カテゴリ:痛み考( 150 )
関連痛のメカニズム❷

関連痛のメカニズム❷

内臓―体性痛だけが関連痛ではない


そもそも内臓疾患からの関連痛を、最初に脊髄における「収束説」で説明したのはMackenzie「収束―促通(facilitation)説」(1893)だった。

「促通」とは、「2つの刺激が組み合わさると、単独での刺激の効果よりも大きな効果が起こる現象」を指している。


Mackenzieは、なぜ「投射」ではなく「促通」説を持ち出したのだろう。

彼は、内臓からの痛み症状となるインパルスは脊髄視床路ニューロンに接続されていない、と見ていたからである。

今となっては、この時点で誤りであったことになる。


それゆえにMackenzieは、内臓疾患による求心性インパルスが脊髄分節で収束されて「過敏性焦点」が作られる、という推論を構築したのである。

これで皮膚への関連痛に見られる痛覚過敏の病態が説明可能となった。


Mackenzieの仮説では、関連痛そのもののメカニズムを説明しきれなかったが、それでも「過敏性焦点」を想定し、さらには「軸策反射説」を導入して、関連領域の痛覚過敏や炎症のメカニズムを説明することに貢献したと言えるだろう。


一方、Ruchの「収束―投射説」では、末梢での痛覚過敏や浮腫を説明することができなかった。

この疑問を穴埋めしたのが、「過敏焦点」や「軸策反射」という病態機序だったということになる。

こうして見ていくと、発表されてきた関連痛のメカニズムは、内臓疾患からの関連痛を前提として構築されているように思える。

 「末梢説」では、例えば腹筋下部に生じたトリガーポイント(TrP)は、虫垂炎の関連痛であるかのように嘘をつく。

虫垂炎で最初に出る痛みは、実際に内臓からの痛みである。

ここからの痛み信号が脊髄に送られると後根反射が起こるとされる。

このインパルスが末梢に逆行して化学物質を放出し、周辺組織の皮膚や皮下組織に関連痛をつくり出すのである。

これが「末梢説」の代表的な仮説「腸膜皮膚反射説」(Morley;1931)である。

しかしながら後根反射が起こるとするエビデンスは存在しない。


どう見ても、筋・筋膜トリガーポイントがつくる関連痛の説明には成り得ていないからである。

したがって関連痛のメカニズムは、「内臓ー体性関連痛」と「神経根障害性(神経損傷による)関連痛」、「筋性の関連痛」は、それぞれ別ルートの機序を考える必要があるだろう。


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by m_chiro | 2018-10-10 08:52 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
もう「プラセボ」なんて言う必要もないのかな...?

プラセボでも腰痛患者の痛みは軽減する?

ランダム化比較試験で検討

米国の慢性疼痛患者は数百万人に上るが、鎮痛剤として処方されるオピオイド依存の問題が深刻化している。

今回、新たな研究から、慢性的な腰痛を抱えている患者は、たとえプラセボ(偽薬)であっても薬を服用すると、標準的な鎮痛薬に相当する約30%の疼痛軽減効果を得られることが明らかになった。


また、MRI検査を実施したところ、腰痛患者の脳の構造や心理的な特徴からプラセボが有効かどうかを予測できることも分かったという。


研究の詳細は「Nature Communications」912日オンライン版に掲載された。

この研究は、米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部教授のA. VaniaApkarian氏らが行ったもの。

同氏らは、約60人の慢性腰痛患者を対象に、プラセボを服用する群と非オピオイド系の標準的な鎮痛薬を服用する群、さらに診察のみで何も治療しない群にランダムに割り付けて、8週間にわたり疼痛レベルを毎日評価した。


プラセボまたは標準的な鎮痛薬を服用する群の患者には、どちらの治療であるのかは知らせなかった。

その結果、研究開始から8週後には、プラセボを服用した群では、何も治療をしなかった群に比べて疼痛が大きく軽減し、治療に対する反応率も高いことが分かった。


なお、この研究ではプラセボを服用する群と標準的な鎮痛薬を服用する群の比較は行っていないという。

また、対象患者に脳MRI検査を実施して脳の構造を比較したところ、プラセボが奏効した患者では、皮質下辺縁系(subcortical limbic)の情動脳領域が非対称性(右側が左側よりも大きい)であることや、大脳皮質感覚野(cortical sensory area)が大きいなどの共通した特徴がみられることが分かった。


さらに、心理検査によれば、自分の身体や感情の状態を意識的に捉えられ、開放的な性格である患者でプラセボが奏効する確率が高かった。

Apkarian氏は「プラセボの効果は予測できないとする考え方が一般的であるが、今回の研究結果はその考えを覆すものだ」と話す。


今回の結果から、同氏は「一部の患者にはプラセボ治療に反応する資質が備わっており、プラセボであることが分かっていても治療効果が得られる可能性がある」と結論づけている。


疼痛管理の専門家で米ジョンズ・ホプキンス大学のMark Bicket氏は「この研究結果は、プラセボは疼痛の緩和や機能の回復に重要な役割を担う可能性があることを示すものだ」と指摘する。


その上で、「プラセボは全ての人に有効ではないかもしれないが、プラセボを服用した腰痛患者で30%もの疼痛の軽減がみられたのは減薬や活動量の増加につながることが期待され、臨床上意味がある」と述べている。


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by m_chiro | 2018-09-29 09:50 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
関連痛のメカニズム❶

関連痛のメカニズム❶

「収束―投射説」


組織に損傷が起こると、その部位に痛みが起こる。

要するに、痛みの原因となる部位と痛みの場所はイコールだということになる。

この考え方は、「損傷モデル」として長い間支配的な概念になった。

だから、痛み訴える部位に何らかの損傷があるとみて治療することになる。


ところが、痛みの部位とその原因となる部位が一致しないことがある。

それが「関連痛」の存在だった。関連痛の定義は、次の以下の通りである。


「内臓疾患により内臓に侵害刺激が加えられた際に、その内臓と離れた位置にあるにもかかわらず、皮膚表面や筋肉に特別過敏な感覚や痛みをかんじることがあり、この現象を関連痛と呼ぶ。」

                (「痛みの概念の整理」花岡一雄編著)

関連痛の概念は、1984年に発表したMartynの論文「炎症性疼痛における生理学的意味」に始まるらしい。

1893年には、英国の神経学者Henry Headが内臓疾患からの関連痛として「ヘッド帯」なるものを学位論文して発表した。

その中で、内臓疾患の関連痛は皮膚節(デルマトーム)に現れるとしたのである。


また生食を筋肉に注入すると、注入部位だけでなく離れた部位に痛みが放散することを明らかにしたのはT.Lewisとされている1938)。

 

同じ手法で高張食塩水を注入して、関連痛は筋肉などの組織の過敏点から生じるとしたのはJ.H.Kellgrenである。

この体性からの関連痛は、局所麻酔で治まることを両者が報告している。

(こうした関連痛の歴史的背景については、小山なつ著「痛みと鎮痛の基礎知識」上・下巻に詳しい。)


関連痛のメカニズムには諸説ある。

大別すると、末梢神経における機序にその根拠を求めた「末梢説」と、中枢神経での機序に求めた「中枢説」に分けられる。

中枢神経系に関連痛の根拠を求めた「中枢説」でよく知られているのはRuch「収束―投射説(1947)である。

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「収束―投射 (projection)説」は、脊髄における痛覚伝道路である二次ニューロンに内臓からの痛覚一次ニューロンと、皮膚からの痛覚一次ニューロンが収束しているために関連痛が起こる、とする説である。


内臓からの痛みは局在が明瞭ではない。

ところが皮膚では局在が明瞭である。

皮膚はヒトの身体と外界との境界をなしていて、多くの刺激を感受し、情報網も多い。

したがって、脳は皮膚からの情報を優位に結びつけやすいのだろう。

ヒトの持つ学習能の所作なのかもしれない。





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by m_chiro | 2018-09-27 16:39 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
慢性疼痛治療ガイドライン
c0113928_21582184.jpg「慢性疼痛治療ガイドライン」発刊される

2018年3月、痛みに関連する7学会のメンバーが結集し作り上げた「慢性疼痛治療ガイドライン」(監修:厚生労働行政推進調査事業費補助金慢性の痛み政策研究事業「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」研究班、編集:慢性疼痛治療ガイドライン作成ワーキンググループ)が発刊された。



エアポケットとなっていた慢性疼痛

これまで、種々の疾患(がん、生活習慣病、感染症、精神疾患、難病など)への対策が日本政府により行われてきたが、慢性疼痛に対する施策は、エアポケットのように抜け落ちていた。しかし、最近、慢性疼痛に対する施策も国の事業として進められるようになり、前述の研究班とワーキンググループにより、All Japanのガイドラインが策定された。


エビデンスレベルは4段階、推奨度は2段階で評価


CQに対するAnswerの部分には、推奨度およびエビデンスレベルが記されている。
推奨度は、「1:する(しない)ことを強く推奨する」「2:する(しない)ことを弱く推奨する(提案する)」の2通りで提示されている。
エビデンスレベルは、「A(強):効果の推定値に強く確信がある」「B(中):効果の推定値に中程度の確信がある」「C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である」「D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」と規定された。


慢性疼痛とは

慢性疼痛は、国際疼痛学会(IASP)で「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」とされている。慢性疼痛には「侵害受容性」「神経障害性」「心理社会的」などの要因があるが、これらは密接に関連している場合が多く、痛み以外に多彩な症状・徴候を伴っていることも多い。
そのため、本ガイドラインでは、慢性疼痛の診断において最も重要なことは、正確な病態把握とされた。
また、慢性疼痛の治療は、痛みの軽減が目標の1つであるが第一目標ではなく、作用をできるだけ少なくしながら痛みの管理を行い、QOLやADLを向上させることが重要であると記載されている

薬物療法の推奨度が詳細に示されている

本ガイドラインでは、薬物療法の項に最も多くの紙面が割かれている。なお、本ガイドラインでは、「医療者は各項の推奨度のレベルのみを一読するのではなく、CQの本文、要約、解説を十分に読み込んだ上での試行・処方などを検討するようにお願いしたい」「一部、現在(平成30年3月現在)の保険診療上適応のない薬物や手技もあるが、薬物療法においては、添付文書などを熟読の上、治療に当たることが望ましい」と記載されている。

主な薬剤の推奨度、エビデンス総体の総括は以下のとおり。

●非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)神経障害性疼痛:2D(使用しないことを弱く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2B(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:2C(使用しないことを弱く推奨する)

●アセトアミノフェン

運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:2D(使用しないことを弱く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:1A(使用することを強く推奨する)
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

●プレガバリン
運動器疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)
神経障害性疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2C(使用することを弱く推奨する)線維筋痛症:1A(使用することを強く推奨する)

●デュロキセチン
運動器疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:1A(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:2C(使用することを弱く推奨する)
線維筋痛症:1A(使用することを強く推奨する)

●抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬物)
運動器疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)(エチゾラム)
神経障害性疼痛:2C(使用することを弱く推奨する)
           (緊張型頭痛:エチゾラム、アルプラゾラム)
           (口腔顔面痛:ジアゼパム、クロナゼパム)
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

●トラマドール
運動器疼痛:1B(使用することを強く推奨する)
神経障害性疼痛:1B(使用することを強く推奨する)
頭痛・口腔顔面痛:推奨度なし
線維筋痛症:2C(使用することを弱く推奨する)

心理療法・集学的療法の推奨度も記載心理療法として取り上げられた心理教育、行動療法、認知行動療法、マインドフルネス、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、いずれも推奨度1(行うことを強く推奨する)とされている。
また、最近話題の集学的治療や集団認知行動療法(集団教育行動指導)も推奨度1(施行することを強く推奨する)とされ、その重要性が示されている。





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by m_chiro | 2018-05-23 22:09 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
慢性痛(症)(偏桃体・側坐核の仕組み)
NHK「試してガッテン」(5月9日放送)の「慢性痛を”脳”で克服! ”慢性痛”治療革命」の要点を以下にまとめてみた。

●痛みは本来「警告信号系」であるが、損傷や障害が取り除かれたにもかかわらず、3カ月以上も続く痛みは「慢性痛」とされている。
 いわゆる原因が特定できない痛みである。有効な治療法も確立されないままにある。

●慢性痛の患者さんは、推計2,300万人いるとされている。それは医学医療上の問題にとどまらず、社会・経済的損失となっている。

●慢性痛の研究が進み、今では最も注目されている治療として「認知行動療法」に関心が高まっている。

●「認知行動療法」は、痛みに集中しないで他のことに意識を持っていくための行動が効果的とされる。

●PETによる脳画像でも、慢性痛の患者像と改善像では全く異なっている。
 慢性痛患者のPET画像では「側坐核」の血流の低下が顕著である。
 さらに、「偏桃体」の過活動がみられる。「偏桃体」は不安や恐怖、悲しみといった情動系の役割にかかわる。

「側坐核」が慢性痛改善のキーポイントである。
 「側坐核」が元気になると、PET画像での血流の改善(赤く表示される)が顕著になる。
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●「側坐核」を元気にする有効な方法が「認知行動療法」である。
 要するに、「側坐核」喜ばせなさいということ。「側坐核」が元気になると、下降性に痛みを抑える仕組みが働きだす。

●逆に「偏桃体」の過剰な活動は、「側坐核」の元気をなくしてしまうので痛みを抑える仕組みが働きにくくなる。

●そこで、慢性痛には「側坐核」に喜び(報酬)を与えて元気にしよう、というわけだ。

報酬は「達成感」によって代替される。好きなこと、趣味などを楽しむことで「達成感」を実感することは重要な要因である。
 喜び(達成感)は「側坐核」を活性させる。

●そのためには「小さな目標」から「大きな目標」を設定し、達成感を実感できる行動・運動を取り入れることである。

●同じ痛み刺激を与えて痛みの自己評価をする実験が紹介された。
 刺激をちょっと少なく体感できるだけでも報酬系が作動する。これが重要なのだろう。


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by m_chiro | 2018-05-14 17:48 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
長引く痛みの記憶をリセットする試み
中高年の婦人が、昨年末に除雪作業中のぎっくり腰になった。
整形外科医院を受診する。
X-rayで「骨が潰れている」と言われたというから、椎骨に変性があったのだろう。
左の臀部から股関節周辺の痛みがあった。
冷湿布と消炎鎮痛薬を処方され、物療が続けられた。
そのうちに右の股関節から下肢痛も併発するようになった。
そうこうしているうちに3か月が過ぎた。
「なかなかよくならない!」と言って、先日、治療にみえた。

初検
治療室に入ってくる歩行がギクシャクしている。
歩くのが痛いのか、かばうような歩き方だった。
運動分析
屈曲運動だけが(-)で、回旋、側屈で臀部・下肢痛あるが運動制限が起こるほどの痛みではない。
ところが屈曲では、L1-L2間の痛み(++)を訴える(椎骨間変性で問題なのはL1-L2間なのだろう)。
筋反応低下部位
腸腰筋(左右↓)、肩甲挙筋(右↓)、梨状筋(左右↓)、大腿直筋(右↓)、腹筋(左↓)
腎臓膜(刺激反応は右腎臓)と小腸膜の関連筋に相当する。
治療手順
1.フロー現象を指標にした全体調整
2.脊椎の関節障害(T1、C7、L2、S1のリリース)
3.脊柱管リージョン(S4、C6)
4.蝶形-後頭骨連鎖のリリース(右外側ヒールテンション)

再評価
運動分析 屈曲(+)
5.歩行で、歩行運動パターンのリセットを行う

2回目(4日後)

痛みは伸展時のみになる。歩行バランス(50%ほど向上)
「随分よくなった」、と第一声。
治療手順
1.クロストーク;神経バランス;脳神経3(動眼神経)で下斜筋(右↓)
2.脊柱管リージョンの初回パターンの再調整
3.カテゴリーⅡ(LPIN)
4.L1-L2間の圧痛過敏点にハペパッチ貼付すると、伸展運動が可能になった。
5.歩行運動パターンのリセットで、ほぼ違和感のない歩行が可能になった。

痛みの記憶と運動パターンの問題を試治して

この患者さんは、歩行で痛みの記憶が引きだされて運動パターンでも、かばうような歩きになっていのだろうと思えた。
歩かせてリセットすることを反復すると、次第にきちんと歩けるようになった。
長引いた痛みの記憶と歩行運動の失調をリセットし、本来の歩行が取り戻せたように思う。
長引く痛みの患者さんにも、この方法は効果的に作用するようだ。
さらに痛みの記憶と運動パターンのリセット法を模索していきたい。









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by m_chiro | 2018-03-20 16:09 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「むち打ち症」のケベック診断基準を表にしてみた
1997年に、カイロプラクティックの世界規模の学会(World Chiropractic Congress)が東京で開催されたことがある。
WFC(World Federation of Chiropractic)が主催し、WHOが後援した記念碑的な学会となった。
私も大会準備委員会のメンバーとして協力した思い出深い学会だった。
そのときに学会誌の編集長も務めたので、特に印象に残っている。

この学会の特筆すべき発表は、ケベック専門者会議から唯一カイロプラクターとして参加したJ.David Cassidy,D.C.がメインの講演を行った発表にあった。
この講演発表は、世界の医療界の注目を集めるものだった。
この講演に先立つこと1995年に、"SPAIN"に発表されている。
この発表は、医学、カイロプラクティック、理学療法、疫学、工学の学問分野を代表する高名な臨床家、科学者のチームが4年間にわたって行った集中的調査研究の産物である。

その発表内容をまとめて表を作ってみた。
表にしてみると、むち打ち症の重症度のグレードが明確になり、その治療対応も分かりやすい指標となっていることが分かる。
参考のために、ここに紹介しておきたい。
納得できる分類や対応になっていることに気づかれると思う。

この発表が公開されるまでは、むち打ち症には「頸椎カラー」対応が一般的だったのである。
以来、頸椎カラーはむち打ち治療から影を潜めたように思う。

ケベックの分類では重症度をグレード0~Ⅳの5段階評価になっていて、そのグレードに応じて治療も経過日時で対応する指標が出されている。
むち打ち症の重症度と経過日時による対応、評価、再評価など基本的な手順を押さえておく分類だと思う。
グレードⅠ~Ⅲまで、「安心感を与えること」、「通常の生活に速やかに復帰させること」、「安静を4日以上とらせない」といった項目が常に優先させることが念頭におかれているべき、ということが注目される。
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by m_chiro | 2018-01-11 14:53 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「線維筋痛症から回復した患者さん」との出会い
先日、ある女性から突然の電話をいただいた。
「痛み学NOTE」も読んでいただいているらしい。
しかも線維筋痛症に苦しめられた患者さんのようだ。
「苦しめられた」と過去形に言うからには、今では回復している女性である。

その得難い経験を広く知ってもらおうと、ホームページを立ち上げ啓蒙活動を展開されている方だった。
(「線維筋痛症から回復した患者のホームページ」)

またブログを通して、線維筋痛症患者さんへの力強いメッセージを送られており、アドバイスや相談にも応じておられる様子も窺うことができた。

「エントロピー学会」の会員としても、学会での講演や論文も発表されている。
その小田博子さんの半生記には、線維筋痛症との闘病から治療歴、そして回復への道すじの簡略な履歴が書かれていた。

それによると2001年に線維筋痛症を発病し、6年間にわたり様々な治療を試みながらの闘病生活を送っている。
線維筋痛症のパフォーマンス・ステージ「9(寝たきり状態)」からの回復のきっかけとなったのが、「BOOT(大脳志向型咬合療法):顎関節症クリニック・山田歯科」だったようである。

そこから彼女は、回復の裏付けを求めながら多くの学びをしたようだ。
そしてポリモーダル受容器と環境問題との関わりから、脳の過敏状態がつくられる機序に思いを馳せておられた。

これらを読むと、体内と対外環境の問題やその関連性を含めて線維筋痛症を考察されておられることを知ることができるだろう。
末梢性感作と中枢性感作の枠組みから、ポリモーダル受容器の特質が絡んで過敏状態が重畳的に現れる様を、経験的な感覚として書かれているのである。

現在も、線維筋痛症に関する論考を執筆中とのことで、ポリモーダル受容器や熊沢先生の著書の情報を尋ねての電話だった。

論文を含め、活動の資料も送っていただいた。

小田さんの活動には、線維筋痛症患者に対するエールとメッセージが込められている。
回復のきっかけは、人それぞれなのかもしれない。
それでも線維筋痛症の病態を知ること、痛みを知ること、そこからがスタートだと呼びかけているようにも思えた。

小田さんの論考には、ヒトの「空間認知機能の狂い」が取り上げられていたことが印象的だった。
それは姿勢制御系の問題である。
そこには視覚情報、前庭系からの情報、関節などの固有受容器の情報やポリモーダル受容器による情報、そうした姿勢制御系における情報の「混乱とその固定化」とでも言えるのだろう。

そうなると外的要因(環境からの刺激因子)が情報系に一層の拍車をかける(過敏化する)。そうした神経系の混乱の枠組みを、いったん破壊し、神経系・情報系の再構築が必要になるのだろう。
小田さんの論考を読みながら、そんなことに思いが行きついたのである。

「痛み学NOTE」から、思いがけない交流がはじまりそうである。
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by m_chiro | 2017-09-25 16:27 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
熊沢孝朗先生:インタビュー記事
「2010年第12回学術大会・特別企画「熊沢孝朗教授インタビュー」

2012年の日本カイロプラクティック徒手医学会(第12回)は「痛みの学会」でした。
熊沢先生には基調講演等の召集など、多大なるご支援を頂きました。

その準備に際して、熊沢先生にインタビューさせていただいた記事があります。

その当時の科学新聞社・斎藤信二社長のはからいで実現しました。
この時、熊沢先生は療養中でしたが、快くインタビューに応じていただきました。
私には、とても得難い時間でした。

この記事を、私のホームページ上に残しておこうと思います。
痛みについての重要な知見に満ちています。
「痛み学」の日本の最高の権威者である熊沢先生の言葉は、今でもとても重く読むことができます。
是非、ご一読ください。
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by m_chiro | 2017-09-24 23:28 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
椎間板ヘルニアや坐骨神経痛で、炎症介在物質が作用しているわけではない
「椎間板ヘルニアと坐骨神経痛には炎症反応を引き起こすホスホリパーゼA2(PLA2)が関与していると考えられていたが、椎間板ヘルニアもしくは椎間板変性と正常な椎間板との間にPLA2値の差は認められなかった」

坐骨神経痛、椎間板ヘルニアなどと診断されて、痛みに苦しめられている患者さん。
きっと、炎症反応が引き起こされて痛むのだろう、と思われがちである。
ところが研究では、椎間板ヘルニアにも、椎間板の変性にも炎症反応を引き起こすホスホリパーゼA2(PLA2)の値に、正常な椎間板との差が認められなかった。そんな研究である。

生体細胞膜のリン脂質が損壊すると、ホスホリパーゼA2という酵素によってアラキドン酸という炎症を仲介する物質に変わる。
そこにシクロオキシゲナーゼ(COX)と作用してプロスタグランジン(PG)という炎症物質が産生されることで、炎症性の痛みが発症するのだ。

痛みを発症させないためには、アラキドン酸という仲介者を叩かなければならない。
起始段階で抑えるにはステロイドなどの最強の鎮痛薬になるが、リスクも高い。
もうすこし下流で抑えようとするならば、アラキドン酸から炎症物質であるプロスタグランジンを産生させないことになる。
そこでCOXを叩くCOX阻害薬が用いられる。
これは通常の消炎鎮痛薬であるアスピリンやインドメタシンなどの、非ステロイド性鎮痛薬(NSAID’s)である。
COXは胃や腎臓などの保護作用を持つとされる。
それを叩くことになるので、リスクは胃にダメージを与える。
だから胃薬も処方されることになる。
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図を見るとよくわかるようにプロスタグランジンとブラジキニンはダッグを形成していて、相互に作用増強と生成促進で連携しているから厄介である。

ところで、この研究ではホスホリパーゼA2値に正常な椎間板との差がなかったというのである。
ということは、椎間板ヘルニアや坐骨神経痛は基本的に炎症性疾患ではないということになる。
では、なぜそんな痛みが起こるのか?
やはり、筋・筋膜由来の機械的刺激が興奮性に働くとみる方がスジが通るのである。
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by m_chiro | 2017-06-06 18:25 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)



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