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[自律神経系」覚書❷
❷交感神経と痛みは、切っても切れない関係

例えば、腰痛がだいぶ良くなったと思っているうちに再発したり、激化したり、反復する患者さんも少なからずいる。
それでも、おおよそ90%の急性腰痛の患者さんは6カ月以内に治癒する、というステートメントがある。
ほんとに急性の腰痛は通常6カ月で90%が回復するのだろうか?

しかしながら、その提言に反論する前向きコホート調査の論文も出されている。
[Prognosis in patients with recent onset low back pain in Australian primary care: inception cohort study:BMJ 2008;337:a171, doi: 10.1136/bmj.a171 (Published 7 July 2008)]
追跡対象973例(平均年齢43.3歳、男性54.8%)の、オーストラリアにおけるコホート調査である。
その調査によると、1年以内でも7割ほどの改善率でしかはない。
[自律神経系」覚書❷_c0113928_1194312.jpg


急性痛か慢性痛かの見分けは、患者さんの訴えに見合う障害があるかないか、を確認することなのだろう。
そこに原因となる障害部位があれば、いくら痛みが長期化していてもそれは急性痛として対応しなければならない。
障害部位を回復させることに、まずは専念すべきであるということだが、慢性痛症と診断された患者さんでも少なからず急性痛の部分を持っている。
つまり混在している。
あるいは痛みが自己持続性に存在するとしたら、そこに関わる要因を広く考えるべきなのだろう。

こうした痛みの自己持続性に関わる可能な要因とは何だろう。
第一に思い浮かぶのは「交感神経の活動」である。
痛みは交感神経の活動性を増す。
したがって筋の緊張性も増加する。

交感神経からの入力は、α運動ニューロンの興奮性を高めることになる。
あるいは細動脈の血流を阻害する。
こうして痛みの悪循環が始動することになる。

筋スパズムによる痛みは、筋収縮が持続性に起こった結果である。
後角への興奮性の入力が続いているのだろう。
もしも分節性の抑制が行われなければ、それでも痛みのサイクルは持続するだろう。

あるいは脊髄より上位ニューロンからの抑制が減少していても、やはり興奮性入力は続くことになる。
痛みの自己持続性は、神経のみならず筋組織にも可塑的変化が起こる可能性を示唆するものである。
だから痛みは早急に除去しなければならない、とする理由にもなるだろう。

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痛みの循環経路図では、そのルートのどこからでも痛みを遮断することができる。
もしも痛み症状が残されたままに置かれると、どうなるのだろう。
除去されなかった痛みは、再悪化、再激化する可能性を秘めている。

なぜなら不完全な鎮痛が残れば、交感神経の興奮が抑制されない状態も残るからだ。
それで再びスパズムが起こる火種となる。

中途半端に残された痛みによって、交感神経の興奮が自分自身の中で続くことになるというわけである。
痛みの自己持続性は、交感神経の興奮が続く限りトリガーにもなるということだろう。
by m_chiro | 2015-01-13 11:08
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