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身体の歪みは必ずしも矯正すべきだとは限らない
解剖学者の故・三木茂夫先生の書き残された論文には、これまで大いに啓発されてきた。
例えば、生の原型について書かれた「宇宙の根源現象」には「らせん」と「リズム」に関する記述がある。
このことを初めて洞察したのはゲーテらしい。

朝顔の茎が支柱にらせんを描いて巻きつく様。杉の古木のらせんの溝(ほとんど左巻き)。
植物の葉がらせん状に次々と飾りつける様。花弁の渦巻き。
発芽の連続写真では芽の先端がらせんを描きながら真直ぐに成長する様。
大動脈壁にみる線維のらせん。無髄神経に見るらせん。
血管に腸管、尿管に卵管、精管に臍の緒など互いに交差したらせんの層線維。
羊の角、マンモスの牙などなど。DNAもらせん構造だ。
これは生き物だけに留まらない。台風の渦、ジェット気流、渦潮に素粒子のスピン運動などなど。

身体を見ても、やはり「らせん現象」としての捻じれや傾斜が観察できる。
大なり小なり捻じれの見られない人は、先ずいない。
急性の痛みを訴える人、例えばぎっくり腰になった人などには、特に顕著に捻じれや傾斜がみられる。
だからといって、捻じれや歪みを特別に問題視することなどない。
問題にすべきは痛みであって、歪みや傾斜ではないからである。
だから、代償された歪みは、痛みが消えれば戻ることが多い。
身体に見る「らせん」の歪みは生き物の原型なのだから、右巻きの「らせん」現象だろうが、左巻きだろうが、すべては代償作用に従っている。

従って、身体の捻じれ現象を抱えている人でも、特別な問題もなく健康に過ごしている人は沢山いる。
では、身体の捻じれ現象は全く問題がないのかと言えば、そうとも言えない。
それは「生の原型」としての代償する捻じれパターンが、壊れているタイプである。
このタイプのらせん現象は、「生の原型」であるべき補正のパターンを作れていない。
非代償性の歪みパターンである。したがって、この「非代償性タイプ」は痛みや不調を引き込みやすい。

そこで何をすべきかと言えば、本来の代償性の「らせんパターン」、補正作用としての「傾斜パターン」に戻してあげればいい。
どこでその補正パターンが崩れたか?
それが分れば、そこを補正パターンに歪めてあげればいい。
ぎっくり腰で傾斜した身体を、なまじ矯正したりすると動けなくなることがある。
これは補正作用を取り除いた行為の結果だからであろう。

長年、人の身体を観察して、この「らせん構造」に築いたドクターがいた。
三木先生が言う「生の原型」と、同じ観察を身体に見つけたわけである。
オステオパシーのゴードン・ジンクD.O.である。
アイオワ州のデモイン・オステオパシー大学で教鞭を取りながら、生涯の大半を筋膜の研究に費やしたとされるドクターである。
そして、健常者の「代償性らせん&傾斜のパターン」と、病的な「非代償性パターン」を分析している。
代償する部位も決まっていることに気づいた。
つまり、後頭骨-環椎-軸椎部位、胸隔膜、横隔膜、骨盤隔膜の4部位に注目している。
補正作用が、どの部位で崩れたかを分析すれば、治療のターゲットを絞り込める。
本来の補正パターンを再現できれば、身体は自ら修正方向に作用する、と言うわけである。

私はこの原理を参考にして、治療に生かしている。
力学的介入はほとんど行わない。刺激の入出力による学習能を利用している。
それでも残された非代償性パターンがあれば、そこで初めて力学的な介入を行っている。

身体の歪みは真直ぐに矯正すればいい、と言うわけでもないのである。
本来が「代償性パターン」で当たり前なのである。
この代償性を壊したら、身体は不調になる。原型に戻せば本来の機能を保ちやすい、と言うことにもなろうか。
by m_chiro | 2009-06-11 22:37 | 膜系連鎖
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