呆れた食い意地!
群馬県の伊香保で捨てられた幼犬が、保健所行きを免れて我が家に来てから9年になった。
確かな素性は分からないが、おそらくMix犬だろう。 それでも大部分は甲斐犬の血に違いない。風貌や虎毛の模様などからそう思う。 ふとみると、パーフェクトな甲斐犬のようにも見える。 散歩で犬に詳しい人と出会うと、「甲斐犬ですね」とよく声をかけられたりもする。 ある時などは、自動車の走行中に見かけたらしい人が、わざわざ車を止めて寄って来て声をかけてくれた。 一見するに甲斐犬なのだろうが、本当の血筋は分からない。 それでも、我が家の桐子は甲斐犬の外見的特徴だけでなく、賢さと忠実さも持ち合わせているように思う。 何しろ、甲斐犬は天然記念物指定の犬なのである。 そんな忠犬が一変した。 やんちゃ娘の「空」が来て、随分と感化されたようだ。 空は留守番をさせると、ごみ箱をひっくり返してゴミを散らかすのは朝飯前。 ティシュペーパーの箱を引き破っては、部屋中にティッシュを散乱させていたことも一度や二度ではない。あの頃の空のやんちゃぶりには、本当に閉口した。 その空が今ではとてもお利口なお姉さんになり、かつての「やんちゃぶり」はすっかり影をひそめてしまった。 一方、桐子が代わって持前の知恵を働かし、留守中に物色するようになった。 桐子の関心は、ほとんど食べ物だけである。無駄な荒らしは決してしない。 どこに何をしまってあるか、人のやることなすことジッと見ている。 大好物のパンを戸棚に入れて置こうものなら、留守中に戸棚をあけて失敬するのはお手のものである。 煮物の鍋も、背の届くところには置いておけない。 怒られても、怒られても、摂食行動にはブレーキが利かないようだ。 だから、うっかりできない。 この頃は、家人も防御に余念がない。 ところがである。この間は買い物に出かけて帰宅したら、ちょっと様子が変である。 帰宅すると待ちわびたように寄ってくるのに、空だけがお出迎え。 しかも何やらブツクサと訴えている。まるで桐子の所業をタレこんでいるように、まくしたてる。 桐子の姿はない。いやな予感である。 台所に入ると、缶詰の空き缶が転がっていた。 空き缶など、どこから引っ張り出してきたのだろう? と思いながら桐子を探したら、テーブルの下で恐縮している。 空き缶を取って見ると、なんと今夜の酒の肴にしようと用意していた「サバの味噌煮缶」である。テーブルの上に置いておいたものだが、俄かに事情が呑み込めない。 酒の肴が空になって床に転がっていたのだ。 空き缶に歯形がついているところをみると、缶を開けて完食したようである。 まさか、缶詰まで開けるとは思いもしなかった。呆れた所業だである。 それにしても見事に開けたものだ。缶詰を開ける犬など聞いたことがない。 申し訳なさそうな顔で恐縮しているのは、ポーズだけかも??? 怒られたらしょうがない、とも見て取れる。 やれやれ、桐子の食い意地と執念には、ただただ呆れ果ててしまった。
by m_chiro
| 2009-10-19 21:26
| わん・にゃん物語
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