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視覚系は身体情報の窓かも....
私が本格的に視覚情報を治療に取り入れるようになったきっかけは、AKの「PRTYテクニック」を知った頃からのように思う。
2008年に、科学新聞社からDavid S Walther,D.C.の著作「Applied Kinesiology SYNOPSIS」が栗原修D.C.の翻訳で刊行された。550頁もある大部の著作で、2008年には100頁以上も増補されて第2版が刊行されている。この本は、AK(アプライド・キネシオロジー;応用運動学)の理論とテクニカルの概論について余すところなく伝えておりAKを使う治療家には必携である。この本の中で、「PRYTテクニック」が紹介されている。
PRYTは、頸部と骨盤部の固有受容器の不適切な機能を検査・調整する方法である。

 “PRTY”という言葉は、ピッチ(Pitch)、ロール(Roll)、ヨー(Yaw)、そしてティルト(Tilt)から由来する。ピッチ、ロール、ヨーは航海員や航空員が前方への動きに対する船舶や航空機の位置を示すために使用する言葉である。(前掲書第2版228頁)

と説明されているように、PRTYは身体の3次元分析とその統合に基づいている。
私も著書に倣ってよくこのチェックと調整を行っていたが、あるとき眼球運動と頭位の門題が主な機能障害の元になっているのではないかと気づいた。

それが神経学的に正しかったのかどうかは分からない。が、運動認知の手法で眼球の動きと頚反射を修正すると、頭位の傾きにとてもよく反応した。あくまでも印象的にではあるが、治療効果にも好影響を与えているように思う。以来、その模索を行ってきた。

この9月の学会で特別講演をいただいた住谷昌彦先生が、CRPSの患者さんに視覚情報を用いて脳と身体感覚の統合する方法の取り組みをご紹介いただいた。この講演に意を強くさせられ、私の視覚情報への関心も更に増したのである。神経学の基礎的な知識が不足しているので一筋縄ではいかないが、先に楽しみがあることが何よりいい。

ついこの間、興味深い症状の患者さんがみえた。何か身体に異変があると当院をご利用いただいている御婦人である。
朝目覚めて、何気なく右を向いて障子戸の方を見たら、桟がグニャリと歪んで見えたと言う。
驚いて顔を正面に向け、天上の升目を見たが何ともない。
また、右を向いたら、やはり歪む。左を向くのは大丈夫である。
何事が起ったのかと、眼科を受診した。眼球の筋肉が弱くなって垂れ下がったか、網膜剥離かもしれないと言われ、明日、瞳孔を開いて検査しようということになった。

明日検査と言われ、「網膜剥離であれば手術」となる。とても不安なので、せめて「目の筋肉が垂れ下がっているか見てほしい」と言うのである。

眼球運動がスムーズに動くように調整したが、右方向での画像のぶれに変化はない。
右眼を閉じて右に頭位を変えても像はぶれないから、右眼球に何らかの異常が生じたのだろう。網膜剥離とも思えないが.....?

カルテをみると、この患者さんは5年前にも右眼の異常を訴えていた。確か息子さんが大変な病気になり、それはそれは心配して心労を抱えていた時だった。
眼科を受診して「水が溜まっている」とされたのだった。
今回も何か心労が無かったのかと尋ねると、やはり今回も息子さんの別件の入院騒動で心配したらしい。
それも一段落したところだった。


昨日、検査をした結果報告の電話があった。「右の黒目の外半分が腫れている」と言われ、しばらく様子を見ることになったようだ。
それでも前日の治療後から、「歪みが随分小さくなった」とも話していた。

この患者さんの心労と右眼の異常が、どう関係しているのかは分からない。
でも、まんざら関係が無いとも言えないようでもある。
眼は脳の出先でもある。視覚情報はいろんなことを知る窓かもしれない。
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by m_chiro | 2010-09-23 11:33 | 症例 | Trackback | Comments(0)
左足底の運動痛は腓腹筋のTPだった
左の足底アーチ部分が歩行・ランニングで痛む、という中学2年生の女子が治療にみえた。
彼女は陸上部で砲丸投げの選手である。
歩いても左足底のアーチ部分だけに痛みがある。もちろん練習でのランニングもできない。
捻挫したとか思い当たる原因も不明である。

足関節の問題を想定して可動触診検査を行うと、内反方向に距腿関節のハイパエーモビリティが感じられる。足底腱にも問題はなさそうである。簡易に伸縮性テーピングで過剰な動きを抑えて状態をみた。
やはり、歩いても痛む。

下腿の筋を触診すると筋の緊張に左右差がある。
腓腹筋の内側頭にジャンプ兆候の圧痛があるが、足底への関連痛は起きない。

そこで砲丸投げの動作をさせてみた。
砲丸のリリース時の動作で顕著な痛みが出た。
どうも左足底の外側にウエイトが乗って、そこに外旋の捻りが加わる踏み込みをしている。
その状態を作るために上方圧を加えながら外旋位で腓腹筋の長頭の圧痛点を抑えると、見事に左足底に関連痛が生じた。
TP図にも典型的パターンが示されている(下図)。
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治療は2つに分けた。ひとつは感覚―運動系の反射的な入出力プログラムを認知運動法で安定させたこと。そして、腓腹筋長頭のTPをリリースしたことである。

変化を確認するために歩行をさせてみると、今度は足底の痛みを感じないで歩けるようになった。
TPや圧痛点は筋への過剰刺激もさることながら、身体体感覚系と運動系が基本的に下位脳でミスマッチすることに誘因があるように思う。
では、そのミスマッチを再起動すれば即座に痛みが消えるのかと言うとそうとも限らない。
出来上がって刷り込まれているTPには、他の機能系からのアプローチが必要なのだろう。
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by m_chiro | 2010-09-16 18:04 | 症例 | Trackback | Comments(0)
信じがたい話だが...
定年になって家庭菜園をはじめたオジサンが、ジャガイモ堀をした後で右のふくらはぎに激痛が起こった。

整形外科でのX-rayに問題が見られず、坐薬を処方されたが10日も経ってもなかなか改善しない。
良くなっているという実感もない。
歩行痛があり、足底の先端部に痺れ感もある。夜間も苦しくて目覚める。

「あまり良くならない」と訴えると、整形外科医はMRI検査をすると言って予約を入れられた。

「予約はまだ2週間も先のことなので」と治療にみえた。
右腓腹筋の内側頭にはジャンプ兆候と関連痛を誘発するTPがある。外側頭にも強い圧痛があり、やはりジャンプ兆候を伴っている。明らかなMPSである。

腓腹筋のトリガーポイントは、立ったままでの前屈姿勢動作を一定時間続けると発生しやすいとされている。ジャガイモ堀という明らかなきっかけがあるのだから、MRI検査の前に筋・筋膜問題を疑うべきだろう。

触診すれば筋性の問題と気づくはずなのに、その医師の診断基準はどこに向いていたのだろう。もっとも、筋・筋膜に意識が向かない限り、MRI志向の検査も無駄な治療も後を絶たない。必要とは思われない検査が、安易に勧められてはいないか。

腓腹筋のTPをリリースすると、歩行痛が消えた。
2回の治療で痛みが消え、足の1~2指の付け根に少し痺れ感を残している。日常生活にも、睡眠時にも支障はなくなった。

それでも、予約されていたMRI検査を受けた。結果は「脊柱管狭窄症」である。
手術を勧められたが、今は痛くないからと断った。
それでも、「今に大変なことになるから手術をした方がいい」とまた勧められた。
再度、断ると「では、応急処置だが、ブロック注射をしておこうか」と言われたらしい。
結局、すべて断って帰ってきたが、「もう、痛みもなくなった、と言っているのに訳が分からない」とぼやいていた。
一体、何をどう理解して診断しているのやら...。
俄かには信じがたい話だが、現実のようだ。
痛みの治療は、痛みを知ることから始まる。大事な理念である。
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by m_chiro | 2010-09-15 16:21 | 症例 | Trackback(1) | Comments(2)
「熊澤孝朗先生・追悼セレモニー」(第12回カイロ学会より)
「日本カイロプラクティック徒手医学会」の大会2日目、午前の部の最初のセッションは「熊澤孝朗先生・追悼セレモニー」が行われました。

熊澤先生からは、今学会に大変心強いご支援を頂いてきました。

その熊澤先生がこの7月26日に急逝されたのです。

福岡学会を目前にして、われわれ実行委員会では「熊澤先生に良い結果報告をしたい」と思っていた矢先の出来事でした。

実行委員会でも、ただ驚きで呆然自失と言ったところでした。

そこで、予定のプログラムを少し変更して時間を取り、私が熊澤先生と今大会との関わりや経緯をエピソード交じりに紹介し、参加者と共に熊澤先生を偲ぶひとときを過ごしました。

経緯を辿りながら紹介している内に、様々なことが思い出されて声が詰まってしまいました。
熊澤先生の御支援がなければ、われわれの当初の企画を全うすることができませんでした。
ただただ感謝のほかありません。

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2002年、愛知医科大学に「痛み学・講座」を開講された頃の熊澤孝朗先生。
「サイエンスだから分かりやすくなければならない」を信念に、痛みの科学に大きな足跡を残された。
私も多くの学びを頂きました。
「痛みの治療は痛みを知ることからはじまる」ということを忘れずに、微力を尽くしたいと思います。
心からの感謝と哀悼の意を込めて、ご冥福を祈ります。


尚、熊澤先生の最後の原稿となったインタビュー記事は「日本カイロプラクティック徒手医学会」のHPにアップされています。
是非、熊澤先生の最後のメッセージを噛みしめながら、多くの人にお読みいただきたく思います。
今学会で基調講演を行いました吉村恵先生にも、「構成と内容ともに、とても良くまとめられた原稿」と評価していただきました。
この原稿の制作に係れたことを誇りに思っております。


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by m_chiro | 2010-09-14 17:02 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
住谷昌彦先生の「CRPSに対する神経リハビリテーションとそのメカニズム」(2010年・カイロ学会より)
c0113928_16194224.jpg「日本カイロプラクティック徒手医学会」の第12回学術大会では、実行委員として企画面のお手伝いをさせていただいた。

「痛みを考えるー最新の感覚受容器の研究に基づいてー」をテーマに、盛況の大会だった。

学会は9月4~5日の両日にわたり福岡市で行われ、猛暑にもかかわらず多くの参加者が熱心に聴講し、活発な議論もあってとても良い学会になったと思う。

実行委員を務められた九州カイロプラクティック同友会メンバーの統率された活躍も印象に残った。

これも多大なお力添えを頂いた故・熊澤孝朗先生のお陰である。
熊澤先生の御支援がなければ、とても当初の企画を全うすることが出来なかったろうと思う。

招待講演も、熊澤先生が世界的にも著名な基礎研究者・吉村恵先生(熊本保健科学大学大学院・保健科学科教授)と、次代を担う臨床研究者のホープと期待される住谷昌彦先生(東京大学医学部付属病院・麻酔科・痛みセンター助教)の両先生を推挙して下さり、とても興味深く内容の濃い講演を聞くことができた。
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私には、住谷先生の講演が特に印象深く残っている。それはCRPSなどの神経障害性疼痛に対する大脳生理・認知神経科学的手法を試みている臨床現場からの報告であった。
難治性の痛み患者の「脳と身体」の関係性を研究したものである。

要するに、身体を動かしているという知覚は身体情報が大脳に入力されて、その情報に基づいた運動指令がだされ運動が実行されるわけだが、この「知覚―運動の協力応答」を認知神経学的に調整する方法である。

ヒトの身体性は、身体周辺の環境と身体の内部感覚によって固有の位置情報や姿勢の知覚が保たれている。こうした入力としての感覚系と出力としての運動系は、相互に情報の伝達が繰り返されて保たれているのである。

この「知覚―運動ループ」は本来、生理学的に整合性を持っているわけで、そのループに異常が起こると痛みなどの異常感覚が起こるのだろう。
この痛み発症の起源に迫って、ヒトの情報系のプログラムを再統合する試みと受け取った。

CRPSの患者は明るい場所では視空間認知が正常に作用しているが、暗い場所では患側方向に視空間認知の偏位が起こっていると話しておられた。
「目の見えない人にCRPSが発症するのか?」との会場からの質問に、「今のところいない」と答えられた。これも驚きと同時に興味深く感じた次第である。

視覚情報系と身体感覚系の統合する高次の脳での神経系の統合不全が、難治性の痛みの発症に関わっているのだろう。
私も頭位と視覚情報系をチェックして統合させる手法を用いているので、住谷先生のお話は大変興味深かった。

CRPSは、かつてRSD(反射性交感神経ジストロフィー)やカウザルギーとされたもので、国際疼痛学会によってタイプⅠとタイプⅡと改められたが、両者の差異が分かりにくいことから、2005年に「CRPS」と統一された。症状に交感神経の依存性と非依存性があるものの、多くは損傷後のギプスなどで関節や筋肉の不動化がきっかけとなっている。

身体の部分的な不動化は身体情報も途絶えて、こうした難治の痛みや交感神経症状を合併する痛みを作るのだろう。

筋・筋膜や関節の不動化は難治の痛みに限らず、痛み症状の根幹にある問題とも言えるだろう。疾患や損傷によっては、必然的に安静・不動の部位をギプスなどで保たなければならない事態もあるだろうが、その状態にあっても、いかに損傷治癒後の難治な痛みを回避する対策を講じる必要があるのだろう。

いろいろと学び多い講演を拝聴した。
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by m_chiro | 2010-09-10 16:22 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(12)
臨時休診のお知らせ
9月4日(土)~5日(日)
臨時休診のお知らせ:


9月4日(土)~5日(日)は
「日本カイロプラクティック徒手医学会・第12回学術大会」が
福岡市で開催されます。

テーマは「痛みを考える―最新の感覚受容器の研究に基づいてー」です。
今学会に多大なるご支援を頂いた故・熊澤孝朗先生の追悼のセレモニーも行われます。

1年間、この学会の準備のために奔走してきました。
当日は、実行委員として頑張らなければなりません。

申し訳ありませんが、休診させていただきます。

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by m_chiro | 2010-09-01 11:30 | 守屋カイロ・オフィス | Trackback | Comments(2)
「椎間板ヘルニアが神経に突き刺さっている」?
30歳の男性。7月半ばから左の腰下肢痛と痺れで仕事や生活に支障がある。
整形外科を受診し、MRIで椎間板ヘルニアと診断された。
痛み初めて2カ月過ぎて、治療にみえた

何でも「ヘルニアが神経に突き刺さっているから痛い」のだと、整形外科医に説明されたらしい.
う~ん、痛そうだ!!
結局は、「鎮痛薬と坐薬で経過を見ましょう」ということになった。
それでも痛みは消えない。
身体も傾いてきた。仕事も辛い。夜間も痛むようになった。

牽引と物療をして、鎮痛薬を飲んでいるが、薬は余り効かないのでやめている。
「酒を4合飲むと何とか眠れる」らしく、薬よりも酒が効くのだそうだ。

動力学テストを行うと骨盤の「左側滑」と「伸展」、「右側屈伸展」で下肢症状が消失する。
神経など損傷されていない証拠である。
こうした寛解因子が見つかるケースは予後も良い。
「Dysafferentation:求心性神経入力不全」の原理に従って治療すればよいからである。
即ち、痛み刺激を抑えて動き刺激を入力する。

このケースでは動力学テストの結果から、左側滑と右側屈伸展の組み合わせ運動で、脊柱仙骨の動きで最も動きの制限された部位をターゲットにして、そこに動き刺激を送ることになる。
この動き刺激で下肢痛が再現されるようなことがあれば、再セッティングしなければならない。
痛み刺激を抑える動きの刺激を送らなければ意味がないからである。

脳への動き刺激入力をする前に神経系の統合不全を調整するが、それは頭位と眼球運動、緊張性頚反射、呼吸反射、歩行反射、足関節の固有受容器からの信号系などのプログラムの作動状況を確認する作業でもある。

治療後は脊柱の湾曲もほぼ正常になり、下肢痛もなく歩行できるようになった。

「ヘルニアが神経に突き刺さっている」という説明をして鎮痛薬で経過観察というのでは、治療の戦略・戦術の道筋がみえないばかりか、患者の不安を煽るだけだろう。

2回目の治療にみえた時には、痺れも消えて臀部に多少の痛みが残っている程度になった。


痛みの説明をすると、「僕はヘルニアではないんですか?」と聞くので、「MRIでヘルニアが見つかったわけだから、ヘルニアはあっても、この痛みとは関係がない」のだと強調しておいた。

1週間後の今日、3度目の治療にみえた。表情も明るくなり若者らしい動きをしていた。
寛解因子が明瞭な痛みは経過も良好である。その動きを在宅エクササイズとしても使えるからセルフケアにもなる。
寝酒もいらなくなったようだ。
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by m_chiro | 2010-09-01 09:37 | 症例 | Trackback | Comments(2)



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