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「痛み学」NOTE80. 長引く痛みの連想ゲーム(プライミング効果)
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。
「痛み学」NOTE80.
長引く痛みの連想ゲーム(プライミング効果)


「痛みは死よりも恐ろしい」とは、シュバイツァー博士が遺した言葉である。
それほど恐ろしい「痛み」も、永いあいだ医療の治療対象とされてはいなかった。
痛みは「疾患」ではなく「症状」だというわけだろう。痛みの治療は疾患に付随するものだというわけだ。
確かに痛みで死んだという話は聞かない。

それでも、長引く痛みは精神心理・情動面にも多大な悪影響をおよぼすことがある。
それだけではない。運動器の慢性痛は身体機能的にも悪影響をもたらす。
そのために社会生活にも支障がおこる。だから職を失うことにもなりかねない。
学生だったら休学せざるを得ない状況に追い込まれ、中には退学という事態になるかもしれない。
それは精神心理的にも相当な苦痛であろうことは想像に難くないだろう。
近年では、「痛み」そのものが治療の対象にされるようになっている。
なぜ状況が変わったのかといえば、痛みや脳の研究が発展して、「痛みは脳に記憶される」ということがわかってきたからである。
研究に拍車をかけたのは、運動器慢性痛患者の多さに注目が集まったことも社会的背景としてあるだろう。

痛みの評価法にNRSスコア、VASスコアがある。
痛みを1~10まで数値で自己申告する方法である。
最悪の痛みを「10」とすれば、現在の痛みはどれくらいか、という自己評価でもある。
しかしながら、疼痛スコアをたびたび患者さんに問うことは逆効果にもなりかねない。
それも記憶と密接な関係があるからだ。
それを「プライミング効果」と呼ぶらしい。

プライミング効果とは、例えば「A」という事象があったとする。
個人にとって最も重要・重大な関心事に関わる事象である。
この場合は、痛みやそれに関わるさまざまな事象や刺激のことである。
すると、ターゲットである「脳」に記憶が固定される。連想ゲームのようなものだろう。
プライムな事象は、その人の脳に痛みを連想させてしまい、逆に痛みを増強し、痛みを引き出しやすくするというわけである。
こうした記憶の仕組みは学習能力としてよく使われることではあるが、
痛みも同様の仕組みで慢性化されるとしたら恐ろしい話である。

そのことを研究した報告がある。
「痛みを伴うレーザー熱刺激に対する事象関連電位に及ぼす意味のあるプライミングの影響;The influence of semantic priming on event-related potentials to painful laser-heat stimuli in humans.」
「痛みに関連した意味のある事象や刺激は、痛みの記憶と処理を支えるニュウーラルネットワークを前もって活性化するかもしれないと示唆している。痛みに関連した意味のある事象の処理は、後続の痛みを伴うレーザー刺激の処理に関与する皮質細胞集合体を前もって活性化するように思われる」

だからこそ痛み症状に注意を集中するのは、いいことではない。
というより悪影響を及ぼしやすい。
そして多くの場合、その効果は無意識的である。
さらには長時間、長い年月にわたり影響が持続するという。
記憶に障害を受けた者にも、無意識的なプライミングによる影響は続くのである。
「プライミング効果」とは、おもしろい反面、恐い現象でもある。
だからこそ痛みは「脳に記憶される前に早急に取り除かなければならない」ということになる。

そして長引く痛みを抱える患者さんは、痛み症状に注意を集中しないようにしなければならない。
長引く痛みの罠に嵌るからである。

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by m_chiro | 2018-04-12 10:39 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE79. 痛み系における可塑性の絶望と希望

「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。
「痛み学」NOTE79. 痛み系における可塑性の絶望と希望
多くの痛みの研究者や臨床医が口を揃えて言うように、慢性痛は今なお現代社会の重要な課題である。そもそも痛みとは「生物学的な警告信号」に他ならない。それは生き物に基本的に備わったもので、痛みはその役割を終えたら消え去るはずだった。ところが3ヶ月を過ぎてもなお持続する痛みがあり、それは「慢性痛(chronic pain)」とされる。損傷した組織が修復され、治癒する期間が過ぎても痛みだけは続く。それだけでも厄介な問題が想定できそうだ。なぜ消えない痛みが起こるのだろう。
重要なことは、組織の侵害刺激が必ずしも痛み症状を作り出すわけではない、ということだろう。侵害刺激は症状でも痛みでもないのである。「痛みのメッセージ」である組織からの侵害刺激は、脊髄を介して確かに脳に送られる。ところが脳は、それを単純に受動するわけではない。痛みの程度は、最初に脳内でコントロールされるのだ。ゲートコントロール理論によれば、それでもなお痛み信号として送り続けるべきかの可否を脊髄に発信する。いわゆる「ゲートを開放してもよい」という許可を与えるのである。ゲート開放の許可は、特定のニューロンのスイッチをONにする。そこから脳は、この侵害刺激を痛み信号として受容することになる。それならば、長引く痛みはゲートをOFFにすればいいではないか、となる。が、事はそう簡単にいかないのが痛み系の複雑なところだろう。
いったい何が複雑なのか。ひと言でいえば、脳の「修飾」作用に他ならない。感覚領域のみならず、知覚領域、運動領域、補足運動領域、情動系(即時的あるいは長期的情動)、情動調整系、記憶、空間認知などなど、痛みに関わる対象となる脳領域は広範にわたっているのである。そして自律神経系、心理・情動系までも巻き込んで、症状は複雑に絡み合うのだ。そうなると、痛みは単なる症状を超えて「病気」となる。それは「慢性痛症(chronic pain syndrome)」とされている深刻な問題なのである。
もうひとつ重要なことは、神経系が連続した網状構造ではないということにありそうだ。要するに、一つひとつの神経細胞はギャップ構造というシナプス間隙によって繋がっている。だから実際には連続体ではない。軸索を伝導する信号は電気スパイクによってもたらされるが、シナプス間では神経伝達物質が放出される。それをまた次のニューロンで電気信号に変えるのだ。なぜシナプス間では、化学物質による伝達系に変えるという手間をかける必要があるのだろう。進化や発生の視点からも、素朴な疑問を感じざるを得ないところだ。よくよく考えていくと、そこには実に巧妙に作られた神経系の戦略を窺うことができるのである。
軸索を通る電気信号では、「0」か「1」の単純な通貨が運用されているようなものである。要は、信号が「送られる」か「送られない」かの二択にすぎない。もしも連続した網状構造であれば、ニューロン間を行きかう情報も「0」か「1」の限られたものになる。単純な情報網であれば、その処理能力も言わずとも知れてしまうだろう。そこで「ギャップ構造」の組成が意味を持つ。神経伝達物質という化学物質の出番である。シナプス間に放出された化学物質は、対側にある軸索末端の受容体にある依存性イオンチャネルの扉を開く鍵となる。開かれた受容体には次々とその化学物質が送り込まれて、興奮性信号を発信し続けることだろう。ひとつのニューロンには数千ものニューロンからシナプスを受けている。そうなると関連するニューロンは結合を強めたりあるいは弱めたりすることで、信号系の過不足が表現されることになる。こうして同時に発火するニューロンは、相互に結合を強めていく。それで学習能力も高まり、記憶が保持され、神経の可塑性の核が固定されるのだ。
可塑性(plasticity)から、合成されたプラスチック製品のイメージが湧いてくる。プラスチックを型通りに合成したら元には戻せない。そのように神経も歪むのである。この病態は、世界の研究者の頭を悩ませている絶望的な状態のようだ。そうした「神経可塑性研究の最前線」を詳細に取材し、一筋の光明を届けてくれたノーマン・ドイジ著「脳はいかに治癒をもたらすか」は一読に値する。この本には、神経の感作や可塑的変化に起因する難治性の痛みのみならず、神経機能性障害を克服した数々の症例が紹介されている。可塑的変化という神経の特性を逆手にとって、イメージ、光、音や運動、電気などの刺激反応を用いて、健全な信号経路を創設する逆の可塑的変化をもたらしたのである。この神経の可塑的変化の特性を逆利用した取り組みは、徒手治療においても実に興味深い。
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by m_chiro | 2018-01-09 15:10 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(4)
「痛み学」NOTE 78. プラシーボは痛み治療の強い味方
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


「痛み学」NOTE 78. プラシーボは痛み治療の強い味方
                           
プラシーボといえば「偽薬」を連想するが、語源的にはラテン語の「プラケーレ;Placere」で「人を喜ばせる、楽しませる、満足させる」の意味を持つとされていた。
ゲートコントロール理論の神経科学者・Patrick Wall は、13世紀に死者への弔いの祈りから「プラセーボ」がはじまったことを指摘している(P.Wall著「疼痛学序説」)。
ところが、その祈りが次第に経済活動に直結したことで、その後は嘲笑の対象とされる言葉になっていったようだ。

二転三転して「プラシーボ」は西洋医学の重要な用語になり、「医学上のありふれた方法」と定義されるようになったのは18世紀末のことらしい。
そして20世紀後半になると、科学的薬理学が確立されてくる。

「プラシーボ」が特に医学的にポピュラーな言葉になるのは、その藥効検定試験に対照群として汎用された経緯があるのだろう。
新薬は偽薬よりも優れていることを証明することが必要になったのである。
その標準的な検査法が「無作為二重盲検プラシーボ対照検査試験」である。

プラシーボ効果を得るためには患者をだます必要があるわけで、身体器質的な作用と精神心理的な作用を分けて観察することになった。
心身二元論に言及する対応なのだろうが、プラシーボ効果は逆に「心と体」が相関するということを証明する結果になってしまったのである。

そうなると、プラシーボ効果そのものにも科学的解析の目が向けられてくる。
1980年を境に、その後には関連した上質の論文が提出されるようになる。
そしてプラシーボ効果は「偽薬」や「嘲笑」の枠組みを超えて、プラシーボに起因して起こる「疾患の症状上の変化」と捉えるべきだとされたのである。

そうなるとプラシーボ効果は、かつて言われていたような一時的な変化や心理的反応という神話から、むしろ長期的な効果が報告されるようになった。
痛みが不快な感覚と情動の二面的な体験と定義されたように、特に痛みにはプラシーボ効果が良く反映されるのだろう。

初期のカイロプラクターにウィラード・カーパー,D.C.がいる。
D.D.パーマーと親交があり、母親はD.D.の最初の患者のひとりでもあった。
D.D.が無資格医療の罪に問われたときには弁護士として支援している。
後にカイロ大学を卒業してD.C.となり、学校を開設して18冊の著書も残している。
D.D.とは違った視点から、カイロプラクティックの理論的背景に言及したのだった。

そのサブラクセーションの視点に「脊椎の機能障害」がある。
あるいは「神経支配と筋肉への代償作用による不均衡」という別の視点もある。
ふたつの視点における同時性を「複合(complex、1926)」として主張したのがカーパーであった。

その機能的な複合を回復させる治療手段として、基本的には「暗示(suggestion)」を用いることを主張している。
カーパーによれば、暗示とは「あらゆる情報」のことである。
そして「信念」が治療効果をもたらすと説いた。

アジャストメントは身体的閉塞状態を除去することで、身体の情報系をスムーズにして身体機能の回復をもたらすというのである。
情報としての視点からみると、プラシーボ効果も同様の役割を持つのだろう。

日本の「医師法第22条」にも「暗示的効果」の言葉があり、その効果を期待できる場合は処方箋なしでの「偽薬」の処方が認められている。
医療においては、医師にも現代の呪術師の側面を持たせているのかもしれない。

IASP(国際疼痛学会)が発刊する「PAIN」誌に、プラシーボに関する新たな報告が出された。(“Open-label placebo treatment in chronic low back pain: a randomized controlled trial”2016)

3カ月間持続する成人の慢性腰痛患者97人に対して、A群(通常の治療)とB群(通常の治療にオープン・プラシーボ錠追加処方の83人)に無作為に分けて3週間の治療が行われた。

オープン・プラシーボだから、その趣旨を被検者に説明しているわけで、そこがこの調査の面白いところだ。
その時点で単なる「偽薬」を超えて、情報系としての作用に代わるのだろうか。

患者をだます必要がなくなっても、体は自動的にプラシーボ治療に応答するという。
少ないサンプルの結果ではあるが、A群に比べて「オープン・プラシーボ治療群」は痛みと障害スコアを30%ほど減少させている。

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治療家は誰でも自分の手技が緩解をもたらしたものと思いたいものである。
徒手治療においても、プラシーボ由来の効果を超えてなお優れた効果があることを証明しなければならないのかもしれないが、プラシーボ効果は痛み治療の強い味方でもある。

しかしながら、プラシーボ効果が働く背景には、治療者と患者の信頼性のある関係性、いわゆる「治療的自我」を無視することはできないように思える。
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by m_chiro | 2017-09-16 08:33 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE 77.筋・筋膜痛と鎮痛機序
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


「痛み学」NOTE 77. 筋・筋膜痛と鎮痛機序

                                
「筋膜」という言葉が世間の注目を集めるようになり、最近ではマスメディアにもよく登場する。
この言葉を私が最初に見聞きしたのは1984年のことだった。
30年以上も前の話で、その年に私はナショナルカイロ大学(米国)での解剖実習授業に参加している。
実習期間中、日本人留学生に通訳兼世話役としてお世話になったが、ひとりの留学生に昨今の米国カイロ事情を尋ねたことがあった。
彼は大学の書店に私を案内して、そこで2冊の本を紹介してくれた。
注目の新刊書だと話してくれたその一冊が、“Myofascial Pain and Dysfunction” (1983刊)だった。

今では著名になったトラベルとシモンズの共著で、副題に‟The Trigger Point Manual” とあった。
当時はワープする痛みの存在に新鮮な驚きもあって、それが筋・筋膜の存在に関心を寄せるきっかけになった。
この本は1992年になって「トリガーポントマニュアル―筋膜痛と機能障害―」として日本語版が出た。
その頃になると、日本の徒手療法界でもトリガーポイントや筋膜痛という言葉を見聞きするようになっていたように思う。

今では筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)を皮切りに、筋痛、筋膜痛に耳目が集まるようになった。
そのうえ筋膜癒着痛とやらも飛び出して、注目されるほどに膜系の痛みの実態は混迷しているようにもみえる。
これらの表現は語源的に「fascia」に関わっている。
「Fascia」を表現する場合は、「連鎖する膜系の存在」を包括しているようだ。
「Myofascial」を表現するときには「筋・筋膜」という局所的組織を対象として、「筋痛」や「筋膜痛」に使われている。
それも筋・筋膜組織が器質的に変化したトリガーポイントから、他の筋・筋膜組織に痛みがワープする病態を特徴にしている。

それでも、筋・筋膜痛あるいは膜系に由来する痛みの因果論になると混乱しているようにも思える。
だからトリガーポイントやテンダーポイントを直接刺激する方法が取られたり、あるいは膜系連鎖の視点から間接的・遠隔的手法が用いられたりするが、こうした痛みの存在についてはカイロプラクティックとも無縁ではない。

1940年代後半に、カイロプラクターのニモ(Raymond Nimmo,DC)がトリガーポイントと同様の概念を「侵害生成点(NGP)」として提言しているのだ。
そのカイロプラクティックの文献によると、ニモはカイロで扱う関節障害はNGPの形成によるものだと主張している。
その原因は交感神経系の過剰な活動によるもので、筋肉も神経干渉の部位だとした。
侵害生成点(NGP)こそ関連痛や自律神経症状の本態だと説いたのである。

こうした筋・筋膜痛に、医療の領域ではトリガーポイント注射が効果的に応用されているが、”Clinical Guidelines for the Management of Acute Low Back Pain”によれば慢性・急性の痛みに関わらずエビデンスはほとんどない。
一方、徒手療法の領域では鍼も含めて多様な手法が用いられている。
一体、筋・筋膜に由来する鎮痛の機序とはどのようなものなのだろう。

ジョージ·ワシントン大学医療センターから「腰痛へのトリガーポイント注射療法の前向き無作為化、二重盲検評価」(“A Prospective, Randomized, Double-Blind Evaluation of Trigger-Point Injection Therapy for Low-Back Pain.” )という論文が出されている。

4週間の保存療法後にも残存した腰痛患者63人に対し、異なるタイプの4つの手法で評価した無作為化、二重盲検による治験の報告である。
4つの手法とは、①リドカイン注射、②リドカイン&ステロイド注射、③鍼治療、④冷却スプレーと経絡圧、である。
結果は、4つのいずれもが同程度の有効性を示した。
トリガーポイントに直接機械的刺激を行っても同等の症状の緩和がみられたことから、注入薬物が重要な鎮痛要因ではないと結論している。

更に、デンマークのコペンハーゲン大学からは「筋・筋膜痛のための生理食塩水注射とメピバカイン注射コントロールにおける二重盲検による比較」(“A control, double-blind comparison of mepivacaine injection versus saline injection for myofascial pain.”)と題する論文が提出されている。
局所の筋・筋膜痛に対して、Aグループ28人には0.5%メピバカイン局所注射、Bグループ25人に対しては同量の生理食塩水注射で比較した。
その二重盲検比較によると、生理食塩水注射を行ったグループでは最初の注射の後の緩和がより多く見られたものの、両群に有意な差はなかった

それでも痛みが緩和する可能性を考えると、単に局所麻酔薬とは考え難い。
注射針の刺入による鎮痛の可能性を考慮すれば、鍼による効果も同じ作用かもしれない、と示唆している。
注入薬物や刺激入力手法に決定的な要因が認められないとすれば、どのような変化が促されるというのだろう。

それらに共通する鎮痛の機序を推論してみると、生体膜組織間での液性の流動が促された結果ではないのかと思えてくる。
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by m_chiro | 2017-04-19 21:32 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE 76.機能性身体症候群(FSS)は慢性痛症を統括するのか
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


「痛み学」NOTE 76. 機能性身体症候群(FSS)は慢性痛症を統括するのか

本来、痛みは生理機能的に誘発されるものである。
ところが、その原因を器質構造に求める時代が長く続いた。
それを反証するかのように筋・筋膜にスポットが当てられ、「筋筋膜疼痛症候群(MPS)」が提示されたのである。1952年、Travellらによるものであった。

筋筋膜痛そのものは、ヒポクラテスの時代にまで遡ることができる古い疾患名でもある。
それでもMPSの概念とは違う。
MPSは筋・筋膜に起因する関連痛などの複合的な関連症状を特徴とする症候群である。
だから筋・筋膜が傷害された病態とは概念的に異なるのだ。

MPSはトリガーポイント(TrP)の存在がひとつの指標になっている。
それは押圧刺激などによって他の部位に関連痛を誘発する特徴があり、少なからず自律神経症状を伴うこともある。
それでも診断の指標となる臨床検査値は見当たらない。
症状も一様ではなく、全身性に発症する。面倒なことに、TrPができる機序も仮説の域を出ていないのである。それに押圧によって痛みを伴うからといって、必ず関連痛が生じるわけでもない。筋・筋膜という視点で考えると、「線維筋痛症(FMS)」と重複する要素もありそうだ。

線維筋痛症は、1990年に米国で診断基準が発表されている。
初期症状を圧痛点に求めていることもMPSと重なるところではあるが、関連痛が指標になっているわけではない。
圧痛点による決定的な違いは、MPSが一側性に出現するのに対して線維筋痛症では両側性に顕れる。
4㎏/㎝2での触診で圧痛点を確認することになるが、全身18ケ所のランドマークのうち11ケ所以上に存在が認められる病態を初期症状としている。

ところが次第に自律神経症状や精神神経症状が顕著になり重症化する。
ドライアイ、ドライマウス、不眠や鬱など、多様な随伴症状から受診科目も広範にわたっている。
ともかく複雑で厄介な病である。
今では下降性疼痛抑制系の障害を重視しているようだが、この病態の詳細については日本線維筋痛症学会が「線維筋痛症診療ガイドライン」を発刊(2013)していてネット検索で読むことができる。

近年また新たな概念が提示された。
それは「機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome;FSS)」とされる疾患である。
世界疼痛学会(IASP)では、2009-2010年のスローガンに「世界運動器痛年」を取り上げた。
その運動器痛のカテゴリーのひとつとして「機能性身体症候群;FSS」を提唱しているのである。
ところが「またもや」である。
FSSは適切な診察や検査を行っても、病理学的所見の存在を明確に説明できない病態とした。
医学的に説明できない身体症状は、今に始まったことではない。
それだけに痛みは複雑であることになるが、FSSは痛み症状だけでなく慢性的な疲労感、動悸やめまい、過敏性腸症候、ムズムズ脚症候、線維筋痛症など、これも症状が重ね合わされて表現されるという。

FSSは、A. J. Barsky教授(ハーバード大学・精神科)が1999年に定義した。
当初は批判的な意見も多く、その拡散には時間を要したのだろう。
‟The Lancet” 誌にレビューが掲載されたのは2007年だった。
批判が多かったのも分からないでもない。
何しろパンドラの箱のように、いろんな疾患や症状が詰め込まれている。
そのような「医学的に説明困難な身体症状(Medically Unexplained Symptoms)」は、以前から「MUS」として一括りにされてきた。
ここにきて「FSS」を新たに一つの疾患概念にしようという狙いなのだろうか。

FSSに含まれる病態には、それぞれの診断基準に類似や合併疾患が認められること、精神症状の随伴が高率で、しかも発症率も女性に多いことなど類似点も多い。
このこともFSSとして一括りにした理由らしい。

医学的診断とは、病因を病理学的に推測・確定することにある。
が、痛みなどの感覚機能の病態を確定的に断定することには困難が伴う。
そもそも生きものは複雑系にあるからだ。
だからこそ、腰痛などの痛みは自己限定疾患とされ、2012年の国際疼痛学会では90~95%の腰痛を非特異的であるとした。

背景には心理・社会的要因があるとする。
要するに訴える症状は氷山の一角であり、底辺には心理・社会、経済など身体機能的に関連する大きな問題が眠っているということだろう。

だからと言って心理的な理由をあげつらい、臨床の現場で患者を説き伏せても、あるいは気休めの言葉を投げかけても、解決に繋がるわけではない。
まして不安を増長させる物言いはノーシーボ効果をもたらす最悪の対応になる。

そうなると「病の物語」に耳を傾け、納得いく説明と理解から治療がはじまるのだろう。
そこから集学的アプローチが望まれるのである。
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by m_chiro | 2017-01-07 21:43 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE 75. 脊柱管のマイナーソフト構造❸
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


75. 脊柱管のマイナーソフト構造
❸ 脊柱管ソフト構造から下肢挙上テストを考える


ホフマン靭帯は、ひとつは硬膜前面中央部から腰椎と後縦靭帯に付着する「正中ホフマン靭帯(midline dural ligament)」である。
もうひとつは硬膜の前方側面から後縦靭帯(椎間板付着部)に付着する「外側硬膜靭帯(lateral dural ligament)」である(❷の記事の図参)。
また、特に硬膜の後方では「髄膜椎骨靭帯(meningovertebra ligament)」の存在に注目したい。
図(“Polygonal Deformation of the Dural Sac in Lumber Epidural Lipomationsis”
Caroline Geersらより引用)は、硬膜と髄膜を支持する靭帯組織であるが、後方では椎骨と連結された靭帯であることを知ることができる。

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パドヴァ大学(伊)の臨床整形外科領域からの報告(J Spinal Disord., 1990)では、硬膜後方における髄膜脊椎靭帯(meningovertebral ligament)も脊柱管の病態に関与していることを指摘している。
更に、「外側根靭帯(lateral root ligament)」は脊髄神経根と下椎弓根の間に付着し、脊柱の動きと硬膜袖の自由度を制限している。
したがって、この硬膜袖におけるテンションは外側根靭帯の緊張度とも関わっていて、硬膜袖に弛みや緊張をもたらしているのである。
この外側根靭帯も、これまでの常識に疑問を投げかける存在かもしれない。

例えば、神経根障害や腰部椎間板ヘルニアなどの鑑別診断に使われる「SLRテスト」がある。
股関節屈曲35°~70°で「椎間板上で坐骨神経根が緊張する」とされている。
信頼度も3.5/4である。要するに、椎間板ヘルニアなどによって狭窄されると坐骨神経への放散痛がおこるとみるテストである。

そうした根拠を示す解剖所見も散見できる。例えば、神経系モビリゼーションの第一人者とされるD.S.Butlerは、著書の中で次の画像を引用して解説する(赤丸と赤字、書名は私が追加したもの)。
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写真Aは「反伸張性姿勢」で股関節と膝屈曲位での神経の引き出し現象をみた画像。
Bは「下肢伸展挙上:SLR」における神経の引き出し現象である。
明らかにSLRでは神経が引き出されているのが分かる。
それも、硬膜袖の引き出し現象で動く長さはせいぜい5mm前後とされているようだ。
SLRでは、交感神経幹までもが引き出されている。

もしも椎間板ヘルニアなどによる狭窄が起こると、椎間孔で神経幹の引き出し現象が不能になり、そのことで放散痛が起こるという根拠になっている。
ではなぜ椎間板ヘルニアが確認されているにもかかわらず、SLRテストで放散痛が起きないケースが少なからずいるのだろう。疑問が残る。
なぜなら、図からも分かるように神経根部には一定の弛みが存在するからである。
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そこに脊柱管のマイナー・ソフト構造という視点で考えると、また別の根拠が見えてくる。
次の図もButtlerの著書に提示(Louis,1981の改変)されているものである。
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Louisは24体の解剖献体を屈曲させて、脳脊髄幹、髄膜、神経根の運動に一定のパターンがあることを発見した。
それが引用した図である。Louisによれば、C6、T6、L4レベルの接触領域に、それらの運動が起こらないとした。
Butterは、その領域を「テンションポイント」と呼んでいる。
硬膜の後方における緊張の方向を、その図に想定すると、硬膜前方では赤の矢印方向になるだろうと想定してみた。
そこに図のような脊柱の後弯が固着した状態になると、テンションポイントを視点に硬膜の緊張の亢進を想定すると、T6より上位の背側では髄膜椎骨靭帯(meningovertebra ligament)が上方に牽引されることで硬膜後方が緊張する。
一方、硬膜前方ではホフマン靭帯などの複合した結合によって上方に牽引されて緊張する。加えて、神経根袖とか下椎弓根に付着する外側根靭帯(lateral root ligament)」は、硬膜のテンションを一層高めることになるだろう。
このことは硬膜の弛みが減少した状態にあるとき、椎間孔からの神経の引き出し現象にも影響を与えることになる。
もしも周辺組織に炎症があれば、なおさらである。
「硬膜の弛み」という常態にあるときには、神経の引き出し現象による影響は最小限に食い止められるのだろう。

近年、ホフマン靭帯、外側根、そして髄膜椎骨靭帯などを解剖学的視点から、支持組織としての重要性を指摘する論文が散見するようになった。
これらの著者らは、脊柱管におけるマイナーソフト構造が長年にわたり無視されてきたことを問題視しているのだ。
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by m_chiro | 2016-09-19 12:27 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE 74. 脊柱管のマイナーソフト構造❷
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


74. 脊柱管のマイナーソフト構造
❷ 骨構造から膜構造リンクへ視点が変わった


近年、Dr.Holder,D.C.がサブラクセーションの概念に新たな解釈を持ち込んだ。
Dr.Holderは医師でもあり、カイロプラクターでもある。シュバイツアー賞や研究者賞など、数々の栄誉ある受賞履歴も持つ偉才の人でもある。
特に、脊椎サブラクセーションと脳報酬連鎖、報酬欠陥症候群、神経伝達物質との関わりを追究している研究者としての顔も持ち、カイロ大学で教壇にも立つ。

D.D.Palmerはサブラクセーションの概念を「神経のトーン」と表現した。
その「神経のトーン」について、Dr.Holderは周波数の変動・変調のことと解釈している。
そして、サブラクセーションを3種類(第1、第2、第3)に分けた。
プライマリーな(第1の)サブラクセーションは無症状で、第2、第3のサブラクセーションは第1サブラクセーションを補正し代償した結果だとした。
それこそが症状に関わるっているのだが、それらはあくまでも補正・代償性の結果である。したがって調整すべきは、あくまでもプライマリーなサブラクセーションである、と主張する。

そして、このプライマリーなサブラクセーションを、2つのカテゴリーにわけている。
それが「コードプレッシャー」「コードテンション」である。

硬膜には、脊柱構造に直接的な付着を持つ部位がある。
その部位に力学的緊張が加わると、硬膜管に捻じれや歪みがつくられやすい。

そのことで脊髄に圧力や緊張がもたらされる、というものである。
椎骨の変位という考え方から、視点が硬膜管における力学に移行した.


実は、この視点は今に始まったことではない。
それは硬膜管の付着部に限らず、硬膜に付随する靭帯組織も硬膜管の脊柱管内における自由度を制限している、という徒手医学における生体力学の考えでもある。

硬膜管の付着は、後頭骨大孔で多数の付着があり、C2、C5、S2、S3、S4、尾骨に付着があるため、緊張が作られやすい部位でもある。
歯状靭帯も、軟膜と硬膜の支持靭帯である。
一側に20ケ所の付着があるとされ、硬膜管の中での脊髄の自由度を制限している。

更に、脊柱および硬膜管の自由度をコントロールしている重要な支持靭帯は「硬膜結合複合(
Dupuis,1988)」あるいは「ホフマン靭帯(Rauschningら,1987)」
と呼ばれている。

ホフマン靭帯はC7~L5までのレベルで存在するという報告(Spine,1976)があり、ほとんどの靱帯が単一の椎骨セグメントに限定さている。
なかには数個のセグメントを横断する靭帯もあるらしく、このことも献体解剖所見から観察報告されている(J Spinal Disord. 1990)。

ホフマン靭帯の初出は“Managing Low Back Pain”で、カイロプラクティック教育の副読本に使われてきた本である。
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以後、徒手療法関連の成書にも引用されるようになった。
例えば、「基礎臨床解剖学 脊柱・脊髄・自律神経」(エンタプライス刊)や「カイロプラクティッツク テクニック総覧」(エンタプライス刊)などに引用されている。
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by m_chiro | 2016-09-08 16:39 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE73. 脊柱管のマイナーソフト構造❶
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


73. 脊柱管のマイナーソフト構造
❶ 脊髄圧迫あるいは神経根障害、もうひとつの可能性


脊柱管狭窄症の診断を受けた女性の患者さんがみえた。
彼女は60歳を目前にして次第に下肢の痛みとシビレ症状を発症し、病院の診察を受けている。
MRI画像所見で脊髄断面の面積がかなり狭くなっていて、手術の対象とされた。

就業の傍ら親の介護もしているので、今、手術したらそれもできなくなる。
彼女は手術を回避して、カイロプラクティック治療に活路を求めることになった。
やがて症状も改善した頃に、再度MRIを撮った。

結果、画像上でも狭窄していた脊髄に拡がりが見られるようになっていた。
私も改善前後の画像を見せてもらったが、確かに脊髄の圧迫の程度が少し拡がって脊髄の流れに一定の空間が、より確保されていたのである。

それでも脊柱管そのものの変化に違いは見られない。
では、なぜ手技治療で脊髄圧迫の病態が変化したのだろう。
脊柱管狭窄症が改善した症例は、カイロプラクティックの臨床でも多々経験するところである。
同じことは、椎間板ヘルニアやその根障害とされる病態にも言える。

そこには「整形外科学」と「徒手療法の脊柱学」における決定的な違いが、きっとあるのだろう。
そう考えた方が納得もいきやすい。
おそらくは、脊柱における生体力学的な視点の違いなのだろう。
もっと具体的に言えば、脊柱の「骨構造の病理」「マイナーソフト構造の機能力学」における視点の違いだろう。
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by m_chiro | 2016-09-06 17:16 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE 72. 痛みが自己持続性に起こるわけ
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


72. 痛みが自己持続性に起こるわけ

痛みの自己持続性に関わる可能な要因を考えた時に、第一に思い浮かぶのは「交感神経」の活動である。
痛みは交感神経の活動性を増す。
したがって筋の緊張性も増加する。

交感神経からの入力は、α運動ニューロンの興奮性を高めることになる。
あるいは細動脈の血流を阻害する。
虚血が起こる。
こうして痛みの悪循環が始動することになる。

筋の痙縮(spasm)による痛みは、筋収縮が持続性に起こった結果である。
後角への興奮性の入力が続いているのだろう。
もしも分節性の抑制あるいは脊髄より上位ニューロンからの抑制が減少している状態にあっても、やはり興奮性入力は続くことになる。

このことは、神経のみならず筋組織にも可塑的変化が起こる可能性を示唆するものである。
そこに、痛みは早急に除去しなければならない、とする理由がある。

痛みの循環経路図では、そのルートのどこからでも痛みを遮断することができる。
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では、もしも痛み症状が残されたままに置かれると、どうなるのか。
不完全に残された痛みは、再悪化、再激化する可能性を秘めている。
鎮痛が不完全なままであれば、交感神経の興奮も抑制されない状態で残る。
だから再び痙縮(spasm)が起こる火種となる。
痙縮などの筋の過緊張は、虚血の温床でもある。
中途半端に残された痛みによっても、交感神経の興奮が自分自身の中で続くことになるのだ。

痛みの自己持続性は、交感神経の興奮が続く限りトリガーにもなるということだろう。

痛みは、どんな手法であれ早急に完治させることを念頭に置いて対応すべきであるし、そのためには学際的な試みが必要なケースもあるのだ。
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by m_chiro | 2015-02-20 10:09 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE 71.硬結にEMG活動は起こるか、起こらないか
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


71. 硬結にEMG活動は起こるか、起こらないか

トリガーポイントなどにみられる索状硬結や拘縮(contracture)に、EMG活動が記録されることはない。
あっても拘縮部位から離れたところに限局している。
このことは、拘縮などが神経終板からの電位によるものではない証拠であろう。

ところが近年では、索状硬結でEMG活動を記録したという報告が出るようになった。
いったいどっちがホントなの、という話になる。

そこで、明治鍼灸大学.生理学教室で行った研究論文「実験的トリガーポイントモデルから記録された電気活動に対する検討」(全日本鍼灸学会雑誌。2002年、第52巻1号、24-31)を紹介しよう。

とても示唆的で興味深い情報を提供している。
この論文は、伸張性収縮運動負荷により生成したトリガーポイントおよびその同一筋上から、電気活動を記録したというのだ。
ところが、その電気活動はトリガーポイントの筋膜付近に限局したもので、筋の電気活動はその筋膜からの反射性の筋活動を捉えたものだと結論づけている。
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上の図は、その論文に掲載されたもので、皮膚と筋膜と筋肉における電気活動の記録である。
ただし、この電気活動は筋膜部分に電極を刺入したときに限定して記録されている。

トリガーポイントは、常にすべてが活性しているわけではない。
無症状の潜伏的なトリガーポイントが50%にも及ぶらしい。
この潜伏的トリガーポイントは、どのようにして活性するのだろうか。
(「痛み学」NOTE47. トリガーポイントはどのようにして作られるのか①~③に書いておいた)

臨床の現場でも、筋膜痛が痛みを伴う筋収縮、痙攣や攣縮(spasm、cramp)に関連していることを実感できる。
筋膜痛にはトリガーポイントが付き纏うことがあるということだろうが、筋膜痛そのものの病態生理についてはよく分かっていないのが実情かもしれない。

そこで、筋膜やトリガーポイントからの電気活動が反射性に筋肉の電気活動を起こす仕組みをみると、そこには2つの仮説がある。
ひとつは「脊髄反射説」で、他は「局所単収縮反応説」である。

「脊髄反射説」は「運動神経と神経終板」の神経活動が根底にあり、「局所単収縮反応説」は「筋の粘弾性特質」に依拠している。
あるいは、その統合説である。

いずれも休眠状態の拘縮や硬結が、何らかの身体内外の要因によって活性状態になるとする仮説であるが、その要因とは一体何だろう。
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by m_chiro | 2015-01-31 17:41 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(2)



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