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「線維筋痛症から回復した患者さん」との出会い
先日、ある女性から突然の電話をいただいた。
「痛み学NOTE」も読んでいただいているらしい。
しかも線維筋痛症に苦しめられた患者さんのようだ。
「苦しめられた」と過去形に言うからには、今では回復している女性である。

その得難い経験を広く知ってもらおうと、ホームページを立ち上げ啓蒙活動を展開されている方だった。
(「線維筋痛症から回復した患者のホームページ」)

またブログを通して、線維筋痛症患者さんへの力強いメッセージを送られており、アドバイスや相談にも応じておられる様子も窺うことができた。

「エントロピー学会」の会員としても、学会での講演や論文も発表されている。
その小田博子さんの半生記には、線維筋痛症との闘病から治療歴、そして回復への道すじの簡略な履歴が書かれていた。

それによると2001年に線維筋痛症を発病し、6年間にわたり様々な治療を試みながらの闘病生活を送っている。
線維筋痛症のパフォーマンス・ステージ「9(寝たきり状態)」からの回復のきっかけとなったのが、「BOOT(大脳志向型咬合療法):顎関節症クリニック・山田歯科」だったようである。

そこから彼女は、回復の裏付けを求めながら多くの学びをしたようだ。
そしてポリモーダル受容器と環境問題との関わりから、脳の過敏状態がつくられる機序に思いを馳せておられた。

これらを読むと、体内と対外環境の問題やその関連性を含めて線維筋痛症を考察されておられることを知ることができるだろう。
末梢性感作と中枢性感作の枠組みから、ポリモーダル受容器の特質が絡んで過敏状態が重畳的に現れる様を、経験的な感覚として書かれているのである。

現在も、線維筋痛症に関する論考を執筆中とのことで、ポリモーダル受容器や熊沢先生の著書の情報を尋ねての電話だった。

論文を含め、活動の資料も送っていただいた。

小田さんの活動には、線維筋痛症患者に対するエールとメッセージが込められている。
回復のきっかけは、人それぞれなのかもしれない。
それでも線維筋痛症の病態を知ること、痛みを知ること、そこからがスタートだと呼びかけているようにも思えた。

小田さんの論考には、ヒトの「空間認知機能の狂い」が取り上げられていたことが印象的だった。
それは姿勢制御系の問題である。
そこには視覚情報、前庭系からの情報、関節などの固有受容器の情報やポリモーダル受容器による情報、そうした姿勢制御系における情報の「混乱とその固定化」とでも言えるのだろう。

そうなると外的要因(環境からの刺激因子)が情報系に一層の拍車をかける(過敏化する)。そうした神経系の混乱の枠組みを、いったん破壊し、神経系・情報系の再構築が必要になるのだろう。
小田さんの論考を読みながら、そんなことに思いが行きついたのである。

「痛み学NOTE」から、思いがけない交流がはじまりそうである。
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by m_chiro | 2017-09-25 16:27 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
熊沢孝朗先生:インタビュー記事
「2010年第12回学術大会・特別企画「熊沢孝朗教授インタビュー」

2012年の日本カイロプラクティック徒手医学会(第12回)は「痛みの学会」でした。
熊沢先生には基調講演等の召集など、多大なるご支援を頂きました。

その準備に際して、熊沢先生にインタビューさせていただいた記事があります。

その当時の科学新聞社・斎藤信二社長のはからいで実現しました。
この時、熊沢先生は療養中でしたが、快くインタビューに応じていただきました。
私には、とても得難い時間でした。

この記事を、私のホームページ上に残しておこうと思います。
痛みについての重要な知見に満ちています。
「痛み学」の日本の最高の権威者である熊沢先生の言葉は、今でもとても重く読むことができます。
是非、ご一読ください。
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by m_chiro | 2017-09-24 23:28 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE 78. プラシーボは痛み治療の強い味方
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


「痛み学」NOTE 78. プラシーボは痛み治療の強い味方
                           
プラシーボといえば「偽薬」を連想するが、語源的にはラテン語の「プラケーレ;Placere」で「人を喜ばせる、楽しませる、満足させる」の意味を持つとされていた。
ゲートコントロール理論の神経科学者・Patrick Wall は、13世紀に死者への弔いの祈りから「プラセーボ」がはじまったことを指摘している(P.Wall著「疼痛学序説」)。
ところが、その祈りが次第に経済活動に直結したことで、その後は嘲笑の対象とされる言葉になっていったようだ。

二転三転して「プラシーボ」は西洋医学の重要な用語になり、「医学上のありふれた方法」と定義されるようになったのは18世紀末のことらしい。
そして20世紀後半になると、科学的薬理学が確立されてくる。

「プラシーボ」が特に医学的にポピュラーな言葉になるのは、その藥効検定試験に対照群として汎用された経緯があるのだろう。
新薬は偽薬よりも優れていることを証明することが必要になったのである。
その標準的な検査法が「無作為二重盲検プラシーボ対照検査試験」である。

プラシーボ効果を得るためには患者をだます必要があるわけで、身体器質的な作用と精神心理的な作用を分けて観察することになった。
心身二元論に言及する対応なのだろうが、プラシーボ効果は逆に「心と体」が相関するということを証明する結果になってしまったのである。

そうなると、プラシーボ効果そのものにも科学的解析の目が向けられてくる。
1980年を境に、その後には関連した上質の論文が提出されるようになる。
そしてプラシーボ効果は「偽薬」や「嘲笑」の枠組みを超えて、プラシーボに起因して起こる「疾患の症状上の変化」と捉えるべきだとされたのである。

そうなるとプラシーボ効果は、かつて言われていたような一時的な変化や心理的反応という神話から、むしろ長期的な効果が報告されるようになった。
痛みが不快な感覚と情動の二面的な体験と定義されたように、特に痛みにはプラシーボ効果が良く反映されるのだろう。

初期のカイロプラクターにウィラード・カーパー,D.C.がいる。
D.D.パーマーと親交があり、母親はD.D.の最初の患者のひとりでもあった。
D.D.が無資格医療の罪に問われたときには弁護士として支援している。
後にカイロ大学を卒業してD.C.となり、学校を開設して18冊の著書も残している。
D.D.とは違った視点から、カイロプラクティックの理論的背景に言及したのだった。

そのサブラクセーションの視点に「脊椎の機能障害」がある。
あるいは「神経支配と筋肉への代償作用による不均衡」という別の視点もある。
ふたつの視点における同時性を「複合(complex、1926)」として主張したのがカーパーであった。

その機能的な複合を回復させる治療手段として、基本的には「暗示(suggestion)」を用いることを主張している。
カーパーによれば、暗示とは「あらゆる情報」のことである。
そして「信念」が治療効果をもたらすと説いた。

アジャストメントは身体的閉塞状態を除去することで、身体の情報系をスムーズにして身体機能の回復をもたらすというのである。
情報としての視点からみると、プラシーボ効果も同様の役割を持つのだろう。

日本の「医師法第22条」にも「暗示的効果」の言葉があり、その効果を期待できる場合は処方箋なしでの「偽薬」の処方が認められている。
医療においては、医師にも現代の呪術師の側面を持たせているのかもしれない。

IASP(国際疼痛学会)が発刊する「PAIN」誌に、プラシーボに関する新たな報告が出された。(“Open-label placebo treatment in chronic low back pain: a randomized controlled trial”2016)

3カ月間持続する成人の慢性腰痛患者97人に対して、A群(通常の治療)とB群(通常の治療にオープン・プラシーボ錠追加処方の83人)に無作為に分けて3週間の治療が行われた。

オープン・プラシーボだから、その趣旨を被検者に説明しているわけで、そこがこの調査の面白いところだ。
その時点で単なる「偽薬」を超えて、情報系としての作用に代わるのだろうか。

患者をだます必要がなくなっても、体は自動的にプラシーボ治療に応答するという。
少ないサンプルの結果ではあるが、A群に比べて「オープン・プラシーボ治療群」は痛みと障害スコアを30%ほど減少させている。

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治療家は誰でも自分の手技が緩解をもたらしたものと思いたいものである。
徒手治療においても、プラシーボ由来の効果を超えてなお優れた効果があることを証明しなければならないのかもしれないが、プラシーボ効果は痛み治療の強い味方でもある。

しかしながら、プラシーボ効果が働く背景には、治療者と患者の信頼性のある関係性、いわゆる「治療的自我」を無視することはできないように思える。
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by m_chiro | 2017-09-16 08:33 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)



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