カテゴリ:痛み考( 156 )
腰痛、関連痛、根性痛の生理学的定義 ❺考察(discussion)
腰痛、関連痛、根性痛の生理学的定義
❺考察(discussion)
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                                Nikolai Bogduk博士(解剖学者)
"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
論文の最後に、「考察」が述べられていたので要点を箇条書きにし備忘録として残す。(文責;守屋徹)

考察(Discussion)

1.「根性痛」と「体性関連痛」を鑑別できないと誤診や誤治療が行われる可能性がある。

2.腰背部痛や体性関連痛は一般的な病態であるが、根性痛は一般的ではない

3.根性痛がしっかりと定義されていることを前提にすれば、その罹患率は12%以下である。

4.根性痛に混在した体性関連痛が軽減されてくると、根性痛の痛みがより一般的であるといった誤った印象を引き起こしかねない。

5.過去に体性関連痛が根性痛と誤診された可能性が高いため、根性痛の有病率の研究は信頼できない

6.臨床管理上では画像によって原因病変を確立することが多いため、その画像は根性痛と根性症の検査として正当化されている。その画像は体性関連痛には適応されない。単純X-ray、MRIやCTスキャンによって、体性関連痛の原因を明らかにすることはできない。それで大概は「偽陽性」と解釈するリスクを伴う。

7.患者が身体的に痛みを訴えている場合、退行性変化、椎間板膨隆および神経根圧迫の可能性を見つけることは診断上重要ではない。

8.体性関連痛が根性痛と誤認された場合、侵害受容性疼痛、体性関連痛は神経損傷を伴わないので、神経学的症状または徴候を予期する根拠はない。特にアロデニアは特徴ではない(実際、侵害受容性腰痛の場合にアロデニアの記録はない)。逆に、根性痛と根性症は神経幹の病理を伴うので、神経が真に障害を被っていれば理論的にはアロデニアの可能性がある。しかし単純な圧迫や炎症ではなく、真に神経損傷(nerve damage)や神経障害(neuropathy)がない限り、アロデニアは根性痛や根性症の典型的な特徴ではない。病態が曖昧でなければ、臨床実習は簡単である。

9.下肢への激痛に悩まされている患者は快適に眠ることが出来ず、下肢には麻痺または衰弱があり、明らかに根性痛および根性症がある。腰背部に痛みがあり、臀部と大腿に拡がるが、刺すような痛み(激痛;lancinating pain)はなく、神経学的症状もない患者は侵害受容性腰痛および体性関連痛を伴う。

10.患者に混在した病態があると鑑別には困難生じる。例えば、椎間板内部の破壊のために侵害受容性の腰背部痛を起こす可能性がある。この痛みは下肢にも伝わる可能性があり、そのケースでは体性関連痛と呼ばれる。ただし、椎間板ヘルニアになったり、炎症性化学物質を近くの神経根に漏らしたりすることがある。こうした神経根への化学的な刺激は、根性痛を引き起こす。さらに神経根が腫れて伝導ブロックが起こると、根性症が起こることがある。それぞれの機能は別々の原因とメカニズムを持っている。したがって個別の調査と治療が要求される。

11.椎間板切除術は高い確率で下肢痛の緩和に成功しているが、腰背部痛は残る。このことは実際に外科医が通常経験することである。

12.特定の用語というものは誤解を招き、役に立たないものである。「腰痛-坐骨神経痛」と呼ばれる特異症状はない。この用語は、患者が両方の症状を引き起こす単一の病態を持っていることを意味しており、これは正しくない。患者は腰痛になることもあれば、坐骨神経痛になることもある。(異なる病態の混在を意味するものであろう)2つの症状は、別々のメカニズムと原因である。ひとつの病態の機能、原因およびメカニズムは、他の病態に帰属することはできない。

13.椎間板ヘルニアは、根性痛の最も一般的な原因であるが、腰痛の一般的な原因ではない

14.侵害受容性腰痛の大多数の患者は「根性痛」を発症してはいない。擬坐骨神経痛あるいは僞関節痛の用語を用いる必要はなく、これらの症状については何ら問題はない。これらは体性関連痛にとってよけいな同義語であり、時には末梢神経の絞扼であり、いずれも下肢で知覚される以外は根性痛と共通するものはない。なぜなら、体性関連痛は根性痛より一般的であるため、これらの用語は、体性関連痛のよけいな同義語である。そして時には下肢の末梢神経の絞扼であり、いずれも下肢で知覚される以外は、根性痛痛と同じものではない。実際に体性関連痛は根性痛よりもはるかに一般的であるため、性痛をいくつかの変則したものとして分類するのではなく、体性関連痛として分類されるべきである。
15.医師が体性関連痛と根性痛を混同しなくなれば患者の数も少なくなり、医原性の問題が続くことはない。基礎科学者がこの区別を理解すれば、神経学的異常を持たない侵害受容性腰痛の動物モデルが開発されるだろう。


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by m_chiro | 2018-12-10 11:57 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義 ❹神経根症(radiculopathy)
腰痛、関連痛、根性痛の生理学的定義
❹神経根症(radiculopathy)
"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
以下は、そのタイトルとURLである。

"On the definitions and physiology of back pain, referred pain, and radicular pain."

(https://www.semanticscholar.org/paper/On-the-definitions-and-physiology-of-back-pain%2C-and-Bogduk/b4c9d97a2ba23d21cf8fd50e215d8da5544c7b9b)

要点をまとめて備忘録として残す。
4.神経根症(radiculopathy)

これは別個の病態である。
定義;伝導が脊髄神経または根に沿ってブロックされている神経学的状態である。

*感覚神経が遮断されると、しびれ感が症状が徴候になる。

*運動神経繊維がブロックされると、麻痺(numbness)が起こる。
(注)numbness;しびれ感、麻痺、無感覚(感覚異常の不明確な用語で、異常感覚に加えて感覚の消失や低下も含む);ステッドマン医学大辞典4版より

*反射の減少は感覚と運動神経がブロックされたときに起こる。

*無感覚はデルマトーム(皮膚節)の分布にあり、弱化はマイオトーム(筋節)の存在する。

*しかしながら、神経根症(radiculopathy)は痛みによる定義ではない。
*それは客観的な神経学的徴候によって定義されるのである。

*神経根症と神経根痛は一般的に混在性に発症するが、痛みがない場合には「神経根症」が起こり、神経根症がない場合には「神経根痛」が生じる。

*慎重な臨床検査は、「神経根症」を診断する最良のツールである。

*電気生理学的検査は滅多に必要はない。
*いずれにしろ、神経根痛の分節起源はその分布から決定できる、というのは真実ではない。

*L4,L5およびS1の神経根痛のパターンはお互いに区別することはできない。
「神経根痛」と「神経根症」がコンビネーションで発症したケースでのみ、分節を推定することが出来る。
その場合でも、起源となった分節を決定できるのは痛みの分布ではなく、デルマトーム分布における麻痺の分布である。

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by m_chiro | 2018-11-22 09:53 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義 ❸神経根性痛(radicular pain)
腰痛、関連痛、神経根性痛の生理学的定義
❸神経根性痛(radicular pain)
"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
以下は、そのタイトルとURLである。

"On the definitions and physiology of back pain, referred pain, and radicular pain."

(https://www.semanticscholar.org/paper/On-the-definitions-and-physiology-of-back-pain%2C-and-Bogduk/b4c9d97a2ba23d21cf8fd50e215d8da5544c7b9b)

要点をまとめて備忘録として残す。
3.神経根痛(radicular pain);神経根痛は、メカニズム的あるいは臨床的に体性関連痛とは異なる。 
 定義:「生理学的に、後根あるいはその神経節から発生する異所性発火によって誘発される痛みである。」

*椎間板ヘルニアが最も一般的な原因であり、影響を受けた神経の炎症が重要な病態生理学的プロセスであると思われる

*神経根痛の臨床的特徴は、椎間板ヘルニアの手術を受けた研究で確立された。
 研究のひとつ;椎間板ヘルニアの手術を受けた覚醒している患者で、罹患した神経および隣接する神経を鉗子で圧迫してチャレンジした。
 別の研究;縫合の糸は神経の周囲に置かれ、その傷口から引き出され、続いて引っ張られる。
 誘発される痛みは特有なものであった。
 それは不快感があり、下肢の長さに沿って幅2~3インチ(約5~8cm)以下のバンド状に移動した。
 これは神経根を刺激してつくられる唯一のタイプの痛みである(「根性痛」として解釈されるべきタイプの痛み)。
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*重要なこと;正常な神経根を圧迫したり、引っ張ったりしても神経根痛は生じない。
 以前に、神経根に炎症があった場合にのみ、機械的刺激が神経根痛を誘発する。

*圧縮刺激単独では痛みを伴うが、それは後根神経節が関与していると思われる(動物実験での支持)。

*動物実験;根性痛の神経生理学的相関をもたらした。
正常な神経根を圧迫すると瞬間的な放出のみが誘発されるが、後根神経節 を圧迫したり、炎症を起こしている後根を圧迫するとAbおよびAδおよびC線維の放電を誘発する。したがって根性痛は、侵害受容性求心性線維の発火というよりも、突き刺すような(lancinating)、ショッキング、電気的(electric)という方が合っている。
これは傷害された神経における異所性発火のためである。
誘発された感覚 はとても不快であるが、古典的侵害受容性の意味では「正確には痛みではない」
灼熱感、ショッキング、または電気の性質は、求心性侵害受容性放電以上のものと一致する。
それにもかかわらず、英語にはより正確な言葉がないため、この感覚は痛みと呼ばれることがある。

*坐骨神経痛は不可解な用語である。
 (これは痛みのメカニズムが理解されていなかった時代に由来しているためである。)
 その言及されてきた痛みは、痛みの領域を通過した末梢神経の刺激に起因するものであった。
 IASPは「根性痛」の用語に置き換えることを推奨している。

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by m_chiro | 2018-11-20 11:01 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義 ❷体性関連痛
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義
❷体性関連痛

"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
以下は、そのタイトルとURLである。

"On the definitions and physiology of back pain, referred pain, and radicular pain."

(https://www.semanticscholar.org/paper/On-the-definitions-and-physiology-of-back-pain%2C-and-Bogduk/b4c9d97a2ba23d21cf8fd50e215d8da5544c7b9b)

要点をまとめて備忘録として残す。
3.体性関連痛(somatic referred pain):定義上の核心;腰椎の構造上における有害な刺激は背部痛に加えて関連痛を生じることがある。

痛みは下肢に拡がり、有害な刺激の部位を支配する神経以外の神経に支配されて いる領域で知覚される。

*痛みの根源が腰椎の体性組織にあるので、「体性関連痛」と呼ぶ。

*したがって「内臓関連痛(visceral referred pain)」、「神経根痛(radicular pain)」と区別する。

*「体性関連痛(somatic referred pain)」は神経根の刺激を伴わない。

*これは椎間板、椎間関節、仙腸関節などの脊椎構造内の神経終末の有害な刺激によってつくられる。

そのメカニズムは侵害受容性の収束である(下肢の領域に対して起こる脊髄2次ニューロンの求心性細胞への)

*原則的に、体性関連痛は同じ分節からの線維と部分的支配を共有する領域で知覚される。

*しかしながら、体性関連痛神経根の圧迫によるものではないために神経学的徴候はない。

体性関連痛は鈍い(dull)痛み、苦痛、時には広がる圧迫感として愁訴される。

*部位を限局することが難しく広範囲に及ぶ。

*落ち着いてしまうと、部位が固定される傾向があり、患者は患部の境界を分けることが難しいことが多いものの、その中心(コア)的部位を確実に識別すること   が出来るようになる。

*だが、そのパターンは患者間で一貫性がない(過去には疼痛パターンの分節マップが提示されたが、このパターンは皮膚節のものではない;図1)。

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*提示されたパターン図は下肢の部分的な神経支配に対応し、筋肉や関節のようでもある。

*さらに、体性関連痛は臀部および近位大腿部に最も集中する傾向があるが、足まで延びることもある。(このような分布は正常被験者の実験での椎間関節と椎間板への刺激で誘発される。椎間関節への麻酔により安定させることが出来る。)

*これらの実験と一致するようなデータでは、下肢に拡がる比較的固定された部位に関連した鈍い痛みが患者に発生したときは「体性関連痛」と認識すべきである。


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by m_chiro | 2018-11-19 11:02 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義 ❶侵害受容性腰痛
腰痛、関連痛、神経根痛の生理学的定義
侵害受容性腰痛

"PAIN"®誌147(2009)に掲載されたNikolai Bogduk(オーストラリア、Newcastle大学)博士の論文は、とても重要だと感じた。
以下は、そのタイトルとURLである。

"On the definitions and physiology of back pain, referred pain, and radicular pain."

(https://www.semanticscholar.org/paper/On-the-definitions-and-physiology-of-back-pain%2C-and-Bogduk/b4c9d97a2ba23d21cf8fd50e215d8da5544c7b9b)

要点をまとめて備忘録として残す。

1.Introduction
腰背部痛(back pain)、関連痛(referred pain)、神経根痛(radicular pain)、神経根症(radiculopathy)の定義が臨床家の間で混乱したままである。
IASP(国際疼痛学会)の努力が、臨床家に浸透しているとは言い難い現状がある。
したがって依然として混乱がある。
この混乱は継承され続けている。
それは医学教育においても、出版物や臨床上においても同様である。

2.侵害受容性要背部痛定義上、「腰背部の構造上に有害な刺激が加わったことによって引き起こされる痛み」でなければならない。
*有害な刺激とは何か。
*原初の研究では、背部の筋あるいは棘間靭帯の刺激とされていた。
*その後研究では、椎間関節、仙腸関節の拡張(造影剤の注射)、硬膜の機械的、化学的刺激、椎間板後面の刺激などが考慮されている。

*これらの実験研究により有害な刺激は腰背部痛を引き起こすとされており、それは「侵害受容性の腰背部痛」である。

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by m_chiro | 2018-11-17 10:39 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
関連痛のメカニズム❸

関連痛のメカニズム❸

異所性興奮と体性関連痛


これまでに述べたように、小殿筋トリガーポイント(TrP)は「坐骨神経痛」だ、と嘘をついていることがある。

これは筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とされ、体性関連痛の範疇に入る病態である。


ところが、その体性関連痛のメカニズムとなると、その機序は決して明らかとはいえない。

筋膜痛や線維筋痛症のような筋肉に起因する病態には複雑な病態生理学があり、その研究解明は後れを取っているのが現状のようだ。


腰下肢痛は、カイロプラクティックの臨床の現場でもよく見られる症状である。

厄介なことに、痛みを訴えている部位が必ずしも治療部位とは限らないことが多く、この問題は本当にややこしい。


かつて腰下肢痛と言えば、すなわち神経の圧迫や絞扼と相場が決まっていた。

つまりは「根性痛」とみなしていたのである。

不思議なことに、圧迫された神経根部で「感覚神経だけが障害され運動神経には影響が及ばない」とされていることにも疑問を消し去ることはできないだろう。

それでも「後根神経節(DRG)の感受性は過敏である」を根拠に説明づけられている。


しかしながら、どう考えても侵害部位から逆行性に痛みが伝達される仕組みは理解できない。


だから根性痛は「異所性興奮」という神経損傷モデルで説明せざるを得ないのだろう。

こうした神経障害に伴う痛みには中枢性と末梢性があり、病態生理学的には「5つの基本的機序」(「痛み学―臨床のためのテキスト」409頁)が提示されている。


それによると、

1)痛みに感受性のあるニューロンへの直接の刺激、

2)損傷された神経の自発発火、

3)中枢神経系の感作と求心路遮断による神経系の再構築、

4)内因性の疼痛抑制系の破綻、

5)交感神経依存性疼痛

5つで、この基本的機序が単独あるいは複合して痛覚伝導系が障害されて発症するとしている。

多様な発症機序ではあるが、症状には類似点があるようだ。


それは次の3つの症状に要約されている。

① 灼けつくような、突き刺すような痛み、

② 発作性あるいは間欠性の痛み、

③ 感覚変容(触刺激に過敏、冷刺激に対する灼けつくような感覚、無感覚部痛)

3症状で、発汗過多、皮膚温の変化、萎縮性変化(爪、皮膚、筋、骨など萎縮)が見られることもある、とされている。


これらは病態モデルを使った動物実験でも明らかである。

あるいは広作動域ニューロンから下肢痛として脳に投射された痛みということもあり得るだろう。


広作動域ニューロンが感作あるいは反応性が亢進すると、非侵害性の刺激(温熱や触刺激)でも痛みが生じるようになる。

このことは正常な組織に対する刺激によっても痛みを誘発するという病態を意味している。


だとすれば、神経障害性の痛みは必ずしも痛み症状だけとは限らないとみるべきだろう。

おそらく異常な感覚の変容が伴うはずである。

あるいは痛みは一過性の強力なもので、まもなく異常感覚や神経麻痺症状が起こるかもしれない。


そう考えると、純粋に末梢への痛みだけが訴えられているケースでは、関連痛を想定して治療対応することが賢明であろうと思う。

関連痛と神経障害性疼痛とでは、圧倒的に筋・筋膜障害による関連痛が多いのである。

このことは徒手療法の臨床現場で、特に感じることでもある。


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by m_chiro | 2018-10-20 15:32 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
関連痛のメカニズム❷

関連痛のメカニズム❷

内臓―体性痛だけが関連痛ではない


そもそも内臓疾患からの関連痛を、最初に脊髄における「収束説」で説明したのはMackenzie「収束―促通(facilitation)説」(1893)だった。

「促通」とは、「2つの刺激が組み合わさると、単独での刺激の効果よりも大きな効果が起こる現象」を指している。


Mackenzieは、なぜ「投射」ではなく「促通」説を持ち出したのだろう。

彼は、内臓からの痛み症状となるインパルスは脊髄視床路ニューロンに接続されていない、と見ていたからである。

今となっては、この時点で誤りであったことになる。


それゆえにMackenzieは、内臓疾患による求心性インパルスが脊髄分節で収束されて「過敏性焦点」が作られる、という推論を構築したのである。

これで皮膚への関連痛に見られる痛覚過敏の病態が説明可能となった。


Mackenzieの仮説では、関連痛そのもののメカニズムを説明しきれなかったが、それでも「過敏性焦点」を想定し、さらには「軸策反射説」を導入して、関連領域の痛覚過敏や炎症のメカニズムを説明することに貢献したと言えるだろう。


一方、Ruchの「収束―投射説」では、末梢での痛覚過敏や浮腫を説明することができなかった。

この疑問を穴埋めしたのが、「過敏焦点」や「軸策反射」という病態機序だったということになる。

こうして見ていくと、発表されてきた関連痛のメカニズムは、内臓疾患からの関連痛を前提として構築されているように思える。

 「末梢説」では、例えば腹筋下部に生じたトリガーポイント(TrP)は、虫垂炎の関連痛であるかのように嘘をつく。

虫垂炎で最初に出る痛みは、実際に内臓からの痛みである。

ここからの痛み信号が脊髄に送られると後根反射が起こるとされる。

このインパルスが末梢に逆行して化学物質を放出し、周辺組織の皮膚や皮下組織に関連痛をつくり出すのである。

これが「末梢説」の代表的な仮説「腸膜皮膚反射説」(Morley;1931)である。

しかしながら後根反射が起こるとするエビデンスは存在しない。


どう見ても、筋・筋膜トリガーポイントがつくる関連痛の説明には成り得ていないからである。

したがって関連痛のメカニズムは、「内臓ー体性関連痛」と「神経根障害性(神経損傷による)関連痛」、「筋性の関連痛」は、それぞれ別ルートの機序を考える必要があるだろう。


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by m_chiro | 2018-10-10 08:52 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
もう「プラセボ」なんて言う必要もないのかな...?

プラセボでも腰痛患者の痛みは軽減する?

ランダム化比較試験で検討

米国の慢性疼痛患者は数百万人に上るが、鎮痛剤として処方されるオピオイド依存の問題が深刻化している。

今回、新たな研究から、慢性的な腰痛を抱えている患者は、たとえプラセボ(偽薬)であっても薬を服用すると、標準的な鎮痛薬に相当する約30%の疼痛軽減効果を得られることが明らかになった。


また、MRI検査を実施したところ、腰痛患者の脳の構造や心理的な特徴からプラセボが有効かどうかを予測できることも分かったという。


研究の詳細は「Nature Communications」912日オンライン版に掲載された。

この研究は、米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部教授のA. VaniaApkarian氏らが行ったもの。

同氏らは、約60人の慢性腰痛患者を対象に、プラセボを服用する群と非オピオイド系の標準的な鎮痛薬を服用する群、さらに診察のみで何も治療しない群にランダムに割り付けて、8週間にわたり疼痛レベルを毎日評価した。


プラセボまたは標準的な鎮痛薬を服用する群の患者には、どちらの治療であるのかは知らせなかった。

その結果、研究開始から8週後には、プラセボを服用した群では、何も治療をしなかった群に比べて疼痛が大きく軽減し、治療に対する反応率も高いことが分かった。


なお、この研究ではプラセボを服用する群と標準的な鎮痛薬を服用する群の比較は行っていないという。

また、対象患者に脳MRI検査を実施して脳の構造を比較したところ、プラセボが奏効した患者では、皮質下辺縁系(subcortical limbic)の情動脳領域が非対称性(右側が左側よりも大きい)であることや、大脳皮質感覚野(cortical sensory area)が大きいなどの共通した特徴がみられることが分かった。


さらに、心理検査によれば、自分の身体や感情の状態を意識的に捉えられ、開放的な性格である患者でプラセボが奏効する確率が高かった。

Apkarian氏は「プラセボの効果は予測できないとする考え方が一般的であるが、今回の研究結果はその考えを覆すものだ」と話す。


今回の結果から、同氏は「一部の患者にはプラセボ治療に反応する資質が備わっており、プラセボであることが分かっていても治療効果が得られる可能性がある」と結論づけている。


疼痛管理の専門家で米ジョンズ・ホプキンス大学のMark Bicket氏は「この研究結果は、プラセボは疼痛の緩和や機能の回復に重要な役割を担う可能性があることを示すものだ」と指摘する。


その上で、「プラセボは全ての人に有効ではないかもしれないが、プラセボを服用した腰痛患者で30%もの疼痛の軽減がみられたのは減薬や活動量の増加につながることが期待され、臨床上意味がある」と述べている。


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by m_chiro | 2018-09-29 09:50 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
関連痛のメカニズム❶

関連痛のメカニズム❶

「収束―投射説」


組織に損傷が起こると、その部位に痛みが起こる。

要するに、痛みの原因となる部位と痛みの場所はイコールだということになる。

この考え方は、「損傷モデル」として長い間支配的な概念になった。

だから、痛み訴える部位に何らかの損傷があるとみて治療することになる。


ところが、痛みの部位とその原因となる部位が一致しないことがある。

それが「関連痛」の存在だった。関連痛の定義は、次の以下の通りである。


「内臓疾患により内臓に侵害刺激が加えられた際に、その内臓と離れた位置にあるにもかかわらず、皮膚表面や筋肉に特別過敏な感覚や痛みをかんじることがあり、この現象を関連痛と呼ぶ。」

                (「痛みの概念の整理」花岡一雄編著)

関連痛の概念は、1984年に発表したMartynの論文「炎症性疼痛における生理学的意味」に始まるらしい。

1893年には、英国の神経学者Henry Headが内臓疾患からの関連痛として「ヘッド帯」なるものを学位論文して発表した。

その中で、内臓疾患の関連痛は皮膚節(デルマトーム)に現れるとしたのである。


また生食を筋肉に注入すると、注入部位だけでなく離れた部位に痛みが放散することを明らかにしたのはT.Lewisとされている1938)。

 

同じ手法で高張食塩水を注入して、関連痛は筋肉などの組織の過敏点から生じるとしたのはJ.H.Kellgrenである。

この体性からの関連痛は、局所麻酔で治まることを両者が報告している。

(こうした関連痛の歴史的背景については、小山なつ著「痛みと鎮痛の基礎知識」上・下巻に詳しい。)


関連痛のメカニズムには諸説ある。

大別すると、末梢神経における機序にその根拠を求めた「末梢説」と、中枢神経での機序に求めた「中枢説」に分けられる。

中枢神経系に関連痛の根拠を求めた「中枢説」でよく知られているのはRuch「収束―投射説(1947)である。

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「収束―投射 (projection)説」は、脊髄における痛覚伝道路である二次ニューロンに内臓からの痛覚一次ニューロンと、皮膚からの痛覚一次ニューロンが収束しているために関連痛が起こる、とする説である。


内臓からの痛みは局在が明瞭ではない。

ところが皮膚では局在が明瞭である。

皮膚はヒトの身体と外界との境界をなしていて、多くの刺激を感受し、情報網も多い。

したがって、脳は皮膚からの情報を優位に結びつけやすいのだろう。

ヒトの持つ学習能の所作なのかもしれない。





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by m_chiro | 2018-09-27 16:39 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
慢性疼痛治療ガイドライン
c0113928_21582184.jpg「慢性疼痛治療ガイドライン」発刊される

2018年3月、痛みに関連する7学会のメンバーが結集し作り上げた「慢性疼痛治療ガイドライン」(監修:厚生労働行政推進調査事業費補助金慢性の痛み政策研究事業「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」研究班、編集:慢性疼痛治療ガイドライン作成ワーキンググループ)が発刊された。



エアポケットとなっていた慢性疼痛

これまで、種々の疾患(がん、生活習慣病、感染症、精神疾患、難病など)への対策が日本政府により行われてきたが、慢性疼痛に対する施策は、エアポケットのように抜け落ちていた。しかし、最近、慢性疼痛に対する施策も国の事業として進められるようになり、前述の研究班とワーキンググループにより、All Japanのガイドラインが策定された。


エビデンスレベルは4段階、推奨度は2段階で評価


CQに対するAnswerの部分には、推奨度およびエビデンスレベルが記されている。
推奨度は、「1:する(しない)ことを強く推奨する」「2:する(しない)ことを弱く推奨する(提案する)」の2通りで提示されている。
エビデンスレベルは、「A(強):効果の推定値に強く確信がある」「B(中):効果の推定値に中程度の確信がある」「C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である」「D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」と規定された。


慢性疼痛とは

慢性疼痛は、国際疼痛学会(IASP)で「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」とされている。慢性疼痛には「侵害受容性」「神経障害性」「心理社会的」などの要因があるが、これらは密接に関連している場合が多く、痛み以外に多彩な症状・徴候を伴っていることも多い。
そのため、本ガイドラインでは、慢性疼痛の診断において最も重要なことは、正確な病態把握とされた。
また、慢性疼痛の治療は、痛みの軽減が目標の1つであるが第一目標ではなく、作用をできるだけ少なくしながら痛みの管理を行い、QOLやADLを向上させることが重要であると記載されている

薬物療法の推奨度が詳細に示されている

本ガイドラインでは、薬物療法の項に最も多くの紙面が割かれている。なお、本ガイドラインでは、「医療者は各項の推奨度のレベルのみを一読するのではなく、CQの本文、要約、解説を十分に読み込んだ上での試行・処方などを検討するようにお願いしたい」「一部、現在(平成30年3月現在)の保険診療上適応のない薬物や手技もあるが、薬物療法においては、添付文書などを熟読の上、治療に当たることが望ましい」と記載されている。

主な薬剤の推奨度、エビデンス総体の総括は以下のとおり。

●非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)神経障害性疼痛:2D(使用しないことを弱く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2B(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:2C(使用しないことを弱く推奨する)

●アセトアミノフェン

運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:2D(使用しないことを弱く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:1A(使用することを強く推奨する)
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

●プレガバリン
運動器疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)
神経障害性疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2C(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:1A(使用することを強く推奨する)

●デュロキセチン
運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2C(使用することを弱く推奨する)
線維筋痛症:1A(使用することを強く推奨する)

●抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬物)
運動器疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)(エチゾラム)
神経障害性疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)
           (緊張型頭痛:エチゾラム、アルプラゾラム)
           (口腔顔面痛:ジアゼパム、クロナゼパム)
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

●トラマドール
運動器疼痛:1B(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:1B(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:推奨度なし
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

心理療法・集学的療法の推奨度も記載心理療法として取り上げられた心理教育、行動療法、認知行動療法、マインドフルネス、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、いずれも推奨度1(行うことを強く推奨する)とされている。
また、最近話題の集学的治療や集団認知行動療法(集団教育行動指導)も推奨度1(施行することを強く推奨する)とされ、その重要性が示されている。





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by m_chiro | 2018-05-23 22:09 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)



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