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PGE2は、炎症や痛みにどうかかわるのだろう?②
PGE2は、炎症や痛みにどうかかわるのだろう?②
② 組織に損傷がなくても、PGE2は放出される


"Metabolism and inflammatory mediators in the peritendinous space measured by microdialysis during intermittent isometric exercise in humans."

「ヒトの断続的な等尺性運動で、腱周辺間隙に代謝および炎症メデイエーターが微量透析法によって測定された」という報告。

プロスタグランジン(PGE2)は、組織損傷の結果として炎症と痛みを演出すると理解されている。
ところが、この見解はあまりにも一方的すぎる、
こうした見解を捨てるべきだ、という報告のひとつである。

微量透析技術(microdialysis)を用いた研究で、通常の歩行を模した断続的な足底屈曲アイソメトリック運動を行い、アキレス腱の周辺組織から採取した液性成分の調査である。
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この運動で明らかにPGE2が増加している。たが、被験者に痛みは出なかった。
組織の損傷がなかったにもかかわらず、なぜPGE2が放出されたのだろう。
研究者は、PGE2がアキレス腱と他の組織に血管拡張を作ったことによるものだと結論づけている。

この研究でわかったこと。
通常の運動負荷でも、炎症活動に見られるような脂質と炭水化物の代謝がアキレス腱周辺組織で加速したということである。要するに、新陳代謝のプロセスも機械的な運動負荷によって人間のプログラミングに下書きされるのだ。これらのプロセスは、損傷と使い過ぎによる炎症の進行を理解する上で重要なのだろう。

“Cyclo-oxygenase-2 mediated prostaglandin release regulates blood flow in connective tissue during mechanical loading in humans. ”
「COX-2の媒介によるプロスタグランジンの遊離は、ヒトの機械的荷重で関連組織の血流を調節する」という報告(報告は、コペンハーゲン大学病院リウマチ科・スポーツ医学ユニットから).

COX-2の媒介したプロスタグランジンの放出は、ヒトにおける機械的荷重によって結合組織の血流を調節する。

アキレス腱での PGE2 の産生が高まるのは、歩行運動中と停止回復期で、休息時でさえPGE2 の産生がみられる。
ところが、COX-2を阻害する薬物を服用している間には、増加することはなかった。

要するに、マクロファージが線維芽細胞を刺激して産出するPGE2は、損傷時に限らず、あらゆる場面で合成されていることになる。
だからと言って痛みを伴うとは限らないのである。

この研究から学ぶべきキーポイントは、休息時でさえ通常「痛みや炎症を起こす」とされている PGE2 を産み出すということである。

そして、歩行をシミュレートする軽いアイソメトリック運動のような、決して有害でない刺激によっても炎症性メディエーターは産出されているのである。

組織が損傷してるか否かは、PGE2産生に何の関連もないということになる。
だから仮に組織治癒が損傷後に起こるとしても、PGE2にその根拠があるわけではないのだろう。

もうひとつ重要なのは、COX-1とCOX-2の酵素は、食事で摂取したΩ6アラキドン酸を PGE2に換えるということだ。
更に、同じCOX酵素が食事で摂取された物質のΩ3エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)を抗炎症性メディエーターに換えるのである。

したがって、細胞膜の中にあって炎症活動を行うCOX酵素に対して、Ω6とΩ3脂肪酸のバランスは痛みと炎症に影響を与えていることになる。

これも栄養学的循環の鍵となる知見である。痛みは、その前駆段階として栄養学的循環の問題も頭に入れておく必要がありそうだ。
by m_chiro | 2013-02-07 17:28 | 痛み考
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