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もう一つの視覚経路-新生児は見えている? それとも見えない!-
出産の1週間前まで治療にみえていた妊婦が、新米ママさんになった。

「安産だったね」と産院スタッフに言われたらしいが、大きな赤ちゃんで、本人にはそんな自覚はなかったようだ。

それでも新米ママさんとして、家族の助けを得ながら元気に奮闘中である。
先日、顔を見せに来院した。
その時の話である。

「赤ちゃんは、まだ目が見えないんですよね。でもじっと見つめられると、見えてるんじゃないかと思えるんですよ。ニコッと笑ったりもするし...」
というわけで、視経路には2つのルートがあるという話である。

通常、神経学的に赤ちゃんは視覚が未発達で明暗が分かる程度のようだ。
その視覚の未発達とは、視覚の脳回路のうちの一つで、通常われわれが使っている回路である。
それは網膜-視神経-視交差-視索-外側膝状体(神経核)-視放線-後頭葉大17野のルートで像が結ばれる回路だ。
下の略図の経路になる。

c0113928_17384874.jpg


もう一つは、外側膝状体を通らない次の経路である。
網膜から上丘に伝わり、そこでぼんやりとした瞬時の像が投影されるルートが分かっている。
上丘からは視床枕、偏桃体へとつながるルートで、副視索核も含んでいる。
c0113928_17404116.gif

このルートは外側膝状体を通らないので「膝状体外系:非膝状体系」と呼ばれているようである。

次の「視経路・視路」のサイトに詳しい解説がある。

確かに新生児では、本来の膝状体系の視覚路が未発達かもしれないが、もう一つの回路(非膝状体系)を使って、単に明暗だけでなく「ぼんやりとした像」を見ているのではないだろうか。

この回路は偏桃体という辺縁系の部分に信号が送られている。
とすると、非膝状体系はもっとも本能的な視覚を受け持っていて、快・不快の情動系に直接関わっているのかもしれない。

赤ちゃんの「快・不快」反応も、この視覚系が関与している可能性がある。
そして、実はこの回路こそが原初の視経路であり、本来の経路と思われていた外側膝状体系は、進化と共に後天的に獲得したし経路と言えないだろうか。

道路に無造作に放られているロープを蛇と思い過ごして竦んだり、運動系の本能的な対応にも、この原初の信号系のルートが先立って発信しているのだろう。
すべてを神経学の理解で当てはめることのできないものが多々あるようだ。
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by m_chiro | 2015-05-29 17:51 | 「神経学」覚書 | Trackback | Comments(0)
特異点としての膜系(「虚実皮膜論」から)
膜系理論と治療の力学❶「虚実皮膜論」に思う

江戸時代前期に活躍した近松門左衛門(1963~1725)は、人形浄瑠璃・歌舞伎の作者である。
恋愛ものの結末は、ハッピーエンドか悲劇と相場が決まっているが、そんな中で近松文学では「心中」という結末を持ってきた。
これは悲劇なのか、それとも幸せの極みなのだろうか…。

観劇する側から見れば悲劇ではあるのだが、心中者の立場に立てば「幸せ」の極みなのかもしれない。
恋愛ものの結末に、もうこれ以上のシチュエーションは思いつかないのではないだろうか。
そんなことを思いながら小説を読み漁っていた若い頃に、三島由紀夫の小説に出会った。

一途な想いを自分の脳の中で作り上げている人にとって、実はそれも虚像なわけだが、三島文学の主人公にとっては、それこそが実像なのだ。
その像の対象が女性であれ何であれ、その想念の像が崩れていく、あるいは壊れていくことは、それを所有している脳には許しがたいことなのだろう。
したがって想念の像(本人にとっての実像)が虚像になってしまうことに歯止めをかけない限り、自分の憧憬や理念さえも保てなくなってしまう。

そこでどういう決着をつけるかというと、自分を抹殺してしまうのである。
脳を殺してしまうのだ。
そうすれば、自分の脳内の像は理想の実像のままで永遠に生き続ける。
そう考える。
そして自決する。
「金閣寺」の主人公は、美しいままの理想の姿を脳内に留めておくために金閣寺を燃やしてしまうのである。
そんな決着のつけ方は、近松以来の衝撃的な結末だった。

余談が過ぎたが、さて近松門左衛門の芸術論は「虚実皮膜論」というものらしい。
近松からその芸術論を聞いたという穂積以貫という人が、「難波土産」に記録として残している。
「虚」とは実体のないもので、嘘偽りの類である。
「実」は真実という実態を持っている。

芸や創作の面白さというのは、この「虚」を包み込んだ皮膜と、「実」を包み込んだ皮膜のはざまにこそある。そういうことらしい。

この譬えは、とてもおもしろい。
私は「現象」「潜象」という分け方をしている(『「現象」と「潜象」の相関にかかわる仕組みがありそうだなぁ~』)。
症状を持つ実態を「現象」(虚)とすると、現象には超越的な存在根拠として隠れた実態(実)がある。
つまり「潜象」である。
この現象と潜象をつないでいるのが、「皮膜」ならぬエネルギー系としての「膜」の存在ではないだろうか。
近松流にいうと「潜現皮膜論」ということになる。

現象が「虚」なのか、あるいは「実」なのか、それすら判然としないものもある。
芸術論的には、そこに面白さがあるのだろう。
身体の治療も、そこが面白い!
この潜象と現象(虚実)のはざまの「膜系(皮膜)」が、特異点として作用しているといってもよさそうだ。
そして特異点は変化をもたらす。

はじめて人体解剖実習を行ったとき、もっとも印象深く残ったのが膜系、皮膜系の見事な存在だった。
神経系や脈管系も皮膜され、膜系は身体をくまなく繋いでいた。
そして今、「エネルギー系としての膜系」という言葉を反芻しながら、膜系の魅力に思いを馳せている。
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by m_chiro | 2015-05-22 16:07 | 膜系連鎖 | Trackback | Comments(6)
膜は神秘な存在!?
「膜」とは何か?
この頃、膜のことが際立って意識にのぼってくる。
「膜」は確かに重要な治療のターゲットではあるのだが、
とても深く神秘的な意味合いが含まれているように感じたからである。

更に深い学びをしたい、と思っている。
連休の4日間(5.3~6)、東京に出向いて勉強してきた。
「膜」に関わる学びがあると思ったからだ。

膜系は3層に分けられている。
c0113928_9352298.png浅層にある膜は、真皮の直下にあって身体全体を包むラップのような存在である。
水や脂肪を貯蔵し、断熱効果を持ち、神経や血管、リンパ管の枝が通っている。

深層には、筋肉、骨、神経、内臓、リンパ管などの解剖学的構造を細胞レベルまで包み込んで、これも融合した組織の連続体として機能している。

その更に深部には、脳と脊髄を包む内膜、くも膜、硬膜の三層からなり、脳・脊髄の中枢神経系を包み込んでいる。
その最深層の内部では歯状靭帯や骨組織が脊髄を支えていて、それらの縦の膜系を小脳テント、胸郭膜、横隔膜、骨盤底の膜組織が庇のように横方向で要所を支持している。
これらの三層の膜系は相互に関連しながら身体の機能や支持に深くかかわっていることは間違いないだろう。

セミナーでDr.D’AMBROGIOが解説した言葉から印象に残ったことがある。
「膜はエネルギーで構成されている」

さあ、この意味する根拠が問題である。どういう理解を持てば整理できるのだろう?

体をいかに効率よく働かせるか、その経済性から結合組織を研究した人がいるようだ。
Donald Ingberという人で、身体を膜系のセンテグリティ構造のように繫ぎ目のない統合性を強調した。
そのテンセグリティ構造体を作ると動力源がなくても見事な動きができる。
機械的なエネルギー転換ができるというわけである。
それは単に機械論的な根拠だけでなく、生化学活動にも関与するとしている。

エネルギー論的にみれば、体の熱力学的平衡バランスが関わる(taylor)という報告もある
熱力学の法則に、「チキソトロピー」という概念があって、エネルギーが失われると細胞のゲルは硬くなり、エネルギーが注入されると液状になる、というものである。

また、Oschmanは、生体マトリックの連続体の固形の状態や、電子、光子、振動という特性が重要な役割を果たすことを指摘している。
などなど....、学びはたくさんありそうだ。

キーワードは水・脂肪・水素・シナプス・光子・量子電磁力学・コヒーレンスだろうか。
只今、膜系とエネルギー系の関連を整理しようと試みているところである。

セミナーの夜は、東京丸の内駅舎を見に行った。KITTEビルの展望台から、その夜景を眺めながら食事をした。
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ホームパージのオフィスニュース「GWに研修、そして東京丸の内駅舎へ」に、そのときの写真を数枚乗せておいた。
とても綺麗です。ご覧ください。
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by m_chiro | 2015-05-08 10:08 | Trackback | Comments(8)
膝機能の評価指標「WOMAC」をオフィス調査票に組み込んでみた
先日記事にした「変形性関節症(OA)には、ヒアルロン酸より羊水注入」に、米国疼痛学会が膝機能の評価指標としてVASとWOMACを用いていた。
VASは一般的だが,WOMACはあまり知られていないのかな?
WOMACとは“Western Ontario and McMaste Universities Osteoarthritis lndex(ウェスタンオンタリオとマクマスター大学変形性関節症指数)で、完全版としてテストすると約12分かかるものらしい。

短い形式は24項目で0点~96点の採点評価をするものである。
そのWOMAC簡略版を探してみた。
膝障害の評価として臨床で使えないだろうかと、訳して表を作ってみた。

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by m_chiro | 2015-05-01 09:28 | 守屋カイロ・オフィス | Trackback | Comments(0)



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