のアイデアがないからではないだろうか。著者のすごさは、原因に基づいた治療法を工夫し、成果を上げ、治療法を確立したことだろう。
今後、本書に述べられた考え方と方法を実践する整形外科医は増えていくのだろうか。もしそうなれば、徒手療法よりブロック注射で解決しようとする人が増えるのかもしれない。しかし、痛みに対する神経筋骨格系のケアの大切さを理解する人が増え、カイロを合理的で身近な療法として利用する人も増えるだろう。医療関係者のカイロへの理解も進むだろう。そう考えると加茂医師の取り組みは、目が離せないのである。


文中のMPSは線維筋痛症ではなく、「筋筋膜性疼痛症候群」のことである。記者の勘違いではないだろうか。

トリガーポイントブロックは医師としてできる手法ではあるが、そこにはトリガーポイントを見つける技術が要求されてくる。見よう見まねで誰にでも出来る技ではないように思う。
そんなことよりも、著者の加茂先生が強調するのは、ほとんどの筋骨格系の痛みが「筋・筋膜」由来の症状だとする点だろう。

したがって、考え方さえ誤らなければ、トリガーポイントブロックだろうが、鍼だろうが、カイロなどの徒手療法だろうが、その手法を特定し限定するものではない。これは加茂先生自身が公言されていることでもある。

大事なことは、先ずは痛みを扱うすべての医療関係者や治療家が、痛みの本質を知ること、学ぶことにあると思う。そこから、治療家も自らの守備範囲の中で治療法を構築していくことが望まれるのではないだろうか。
# by m_chiro | 2009-03-24 19:31 | 雑記
科学新聞社さんの御厚意
科学新聞社さんが、カイロプラクティックの専門図書を最初に出版されたのは1969年(昭和44年)である。それは米国カイロプラクティック大学の学長・DR.J.ジェンシーの翻訳出版であった。

長い間、日本のカイロプラクティックは学問的情報が乏しい状況が続いて中で、この本は日本におけるストレス学の権威でもあった藤井尚治先生(銀座内科・院長)が翻訳した。
藤井先生は既に故人になられたが、その後も深くカイロ業界に関わってこられた功労者でもある。

その出版刊行に踏み切った科学新聞社さんも、あれから今年で40周年を迎えることになった。私がカイロプラクティックの業界に身を投じたときには、この本は既にカイロのバイブル的な図書としての象徴的な存在でもあった。

科学新聞社さんの、その後の40年の歩みをカイロ関係者で知らない人はいない。カイロ関連図書の出版のみならず、カイロプラクターの資質向上にも尽力されて、業界の良きアドバイザーであり支援者のスタンスを貫いてこられたのである。
社長の斉藤信次氏には、私も随分とお世話になった。

その斎藤社長から、私がブログで記事にしている『「痛み学」NOTE』を科学新聞社が管理するカイロプラクティック&オステオパシー総合ウエブサイト「CHIRO-JOURNAL.COM」 に転載したい、との申し出があった。

私が勉強した備忘録のような書きなぐりの記事が掲載されるのは赤面の至りだが、少しでも多くの人に痛みについて考える機会になればいいかな、と思って承諾した次第である。間違いもあろうかと思うので、再度見直しながら随時の掲載をしていただくことになる。
また、科学新聞社が発行するカイロ関連の新聞・「カイロ・ジャーナル」にも第64号から掲載されることになるようだ。
これも斉藤社長の御厚意以外、なのものでもない。
# by m_chiro | 2009-03-24 19:24 | 雑記
トーンと調整
Sansetu先生が『「調整」、この便利でいい加減なる言葉』の記事中で、カイロプラクターの使う「トーン」や「調整」の言葉が曖昧で主観的な表現である、と指摘しておられた。恐らく、私の記事中の書き方を指しているものと思う。確かに、「トーン」」という言葉はカイロプラクターの用語かもしれない。同業の間では阿吽の理解があるだろうが、誰彼に通じるもではない。反省すると同時に、手技の感覚世界をこうした形で表現することの難しさを感じた。

そもそも「トーン」と言う表現は、カイロプラクティックの創始者・D.D.パーマーがその理論の解説に核心的な用語として用いている。
カイロプラクティックの核となる考え方には2つある。
1つは「イネイト・インテリジェンス;先天的知能」として表現される自然治癒の哲学で、もう1つは「サブラクセーション」である。
「サブラクセーション」とは整形外科領域で使われる直訳の「亜脱臼」とは違っている。カイロプラクティックの独自の概念である。その定義によれば以下の意味になる。

「2つの隣接する関節構造が異常な位置関係にあることを示す。直接的または間接的に影響を及ぼす関節構造、その近位にある構造や身体全体の生体力学ないし神経生理学的な反射に変化が生じて、機能的および病理的結果を招くことがある」(ACA、1987)。
ここでは隣接関節構造の解剖学的位置関係の異常のみならず、神経生理学的反射による機能的・病理学的異常を招く要因が指摘されている。
今日的表現をするならば、「バイオメカニックス(生体力学)」と「神経学」が織り込まれているのである。

バイオメカニックスはカイロプラクティックの基本的な学問でもある。また、独自の学として構築されている分野でもある。が、ここでは話題から離れるのでひとまず置くとして、「トーン」は神経学の視点を表現している用語である。
ところが残念なことに、「トーン」に関する神経学的視点が、カイロ学における1つの学問として構築されて、コンセンサスが得られているとは言えない。Dr.Carrickという天才的なカイロプラクターが、神経学的な現象と徒手による刺激の果たす役割について一分野を確立しているようである。神経学の教育プログラムが作られ、「カイロプラクティック神経学専門ドクター(DACNB)」という資格制度もできている。だからと言って、それが医学の分野でのコンセンサスを意味するものではない。

それでも、カイロプラクティックの科学を表象する2つの学問(生体力学と神経学)を天秤にかけると、カイロでは圧倒的に生体力学に学際的発展のウエイトが置かれていると言っても過言ではないだろう。
したがって、カイロプラクティックに対する一般的あるいは医療分野の認識は、構造障害に対する治療法とされている。
生体力学は構造主義的視点であり、神経学は機能主義的視点であるが、この機能的視点については発展途上であるとは言えても未だ業界に浸透したものではない。
極論すれば、D.D.パーマーの「トーンの過不足が病気の根源である」という提言から、私の頭の中はさほど進歩しているとは言えないのかもしれない。
更に言えば「サブラクセーションは結果であり、原因ではない」というD.D.の言葉からも、生体力学と神経学の相関について確立されてきたものは何も出ていないのだろう。
百数十年前に出されたD.D.パーマーの考え方を、後に続く者たちが未だに模索し続けているというのが現状なのではないだろうか。

さて、私が「トーン」と書いているのには、そんなカイロプラクターの思い以外の何者でもない。だから、主観的概念だと言われれば頷くしかない。

機能は神経の活動に依存している。煎じ詰めれば「受容器」の活動である。それが脳に伝えられ、動きとして表現される。
しかし、受容器は単なるセンサーではない。比較する器官である。だから閾値がある。ここに受容器の特性がある。しかも、この閾値は万人に共通のものではない。個々に設定された閾であるのだが、身体のどこでこの閾値を決めているのかは謎である。
この一連の回路の信号系に膜電位の過不足が生じることを「トーン」として表現した。
「トーンが高まっている」というのは膜の電気的興奮性が高まり閾値に近づき興奮しやすい状態で、逆に興奮しにくい状態は「トーンの低下」として表現している。
中には、痛みなどのように発作性に興奮して脱分極を頻発している膜電位もあるだろう。
だが、何も膜電位は神経細胞に限ったことではない。

こうした膜電位におけるトーンの変化している部位を見つけて、その受容器に適切な刺激を送る。その刺激によって神経回路の信号系を安定させること、それがカイロプラクターの治療であると考えている。
そして、こうした神経のトーンに視点を置いた一連の手法を「調整」と言う言葉で書いたまでである。

では、そのトーンとやらをどのように定量化しているのかと問われれば、私には客観的なデータとして提示できるものは何もない。筋活動の始動をチェックしたり、運動学的分析をしたり、神経反射による動態反応をみているだけである。もちろん、圧痛も含まれる。

カイロプラクティックの構造主義的手法から抜け出して、私は「神経のトーン」という機能主義的視点を取り入れたのだが、悲しいかなそれを客観的に表現したり提示する術を持っていない。私はDCでもないし、昨今盛んに輩出されているカイロプラクティック理学士(B.C.Sc)でもない。カイロプラクティックを勉強してきた一治療家に過ぎない。業界から見れば、私のような半ば独学の徒は、こうした場でカイロについて語る資格などないのかもしれない。誤解を招く物言いには気をつけなければと思うが、アホな頭は斟酌している余裕すらないようだ。
# by m_chiro | 2009-03-19 08:58 | 雑記
突然の腰痛で屈曲・伸展ができない
61才の婦人が、3日前に椅子から立ち上がろうとしたら腰が痛くて立ち上がれなくなった、と言って来院した。
寝起きが特に辛い。からだを前屈することが窮屈である。起きてしまえば問題なく動けるが、立ったり座ったり、靴下を履く動作も困難である。思い当たることもない。明日は申し込んでいた旅行に出かける日で「あせっている」、と言って来院した。

屈曲/伸展障害であるが、痛みは胸腰移行部に強い。
屈曲/伸展障害は、通常「頭蓋―C1、2」と「仙骨-L5」の連動する動きが注目される。頭部と仙骨部のどちらを優位に考えるかは、意見が分かれるところである。
印象的には、屈曲/伸展障害の多くが腰仙部(仙腸関節を含めたL5との連動)にあるように思えるのだが、決定的なものではない。頭蓋―C1,2の連動を回復することで解消されることもよくある。

腰仙部の可動触診では大きな問題を感じなかったので、頭蓋圧をみようと側頭泉門に触れた途端に咳き込みだした。聞いてみると、腰痛の前に風邪をひいて咳に苦しめられたらしい。
風邪はよくなったが、時々発作的に咳き込むことがあると言う。当然のごとく、咳のたびに腰に響く。
横隔膜をみると、トーンが高くなっている。
先ずは横隔膜をリリースした。横隔膜の問題は腸腰筋にも影響する。

問題点を調整した上で頭蓋をみると、頭蓋―C1,2は問題含みである。
その上に胸隔膜の過緊張がある。
これらをリリースすると動きが随分スムーズに行えるようになったが、まだ深い前屈で痛みが誘発される。

肺経をみると、右は孔最に左は列缺に反応点がある。
その反応点から動きと同調させると、痛みも動きも更に安定した。そこにバイオを貼らせておいた。

脊柱近傍の症状に対して経絡の遠隔を使う方法は、なかなか思うように行かないことが多い。素人の応用だから、当然と言えば当然の結果なのかもしれない。
でも、こうした併せ技を使うと、結果がいいように思う。
経絡はこうした応用も可能で重宝している。
# by m_chiro | 2009-03-16 18:21 | 症例
「アナトミー・トレイン」、待望の訳本が刊行された
「アナトミー・トレイン」、待望の訳本が刊行された_c0113928_16182688.jpgこの本の翻訳を久しく待ち望んでいたが、ようやく医学書院から翻訳本が刊行された。筋筋膜とその膜系連鎖を学ぶには格好の教科書だと思う。「徒手運動療法のための筋筋膜経線」というサブタイトルがついている。
著者のThomas W. Myersは臨床生理学者でロルフィングの創始者であるアイダ・ロルフに学んだ。
ロルフの概念を発展させて、包括的な結合組織網の身体図を完成させ、その心身の健康に影響する意味づけをしたボディワーカーであり、ロルフ研究所のメンバーでもある。

筋膜の全身的連結には、交差点や駅に相当するようなポイントがいくつかあり、これらは身体の触診や検査のポイントとしても重要である。同時に重要な治療点でもある。
Myersの興味は単に形態学的な解剖にとどまらずに、スポーツや芸術的な運動学全般を評価する視点を提供している。

著者も本文中で述べているが、筋筋膜経線の概念は循環系や神経系に匹敵する反応系である。こうした考え方を学んでいると、いろいろな治療の手法が湧いてきて、とても楽しいテキストである。既存の治療法を受売りで学ぶよりも、基本的な治療の広がりに貢献できるように思える。

5つの視点がコラムで用意されている。その視点とは、徒手療法および運動療法の手技あるいはノート、徒手療法と運動療法に関する考え方、視覚的評価ツール、筋筋膜経線の用語や定義などである。これも治療家には実用的な押さえどころになっている
# by m_chiro | 2009-03-12 16:17 | Books



守屋カイロプラクティック・オフィスのブログです

by m_chiro
外部リンク
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル