めまい
中高年の男性。2ヶ月ほど前に風邪をひいた。微熱が続き、咳が出て2週間位治らなかった。体重も3~4kg減ったそうだ。以来、めまいが続いている。
前頭部の頭痛、耳鳴り、左の難聴、目のちらつき感もある。 特に左半身が痛苦しく、鎮痛剤も処方されている。めまいが中々完治しないから、と治療にみえた。ひどいときは回転性のめまいで起き上がれなくなる。動けるようになっても動揺感があり、歩いていてもふらつき感がある。 10年前に左の鼓膜に穴が開き手術を受けている。3~4年前に初めて「めまい」を経験した。その時に検査を受けている。CTでは問題がなく、結果的に左耳の中耳炎を指摘された。水が溜まって、抜いてもらって良くなった。それ以来、耳鼻科での治療は継続中だった。今回の2度目のめまいが起るまでは、問題なく生活できていた。 「めまい」の患者さんで、最初に除外すべきは脳障害である。めまいの強弱には関係なしに、重篤な問題を見逃さないようにしなければならない。ほとんどは簡単なチェックで見分けられる。自力で来院できるからと言って、良性のめまいとは限らない。中には付き添いから支えられてみえる患者さんもいるが、多くは医療機関で事前に診断を受けている。 ところが、やっかいなことに必ずしも確定診断が得られているとも限らない。めまいの患者さんは単一症状ではなく、よく随伴症状を訴えることが多い。だから確定診断もやっかいなのだろう。 この患者さんのめまいは、聞き取りした限りでは原因がよく分からない、とされたようである。 発症経過からみると前庭神経炎が疑われる。それでも、今でも時々発作が起る。以前からの耳鳴り、難聴もある。メニエール病と診断されてもおかしくはない。 寝返りや朝起き上がる時にも「めまい」が起ることがあるので、慎重に動いているようだ。すると頭位変換のめまいも除外できない。 前庭神経炎は回転性の発作が治まっても10ヶ月もふらつき感が残ることがある、と専門医に聞いたことがあるから、これも否定できない。 きっかけは前庭神経炎でも、混在しているのかもしれない。 めまいが起こったらどうしているか、を聞いてみた。 すると「目をつむって安静にしていると、しばらくして落ち着いてくる」と言う。 そこで、開眼と閉眼でどんな変化があるかを尋ねると、TVを見るとダメらしい。 本人は、明るい光がダメなのだと言うが、どうも眼反射に問題がありそうである。 眼球運動をみると、明らかに右上方向で動揺している。 「確かに右上を見ると具合が悪くなる」と言う。 治療は、頭蓋から頚部、眼反射まで視野に入れて行った。 3回目の治療にみえたときに、「昨日また発作が起った」と言う。 2回目の治療の後からとても気分がよくなり、昨日はグランドゴルフに出かけたそうだ。 すると夜にめまい発作が起り、朝起きるときは随分気分が悪かったようだ。眼反射が安定していないので、まだ動くものを追うようなことには気をつけなければならない。 頭蓋と眼球運動を安定させることに集中して、治療を続けることにした。 治療5回目で眼反射が安定し、眼球運動でも動揺がなくなった。 38日間で計7回治療して、めまいや動揺感、前頭部痛や目症状も解消し、日常の生活を取り戻したが耳鳴りは消えなかった。 めまい症状の半数近くは、「良性の頭位めまい」であるが、症状は回転性であったり、ふらつき感であったり一様ではない。動けないというので往診することもあるが、それでも「良性の頭位めまい」は数日で安定しやすい。 原因不明とされる「めまい症」の割合も結構多くある。原因不明の「めまい」は、機能性の問題などが混在しているのかもしれない。 そんなときでも、何が憎悪させるか、どうすると落ち着くか、これらの情報がとても参考になることがある。 徒手療法としては、頚部から頭蓋、眼球運動など、視野を広くして機能性の問題をみていくことが必要なのだと思う。
by m_chiro
| 2009-07-17 19:35
| 症例
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