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身体機能の連鎖は面白い
先日、終了間際にギックリ腰になったと言って突然みえた女性の患者さんがあった。
なんでも、両手に荷物を持って階段を昇って行った際に、腰にピリッとした痛みが走ったのだそうである。そのまま会議に出て座っていたら次第に具合が悪くなり、立ち座り、歩行も辛くなって、そのまま直行してお見えになった。 運動分析では、前後屈で痛みが腰仙部を横に広がる。左腰部の筋のトーンは低下していて、左右差が明らかである。左腰腸肋筋の損傷のように思えた。左の腹斜筋も緊張度が低下している。骨盤反射も前方と後方で異常だった。筋線維の損傷が大きければ腫れや熱感があるだろうが、そんな徴候はみられない。おそらく浅筋膜の障害だろう。 ギックリ腰は、睡眠後に起きるのが辛くなりやすい。だから、痛まない動きを出来るだけ行うことが望ましい。だからと言って、やたら意味のない刺激を与えることも好ましくない。カイロプラクターがよく行うマニピュレーションは、こうした患者さんに用いると大抵は余計に悪化させてしまうことが多い。このことは、近年のカイロプラクティック理論で提唱されている「デスアファレンテーション(求心性入力不全)理論」によっても理由づけられる。侵害刺激が過剰になり、圧・動き刺激が減少すると、入出力のコンビネーションの悪化が痛みを増強させるのである。すると筋スパズムが起こる。交感神経の緊張も亢進して自律神経症状も発現する。デスアファレンテーション理論は、この入出力信号のコンビネーションに注目しているのである。 この患者さん、治療後には痛みも半減したようだが、左腰部の筋群は相変わらず緊張度が低下したままだった。何故だろうかと思いながらも、取り敢えず注意事項を指示して明朝もう一度みることにした。 翌朝、「痛みがなく起きれた」と言って再診にみえた。 どれどれ...と思いつつ触診すると、緊張度の低下した左腰部の筋は相変わらず低下したままである。それでも立ち座りや歩行も8割方は大丈夫らしい。だから慎重に動けば大した問題はないのだそうだ。 そこで、特に痛みを感じる動作などはあるのか、悪化因子を聞いてみた。 「右手を伸ばして物を取るような動作で痛む。左手を伸ばすのは何ともない」と言う。 そこで再現させてみた。確かに右手を伸ばすと腰仙部に痛みを感じるようである。 そう言えば、「荷物を両手に持って階段を昇っていてギックリ腰になった」と言っていたことを思い出した。大胸筋を触診すると右の大胸筋鎖骨部に強いジャンプ兆候の圧痛があり、それは右乳房下部へ跳ぶトリガーポイント(TP)である。右肩甲骨内側部にも圧痛がある。そして右胸郭は固着したように可動性をなくしている。 腰部にばかり気を取られて、見逃していたようだ。 ![]() 右の胸郭の固着が大胸筋TPを作ったのか、あるいはその逆かはわからない。が、こうした胸郭の片側の固着が、対側の腰部や腹部の筋群を代償して緊張度を低下させたのではないかと推測された。 そこで左胸郭部のTPをリリースすると、固着した胸郭が動き出し、併せて対側腰部(左)の筋群の緊張低下が戻ってきた。 今度は右手を伸ばしても腰への痛みが起こらなくなった。 身体機能の連鎖は本当に面白い。
by m_chiro
| 2011-02-28 12:12
| 膜系連鎖
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