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1 「最近、朝起きると左足の小趾側が痛くて歩けない」(40代女性)という患者さんがみえた。 歩き慣れてくると痛みが軽減するらしい。 加えて、 右肩(三角筋前部周辺)の痛みと左膝窩の痛みもある。 だが、思い当たるきっかけもない。 歩行をみると、少しかばうような歩行になっているが、たいした強い痛みが出ているわけでもなさそうである。 右肩の可動域は最大屈曲と外転で制限があるものの、他動的には可動できるが多少の痛みを伴っている。 下肢の可動域は股関節(左)に外転制限が顕著である。 左足関節の可動域は、踵骨固定に対して自動回内は30°±、自動化以外30°±、 つま先立ちをさせると、踵骨が歪曲する。 左アキレス腱に外側ヒールテンションがある。 左蝶形骨が上方に動きがあり、下方に制限がある。 最初に硬膜管のリリースを行う ①S3-尾骨/C6のリリース ②蝶形骨-後頭骨-尾骨のリリース/左踵骨の調整を行う ③上肢と下肢のクロスラインをリリース 左長腓骨筋、前脛骨筋、腓腹筋外側/右肩甲下筋の膜繋がりをリリースして調整 ④鎖骨上神経(C3)、肋間上腕神経(T2)、外側上腕皮神経(C5)から肩前部領域に対して皮膚内部のリリースを試みる。 再チェック 右肩可動域;最大屈曲/外転ができる 歩行:痛みがなくてもスムーズな歩行とは言い難い 左股間節可動域;外転範囲が広がる ⑤歩行運動認知法を行う;スムーズな歩行が阿可能になる 歩行リズムと股関節外転不全が気になったので、何か運動してるの聞いてみた。 すると、週に1度の割合でエクササイズジムで1時間ほどの運動を行っていると言う。 (運動内容;ランニングマシン、バイクマシン、上肢のモビリゼーション・ストレッチ) 「そう言われれば、運動した翌日が最も調子が悪くなっていたかも.....」と彼女の弁。 ▲
by m_chiro
| 2018-10-22 15:19
| 症例
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関連痛のメカニズム❸ 異所性興奮と体性関連痛 これまでに述べたように、小殿筋トリガーポイント(TrP)は「坐骨神経痛」だ、と嘘をついていることがある。 これは筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とされ、体性関連痛の範疇に入る病態である。 ところが、その体性関連痛のメカニズムとなると、その機序は決して明らかとはいえない。 筋膜痛や線維筋痛症のような筋肉に起因する病態には複雑な病態生理学があり、その研究解明は後れを取っているのが現状のようだ。 腰下肢痛は、カイロプラクティックの臨床の現場でもよく見られる症状である。 厄介なことに、痛みを訴えている部位が必ずしも治療部位とは限らないことが多く、この問題は本当にややこしい。 かつて腰下肢痛と言えば、すなわち神経の圧迫や絞扼と相場が決まっていた。 つまりは「根性痛」とみなしていたのである。 不思議なことに、圧迫された神経根部で「感覚神経だけが障害され運動神経には影響が及ばない」とされていることにも疑問を消し去ることはできないだろう。 それでも「後根神経節(DRG)の感受性は過敏である」を根拠に説明づけられている。 しかしながら、どう考えても侵害部位から逆行性に痛みが伝達される仕組みは理解できない。 だから根性痛は「異所性興奮」という神経損傷モデルで説明せざるを得ないのだろう。 こうした神経障害に伴う痛みには中枢性と末梢性があり、病態生理学的には「5つの基本的機序」(「痛み学―臨床のためのテキスト」409頁)が提示されている。 それによると、 (1)痛みに感受性のあるニューロンへの直接の刺激、 (2)損傷された神経の自発発火、 (3)中枢神経系の感作と求心路遮断による神経系の再構築、 (4)内因性の疼痛抑制系の破綻、 (5)交感神経依存性疼痛 の5つで、この基本的機序が単独あるいは複合して痛覚伝導系が障害されて発症するとしている。 多様な発症機序ではあるが、症状には類似点があるようだ。 それは次の3つの症状に要約されている。 ① 灼けつくような、突き刺すような痛み、 ② 発作性あるいは間欠性の痛み、 ③ 感覚変容(触刺激に過敏、冷刺激に対する灼けつくような感覚、無感覚部痛) の3症状で、発汗過多、皮膚温の変化、萎縮性変化(爪、皮膚、筋、骨など萎縮)が見られることもある、とされている。 これらは病態モデルを使った動物実験でも明らかである。 あるいは広作動域ニューロンから下肢痛として脳に投射された痛みということもあり得るだろう。 広作動域ニューロンが感作あるいは反応性が亢進すると、非侵害性の刺激(温熱や触刺激)でも痛みが生じるようになる。 このことは正常な組織に対する刺激によっても痛みを誘発するという病態を意味している。 だとすれば、神経障害性の痛みは必ずしも痛み症状だけとは限らないとみるべきだろう。 おそらく異常な感覚の変容が伴うはずである。 あるいは痛みは一過性の強力なもので、まもなく異常感覚や神経麻痺症状が起こるかもしれない。 そう考えると、純粋に末梢への痛みだけが訴えられているケースでは、関連痛を想定して治療対応することが賢明であろうと思う。 関連痛と神経障害性疼痛とでは、圧倒的に筋・筋膜障害による関連痛が多いのである。 このことは徒手療法の臨床現場で、特に感じることでもある。 ▲
by m_chiro
| 2018-10-20 15:32
| 痛み考
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関連痛のメカニズム❷ 内臓―体性痛だけが関連痛ではない そもそも内臓疾患からの関連痛を、最初に脊髄における「収束説」で説明したのはMackenzieの「収束―促通(facilitation)説」(1893)だった。 「促通」とは、「2つの刺激が組み合わさると、単独での刺激の効果よりも大きな効果が起こる現象」を指している。 Mackenzieは、なぜ「投射」ではなく「促通」説を持ち出したのだろう。 彼は、内臓からの痛み症状となるインパルスは脊髄視床路ニューロンに接続されていない、と見ていたからである。 今となっては、この時点で誤りであったことになる。 それゆえにMackenzieは、内臓疾患による求心性インパルスが脊髄分節で収束されて「過敏性焦点」が作られる、という推論を構築したのである。 これで皮膚への関連痛に見られる痛覚過敏の病態が説明可能となった。 Mackenzieの仮説では、関連痛そのもののメカニズムを説明しきれなかったが、それでも「過敏性焦点」を想定し、さらには「軸策反射説」を導入して、関連領域の痛覚過敏や炎症のメカニズムを説明することに貢献したと言えるだろう。 一方、Ruchの「収束―投射説」では、末梢での痛覚過敏や浮腫を説明することができなかった。 この疑問を穴埋めしたのが、「過敏焦点」や「軸策反射」という病態機序だったということになる。 こうして見ていくと、発表されてきた関連痛のメカニズムは、内臓疾患からの関連痛を前提として構築されているように思える。
「末梢説」では、例えば腹筋下部に生じたトリガーポイント(TrP)は、虫垂炎の関連痛であるかのように嘘をつく。 虫垂炎で最初に出る痛みは、実際に内臓からの痛みである。 ここからの痛み信号が脊髄に送られると後根反射が起こるとされる。 このインパルスが末梢に逆行して化学物質を放出し、周辺組織の皮膚や皮下組織に関連痛をつくり出すのである。 これが「末梢説」の代表的な仮説「腸膜皮膚反射説」(Morley;1931)である。 しかしながら後根反射が起こるとするエビデンスは存在しない。 どう見ても、筋・筋膜トリガーポイントがつくる関連痛の説明には成り得ていないからである。 したがって関連痛のメカニズムは、「内臓ー体性関連痛」と「神経根障害性(神経損傷による)関連痛」、「筋性の関連痛」は、それぞれ別ルートの機序を考える必要があるだろう。 ▲
by m_chiro
| 2018-10-10 08:52
| 痛み考
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by m_chiro
| 2018-10-01 15:54
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