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トリガーポイントなどの鎮痛に介入する現象って何だろう?
[ある症例から]
右臀部から足首までの下肢痛を訴えて、中年の婦人が治療にみえた。
睡眠中も度々痛んで目覚め、下肢を伸ばしていても痛みが起こる。
3日前から急に痛み出した。思い当たることもない。

どこか悪い病気だろうか、と不安げに聞いてくる。
患部を上にして側臥位にさせ、その痛みがどんな動きで起こるのか、脚の運動をさせてみた。
伸展と外転の動きで特に顕著である。
中・小殿筋からTPを探って、押圧するとジャンプ兆候の関連痛が起こる。
中殿筋と小殿筋にそれぞれ一か所ずつトリガーポイントがあった。

それぞれのポイントの深さに到達するまで感覚を差し込み(押力で入り込むのではなく)、その硬い部位に手の感覚が届くと、そこから動きがリリースされる方向に感覚を向けて待つ。
すると組織の同調作用が起こる。あるいは拍動が起こって、その後にフニャッと動き出す。
グリグリと揉むわけではない。
停滞した深部の組織が動き出す方向に感覚意識を向けているだけである。
これでもう一度、脚を動かしてもらう。
「アレッ、痛くない!」。

これは悪い病気ではなく、「筋・筋膜性疼痛症候群:MPS」という病態であること。
筋線維がダマのようになって、そこがトリガーポイントとなった下肢の方まで痛みが飛んで行く関連痛が起こること。
そんな説明をしていると、「トリガーポイントって、この間テレビでやっていました。このことなんですか。テレビでは鍼をしていたけど、触っても治るんですか?」
私はただ触っているわけではなく組織の干渉を引き出しているのであるが、揉んでも、押しても、鍼でも、トリガーポイント注射でも、いろんな方法が使われている。

でも即興的に痛みが消えたからといって、この病態は侮れない。
筋・筋膜の問題は動きによる負荷でまた痛みやすくなるからだ。
問題が発生するような反復する動作や、身体機能のアンバランスに注目して、在宅でできるストレッチやマッサージを指導することも回復に役立つだろう。

「SPINE」に、こんな報告がある。
“A Prospective, Randomized, Double-Blind Evaluation of Trigger-Point Injection Therapy for Low-Back Pain.”
「腰痛へのトリガーポイント注射療法の前向き無作為化、二重盲検評価」(ジョージ·ワシントン大学医療センター)

4週間の保存療法の後に、残存した63人の腰痛患者を対象にしたトリガーポイント注射治療の有効性を無作為化、二重盲検によって評価した論文である。
4つの異なるタイプの手法で評価している。
①はリドカイン注射、②はリドカイン&ステロイド、③は鍼治療、④冷却スプレーと経絡圧、である。結果、4つのいずれもが同程度の有効性を示した
要するに、トリガーポイントに直接機械的刺激を行っても同等の症状の緩和をみたわけで、注入薬物が重要な要因ではない、という結論である。

もう一つ「ランセット」からの報告。
“A control, double-blind comparison of mepivacaine injection versus saline injection for myofascial pain.”「筋・筋膜痛のための生理食塩水注射とメピバカイン注射によるコントロールの二重盲検による比較」

急性の局所的筋痛のある28人に0.5%メピバカイン局所注射を行ったグループ。
同タイプの症状を持つ別のグループ25人に対しては、同量の生理食塩水注射を行った。
その二重盲検比較によると、生理食塩水注射を行ったグループでは最初の注射の後の緩和がより多く見られた。
しかしながら、両群に有意な差はなく同様の緩和がみられている。
痛みが緩和する可能性を考えると、単に局所麻酔薬とは考えられない。
もしかしたら、注射針を刺入することで、痛みの緩和が起こるのかもしれない。

薬物の副作用の可能性を考慮すれば、生理食塩水は局所麻酔薬より適した流体と考えられる。
そう結論付けている。

さて、いったいトリガーポイントや筋・筋膜の障害による鎮痛・緩和にどんな作用が介在するのだろう。
機械的刺激も刺激の強度に関係なく、皮膚接触から強刺激まで様々な手法があり、それぞれが効果を上げているという。鍼では深部の組織に直接的に介入する方法もあるようだ。
注射も局麻剤でなくても、生理食塩水でもいいらしい。
要するに何でもありの様相である。

そこには何か共通する条件があるに違いない。
それを探りながら、私は今、細胞の流動性(フロー現象)に関心を持っている。
by m_chiro | 2015-07-23 15:58 | 膜系連鎖
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