巨星・熊澤孝朗先生、逝く
「日本カイロプラクティック徒手医学会」の実行委員会があり、7月31日に福岡に出向いた。
当日は、今年度の学会の実行委員を務める「九州カイロプラクティック同友会」の夏期合宿で、事前のおさらいとして「痛みと鎮痛のメカニズム」について話をさせていただいたのである。 翌日は症例検討会があり、午後からは実行委員会と密度の濃いスケジュールを消化して、夜も更けて帰宅した。 留守中のメールをチェックしていて驚いた。 名古屋大学名誉教授の熊澤孝朗先生が、平成22年7月26日(月)に御逝去された訃報の知らせが届いていたのである。77歳の生涯であった。 この春に、科学新聞社の斎藤社長と共に熊澤先生の研究室を訪問し、1時間半にわたり先生から親しくお話をお伺いした日が思い出されて、何とも言われぬ悲しみが込み上げてきた。 このインタビュー記事は学会のHPにアップされている。私にとっては心に残る仕事となった。 インタビューの時も体調がすぐれない中、予定の時間をオーバーしてお話し下さった。 お声が充分に出ないご様子であったにもかかわらず、最後まで誠意のこもった対応をいただいたのである。 ところがインタビューを録音した音声も聞き取りが困難で、その文章化には本当に苦労したのであるが、「不明瞭な部分には自分が責任を持って埋める」からと、最終原稿の校正までしていただいた。 ご無理を強いてしまったのかと、心苦しく思うばかりであるが、この原稿が先生の最後のメッセージだったのかもしれない。 この9月の学会を、実行委員会は「痛みの学会」と位置付けた。 その招待講演者にまで、熊澤先生からは人選から交渉と身に余るご協力を頂いた。 ついこの間も奥様の代筆で、「痛みと取り組んでご活躍なさいますように…」との伝言を心引き締まる思いで拝受したばかりであった。 熊澤先生の御心に報いるためにも、9月の学会は全力で向かいたい!、と思う。 研究者としての熊澤先生は大きな器の偉大な学者であったことを、短い対面の中でも感じることができた。 ご自身の研究の業績をいかに社会に還元し生かすかということに、大きな使命感をお持ちだったのだろう。その雰囲気や言葉の端々に滲み出ている信念といったものを感じ取ることができたのである。又、偉大な教育者としての姿も偲ばれた。 「サイエンスは分かりやすく!」という熊澤先生の信念が、このことを物語ってもいる。 大切な学者を失ったことは、本当に残念でならない。 「痛みの治療は、痛みを知ることから始まる」。 これを、熊澤先生が私たちに送られた印象的なメッセージとして、私は受け止めた。 今は、ただただ心からご冥福をお祈りしたい。
by m_chiro
| 2010-08-02 06:12
| 痛み考
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