もう一つの視覚経路-新生児は見えている? それとも見えない!-
出産の1週間前まで治療にみえていた妊婦が、新米ママさんになった。
「安産だったね」と産院スタッフに言われたらしいが、大きな赤ちゃんで、本人にはそんな自覚はなかったようだ。 それでも新米ママさんとして、家族の助けを得ながら元気に奮闘中である。 先日、顔を見せに来院した。 その時の話である。 「赤ちゃんは、まだ目が見えないんですよね。でもじっと見つめられると、見えてるんじゃないかと思えるんですよ。ニコッと笑ったりもするし...」 というわけで、視経路には2つのルートがあるという話である。 通常、神経学的に赤ちゃんは視覚が未発達で明暗が分かる程度のようだ。 その視覚の未発達とは、視覚の脳回路のうちの一つで、通常われわれが使っている回路である。 それは網膜-視神経-視交差-視索-外側膝状体(神経核)-視放線-後頭葉大17野のルートで像が結ばれる回路だ。 下の略図の経路になる。 もう一つは、外側膝状体を通らない次の経路である。 網膜から上丘に伝わり、そこでぼんやりとした瞬時の像が投影されるルートが分かっている。 上丘からは視床枕、偏桃体へとつながるルートで、副視索核も含んでいる。 このルートは外側膝状体を通らないので「膝状体外系:非膝状体系」と呼ばれているようである。 次の「視経路・視路」のサイトに詳しい解説がある。 確かに新生児では、本来の膝状体系の視覚路が未発達かもしれないが、もう一つの回路(非膝状体系)を使って、単に明暗だけでなく「ぼんやりとした像」を見ているのではないだろうか。 この回路は偏桃体という辺縁系の部分に信号が送られている。 とすると、非膝状体系はもっとも本能的な視覚を受け持っていて、快・不快の情動系に直接関わっているのかもしれない。 赤ちゃんの「快・不快」反応も、この視覚系が関与している可能性がある。 そして、実はこの回路こそが原初の視経路であり、本来の経路と思われていた外側膝状体系は、進化と共に後天的に獲得したし経路と言えないだろうか。 道路に無造作に放られているロープを蛇と思い過ごして竦んだり、運動系の本能的な対応にも、この原初の信号系のルートが先立って発信しているのだろう。 すべてを神経学の理解で当てはめることのできないものが多々あるようだ。
by m_chiro
| 2015-05-29 17:51
| 「神経学」覚書
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