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「超思考」(北野武著)
北野武氏のフアンと言うわけではないが、本屋で氏の新刊本が目についた。「超思考」という書名の本である。「超思考」というのだから思索をめぐらした意見と言うよりは、身体に浸みついたものの見方や考え方を述べたものだろう。

多くの分野にそのマルチな才能を発揮している氏の、身体に浸みついている見方・考え方というのはどんなものだろうと関心を持って立ち読みをした。浸みついた見方とは、言わば「育ち」の問題で、そこには母親の「躾」が大きく影響していたのだろうと思えた。根底には、人としての矜持を持った生き方があるのだろう。

北野氏はTVで「家庭の医学」を扱った番組を持っているようだが、いたずらに不安心理を煽る番組のように思えて、私はあまり快くは感じていなかった。その北野氏が「医は仁術か、商売か」というテーマで意見を述べていた。これがなかなか面白い意見だった。
その要旨を以下に取り上げよう(北野氏の言葉を、そのままカギカッコにしている)。

「医療レベルの話で言えば、問題は二世にある」という切り口で始めている。
要するに、本当に医者が好きで医大に進んだのか疑問だ、ということである。
「単にいい暮らしがしたいだけ」で医者になる人が増えても医療レベルの問題は解決しない、ということのようだ。

この結論は手厳しい。どうしても「子供を医者にしたいなら、遺伝子組み換えをしてでも、子供を優秀な医者にするという覚悟がなきゃいけないのだ」、と勉強したくない子供を医者にしようとする親に「覚悟」を突き付けている。
「非人道的だ、なんて言わせない。医者は科学者なのだ。合理的に考えれば、医者みたいな職業がほとんど世襲になっている日本の状況はどう考えてもおかしい。馬鹿でもできる政治家とは話が違う」。

また、「医は仁術」も建前だろう、と言う。
いつの世もあくどい商売をした医者は居たはずで、「そんな医者が増えたら世は乱れる」から、「医は仁術でなくてはいけなかった」のだが、もちろん立派な医者はいつの世にもいる。
健康保険制度が確立すれば、病院の収入は安定する。「国が収入を保証してくれるようなものだから、こんな確実な商売はない」。そんなわけで「医療が投資の対象にもなる」。「医者が仕事の内容で尊敬されている」のかは疑問だと言う。

「いちばん喰いっぱぐれる心配がないのが老人医療」で、ここには医療ミスだのという訴訟の心配もない。医療レベルの低さは、こんな状況からもわかる。
「薬をバンバン出して、CTスキャンだのMRIだの撮りまくって、保険点数をどんどん稼いでも誰も文句を言わない。儲かって仕方がないから、みんなやりたがる」。
そこへいくと小児科や産婦人科は大変だ。昼夜関係なく呼び出される。「医療ミスをしなくたって、医療訴訟は起こされる」。それをニュースにされる。「何かあったら、すぐに親が怒鳴り込んでくる」。それでも「保険は平等だから収入には反映されない」。
「仕事が大変で儲からない商売が流行らなくなるのは当然なのだ。…昔の風刺漫画なら、宝石だの毛皮だので着飾ったよぼよぼの金持ちの老人に医者が群がっていて、その足元で赤ん坊が踏み潰されている絵を描くだろう」。

では、どうしたらいいのか。
能力さえあり、医者の仕事が好きであれば誰でも医者になれる環境を作ることで、そのために必要な改革案は次のことだと言う。
そうすれば、医療や医者のレベルの向上、無医村や医者不足の改善、医者を目指す若者の動機も改善などができるだろう、というわけで以下の改革案を提示している。

1.国立大学の医学部の定員を百倍くらいに増やす。
2.授業料は無料にする。場合によったら全寮制、生活費一切の面倒をみる。
3.その国立大学医学部を卒業した医者は、全員国家公務員にする。
4.国営の診療所や病院をどんどん作って、そこへ送り込む。
5.経営は国営病院全体で成り立たせる。
6.給料は、普通の公務員よりちょっと多いくらいでいい。
7.十年、二十年、国立の病院に勤めたら、その後はフリーエージェント制にして私立の病院に行くことも、開業することもできる。


キューバという社会主義国は日本の本州の半分ほどの狭い国土に千百万人の人口があり、GDPは9500ドル/1人だそうだ。が、国民も外国人旅行者も医療費は全て無料、高度先進医療もすべて無料で、国民一人当たりの医師の数は日本の3倍、診療所も集落の1キロ以内に作ることが法律で定められているのだそうだ。北野氏の提案はこのキューバモデルを意識しての意見だろうと思われるが、いいアイデアだと思う。

他にも、死刑の是非、老後の問題、価値について、師弟関係、芸術論、人知の及ぶ範囲、などなど18考について語られている。

共感すべき意見が多くあり、胸のすく語り口で、購入して読んだ。
読後、「拍手!」だった。
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by m_chiro | 2011-03-31 17:24 | Books | Trackback | Comments(0)
「地震酔い」と「センタリングの技法」
大震災の後も余震が続いて、いつも微妙に揺れている感じがする、という患者さんがこのところよくみえる。
軽めの人はちょっと嫌な感じぐらいで済んでいるが、中にはめまいや吐き気が酷く、脳の重大な病気かと驚いて、脳外科を受診しCT検査を行ったという患者さんもいた。

結局は「地震酔い」とされたが、船酔いや車酔いも同じで「動揺病」の範疇である。「慣れるしかない」と言われたり、神経を休める薬を処方されたりしている。車酔いの薬で対応できている人もいる。

「動揺病」は地震や車酔いに限らず、日常的に観察される現象でもある。
だから、よく患者さんの愁訴に「ふらつき感」や「めまい感」が出てくる。
なぜ、こうした動揺が起こるのだろう、と不思議に思っていた。
そんな疑問が切っ掛けになり、今では私のテーマの一つになっている。
今、模索している「センタリングの技法」は、そんな探求から導きだしたものだ。

センタリングとは、構造的な正中軸の概念として考察したものではない。
あくまでも動的なエネルギーのバランス軸と考えている。要するに、平衡系に関わる神経反射みるのだが、大事なことはそれらの個々の反射の失調を如何に統合させるかにある。ここが悩みどころではある。

さて、この地震酔いのために仰臥位でも揺れが収まらず、吐き気があった30代女性の患者さんに、「センタリングの技法」を用いて平衡系の神経反射の失調を調整した。これで寝ていても揺れる感じが治まった。

足関節の底屈の位相でイレギュラーな反応もみられたので、併せて井穴療法の概念を参考にして自律神経系に対する末梢からの刺激も試みることにした。
足の2~3中足骨間の短趾伸筋と、同じく4~5間の短趾伸筋に圧痛がある。
短趾伸筋の圧痛をリリースして、最後に井穴F5、F6ポイントに井穴用ソマセプトを貼付してみた。

ベッドから降りても全く揺れを感じなくなったようだ。
まだまだ課題はあるが、「センタリングの技法」を詰めて行きたいと思っている。
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by m_chiro | 2011-03-28 19:11 | センタリングの技法 | Trackback | Comments(0)
根性痛とみるか、関連痛とみるか。
「神経が圧迫されている」とされた頸肩腕痛から

2ヶ月ほど前に右首すじが痛くなった中高年の男性は、寝違いでもなったのだろうと思ったらしい。他に思い当たる原因もなかったようである。
ところが徐々に痛みが広がり、首も動かせなくなってきた。
2週間も過ぎて、今度は左の上腕にも痛みが出るようになり、腕も「しびれる」ようになって整形外科医院を受診した。
X-rayで頚椎の下部で椎間板が薄くなっていることが分かった。「そこで神経が圧迫されている」と診断されて、鎮痛剤が処方され物療が続けられた。

初発から1ヶ月を過ぎても症状は悪化するばかりだ、と治療にみえた。
頚部を側屈させても、回旋させても、伸展側屈、前屈左回旋させても、全て左への動きで左上腕部に関連痛が起こる。だから寝返りも辛い。デスクワークも辛くなっている。
肩レベルは左が下方にある右肩上がりである。頭部も左に傾斜している。
斜角筋に左上腕に関連するTPがある。ジャンプ徴候の圧痛も斜角筋停止部や肩甲下筋、棘上筋にある。

それらをリリースすると苦もなく寝返りができるようになった。首の可動域も大きくなり、最終可動域で左上腕に僅かな関連痛が起こった。
3回目の治療で「しびれ感」も消えた。ほとんど関連痛も出なくなった。
これが「神経が圧迫された」症状ではないことは明らかである。

いったい根性痛のような「神経障害性疼痛」と「MPS(筋・筋膜疼痛症候群)」のような体性関連痛の痛みをどう見分けたらいいのだろう。
神経障害に伴う痛みには中枢性と末梢性があり、病態生理学的には「5つの基本的機序」(「痛み学―臨床のためのテキスト」409頁)が提示されている。
それによると、

① 痛みに感受性のあるニューロンへの直接の刺激
② 損傷された神経の自発発火
③ 中枢神経系の感作と求心路遮断による神経系の再構築
④ 内因性の疼痛抑制系の破綻
⑤ 交感神経依存性疼痛


の5つで、この基本的機序が単独あるいは複合して痛覚伝導系が障害されて発症するとされている。
多様な発症機序ではあるが、症状には類似点があるようだ。
それは、次の3つの症状に要約されている。

a) 灼けつくような、突き刺すような痛み、
b) 発作性あるいは間欠性の痛み、
c) 感覚変容(触刺激に過敏、冷刺激に対する灼けつくような感覚、無感覚部痛)


の3症状である。
加えて、発汗過多、皮膚温の変化、萎縮性変化(爪、皮膚、筋、骨など萎縮)が見られることもあるとされている。

煎じ詰めて言えば、根性痛とされる神経障害性疼痛には、特徴的な痛みに加えて「感覚変容」や交感神経反射症状が伴うと言ってもいい。したがって、痛み単独の症状は「神経障害性疼痛」ではあり得ない、と診るべきだろう。TPが特定できれば、MPSであることはより確実になる。

ところが「感覚変容」と混乱しやすいのが「しびれ」感である。
だから、「しびれ」を訴えられると悩まされる。でも上記の特徴に照らすと、患者さん自身が「しびれ」感を自覚している「異常感覚」なのか、それとも第三者からの皮膚刺激で認識できる「感覚の障害」なのか判別しやすい。第三者からの刺激により、感覚の消失あるいは過敏があれば「感覚変容」と診ることができる。

また、神経障害性疼痛には代償性のMPSが混在することが多く、MPSに対応すると早期に症状の軽減が期待できる。MPSにも「しびれ感」や「麻痺」と思われる症状が附随することがあるからだ。明らかな神経障害は別にして、ここは筋・筋膜への対応を第一に考える方が賢明だろう。
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by m_chiro | 2011-03-24 17:58 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
大震災の混乱が続く中で。。。
あの大震災から10日も経って、やっと被災地に支援物資が届きはじめた、とニュースが報じていた。原発の状況が緊迫する中で、多くの作業員、消防隊員、自衛隊員、警察官たちが命がけの活動をしてくれている。協力し合って必死に立ち上がろうとする人たちがいて、それを支える多くの人たちもいる。

そんな時に愚痴りたくはないのだが、何で被災地への支援物資を届けるのにそんなに悠長なんだ!、と腹立たしくなる。報道関係者も現地に盛んに投入されて報道活動を行っているというのに、薬品や支援物資が届かないというのは不思議でならない。鉄道や車での運搬が不能であれば、ヘリなどでの空輸も可能だろうに。
現政権の統率力や実務、管理能力には大きな疑問を感じる。
この未曾有の一大事を政局に利用しようとする動きがあったり、現場で決死の覚悟で働く人たちへの配慮に欠ける発言があったり、不快感だけが印象に残っている。

それでも被災地の人たちは力強く前に進もうとしている。私などは外野から祈ることや僅かな義援金をカンパすることぐらいしかできないでいるが、被災者たちの声をTVなどで聞いていると、逆にこちらが励まされているように感じてくる。

仙台が流通の一つのセンター的存在である東北では、このところの流通の混乱は未だに続いている。お店にも空の棚が目立つ。ガソリンが不足しているからのようである。市民もガソリンを求めて、早朝から2~3時間並ぶのは当たり前のようだ。

それは東京でも同じらしく、ガソリンを求めて並んだ人の間のトラブルで刃傷沙汰があったらしい。刃傷沙汰ではないが、山形県でも消防や救急車が駆けつける騒ぎがあった。
車のヒーターを使わずに火鉢に炭を熾して暖を取りながら並んでいて、一酸化炭素中毒になり救急車が出動した。どうも亡くなられたらしい。
もう一件は、求めたガソリンをポリタンクに入れて蓋もせず車内に置き、タバコに火をつけたところ揮発したガソリンに引火して爆発する騒ぎとなった。こちらは火傷を負った。
笑うに笑えない話である。
便利なことに慣れて不測の事態に至ると、まともな思考もできなくなるらしい。
子供の頃は物のない時代も経験したが、近年では使い捨ての時代を当然のように生きて来た。
安易に捨ててしまう状況を憂いて、亡父が口癖のように「おまえら今に大変なことになるぞ!」とよく叱られた。ホントに、あっと言う間に大変なことになったなぁ~、と思う。

ガソリンがなければ歩くか自転車で、さもなければ遠出をやめて自宅で過ごすしかない。
今はそれなりに過ごすしかない、と腹をくくっている。
そんなわけで、連休は近所の本屋さんで数冊求めて、本を読んで過ごした。
それも、何もかも失くした被災者から見れば贅沢な話かもしれない。
もう四月になろうとしているのに、今朝も積雪があった。
この寒さも、さぞ辛いだろう、と思う。
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by m_chiro | 2011-03-24 12:30 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
「週刊現代」で酒田を紹介
「週刊現代」の3月26日号の巻頭写真ページに9ページに渡って「酒田」紹介記事が掲載されていました。
「酒田の春を訪ねて」という企画に、酒田出身の評論家・佐高信氏が「天下一品 酒田の味と美」という文章を寄せています。
春を訪ねる企画ですが、酒田は今日も雪で、結構積もりました。
ちょっと春は遠そうです。

9ページ全てがカラーで酒田の自然や食べ物、観光スポット、庄内米、酒田ラーメン、今やブランドになった平田牧場の「三元豚、金華豚」のことなどが掲載されていました。

酒田は江戸時代に東の玄関口として栄えた小さな港町です。
京文化が北前船でもたらされましたが、今は栄えた料亭や花街の名残りを僅かにとどめていだけです。最初のページの写真にある舞妓さんもそのひとつです。

是非、書店でもご覧ください。酒田の雰囲気だけでも感じることができます。
数ページを掲載すると、こんな感じの記事です。

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by m_chiro | 2011-03-17 17:25 | 庄内の記 | Trackback | Comments(2)
被災地に,春はいつ来るのだろう。
治療にみえている老御夫婦がいる。お爺さんは庭師で、お婆さんは園芸鉢物の行商をしている。
お二人とも小柄で相当の年輩だが、とてもお元気である。
お婆さんの方は、小さな体で幌のついた大きなトラックを自在に操って運転して治療にみえる。
治療室の狭い駐車場だが、上手に出し入れする。

昨年の秋のことである。
そのお婆さんが帰りがけに商品の鉢物をくれた。
見ると鉢には何も植わっていない。「福寿草だ。今は何も出てないが、その辺に放っておいたら春一番に花が咲くヨ」と言って置いて行ったのである。

庭の片隅に置いていて、すっかり忘れていたが、今日咲きかけの福寿草を見つけて玄関に取り込んだ。外は霙である。冬空に福寿草が咲こうとしているのを見ると、もう春がそこに来ているのだろう。
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それでも被災地は春どころではない。
東日本大震災の悲惨な状況の報道をみると、改めて未曾有の大惨事であったことを実感する。二次・三次の災害も懸念されて、しかも余震とは思えないほどの大きな揺れも予測されている。原発への影響も深刻である。

仙台からのメールで、今日電気が通ったことを知った。
水道もガスもまだ回復していない。僅かの水でカップラーメンを食べているらしい。

酒田でもガソリンや石油が底をついて、スーパーにも保存食の食品は見当たらないくらいである。
今日、酒田港に北海道からのタンカーが入港した。それでも、そのほとんどの石油やガソリンは被災地に近い県境が優先されるらしい。
被災地の漁港は世界でも有数の漁獲量で、我々の食卓にもこの漁場から入荷した魚があがる。それも途絶えている。
それでも、そんなことは被災者の苦難を思えばどうと言うことではない。
山形県では、福島からの避難者受け入れ策も講じた。

そんな中、また寒波がやって来て雪をもたらした。
被災地の辛さを思うと、何と非情な!と思わずにいられない。
着の身着のままで逃げだしたのだから、防寒着なども不十分だろう。
何はともあれ、緊張感のある対応をして一刻も早い救済と支援に向けていかなければならない。
長引けば、衛生面の懸念も重なるだろう。

東北でも計画停電が実施される。
全ての国民が1人1人節電をしたら、随分とカバー出来るのではないだろうかとも思うのだが。。。。天皇陛下も真っ先に節電を開始したと報じていた。
我が家でもコンセントを抜いたり、治療室の8基ある螢光燈を3基消した。
不必要な時間は消灯にした。暖房の温度設定も2度下げた。
出来ることを1人1人が実施したら、大きな節電になる。
ネオンや明るすぎる街灯も考えてもいい。

そう思いながらも、被災地に春は何時やって来るのだろう、と思わずにいられない。
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by m_chiro | 2011-03-15 19:42 | Trackback | Comments(2)
記事の訂正
記事の校正加筆

いつもお世話になっているbancyou先生が、3月12日のご自身のブログの記事で私の記事を取り上げて下さった。この記事は、科学新聞社発行の「カイロジャーナル70号」に掲載されたものである。この原稿は一部を加筆校正したのであるが、発行日の関係で訂正が反映されなかったので、ここに青字で校正個所を示しておきたい。

bancyou先生にはお目にかかったことはないのだが、メールやブログを通じて得た同業の良き仲間と思っている。私の拙い記事も再三ご自身のブログで紹介下さり恐縮の至りである。このような痛みの患者さんに真摯に痛みの向き合っておられる先生方との出会いも、私にとっては得がたい財産になっている。

感謝を込めて、以下に訂正個所を提示しておきます。

異所性発火(放電)とは何か
神経の伝導信号は電気的な発火(活動電位)に依存している。本態は膜電位の急速な変化によるもので、そのルートは受容器と脳を結んでいる。上行性には感覚が伝えられ、下行性に運動がもたらされる。その活動電位は膜のイオンチャンネルに依存した静止段階(-40~90mVの陰性膜電位:分極)からの脱分極(陽性方向への立ち上がり:活性化)と再分極(正常な陰性の静止膜電位の再獲得)の2つの段階がある。
 侵害受容器に閾値を越えた刺激が加わると、その信号は脱分極と再分極を頻発しながら末梢から脊髄に入り、脳に向けて上行する。これは正常な信号の発火伝導であるが、異所性発火はこの正規の生理学のルートを辿らない。受容器からの信号とは無関係に発火放電が起こる。
 故・横田敏勝教授(滋賀医科大学)は、「痛みのメカニズム」で次のように解説している。「痛覚受容器を介さずに神経線維からインパルスが発生することを異所性興奮という。異所性興奮が生じる可能性が高いのは、脱髄部および傷害された末梢神経の側芽と神経腫である(211頁)」。
異所性興奮のキーワードは、何と言っても「発芽」や「神経腫」といった現象であろう。「発芽」や「側芽」といった現象は、切断や傷害された末梢神経を修復する機転としての神経の伸長現象でもある。「神経腫」は、末梢神経の切断によって近位端と遠位端に近い部位で軸索の崩壊が起こる変性である。また脱髄は、有髄神経線維が長期間にわたる圧迫に晒されたことによって起こる現象であるが、主に運動線維と骨格筋の反射調節に関わる筋求心性線維などが障害される。したがって麻痺や異常感覚の徴候がみられる。ただし、Aδ侵害受容線維の脱髄部にNa⁺チャンネルが発現すると自発的に興奮し、痛みなどの異常感覚が生じるとされている。
では、Na⁺チャンネルはどのようにして発現するのだろう。末梢神経が切断・脱髄や傷害されると、後根神経節で各種のイオンチャンネル(中でもNa⁺チャンネルが重要)や変換チャンネルが合成される。この切断および傷害された神経線維では、修腹機転として損傷部位に「膨大部」や「発芽」現象が起こるわけだが、その軸索の膜にDRGで合成されたチャンネルが嵌め込まれて広がる。こうして異所性興奮としての痛みが起こる。
要するに、異所性興奮は末梢神経の切断を含む傷害に伴うスパイク放電のことで、その病態は神経原性の痛みであることがわかる。さて、菊地臣一教授は根性痛とされる末梢性の痛みを、この「異所性発火」にその機序を求めているのである。
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by m_chiro | 2011-03-13 10:21 | 痛み考 | Trackback | Comments(9)
巨大地震、東日本を襲う!
3月11日、その日は、朝に20cmほどの積雪があり、とても寒い日だった。
その午後3時前頃に、治療室に大きな揺れが襲った。

治療中の患者さんも、待合室の患者さんも、大慌てでしゃがみ込んでしまうほどだった。
メダカの水槽も、手洗いの水も飛び散って、玄関の鉢植えは台から落ちてすごい音を立てた。
引き戸は勝手に右へ左へと移動している。
間もなく電気が停まった。

「その内おさまるだろう」とタカをくくっていたが、揺れは波状攻撃に1時間も続いただろう。
「震源地はどこだろう?」、「また宮城沖だったら、きっと大変な惨事だろうな」と思いながら怖い思いでいたが、何の情報も入らない。電気も停まったままである。

少し落ち着いて来て、帰宅する患者さんが車のラジオから「震源地は宮城沖らしい」と知らせてくれた。すぐに、仙台在住の弟一家のことや、友人知人の安否が気になって電話を入れたが不通である。
そのまま電気も復旧せずに朝を迎えることになった。

暖も取れず、真っ暗闇の中でローソクを灯してみたが余震は続いている。火事を恐れて大きな懐中電灯に変えて、ともかくお茶漬けでお腹を満たした。そのまま湯たんぽを抱えて布団にもぐり込み、余震に揺られながらトランジスタラジオの地震情報を聞いて夜を過ごした。

今朝、号外のような新聞がこの地震の凄まじさをカラー写真で伝えていた。
今朝になった初めて目にした現場の状況である。
大揺れに加えて、水攻め、火攻めの波状攻撃で地獄絵図のような惨状である。
しかも100年から150年周期で起こるという「三連動」で、日本列島がそのまま揺れたような巨大地震である。関東も上信越にも被害が及んだ。

電話も不通で、電気や電話が復旧したのは今日の昼前だったが、それも全域ではない。
私どもは無事だったが、多くの犠牲者や被災地のことを思うと胸が痛む。
震源地の反対側になる私の町でさえ、平常を取り戻すにはまだ時間がかかりそうである。
太平洋沿岸はまだ予断を許さない。尚のこと、その復旧は多難であろう。
せめて被害が最小限に終わるよう、祈るばかりである。

私にまで多くの方からお見舞いの言葉を頂いた。
ご心配下さったお気持ちに、お礼を申し上げたい。
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by m_chiro | 2011-03-12 17:13 | 庄内の記 | Trackback | Comments(4)
あげくに「筋肉が融ける病気かも。。。?」
3か月ほど前から左腰下肢痛がよくならない、と40代女性の患者さんが治療にみえた。
整形外科でのレントゲン検査で腰椎椎間板が狭まっている個所が見つかったらしい。それでも「たいした問題ではない」ようだ。
あげくに「もしかしたら筋肉が溶ける病気かもしれない」と言うことになり、血液検査も行われた。

おそらく「横紋筋融解症」を疑ったものと思う。
「椎間板障害」にはじまり「筋痛」を問題視したわけだが、「MPS:筋・筋膜性疼痛症候群」は検討もされなかったのだろう。

横紋筋は主に骨格筋を構成する筋肉である。その筋肉が破壊されて、筋肉の成分であるミオグロビンが血中や尿中に入り込む。
血液生化学検査で、このミオグロビン値やCPK(クレアチンキナーゼ)値が上昇することで確定され、ミオグロビン尿というコーラのような赤褐色の尿も典型的な症候とされている。
ミオグロビンが腎臓で詰まると腎不全に陥る。そうなると、横紋筋融解症はとても厄介なことになる。原因には外傷的要因のみならず熱中症などの脱水、低カリウム血症あるいは薬剤の副作用など非外傷的要因もあげられている。

でも、結果は陰性だった。結局は「椎間板症」という診断に落ち着いた。
筋肉まで推論を進めていながら、また椎間板に戻ってきたわけである。
「椎間板が薄くなって神経を圧迫している」ために生じている下肢痛と説明されたと言う。
それでも鎮痛薬で少しは軽減するようだ。

仰臥位や腹臥位では痛まないが、側臥位になると痛む。
座位はとても辛いが、硬い椅子に浅く腰かけて座るのは比較的楽だと言う。
立位は余り気にならないが、骨盤の左右側滑動作を行わせると左大腿側方に痛みが出る。
神経の圧迫が原因であるならば、こうした動態による痛みの消失や変化が起こること自体が怪しい。

圧痛を調べると、左腸骨稜に軽度の圧痛があるが、殿筋部にはこれといった強い圧痛は見られなかった。
ところが大殿筋が腸脛靭帯に停止する部位には長い索状の硬結があり、そこの停止部を分け入るように圧迫すると足底までの関連痛が出た。

その索状硬結と大殿筋付着を分け入ってリリースした。他に、坐骨結節部の圧痛もある。
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それらをリリースすると、仰臥位から立ち上がりまでの動作痛が少し残るが、ほとんど痛まなくなった。

腰部椎間板症に関わる部位には触れていないから、大殿筋と腸脛靭帯の連結部位にみられた索状硬結とハムストリングの起始部の圧痛が主な発痛部位のように思われた。

合理的でない痛みの出方をする病態に「神経が圧迫されて起こる」という説明をされたならば、先ずは疑ってかかった方が賢明である。
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by m_chiro | 2011-03-10 23:18 | 症例 | Trackback | Comments(2)



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