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慢性腰痛を抗生物質が治す..!?
デンマークの研究班がバーミンガムの医師たちの協力のもとで、慢性腰痛の20~40%がバクテリア感染に原因があることを突き止め、抗生物質で治癒させたというニュース。

そのバクテリアとは、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)というグラム陽性桿菌である。

ヒトの皮膚に常在し、不潔になると増殖してプロピオン酸を作りだす。
悪臭の原因にもなっていて、にきびの原因菌Propionibacterium acnesである。
アクネ菌は、歯垢中にも検出される細菌である。
歯磨きなどで血中に取り込まれて椎間板の毛細血管を成長させ、炎症による痛みを出し続けるのだそうだが…..。
ノーベル賞級の発見と讃えているが、はたしてその信憑性は?…..
ピロリ菌のような評価が得られるのだろうか。

その記事はこちら。
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腰痛を持っている女性:デンマークの科学者たちが、慢性腰痛の20%から40%が細菌感染によって起こされていたことに気づきました。

「The guardian」
“Antibiotics could cure 40% of chronic back pain patients”( 抗生物質で慢性腰痛患者の40%が治癒)

記事は、おおよそこんな内容である。参考までに...。

抗生物質で慢性腰痛患者の40%が治癒

科学者たちは、英国の50万人の患者が多くの手術を避けて、代わりに抗生物質を投薬する医学的前進を歓迎しています。
慢性腰痛患者の40%が、外科手術よりも抗生物質を選択して治癒しました。
これは医学的前進でありノーベル賞に値する価値があると、一人の脊椎外科医が言っています。

科学者たちが最悪の症例の多くが細菌感染によるものであったことを発見した後、英国と他の国の外科医たちは慢性腰痛患者をどのように治療するか調査しています。

衝撃的な発見は、大手術しかないとされている多くの慢性腰痛患者が、手術の代わりに114ポンドの費用による抗生物質を選択することで治癒することができるのです。

この発見は脊椎外科医人生の中で目撃した最も重要なものであったし、医学への影響はノーベル賞に値するものだと、英国の著明な脊椎外科医の1人が言っていました。

ロンドン大学病院のコンサルタントで神経・脊椎外科医ピーター・ハムリンは、「腰痛に対するすべての脊椎手術のおそらく半分は抗生物質に取って代わられるだろう。その影響は莫大なものがある」と話しています。

ラグビー選手・トム・クロフトは、頸の損傷でシーズンをダメにした後、先月行われた英国とアイルランドのライオンズ・サマー・ツアーに招集されたのだが、最近その彼を脊椎外科医ハムリンは手術しました。

腰痛を扱う専門医たちは、時に感染に責任があることを以前から知っていましたが、これらの症例は特別であると思われていました。
その考えは、慢性腰痛の20%から40%が細菌感染によって起こされたことに気付いた南デンマークの大学の科学者たちによって覆されたのです。

現在、英国の約4百万人が人生のある時点で慢性腰痛を起こすだろう、と予測できます。
最近の研究では、慢性腰痛患者の50万人以上に抗生物質が役立つと示唆しています。

これは、通常の腰痛(急性あるいは亜急性の痛み)を持っている人々に役立つわけではなく、慢性腰痛患者だけである」と、デンマークの研究班のハンナ・アルバート博士が「The guardian」誌に話しました。
「これらの患者さんたちは痛みによるハンデを持った人たちで、緊張した人生を過ごしている人たちです。我々は、そうした患者さんたちを決して予想していなかった普通の状態に戻しているのです。」

研究グループの高官であるクラウス・マニケが、この発見は10年間の努力の最頂点であったと言いました。
「今まで、それは難しかったのです。好調期と低迷期がありました。研究を始めた頃、多くの同僚たちが理解できなかったといった問題があったからです。腰痛の研究者として、このデータが示したすべてに、本当に関与するバクテリアを見つけるためでした」と彼は語りました。

デンマークの研究班は、2つの研究論文が ”European Spine Journal”に発表されたと述べています。
最初の論文で、研究者たちは椎間板変位における細菌感染がどのように周囲の脊椎骨に激痛を伴う炎症と微細骨折を引き起こすか説明しています。

デンマークの研究班は、バーミンガムで医師たちと共に取組み、感染徴候の患者から取り除かれた組織を調べました。
半分近くが陽性のテスト反応を示しました。
80%以上がプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes:ざ瘡プロピオンバクテリウム)と呼ばれる病原菌を運んでいたのです。

この微生物は、にきびを起こすことでよく知られています。
これらは我々の歯、毛髪根周囲そして亀裂に潜んでいますが、歯を磨くことで血流に入ることがあるのです。
通常は害を起こしませんが、人の椎間板変位があれば変化するかもしれません。
ダメージを治すために、体は椎間板の中に毛細血管を成長させるのです。
毛細血管は治癒効果をもたらすより、内部にバクテリアを運び、成長した毛細管でMRIスキャンに現われる重度の炎症と隣接する椎骨の損傷を起こすのです。

2番目の研究論文で、科学者たちが抗生物質の100日間のコースで慢性背部痛を治したことを証明しました。
無作為治験では、これまで6カ月以上のあいだ苦しみ、MRIスキャンで損傷した椎骨の徴候がみられた患者の80%が投薬によって痛みが緩和したのです。

アルバートは、抗生物質がすべての腰背部痛に有効ではないであろうと強調しました。
薬の過度使用は、病院ですでに重大問題視されていたより多くの「抗生物質 - 耐性菌」に導くことになったからでした。
しかしながら、彼女は同様に警告しています。
「多くの患者には、痛みを軽減することができた抗生物質の代わりに、効果的でない手術が待ってているだろう」、と。

「我々は大衆に説明し、臨床医を教育しなければなりませんし、それで適切な患者は適切な治療を受ければ、5年後には不必要な手術をすることはないのです」とハンナ・アルバートは言っていました。

将来の研究がバクテリアのターゲットとなる薬を使うことで、改良のために必要な時間を早め、抗生物質に応答する患者さんの数を増やすことを目指すべきだ、とハンナはと話しています。

NHS(National Health Service:イギリスの国営医療サービス事業)では、大多数の腰背部痛の脊椎手術に毎年480ミリオンポンドを使います。
マイナーな手術は、椎骨間組織の柔らかいクッションの1つが飛び出し、近くの神経を圧迫した状態の椎間板変位を定着させることができます。
外科医はただ椎間板の突き出ている部分を切除します。
しかしながら、すべての慢性痛患者は損傷を受けた脊椎骨を連合させるか、あるいは人工椎間板を移植するために大手術を申し出ることができます。

「我々が不必要なオペレーションを廃止することによって、 250ミリオン ポンドを NHS 予算から救うことができるかもしれません。 抗生物質治療の価格はたった114ポンドです。 それは外科手術とはスケールが違います。私は心からノーベル賞に値すると信じます」、と ハンナ・アルバートは言っていました。
他の脊椎外科医はアルバートに会い、抗生物質を患者に提供する施療を再検討しています。
衝撃的な発見は、慢性腰痛の多くの患者が大手術に耐える代わりに、約114ポンドの費用の抗生物質コースで治ることが可能であることを意味しているのです。

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by m_chiro | 2013-07-23 01:20 | 痛み考 | Trackback | Comments(1)
間質性膀胱炎の擬態をつくるMPS
加茂先生のブログ記事「医師よこれ以上患者に迷惑をかけるのはやめよう」に、ワシントン・ポストの記事が紹介されていた。

そのワシントン・ポストの記事は、こちら。
“Myofascial pain syndrome often leaves doctors baffled and patients untreated”

その記事を要約すると、次のような内容です。
長い間「間質性膀胱炎」と診断されてきた患者さんが、実はMPS(筋・筋膜性疼痛症候群)だった。いろいろドクターショッピングを重ねたが、なぜ誰も分からなかったのだろう、と疑問を投げかけながら、MPSの扱われ方を問題視して書いている。
「間質性膀胱炎」もMPSの擬態である可能性がある。


参考までに、ワシントンポストの記事内容も紹介しておきます。

「筋筋膜性疼痛症候群(MPS)は医者を困惑させ、患者は治療されないまま放置される」

私の症状が始まったのは2008年1月のことでした。
おしっこをするたびに膀胱に深刻な痛みを伴うようになったのです。 私は「間質性膀胱炎」と診断されました。
周知のことではありますが、この病気は治療法がないとされる慢性的な膀胱症状のことです。しかしながら翌月になると、痛みは腿、膝、腰、臀部、腹と背中に広がりました。

私の病状は3年後に正しく診断されることになったのですが、その時まで既に2人の 泌尿婦人科医(urogynecologists )、3人の整形外科医、6人の理学療法士、2人の徒手セラピスト、 リュマチ専門医、神経科医、カイロプラクターとホメオパスに診てもらっていたのです。

何が間違っていたのでしょう?
完全に予想外であった私の症状:筋筋膜性疼痛症候群(MPS)に従うとすれば、リリースされていないで縮んだ筋線維に原因があったことになります。
筋線維の絶え間のない収縮は緊張した筋肉に硬結を作り、あるいはトリガーポイントを作り、そこから完全に健全な部位にまで身体の組織に痛みを送るのです。
たいていの医者は、一度も筋筋膜性疼痛症候群(MPS)について聞いたことがなく、ほとんどの医者がそれをどのように治療するべきか知りません。

私の症例で、骨盤底(骨盤の底となる筋肉の容器)におけるトリガー・ポイントが、膀胱への関連痛となったのです。
歩くと、私の 太腿に沿ったポイントが鋭い痛みを作り、膝関節の上にも痛みを作ったのです。腰部と臀部と腹部のポイントは骨盤と腰部の関節面をずらし、背中のもっと上の方にまで痛みを引き起こしたのです。
痛みがとても激しかったので、座ることができたのはごく短い時間だけでした。

「なぜ、誰もMPSを知らなかったのでしょう?」
Dr.ティモシー・テイラーが、私の痛みの原因を正確に診断した直後に、私はドクターに尋ねました。
ドクターが応えてくれました。
「医者は筋肉を専門に扱わないから」。
「筋肉は忘れられた臓器なんです」。
「そこには神経線維がありません」

ジョンズ・ホプキンス大学・神経学のロバート・ゲルウィン准教授によれば、そこに関連痛が伴うという一部の理由だけで、ほとんどの医科大学と理学療法プログラムは筋・筋膜痛の教育を行っていないのだそうです。

痛みとリハビリテーション医学所長でもあるR.ゲルウィンは、最近になってやっと内科学科がこのタイプの痛みを理解するようになった、と言っています。

R.ゲルウィンが話してくれました。
「神経外科医と長時間話しあったことを思い出すのだが、(関連した)痛みには、接点もなく、神経線維もなく、連鎖もなく、血管もなく、神経もなく、この2つの部位を結び付けるものは何もないんだ」と、その神経外科医は言っていた。
もちろん、その外科医は「関連痛のメカニズムが脊髄を通して拡大されたものであることを理解していなかったね」。

緊張した筋繊維からの痛みのシグナルは、同様に身体の他の部位からのシグナルを受け取る脊髄の特定の部位にも移動するのです。
その痛みが他のどこかから来るかのように、筋肉からの痛みシグナルが神経系で印象づけられると関連痛が発生するのです。

関連痛は今日ますます医者に認められてはいるが、筋・筋膜痛の診断と治療に大部分の医者が対応するようになるまでにはもっと多くの時間がかかる、とテイラーは見ているようです。
開業者はトリガーポイントを識別するために、特定のトレーニングを必要とします。
そして筋線維に索状硬結を識別し特定するために、慎重に患者を診察し触診しなければなりません。

2000年の調査では、痛み専門家の88パーセント以上はMPS(筋筋膜性疼痛症候群)が正当な診断であったとことを認めていますが、それを診断することについての基準に関しては意見が違っていました。

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by m_chiro | 2013-07-16 17:48 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(0)
腰痛の心理社会的な背景を探る「簡易問診票(BS-POP)」
腰痛の85%は原因を特定できない。
腰部の筋・筋膜に原因がありそうだが、画像で確認できないので不明だとされている。
椎間板ヘルニアが画像で確認できても、痛みを伴わない人も大多数いるのだ。
なにしろ腰痛経験がない76%の人のMRI画像に椎間板ヘルニアがみつかる、という報告もある。
そんなわけで腰痛とヘルニアの関連性は疑わしい。
だから画像検査をする必要もなく、生物・心理・社会的要因を検討すべきだとする論文が出ている。
欧米では90年代半から、こうした心理社会的背景が論文に登場するようになった。

下の図は1992年に出されたもので、少なくともその20年後の2012年末に、日本整形外科学会も同様のガイドラインを発表したことになる。
90年代半ばからみれば半世紀以上かかったわけである。
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では、その心理社会的要因はどう判断するのか。
福島大学整形外科では、「簡易問診票(BS-POP:Brief Scale for Psychiatric Problems in Orthopaedic Patients)」を作成した(紺野 愼一教授「たかが腰痛と侮るなかれ」)。

この問診票は福島大学医学部・精神科の協力を得て作られたもので、医師用と患者用の2タイプがある。
医師用では最低点(8点)で最高点(24点)である。
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この患者用問診票では、最低点が10点で、最高点が30点である。
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両方の併用結果では、医師用10点、患者用15点以上で、精神心理的問題が考慮されるという判定になる。

医師用の単独使用では11点以上を考慮判定にすることになるのだそうだ。

紺野教授は「無視できない慢性腰痛の心理社会的要因 簡易問診票「BS-POP」の有効活用の中で、以下のように結んでいる。

BS-POPの妥当性評価に関しては、日本整形外科学会のプロジェクト研究に選ばれて大規模な検証研究を行い、慢性腰痛患者の精神医学的なスクリー ニングに有用性が高いことを証明することができた。

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by m_chiro | 2013-07-16 12:31 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り(3)
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り(3)続き
3.D.D.パーマーの素性②


ガルの「骨相学」は怪しい理論ではあったが、19世紀ヨーロッパの科学界まで巻き込んで普及していく。
この理論が出てきた背景には、当時、人種や性別や民族性による優位性と序列の説明に比較解剖学を利用しようとした風潮があったようだ。
こうした民族や人種の優位性を社会的・政治的に牽引する背景は、医科学の領域にまで及んでいた時代だったのだろう。
それがどのようにしてアメリカに普及し、そしてD.D.は「骨相学」に何を学ぼうとしたのだろうか。

骨相学は比較解剖学を踏襲した理論として普及したわけではなかった。
観相学や心理学の要素を取り入れてアレンジされたのである。
次第に似非科学の意味合いが一層色濃くなって、その観相・心理的な流行がより顕著になるのはアメリカにおいてである。

その切っ掛けとなったのが、骨相学の創始者であるガルの弟子・シュプルツハイム(1776-1832)による全米講演ツアー(1832)である。D.D.が生まれる十数年前のことであった。
シュプルツハイムはアメリカ講演行脚の途中にボストンで亡くなったが、彼の死に影響されることなく骨相学は普及していく。
ボストン医学会なども骨相学を評価し、称賛したと伝えられている*)。

そのアメリカで、骨相学をより大衆的に普及させたのがファウラー兄弟だった。
彼らはニューヨークで骨相学を広めるためのビジネス会社を立ち上げ、機関誌の発行やブック商法などを媒体として大衆向けに事業として展開していく。
頭蓋の特徴的な観相をパターン化し、「心身の健康法」を広めていったのである。

こうして骨相学は科学的思考から頭蓋の観相とパターン化に応じた能力や心理、思考、知性、性格診断、職能適正などを結び付けて、占い的商法の理論になったのではないかと思われる。
本の売れ行きも「骨相学」の人気を裏付けるものであった。
骨相学が似非科学とされて、表舞台から消えた今でも信奉者はいるらしい。
1934年のシカゴ万博では、骨相学の計測機械が20万ドルもの値がついたというから、隠れた信奉者の存在は確かなのだろう。

脳の局在的機能という視点からみれば、骨相学は正しく発展させる意義を持ってはいたのだろう。
しかし当時は脳研究の基盤も不備であり、ヨーロッパの骨相学者は「脳器官の構造」、「精神機能」、「頭蓋の形状」を恣意的に結び付けてしまった感がある。
それとは対称的に、形態と体質や気質の研究を行ったエルンスト・クレッチメル(1888-1964)は、精神疾患などの関連性について医科学に功績を残している。

さて、D.D,が骨相学に何を求めたかは分からない。
D.D.が残した文献には、骨相学からの影響を窺わせる内容も見当たらない。
ただ、人骨標本のコレクションには尋常ではないマニアックぶりであった。

私がパーマー・カイロ大学を取材したときに(1990)、大学付属図書館に陳列されていた、
そのコレクションを見せてもらった。
以下の写真は、その時に撮影したもの。これらコレクションはアメリカ医師会(AMA)調査団によって「まぎれもなく、現在最高の人骨コレクションである」と評価されている。
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D.D.は、E.クレッチメルのように、骨形態と精神気質や病気との法則性を真摯に求めていたのかもしれない。

D.D.は医学の学歴を持っていなかった。すべては独学であり、その勉強の深さや幅を窺わせる蔵書もパーマー大学付属図書館に収められている。
その独学の人がカイロプラクティックを創世し、今では多くの国で医療に組み込まれるまでになったのである。

もうひとつ、D.D.の素性を語る上で避けて通れないこと、それは「マニピュレーション」を学んだことである。このことは項を改めて紹介したい。


*)骨相学とアメリカ社会での影響については、小川正浩氏らの調査に概略紹介されている。
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by m_chiro | 2013-07-12 16:01 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り(2)
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り
2.D.D.パーマーの素性①


D.D.パーマーは1845年3月7日、カナダのオンタリオ州ポートペリー(portperry)に生まれている。
ポートペリーはトロントの近郊に町だ。カイロプラクティックの創始者・D.D.パーマーがこの地に誕生したことを記念して、「カナデイアン・メモリアル・カイロプラクティック・カレッジ(CMCC)」がトロントに建てられたことは周知のことである。

D.D.パーマーは、成人するや生まれ故郷を離れてアメリカに移住し、イリノイ州ニューボストンに居を構えて雑貨商を営んでいる。
ところが家業は家族に任せきり。D.D.は、あるひとつのテーマに没頭する日々を過ごす。
それは極めて素朴な疑問に端を発していたようだ。

「同じ親から生まれ同じ食物を食べ、なぜひとりは強く、ひとりは常に病弱なのか」。
「同じ身体でも、なぜある臓器は弱く、他は正常なのか」。

こうした疑問に対する答えを求めて、彼はあらゆる治療法に目を向けるようになった。
その中でも、特に熱心に学んだのは「磁気療法」と「骨相学」だったようである。
当時、D.D.は磁気療法の治療家として周辺地域でも知られる存在になるのだが、オステオパシーの創始者であるA.スティルも同様に前身は磁気療法の治療家として有名だったらしい。
磁気療法は、当時の流行の治療でもあったのだろう。
骨相学も、当時はホットな学問として注目されていたようだ。

ところで、磁気療法とはどんな療法なのだろう。遡れば「メスメリズム」に思いが至る。
メスメリズムとは、ウィーンの医師・F.A.メスメル(1734~1815)が提唱し、パリで実践して名声を得た「動物磁気説」の流れを汲む考え方と治療に基づいている。
メスメリズムのひとつの流れは、やがて「催眠療法」(1842)を誕生させることになり、精神医学の領域に影響を与えることになった。

当初、メスメルは磁石を用いていたようだが、やがて自らの手を患者の身体にかざすだけで同じ現象をもたらすようになる。
こうして「動物磁気」としての磁気療法を行い、患者をトランス状態に導くことで様々な病気を治したと伝えられている。
このブームに押されるように、当時の科学界がメスメルの治療法を調査している。
その結果、指先から出ているのは磁気ではなく汗だけだったとして「似非療法」と断じられている。

それも今では「電磁気」として認められるようになった経緯があるが、メスメルの手法は精神科学の領域に発展する流れと、手技療法による補完療法に分岐していった。
D.D.が具体的にどのような磁気療法を行っていたのかは定かではないが、治療の原初的な手法である「手当て」による生体磁気療法ではなかったかと思われる。

もうひとつD.D.が熱心に学んだと思われる「骨相学:phrenology」は、ウィーンの医師であったランツ-ヨゼフ・ガル(1758-1828)を学祖としている。
そして、骨相学は19世紀のヨーロッパを席巻し、アメリカにも普及していく。
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ガルは進化論におけるラマルクの「用不用説」を唱導した人でもあり、その概念は「骨相学」にも反映されている。つまり、こういうことだ。

脳でよく使う器官は発達し、使わない器官は退化する。
この脳器官の発達あるいは衰えは頭蓋骨に影響し、頭蓋の凹凸を形成することになるとする説である。

したがって、頭蓋骨を脳機能が局在された骨相とみなして、その地勢的形状や構造計測することで個々の能力・性格・精神状態まで視覚化できるというのである1)。
所謂、「脳局在理論」であるが、今日の脳科学の成果に照らすと実に怪しい理論ではある。

1)「形の文化誌5」(1998,工作舎)「ある画家についてのメモ―トマス・コールと骨相学―」(小川正浩)より図を転載

  続く
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by m_chiro | 2013-07-04 19:09 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)



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