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「むち打ち症」のケベック診断基準を表にしてみた
1997年に、カイロプラクティックの世界規模の学会(World Chiropractic Congress)が東京で開催されたことがある。
WFC(World Federation of Chiropractic)が主催し、WHOが後援した記念碑的な学会となった。
私も大会準備委員会のメンバーとして協力した思い出深い学会だった。
そのときに学会誌の編集長も務めたので、特に印象に残っている。

この学会の特筆すべき発表は、ケベック専門者会議から唯一カイロプラクターとして参加したJ.David Cassidy,D.C.がメインの講演を行った発表にあった。
この講演発表は、世界の医療界の注目を集めるものだった。
この講演に先立つこと1995年に、"SPAIN"に発表されている。
この発表は、医学、カイロプラクティック、理学療法、疫学、工学の学問分野を代表する高名な臨床家、科学者のチームが4年間にわたって行った集中的調査研究の産物である。

その発表内容をまとめて表を作ってみた。
表にしてみると、むち打ち症の重症度のグレードが明確になり、その治療対応も分かりやすい指標となっていることが分かる。
参考のために、ここに紹介しておきたい。
納得できる分類や対応になっていることに気づかれると思う。

この発表が公開されるまでは、むち打ち症には「頸椎カラー」対応が一般的だったのである。
以来、頸椎カラーはむち打ち治療から影を潜めたように思う。

ケベックの分類では重症度をグレード0~Ⅳの5段階評価になっていて、そのグレードに応じて治療も経過日時で対応する指標が出されている。
むち打ち症の重症度と経過日時による対応、評価、再評価など基本的な手順を押さえておく分類だと思う。
グレードⅠ~Ⅲまで、「安心感を与えること」、「通常の生活に速やかに復帰させること」、「安静を4日以上とらせない」といった項目が常に優先させることが念頭におかれているべき、ということが注目される。
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by m_chiro | 2018-01-11 14:53 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE79. 痛み系における可塑性の絶望と希望

「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。
「痛み学」NOTE79. 痛み系における可塑性の絶望と希望
多くの痛みの研究者や臨床医が口を揃えて言うように、慢性痛は今なお現代社会の重要な課題である。そもそも痛みとは「生物学的な警告信号」に他ならない。それは生き物に基本的に備わったもので、痛みはその役割を終えたら消え去るはずだった。ところが3ヶ月を過ぎてもなお持続する痛みがあり、それは「慢性痛(chronic pain)」とされる。損傷した組織が修復され、治癒する期間が過ぎても痛みだけは続く。それだけでも厄介な問題が想定できそうだ。なぜ消えない痛みが起こるのだろう。
重要なことは、組織の侵害刺激が必ずしも痛み症状を作り出すわけではない、ということだろう。侵害刺激は症状でも痛みでもないのである。「痛みのメッセージ」である組織からの侵害刺激は、脊髄を介して確かに脳に送られる。ところが脳は、それを単純に受動するわけではない。痛みの程度は、最初に脳内でコントロールされるのだ。ゲートコントロール理論によれば、それでもなお痛み信号として送り続けるべきかの可否を脊髄に発信する。いわゆる「ゲートを開放してもよい」という許可を与えるのである。ゲート開放の許可は、特定のニューロンのスイッチをONにする。そこから脳は、この侵害刺激を痛み信号として受容することになる。それならば、長引く痛みはゲートをOFFにすればいいではないか、となる。が、事はそう簡単にいかないのが痛み系の複雑なところだろう。
いったい何が複雑なのか。ひと言でいえば、脳の「修飾」作用に他ならない。感覚領域のみならず、知覚領域、運動領域、補足運動領域、情動系(即時的あるいは長期的情動)、情動調整系、記憶、空間認知などなど、痛みに関わる対象となる脳領域は広範にわたっているのである。そして自律神経系、心理・情動系までも巻き込んで、症状は複雑に絡み合うのだ。そうなると、痛みは単なる症状を超えて「病気」となる。それは「慢性痛症(chronic pain syndrome)」とされている深刻な問題なのである。
もうひとつ重要なことは、神経系が連続した網状構造ではないということにありそうだ。要するに、一つひとつの神経細胞はギャップ構造というシナプス間隙によって繋がっている。だから実際には連続体ではない。軸索を伝導する信号は電気スパイクによってもたらされるが、シナプス間では神経伝達物質が放出される。それをまた次のニューロンで電気信号に変えるのだ。なぜシナプス間では、化学物質による伝達系に変えるという手間をかける必要があるのだろう。進化や発生の視点からも、素朴な疑問を感じざるを得ないところだ。よくよく考えていくと、そこには実に巧妙に作られた神経系の戦略を窺うことができるのである。
軸索を通る電気信号では、「0」か「1」の単純な通貨が運用されているようなものである。要は、信号が「送られる」か「送られない」かの二択にすぎない。もしも連続した網状構造であれば、ニューロン間を行きかう情報も「0」か「1」の限られたものになる。単純な情報網であれば、その処理能力も言わずとも知れてしまうだろう。そこで「ギャップ構造」の組成が意味を持つ。神経伝達物質という化学物質の出番である。シナプス間に放出された化学物質は、対側にある軸索末端の受容体にある依存性イオンチャネルの扉を開く鍵となる。開かれた受容体には次々とその化学物質が送り込まれて、興奮性信号を発信し続けることだろう。ひとつのニューロンには数千ものニューロンからシナプスを受けている。そうなると関連するニューロンは結合を強めたりあるいは弱めたりすることで、信号系の過不足が表現されることになる。こうして同時に発火するニューロンは、相互に結合を強めていく。それで学習能力も高まり、記憶が保持され、神経の可塑性の核が固定されるのだ。
可塑性(plasticity)から、合成されたプラスチック製品のイメージが湧いてくる。プラスチックを型通りに合成したら元には戻せない。そのように神経も歪むのである。この病態は、世界の研究者の頭を悩ませている絶望的な状態のようだ。そうした「神経可塑性研究の最前線」を詳細に取材し、一筋の光明を届けてくれたノーマン・ドイジ著「脳はいかに治癒をもたらすか」は一読に値する。この本には、神経の感作や可塑的変化に起因する難治性の痛みのみならず、神経機能性障害を克服した数々の症例が紹介されている。可塑的変化という神経の特性を逆手にとって、イメージ、光、音や運動、電気などの刺激反応を用いて、健全な信号経路を創設する逆の可塑的変化をもたらしたのである。この神経の可塑的変化の特性を逆利用した取り組みは、徒手治療においても実に興味深い。
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by m_chiro | 2018-01-09 15:10 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(4)
謹賀新年2018
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます。
      2018年 元旦
               
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by m_chiro | 2018-01-01 16:24 | Trackback | Comments(0)



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