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「ソマセプト」、「ソマレゾン」
皮膚考学研究所の長谷川智也先生が考案した「ソマセプト」、「ソマレゾン」を試す機会を得ました。
長谷川先生は機械工学の専門家ですが、鍼灸師でもあります。
自律神経反射の研究で世界的な権威でもある故・佐藤昭夫博士の「鍼は刺さなくても痛みが緩和できる」という言葉に啓発されて、「刺さない鍼」の研究をされてきたようです。

こうして制作されたのが「ソマセプト」、「ソマレゾン」で「セルフケア支援ツール」として開発されたもののようですが、治療に応用すればとても頼もしいツールとして有用性も高いように思います。
sansetu先生のブログでも紹介されておりましたので、それを参考にしながら使ってみました。

1人は、腰痛で寝起きに1時間ほどかかるという患者さんでした。
右腰腸肋筋のL4-L5領域の外側部に圧痛点があり、この筋自体が過緊張状態にありました。
その圧痛点に「ソマセプト」を添付しました。ほんの5~6分後には過緊張した腰腸肋筋が緩んでいました。側臥位から立ち上がらせましたが、ゆっくり立ち上がることができました。
その後、座位-立位の反復運動をさせましたが、随分楽に動けます。歩行もスムーズです。

もう1人は、左殿部から大転子部、そして大腿後外側部に痛みがあり跛行します。
左下肢への過重負荷で、痛みが増強します。
治療後は、過重負荷で5割程度の軽減です。私としては不満足な結果です。
そこで「ソマセプト」を添付して変化を見ることにしました。
過重で痛みを感じる部位はPSIS周辺のようです。最も圧痛のあったポイントに添付しました。
歩行させると痛みが軽減し、別のポイントに痛みが強調されました。大殿筋起始部の中ほどでしょうか。そこにもう1つ「ソマセプト」を添付しました。
再び歩かせると、跛行せずに歩けます。
左加重負荷でも、8割方痛みが軽減している、と言います。

持久性については更に検証が必要ですが、その場での痛みの変化は顕著です。
痛みの個所や圧痛に用いて痛みをモニターしながら使えるので、鍼灸師でない私にも原理の応用ができるツールという印象を持ちました。
刺激となる突起部は376本のマイクロコーンが使われており、柔らかい微小突起ですので刺激感もありません。

生理学的な基礎研究も行われているようです。
“European Journal of Pain”
“Gentle mechanical skin stimulation inhibits the somatocardiac sympathetic C-reflex elicited by excitation of unmyelinated C-afferent fibers.”
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by m_chiro | 2011-01-31 17:57 | 症例 | Trackback | Comments(6)
歩道には石垣ならぬ雪垣が。。。。
昨日の日中は小休止でお陽さんも出て来ましたが、
昨晩からまたシンシンと雪が降り積もりました。
治療室の横の通学路には、石垣ならぬ雪垣ができています。
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小学生たちが今朝も雪を踏みしめて学校に行きました。
裏の用水路は雪捨て場になって、
もう小山が出来ています。

それに合わせて通学路も登り坂です。
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治療室の駐車場も両隅に雪が押しやられて、
雪の垣根ができあがりました。
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この寒波はまだまだ続くとの予報ですが、
ここ何年もなかった冬になっています。
雪の多い内陸地方は、いつになく大変だろうなぁ~、
と思いながら今朝も雪かきに精を出しました。
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by m_chiro | 2011-01-26 16:35 | 庄内の記 | Trackback | Comments(0)
関連痛は謎だらけ⑤
⑤関連痛には記憶が反映されるのか?

アメリカの「Dynamic Chiropractic」(Vol24,Issue06)誌に掲載されたSeaman,DCの記事に、関連痛の実験を行った論文が引用されていた。
その引用論文は、1954年に発表されたFeinsteinの「深部体性組織からの関連痛に関する実験」である。

この実験では、被験者の棘間に高張性食塩水を注射したときの症状を記録している。
それによると、特定の関連痛パターンが生じたことが記録されているが、被験者の何人かは全く痛みが見られず、また一定の被験者には痛みの代わりに自律神経随伴症状に悩まされたと報告している。

どのような自律神経随伴症状かというと、蒼白、発汗、徐脈、血圧降下、失神や失神のような感覚、吐き気などであった。
棘間の深部組織への侵害刺激は、ほとんどの人で痛みにつながる。
それでも一定数の患者では、何らかの理由で内臓症状が優位に出ることがある。
そんな実験の論文である。

さて、先のSeaman,DCはFeinsteinの論文から何を言いたかったのかというと、棘間に与えられた高張性食塩水による侵害刺激感覚は痛み症状とイコールではないということにある。
したがって、この侵害刺激感覚が受容されて、局所痛、関連痛、内臓症状の経験に繋がるわけで、侵害受容感覚と痛みは区別しなければならないのである。

と言うことは、侵害刺激が必ず同じ症状を作るとも限らない。
それがどのような理由で関連痛になるのかは分からないのだ。

.故・横田敏勝(滋賀医科大学名誉教授)先生の著書には、脳に貯蔵された「痛みの記憶」が関連痛として引き出されることもあると書かれていた。
関連痛のパターンは1つの前提条件の実証に過ぎないと言うのである。

どうも、ある侵害刺激が局所痛であったり、関連痛であったり、しかも記憶に反映されたパターン通りではない関連痛もあり、自律神経症状を呈したり、稀には痛まなかったりで、どんな症状に振り分けるのかは謎である。

そう言えば「関連痛は謎だらけ①」での症例も、左下肢痛の既往歴を持っていた。
それも脳の記憶が少なからず反映しているのだろうか。



参考文献、引用文献
1)“Dynamic Chiropractic”Vol.29,No2.“Nociception Is Not a Symptom; Nociception Is Not Pain”By David Seaman, DC, MS, DABCN
http://www.dynamicchiropractic.com/mpacms/dc/article.php?id=51113
2)“Experiments on pain referred from deep somatic tissues”By B.Feinstein
http://www.ejbjs.org/cgi/reprint/36/5/981.pdf
3)横田敏勝著「痛みと脳」118頁
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by m_chiro | 2011-01-25 19:11 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
関連痛は謎だらけ④ 
④ 関連痛に痛覚過敏がなぜ起こる

関連痛は謎だらけ①で触れた患者さんは仰臥位でも腹臥位もとれず、唯一の寛解安静位は患部を上にして大腿部にクッションを入れた側臥位だった。
それでも大転子周辺は少し痛苦しいと言う。

小殿筋TPとの鑑別を要する疾患に、「転子包炎」があげられている。
股関節屈曲位での側臥位をとると、別の過敏点が滑液包上に引き出されることで見分けられるとされているが、そのような気配はない。

ただ、殿部や大腿外側部に手掌を乗せると広い範囲に痛みが広がる。過敏状態である。
手掌で触れた程度の触・圧覚の受容器支配は、非侵害受容器である。だから健常であれば通常は痛むはずがない。

それでも痛みが放散するように広がるのは痛覚過敏である。アロデニア状態か、もしくは触れた部位の皮下組織にも病変があるのかもしれない。
痛みは侵害受容器の興奮によって起こるという考えが通らない。
そんな病態が関連痛には見られるようだ。
炎症所見が見られない痛覚過敏は不思議でもある。
いったい、どのようにして起こるのだろう。

こうした痛覚過敏には静的過敏と動的過敏があるとされている。
要するに触れた手を止めていたか、あるいは動かしたかでわけられる。
私は触診で浅筋膜の動きを見るので、この患者さんのケースは主に動的痛覚過敏と見ていいのだろうと思う。

静的痛覚過敏は傷害部位に限局した痛みがみられ、侵害受容器の閾値が低下して感受性が亢進したことに起因している。
一方、動的痛覚過敏は広作動域ニューロン(wide dynamic range:WDR)の感受性亢進によるものとされている。

脊髄後角には6層の区分けがあり、そこに入力する侵害受容ニューロンには2種類ある。
ひとつは「広作動域ニューロン:WDR」で、もうひとつは特異的侵害受容ニューロ(nocieptive high threshold:HT)である。
「特異的侵害受容ニューロン:HT」は、侵害刺激だけを特異的に受容するもので、後角の1層と2層の外側にある。
WDRは1~2層、4~6層にあって、触覚刺激、圧覚刺激(痛みを生じない非侵害刺激)から痛みを生じる侵害刺激まで、幅広いさまざまな刺激の入力を受けている。

WDRの感受性が高まっていると(ワインドアップ現象)、末梢での触刺激などの非侵害性の刺激に対しても(Aβ線維からの入力に対しても)、痛みインパルスが中枢へ送られるということになる。

また不思議なことに、今回のケースでも浅筋膜を全方向に動かして、痛みが生じない方向でホールドしながらリリースしていくと、体表に現れている関連痛や痺れなどの異常感覚は割合早期に解消された。ところが深部にある活性TPがあると、これはなかなか完治しにくい。

よくよく考えると、筋膜をリリースして解消される痛覚過敏は、本当にWDRに反映されたものか疑問が残る。
それとも単純に、筋TP活性によって浅筋膜組織の侵害受容器の閾値が低下しただけなのか、それも謎のままである。
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by m_chiro | 2011-01-21 23:38 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
雪中かけっこ、空の勝ち!
雪中のかけっこは、空の勝ちでした。

今日も大雪・暴風雪注意報が出ているが、昨日より雪の降り方は静かである。
それでも今年最高の寒さ、マイナス6度を記録した。
今朝は粉雪が降る程度なので、朝の散歩は雪原に出かけた。
わんこ達は雪が大好き。
空はかけっこ。
桐子は雪に背中をこすりつけてゴロゴロ。
かけっこでは、桐子も空にはかなわない。

遠くまで駆けて行った空と桐子を呼び寄せると、かけっこをして飛んでくる。
空のゴールがシャッターを切るよりも早過ぎて、空の姿が欠けてしまいました。
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ゴール直後の空。「ああ~、しんど!」
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勝者の褒美をもらうまで待っています。
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「もうカメラはええんよ、はよ何かおくれや!」
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by m_chiro | 2011-01-16 18:10 | わん・にゃん物語 | Trackback | Comments(2)
また大寒波がやってきた
昨日、14日から再び大寒波が忍び足でやってきた。

冷え込みも厳しい。

昨日の朝は、屋根のつららが窓の廂乃下まで延びていた。
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今朝(15日)は集中的に降り始めて、本格的な雪模様、その上に暴風雪の予報まで。。。

道路も視界不良です。
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せっせと雪かきに励まなければ。。。。
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by m_chiro | 2011-01-15 23:32 | 庄内の記 | Trackback | Comments(2)
関連痛は謎だらけ③
③遅延性筋痛に関連痛の機序のカギが見える

さて、われわれが経験する関連痛の多くは更に遅延時間が長いように思える。
そうなると、神経学的な仮説とは違う機序を考える必要がありそうだ。
体性―体性における関連痛のカギは、やはり筋性の痛みに関する研究の成果にかかっているように思えてならない。

遅延して発現する痛みというテーマになると、「遅発性筋痛」が真っ先に思い浮かぶ。
名古屋大学環境医学神経系分野での研究が名高く、水村和枝教授の論文「遅発性筋痛の基礎最前線」は、この問題に多くの示唆が含まれている。

この論文の要点を上げると以下のようになり、我々が臨床で日常的に見かける関連痛の病態とダブる。
すると関連痛を解明するカギは、やはり筋性障害のメカニズムを究明することのようである。
謎解きのカギが随所に垣間見れるだろう。

1)遅発性筋痛は伸張性収縮(遠心性収縮)によって生じやすい。
2)自発痛はほとんどなく、圧痛・運動痛が顕著である。
3)遅発性筋痛は運動後1日以上経過して起こり、運動後3日~7日後には消失する。
4)運動再開後には外傷の元になり得る。
5)慢性痛の潜在的な原因となっている。
6)圧痛・運動時痛のような機械刺激に対する痛覚過敏以外に、浮腫、筋力低下なども伴う。
7)筋機械痛覚過敏を対象とした研究はまだ少ない。
8)最近の研究では、必ずしも損傷や炎症像があるとは言えない、という報告が出ている。
9)浮腫の組織学的変化では、5%程度の運動筋の増大を認められた。
10)遅発性筋痛の発生機構については、①乳酸説、②筋スパズム説、③結合組織損傷説④筋損傷 説、⑤炎症説、⑥酵素流出説、⑦活性酸素説などの仮説がある。
11)運動前に消炎鎮痛剤を投与である程度抑制されるのに対し、運動後の投与では効果に対して否定的である。したがって、遅発性筋痛の形成過程に炎症メディエーターとしてプロスタグランジン(PG)がかかわっているが、維持にはかかわっていない。ブラジキニンやATPがかかわっている可能性がある。
12)1つの説だけではなく、筋損傷説、炎症説、酵素流出説を統合して発生機構を考えたい。
13)運動時に出現するブラジキニン、プロスタグランジン、ATPなどが協同して、または段階的に、遅発性筋痛を生じる過程をトリガーする。
14)何が筋痛み受容器の機械刺激に対応する反応性を感作しているかは不明である。
15)人で行われる研究が多い。ヒト中指に錘をつけてそれを保持しつつ下方へおろす運動をさせると、一日後に指伸筋に遅発性筋痛が誘発され、ひも状の硬結が触知される(Itohら)。TPのモデルと考えている。
16)足の底屈運動を用いて前脛骨筋に遅発性筋痛を生じさせて高張食塩水注入すると、痛みそのものは大きくならず、放散痛が高頻度にみられ、広がりが大きいことから、中枢性機構が変化している可能性を指摘している(Adendt-Nielsenのグループ)。
17)元々、炎症マーカーの高い人たちが、そのマーカーの活性化により遅発性筋痛を起こすのではないか(Malmら)。個人の遺伝的バックグラウンドが何らかの形で関係している可能性がある。
18)筋の圧痛(機械逃避反応)閾値の測定には、深部に刺激を送れる太い刺激子を用いる必要がある。
19)圧痛刺激による脊髄後角表層でのc-Fos発現細胞が運動後では数倍観察された。
20)機械刺激に対する痛覚過敏を起こす候補はATPとNGFで、ブラジキニン、セロトニン、サブスタンスP、PGE2は機械痛覚過敏をおこさない。しかしながら、ATPやNGFが遅発性筋痛の筋に多いかどうかは不明である。
21) 同一被験者で運動前後におけるで筋生検では、運動3時間後には有意な変化像はみらないが、48時間後にはマクロファージや好中球などの浸潤、Z帯のみだれ、といった損傷後の大幅な増加がみられる。これは組織損傷の結果と認められる。
22) 遅発性筋痛にC線維の関与は間違いない。また遅発性筋痛を生じた動物の筋の細径線維受容器は対照よりも早くから反応を開始(機械反応閾値の低下)し、その立ち上がりも急で、最大放電頻度も高かった。同じ機械刺激に対する反応の大きさが約2倍に増大していた。
23)受容器の熱感受性をもつポリモーダル受容器と、熱感受性もたない細径線維受容器とに分けると、機械感受性が増大していたのはポリモーダル受容器であった。
24)伸張性収縮負荷後に生じる機械痛覚過敏は、細径線維受容器の機械刺激に対する反応性増大が大きな役割を担っていると考えられる。これは、他の炎症モデルとの違いである。筋細径線維受容器の機械刺激に対する反応性のみが変化する面白いモデルである。
25)筋内の環境(サイトカイン、炎症メディエーター濃度など)や痛み受容器に発現するチャンネル、受容体の変化など多くの可能性がある。

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by m_chiro | 2011-01-14 17:35 | 痛み考 | Trackback | Comments(11)
関連痛は謎だらけ②
②遅れて起こる関連痛の新たな仮説から

関連痛に関する仮説は「末梢説」と「中枢説」に大別され、19世紀後半から諸説が出始めた。
そのいずれもが遅れてやって来る関連痛の機序を説明しきれていない。

そんな中で。明治国際医療大学生理学ユニット・川喜田健司教授の論文「筋硬結の基礎最前線」に興味深い仮説が紹介されていた。
Peter E. Baldry の仮説である。

脊髄レベルでのニューロン・ネットワークにおける可塑的変化と新しい受容野の広がりについて、「眠れるシナプス」の結合という視点から仮説が構築されている。Ruchの「収束―投射説」を発展させたものである。

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              川喜田健司改図・「筋硬結の最前線」より転載

端折って分かりやすく説明すると、
例えば、小殿筋を支配する神経回路を「A」としよう。
この神経は脊髄の特定の二次ニューロンとシナプスしている。

そこに小殿筋に損傷が加わると、痛みの信号が「A」の回路を伝導する。
この「A」の回路は、「B」の回路と連絡がある。
「B」の回路を、遠隔筋であるハムストリング支配としておこう。
ところが「A」と「B」の結合は、形態学的な連絡があっても機能していない、言わば「眠れるシナプス」である。

眠れるシナプスは、損傷による化学反応によって機能し始める仕組みである。

また、「A」と結合した皮膚との神経回路「C」も「眠れるシナプス」である。
更に、遠隔筋であるハムストリングと、「A」の神経が収束する二次ニューロンとのシナプスする「新しい受容野」が作られる。これを「D」とする。

こうしたサイレントなシナプスからの脊髄レベルでの収束があり、更には新しい受容野の発現まで、ニュラル・ネットワークから関連痛の機序を明かしている。

新しい受容野の発現までは5分以上かかるとされている。
さて、ヒトでの遅延は10数秒単位とされていて、その時間差をどう解決するかが課題でもあるようだ。
サイレントなシナプスが機能する化学反応系も今一明らかではない。

この仮説の前提であるサイレントなシナプスが同定され、それを機能させる化学反応系が明確になる必要があるものの、遅れて起こる関連痛の理由が見えて来そうである。
受容器もシナプスも「サイレント」な組織の研究がトレンドなのだろうか。

さて、われわれが経験する関連痛の多くは更に遅延時間が長いように思える。
そうなると、神経学的な仮説とは違う機序を考える必要がありそうだ。

(続く)
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by m_chiro | 2011-01-13 17:28 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
関連痛のメカニズムは謎だらけ①
① 関連痛はなぜ遅れてやってくるのだろう?

昨年末、年の瀬も押し迫って、左の腰下肢痛で歩行のままならない男性の患者さんがみえた。
左股関節部を前に突き出して、やっとこさ横歩きでステッキをついてやってきた。
何でも、冬支度や正月の準備で忙しく働いているうちに左の股関節周囲が痛み出し、やがては下肢痛も加わり跛行するようになったようだ。
腰殿部から大腿後外側へ、更に前脛骨筋部から足関節部にかけて、痛みと痺れ感を訴えている。
仰臥位や腹臥位は、痛みが強く出来ない。患部を上にした側臥位で診る他なかった。
殿部に軽く手を添えただけでも、大腿から前脛骨筋部に関連痛が起こる。過敏状態である。睡眠も妨げられている。

小殿筋TP(トリガーポイント)のパターン通りの痛みであるが、殿筋一帯にジャンプ兆候とTPが沢山ある。
この患者さんは越年してやっと良い状態になったが、関連痛を考える上でも参考になった。

関連痛とは、障害部位から離れた健常部位にも現れる痛みのことである。
その機序についても諸説あり、未だ決定的な仮説が見当たらない。謎だらけの痛みである。

Travell&Simonsの「トリガーポイント・マニュアル」に記載されている小殿筋TPは、概ね次の点で特徴的である。

1. 小殿筋TPは「坐骨神経痛の成り済まし筋」として知られている。だから根性痛として診断されることが多い。
2. 小殿筋TPの関連痛は耐えられないほど持続し、そして非常に激しいものがある。
3.関連痛の範囲も一般的には足首までで、足首を超えるケースは稀である。
4.痛みを鎮静化する歩行をとる。そのため段階的な跛行あるいはステッキを用いての歩行と成らざるを得ない。
5.小殿筋は殿筋の中でも最深層の筋で、その前方部は大腿筋膜張筋と中殿筋が三層に重なり合い、後方部では中殿筋と大殿筋の三層で構成されている。
6.痛みの関連区域に痛覚の変化や感覚異常または麻痺が診られることもある。
7.小殿筋の活性TPが単一の症候群として現れることはほとんどなく、梨状筋、中殿筋、外側広筋、長腓骨筋、腰方形筋、時に大殿筋と関連してことが非常に多い。

今回の症例は、小殿筋TPのマニュアル通りの態を示していた。

さて、ここでの謎のひとつは、なぜ関連痛が遅れてはじまるのか、ということにある。
関連痛のメカニズムで広く知られている仮説は、Ruchの「収束―投射説」である。脊髄後角に収束する同一のニューロンが存在しなければ成り立たない仮説である。近年、こうした収束するニューロンが脊髄だけでなく、より上位の痛覚伝導路にも、また一次ニューロンにも収束するニューロンが見つかっているのだそうだ。と言うことは、どの神経レベルでも収束現象が起こりえる、と言うことなのだろう。

次の図は、皮膚からと内臓からの感覚神経が後角に収束していることを示している。

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     ”Principles of Neural Science”4th Edition. 471Pより転載

皮膚は身体内部と外界の境界をなしている。したがって、常態的に情報のやり取りが行われている。一方、内臓からの情報は皮膚と違って明確な定位はない。
だから、脳は内臓からの痛み情報を皮膚から入力と勘違いして投射する、というのがRuchの収束―投射説である。
でも、なぜ障害部位から遅れて関連痛が起こるのか、というのは謎である。
「収束―投射説」では、この遅れを説明できない。
だから関連痛の仮説は、筋・筋膜疼痛症候群(MPS)の説明にはならない。

(続く)
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by m_chiro | 2011-01-12 13:22 | 痛み考 | Trackback | Comments(6)
連日の大寒波にノックアウトです
正月、穏やかな天気は、元日と2日だけでした。
後は連日の大寒波、暴風雪の連続です。

この地方の雪の積雪量は、さほど多くありません。
何しろ暴風雪ですから、降り積もった雪も飛ばされてしまいます。
桜吹雪の「舞い上がる、舞い落ちる」なんて絵空事。
「吹き上がる、吹き荒ぶ」状態です。
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街中でこうですから、郊外は1メートル先が見えない状態になります。
自宅前の生活道路も視界不良で、この有様。

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今朝は、「つらら」が出来ていました。

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駐車場の雪かきを終えたと思っても、すぐにまた降り積もってしまいます。
風が吹くと飛ばされて吹きだまりが出来上がって、
それを除雪車がまたご丁寧に運んでくるので、
早朝はどこの家でも総出で雪かきの毎日。
もう、ノックアウト寸前です。
それでも、街も人の生活も滞りません。つよいなぁ~、と思います。
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by m_chiro | 2011-01-11 12:35 | 庄内の記 | Trackback | Comments(2)



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