痛み学NOTE④ 痛みには3つのカテゴリーしかない
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

④ 痛みには3つのカテゴリーしかない

痛みの定義(IASP)によれば、痛みには二面性がある。
感覚的な側面と情動的な側面であるが、後者がこの痛み感覚をより複雑にしているようだ。
痛みが「個人的な経験」とされる所以でもある。
更に深刻なことは、痛みを「病い」としては捉えない状況が医療サイドにあることだろう。

痛み症状を持つ疾患を数えあげても随分の数になる。
その一つひとつの疾患を痛み症状との関連から捉えようとすると、更に悩まされてしまう。

でも、痛みそのものを分類すると3つのカテゴリーしかない、という単純な話になる。
 その3つとは、
1.侵害受容性疼痛、
2.神経因性疼痛、
3.心因性疼痛、
である。
なかには「癌性疼痛」を別にして4つに分類する向きもあるが、「神経因性疼痛」に含めている場合が多い。

 さて、わたくし達のように徒手療法で扱う痛みはどれか、と言えば、そのほとんど全部と言ってもいいくらい「侵害受容性疼痛」を治療していると断言してもいいだろう。
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# by m_chiro | 2007-12-03 23:45 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(1)
痛みはアラーム・システムにおける最終警告か。
痛みを診ることのできない医師たち③

慢性痛の治療にあたっては、筋肉にだけの介入ではうまくいかないことも多いものです。時間的、経済的にも自ずと制限があるわけですから。抗うつ薬や抗不安薬は痛みの回路に介入する薬です。うつ病や神経症だから処方するのではありません。とにかく慢性化した痛み、難治な痛みには多角的に治療にあたる必要があります。


私のような徒手療法の治療家には、慢性痛に介入する薬物という武器がありません。
慢性痛には「神経の可塑性」という難問が待ち構えています。
それに、手技でどう対応することが出来るのだろう?
そのことを長い間、問い続けて来ました。

ヒントになったものがいくつかありました。
ひとつは「認知行動療法」です。身体の入力と出力系を再構築するための認知を促す手法です。
2つめは、「うずまき反射」という原始的な警告系の起源の存在です。この反射信号を頼りに、認知させる手法を考えました。

ところが、慢性痛には警告系の役目を果たさない「慢性痛症」がある、と熊澤教授が書いていました。
「慢性痛と慢性痛症」
http://www.aichi-med-u.ac.jp/pain/manseitusho.html

慢性痛症における「警告系の意義のない痛み」ということが、私にはよく分かりませんでした。痛みの神経系が可塑的な変容を起こしている、ということは理解できます。でも、なぜ警告系としての意義がないのかが分かりません。

慢性痛症をかかえる患者さんは、痛みのために行動が抑制され、不安に苛まれているようです。圧痛もよくみられます。これも警告系の現れではないのだろうか。なぜ、警告系の意義がないの?

神経系が可塑的変容を来たしたことは、警告系システムが作動したままでロック状態に入った深刻なレベルの警告(レベル4)ではないのか、と私は逆に思ってしまいます。

もっとも、日常生活を取り戻すための理学療法や代替療法、精神的ケアなどを推奨しているわけですから、本来の神経系を新たに作動させるための認知療法が重要だということなのでしょう。これは、脳の学習システムを利用することだと考えました。

3つめは、脳の学習システムについてです。特に、故・松本元先生の研究には大いに啓発されました。松本先生は、研究者として盛りの時に急逝されましたので残念でなりませんが、「脳は表引きテーブル」という概念、「脳は自己創出による出力依存性の学習機能を持つこと」など、多くの示唆を得ました。
愛は脳を活性化する
松本 元 / / 岩波書店
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4つめは、NIH(米)の神経生理学者ポール・D・マクリーンの「三つの脳の進化」の考え方でした。脳が進化と共に増築しながら階層構造を作ってきたとすれば、警告系も3段階でアラームを発信しているのではないかと考えたわけです。

最古の脳である「脳幹レベル」で発信する「うずまき反射」。本当に反射的なアラームです。
次に「辺縁系レベル」で発信するアラームで情動系から発信します。何か気が重いなど、情動的な「行動の抑制」や「すくみ現象」が現れはじめます。
そして最後は「皮質レベル」で発信する「痛み」です。痛みはアラーム・システムの最終警告だと思います。

有髄のAδ線維が伝える信号は緊急用のアラームですが、重要なのは無髄のC線維で、その終末のポリモーダル受容器です。この原始的な受容器を介して、最終的な警告系情報が飛び交っているでしょう。
また、加茂先生のサイトは痛みの理解に欠かせないものでした。

こうして、3つの警告系をリセットすることを考えました。これは薬物という武器を持たない私の治療に欠かせない手法の下地になっています。まだまだ検証しながら、ヒトの警告系と学習と認知の手法を追い求めたいと思います。
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# by m_chiro | 2007-12-02 21:29 | BASE論考 | Trackback | Comments(1)
「今回は、脊柱管狭窄症の痛み?」の後日談
今回は、脊柱管狭窄症の痛み?

Iさんは仕事にも復帰し、跛行もなく、順調に回復したが、疲れると昨年手術した腰部が気になる、そうだ。
最近、こんなことも言い出した。

「頚も腰も、手術する必要なかったんじゃないだろうか?」
そう言われても返事に窮してしまう。
「...。通常、痛みは身体の電気系統のトラブルなんだから、大工仕事をするんじゃなくて、電気屋さんの仕事なんだけどね」。
「私、電気屋なんですよ」(笑)。
「じゃ、家の電気のトラブルが起きているのに、大工さんを呼んで柱を切ってもらった人がいたら、どう思う?」
「そりゃ、バカもんじゃのぉ~。 あ!、おれがバカか...」。
こんな会話が出るようになったのも、余裕が出てきたからでしょう。

加茂先生の心療整形外科のブログやHPには、そんな筋・筋膜の病態が沢山紹介されている。

TravellとSimonnsは、中殿筋障害の注意点として「モートン足」を確認するように勧めている。モートン足とは第一中足骨が短く、第二中足骨が長い構造になっている。だから第2指が母趾よりも極端に長い。その構造的不均衡を代償して歩いたり、立つことで、中殿筋にTrPを生じやすくする遠因にもなると指摘している。
Iさんの足も確かにモートン足だ。第2指が極端に長い。オーバーユースで緊張のみられる足底の筋膜も調整すると、歩行時の足の返りもスムーズになった。
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# by m_chiro | 2007-11-30 21:37 | 症例 | Trackback(1) | Comments(7)
最初の疑問
なぜ、病気になる人とならない人がいるのだろう? 
なぜ、早く回復する人と、いつまでも病を抱えている人がいるのだろうか? 

このことは消えることのない疑問でした。思えば、カイロプラクティックの創始者であるD.D.パーマーが、同じ疑問から出発して、背骨のちょっとした狂いが神経の緊張度を変えるのだ、という考え方にたどりついたのです。

でも、長年治療しながら思います。それでもなんで痛みが出るの? 思い当たる原因もないのに! なんで体調が悪くなるの? なんで? なんで? と思ってしまいます。

こんなに医学が進歩したと言うのに、なぜ病気になるのか、本当のところはよくわからないのです。腰痛の原因でさえも良くわからないのです。「そんな馬鹿な!」と、思うかもしれませんが、事実です。同じ生活をしていながら、風邪をひく人もいれば、まったく問題なく過ごす人もいるじゃないですか、身近に。

からだのどこが悪いのだろうか?と、局所の異常を探しても良くわからない。病院で検査をしても「問題ありません」、と言われる。でも具合が悪い。挙句の果てに「自律神経失調症」だの、「更年期症状」だの、あるいは「骨が変形している」と決めつけられるのですが、分かったようでいて良く分からない。それって年のせい? と納得させるしかないのでしょうか。

骨が変形すると本当に痛みが出るの? 老人でも元気な人の骨は変形してないの?

もっと不思議なのは、なんで治ったのか分からない。結局、勝手に治った、という結論になる。それはあんまりだ、と言うので「自然治癒力」のおかげだということになる。でも自然治癒力って何? 治った人はいいけれど、治らなかった人には自然治癒力がないの? 自然治癒力のある人と、ない人がいるわけ?

人のからだは本当に複雑です。まるでブラックボックスです。21世紀を境にして、からだのことも随分と分かるようになってきました。脳のこと、遺伝子のことなどなど、見方や考え方を変える解明も進んできました。

リチャード・ドーキンスという学者が「利己的な遺伝子」という有名な本を書きました。遺伝子から人間をみたのです。「生命体は遺伝子が自らをコピーし続けていくための乗り物に過ぎない」とドーキンス博士は言います。すると、われわれは遺伝子の奴隷なのでしょうか? 遺伝子によってすべてが決められているのでしょうか?

そんな生命に関するさまざまな疑問の根源を考えてみたいと思います。
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# by m_chiro | 2007-11-28 22:13 | BASE論考 | Trackback | Comments(0)
今回は、脊柱管狭窄症の痛み?
64歳の男性・Iさんの腰殿部痛と左下肢痛の例。

平成16年に、頚から肩・上肢の痛みで「環軸椎亜脱臼」と診断されて手術。
平成18年11月には、両側の腰下肢痛で腰部椎間板ヘルニアの手術。
「その都度、整形外科の手術で助けられた」そうだ。
兎も角、「それはよかったですね」。

ヘルニアの手術から1年経たずに、今年の7月末から両殿部痛と左下肢痛に苦しむ。
今度の診断は「脊柱管狭窄症」である。

手術が必要だが、昨年手術したばかりだから今回は様子をみましょう、ということで入院治療になった。1ヶ月の入院期間中、ブロック注射を行う。

痛みに変化はない。結局、坐薬と鎮痛剤、シップ薬を処方されて通院治療に変わる。

このままでは仕事に復帰できない。
頼りにしていた整形外科医に投げ出された思いで、他の方法を試そうと来院する。

痛む側を上にして、股関節を屈曲させた側臥位でないと痛みをしのげない。

これは中殿筋障害の特徴的な姿のようだ。
股関節を屈曲する方が楽だというのは、大殿筋の緊張はないのだろう。
こうしたケースでは、圧痛が深部にあるため見逃しやすい。
中殿筋の障害は仙腸関節に関連痛を起こすこともあり、深部にある本命の中殿筋TrPを見逃してしまうことがある。

そんなわけで「増悪因子と寛解因子」は治療の必須聞き取り項目である。
負荷が加わる組織や寛解される組織が特定しやすく、治療のターゲットをしぼりやすくなるのだ。

やはり、中殿筋に強いTrPがあった。腸腰筋付着部周辺にはバンド状に圧痛と拘縮した組織が触れる。リリースしていくと、1週間ほどで跛行もなくなり随分と動作も楽になって、仕事をはじめるまでになった。

根性痛や狭窄症の痛みと言われるものは、本当に怪しい。
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# by m_chiro | 2007-11-27 22:35 | 症例 | Trackback(1) | Comments(0)



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