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「トリガー・ポイント」と「侵害生成点」
トリガー・ポイント(TP)という新しい概念を提唱したのはJ.トラベル医師(Janet G. Travell, M.D.;1901-1997)である。
この新しい概念と用語が発表されたのは1952年とされている。
彼女は、筋膜痛と関連痛の研究に40年以上にわたる年月を費やし、この間40編以上の論文を医学誌に発表した。
当時、ケネディ大統領は自らの政治生命を脅かすほどの痛みや病気を抱えていて、トラベル医師が大統領の主治医として活躍した話はあまりにも有名である。

このトラベル医師の発表に先立つ1940年代後半に、カイロプラクターのR.ニモ(Raymond Nimmo,D.C.)がトリガーポイントと同様の概念を「侵害生成点;Noxious Generative Points(NGP)」という用語で提唱していた。

TPとNGPは同様の概念である。
時期を同じくして、医師とカイロプラクターという異なる領域の二人が、痛みと鎮痛に関わるポイントを捉えていたことになる。

では、なぜ「トリガー・ポイント(TP)」が普遍的な用語となったのか。
背景には、ニモD.C.の英断があったとされている。
トラベル医師がトリガー・ポイント(TP)について発表した論文を読んだニモD.C.は、同じ概念を違った領域から主張し続けることは無用の混乱を招きかねないと考え、「侵害生成点(NGP)」の用語を廃棄したとされている。
このことも一因となって、「トリガー・ポイント(TP)」は普遍的な用語となり、NGPは先に発表されていたにもかかわらず、歴史の片隅に埋もれることとなった。

トリガーという言葉は医学用語としては安易に過ぎるきらいがある。
「侵害生成点」は神経系のもたらす意義を良く表現しているものと思われるが、トリガーという安易な呼称が普及したことで、印象的には本来の神経学的・生理学的な意義性を希薄なものにしたのかもしれない。

つづく
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by m_chiro | 2010-04-28 00:57 | 膜の話 | Trackback | Comments(0)
脳が勘違いする痛み
歯痛の謎:「脳は場所を特定できない」2010年4月22日
http://wiredvision.jp/news/201004/2010042222.html


上の記事は、ドイツのエアランゲン=ニュールンベルグ大学のClemens Forster教授らが行った歯の関連痛に関する研究が「PAIN」誌に掲載されたことを紹介している。
それによると、歯の痛みの原因となる刺激の局在認識は随分曖昧のようだ。とても面白い。
記事を引用すると、

実験では、被験者の左上の犬歯と左下の犬歯の一方に、電気パルスが送り込まれた。この電気刺激により、氷の塊をかじった感覚と似た痛みが発生する。 被験者による痛みの評価が約60%になるように、電気刺激はその都度、調整された(想像できる最大の痛みが100%とされた)。
別々の歯からくる痛みに対する脳の反応を調べるため、研究チームは機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用い、上の歯と下の歯に刺激を送った場合の、 脳の活動の変化をモニターした。
「上の歯の痛み」と「下の歯の痛み」は、三叉神経のうち明確に区別される2枝からそれぞれ伝わる信号だ。上顎からの痛みの信号は第2枝(上顎神経 V2)が、下顎の痛みの信号は第3枝(下顎神経V3)が伝達する[文末に図を掲載]。しかし実験によると、脳の多くの領域が、この2つに対して同じような 反応を示した。
具体的には、大脳皮質内の体性感覚皮質、島皮質、帯状皮質といった領域が、上下どちらの歯痛に対しても同様の振る舞いをみせることが確認された。こ れらの領域は、痛みの投射のシステムで重要な役割を果たすことが知られているが、上下の歯の痛みに対して、いずれも大きな違いを示さなかった。


上顎と下顎の区別は不明瞭なこともある、とされているのは、こうした投射痛の現象を示しているのだろうか。
それでも左右の識別能力はしっかり維持されているわけだから、患部の痛みと健側を間違えることはないのだろう。
でも脳は、「上の歯の痛み」と「下の歯の痛み」を非常に似通って感じていることになる。
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による調査である。

これだから、関連痛(Referred Pain)には悩まされる。
ある部位の痛みを異なる部位の痛みと脳が勘違いをする、ということが実際に存在するわけだから、ややこしい話である。
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by m_chiro | 2010-04-24 02:10 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(0)
やっと桜が7分咲き(鶴岡公園の桜を見に行く)
庄内平野を流れる最上川を挟んで、酒田市と鶴岡市がツイン・シティのように成り立っている。
酒田は北前船で商業の町として栄え、本間様という大地主が殿様よりも権勢をふるった。
一方、鶴岡は城下町である。今では、その城跡が鶴岡公園として市民の憩いの場になっている。
藤沢周平の作品に登場する海坂藩は、この鶴岡城を中心にした庄内藩を想定したものである。
藤沢周平の小説は、城下の下級武士や市井の人々の生き方が美しく描かれていて、私の大好きな愛読書である。ほとんど全作品を読んだ。

さて、この頃は春が来たように思うと、また冬に逆戻りで、桜もなかなか開花しない。
昨日は気温もぐんと上がって、一気に桜が花開いた。
それでも海辺や川沿いの桜は、未だ3分咲きである。

そんな中で、早々と開花宣言を出したのが鶴岡公園の桜だった。
が、今日はまた気温10度を下回り、寒い風である。明日からまた寒くなるらしい。
そんなわけで、冬支度で鶴岡公園の桜見物にでかけた。
お濠跡の周囲にぐるりと桜が咲いていて、鶴岡城下の人々もお堀端を歩きながら桜見物を楽しんだことだろう。そんな想いが脳裏をよぎる。
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藤沢作品「花のあと」の映画ロケも公園内で撮影された。
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公園内には「藤沢周平記念館」も建設され、4月29日の開館を控えて準備中だった。
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明治14年に建てられた旧鶴岡警察署。
昭和32年に鶴岡公園脇のお濠の外に移築された。国の重要文化財に指定されている。
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これは大寶館(旧鶴岡市立図書館)で、公園の入り口にある。
大正天皇の即位を記念して建てられた。 物産陳列場、図書館、会議室等として使用されていたが、昭和26年から昭和60年まで市立図書館として利用された。 現在は郷土人物資料館となっている。
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外堀からみると、こんな感じ。
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公園の向かい側には庄内藩校「致道館」がある。
立て看板には、こんな解説が書かれている。
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藩校内の桜が塀越しに大木の姿を覗かせている。
庄内藩士も学びの合間に楽しんだ桜だろう。
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by m_chiro | 2010-04-21 23:53 | 庄内の記 | Trackback | Comments(0)
「痛み学・NOTE」33. 筋線維に痛覚線維があるわけではない
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を 代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

33.筋線維に痛覚線維があるわけではない

侵害刺激を受け取る神経線維はAδ線維とC線維である。
この神経線維の受容器は熱刺激や化学物質などにも反応する。
前述したように、筋肉の筋線維に痛覚線維があるわけではない。

例えば、ギックリ腰になったとしよう。
ギクッとなる瞬間に背部の筋が傷害される。多くは前屈位で物を持ち上げたりする時に、腰方形筋などが傷害される。だから側屈も起こる。

こうして筋線維が傷害されると、発痛物質が遊離する。
それを痛覚線維の受容器が受け取ることで興奮する。
結果、痛みが起こる。筋の攣縮もみられる。

この痛覚線維は筋線維を包む結合組織や筋腱接合部、細動脈周辺組織にある。
毛細血管には痛覚線維はない、とされている。
だから、一般的には筋線維自体に痛みは起こらない。

例外的な筋線維の痛みに横紋筋融解症がある。
事故や負傷などの外傷的要因や、脱水、薬剤投与などの非外傷的要因によって発生する疾患で、筋肉痛が起こる。
血液生化学検査では、赤い筋肉由来のタンパク質であるミオグロビンが上昇し、筋肉収縮のエネルギー代謝に関与する筋原酵素(クレアチンキナーゼ;CK/CPK)が著しく上昇する。
これらは診断上での所見とされるが、CPKやミオグロビンの上昇は運動後の筋肉や外傷にもみられるので、CPKなどの単独の評価は決定的なものではない、とされている。

ともかく、筋線維自体の痛みは特別のケースを除いて起こらないのである。
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by m_chiro | 2010-04-21 12:17 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
身体という宇宙② からだは交響楽である 3.旋律
      THE BODY AS COSMOS
         身体という宇宙②
 
     からだは交響楽である。


3.旋律 The Melody of the Body

c0113928_22541223.jpg 旋律=メロディーとは、色々な高さの音が連続しているものであり、ギリシャ語のメローディア(歌う)に由来しますが、もともとはメロス(歌)と詩(オード)との合成で、詩を歌うという意味であるそうです。

最古の旋律パターンは、最高音から最低音までの広い音域を上下するものと、ほとんど二つほどの音域のせまいものに大別されるようですが、ヨーロッパにおいては、それぞれの時代の音楽様式と密接に結びつき、声楽旋律と器楽旋律とに分けられます。そして、1600年以前を声楽旋律優位の時代、以降を器楽旋律優位の時代とみるようです。

さて、旋律の変遷史とは関係のない話ですが、医学においても一種の流行というものがあります。例えば、デカルトによれば、人体は一種の「自動機械」でありました。その意味で、身体は医学の対象になるが、理性を持った人間は機械としての人体とは全く別のものである。という有名な心身二元論を1637年に「方法序説」の中で発表したのです。近代科学は、このデカルト的パラダイムに支えられ発展してきたと言えるでしょう。

こうした身体を部分に分割して可能な限り細分化しながら、身体全体を構成するメカニズムを解明する方法論は、医学の進歩に大きく貢献しました。病気になったら、悪くなった部分を治せば解明できるという基本的な考え方が今日の医療を支えているのはそのためとも思われます。一方、「心身一如」といった東洋の生命観などは、生命の本質を総括的に捉えようとする考え方であります。この論争も、医学の源流をたどると、古代ギリシャ時代にさかのぼります。

ヒポクラテスを中心にコス派と呼ばれた人々は、病気を持った病人を診ました。これに対立したのがクニドス派の人々です。彼らは病気や症状を病型分類し、患っている細分化された部分を治療していました。

部分にとらわれると全体が見えなくなる、全体をとらえると部分を見失う。両者の欠点を補完する立場で、今日のカイ ロプラクティックは、コス・クニドス両派の影響を受けているものの、その理論的源流はコス派の全体論(ホリズム)が根底にあると言えましょう。

そもそも生命は、全体として常に最適な恒常性を維持しようと働いており、D・D・パーマーは、ヒポクラテスの考えを踏襲して、こう推論しています。「人体はそれだけで完全な生物体であり、その置かれた環境の中で、それ自身の中に人体を生理学的平衡状態(恒常性)に保つためにあらゆる必要条件を生まれながらにして持っている。そうした状態に保たれている時には、本来あるべき姿として健康は維持されている」と。

この概念は近代に入って一層発展していきました。つまり、人間を取り巻く外部環境は常に変化していますが、その内部環境は常に一定に保ち、調和されるように動くとする、アメリカの生理学者W・B・キャノンが説いた「ホメオスタシス」理論であります。このホメオスタシスが正常に維持されていることによって、臓器や各組識が一つの自律的な統一性を持って機能を全うすることができるという主張です。

例えば、旋律からリズムを取り去ってしまうと、無味乾燥な音のかたまりにしかすぎないのですが、何の変哲もない分散和音にリズムを与えると、とたんに生き生きとしたメロディーになるように、音楽もやはり一つの自律的な統一性によって成立しているのです。

こうした「生体の自律性」と言うべき特徴を、小宇宙としての身体は持っています。その意味でも、人間の身体は、色々な器官や組織という部分が集積されてできていますが、それらは決して部分として独立した存在ではなく、相互に密接に関連した有機体としての存在なのです。部分はそれ自体、独立した部分でありながらも、相互の関連性を持った統一体としての全体なのです。この複雑な関連性と調和のリズムを一定に保つのが神経系であり、カイロプラクティックの学技は今後もその究明に貢献していくことでしょう。
(転載を禁じます)
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by m_chiro | 2010-04-16 22:58 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
臨時休診のお知らせ
4月14日(水)の午後から
4月16日(金)の午前中まで
臨時休診いたします


依頼された取材旅行で、愛知医科大学まで出向きます。
慣れない仕事を依頼されて、今から緊張しています。
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         お知らせ案内犬の空でした。
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by m_chiro | 2010-04-14 08:36 | 守屋カイロ・オフィス | Trackback | Comments(6)
身体という宇宙② からだは交響楽である 2.変調
        THE BODY AS COSMOS
            身体という宇宙②

          からだは交響楽である。

2.変調 Change of Conditions

c0113928_2303694.jpg音は、高さ、長さ、強さ、音色の四つの基本的な属性によって特定の音が規定されますが、その音から音楽を形成する には、一般的にリズム、旋律、和声の3要素が必要と言われます。

そして、その3要素の中でも、旋律を持たない音楽や、和声を持たない音楽はあり得ても、リズムを持たない音楽は考 えられないように、リズムこそが音楽の生命なのです。また、周期的に変動する身体の状態や現象を表す言葉として、「バイオリズム」という言葉があるよう に、音楽を超えた、より根源的な生命と直接かかわりを持つ力でもある。

しかし、規則正しいリズムやメロディーのみが音楽ではありません。シンコペイトされたリズムは千変万化のおもしろ さを表現しますし、モーツアルトの音楽の美しさはテーマが突然に変調するところにあると言う人がいるほどです。では、人間の身体にとってリズムに変調 をきたすということは、どんな状態を言うのでしょうか。

神経は、人間のあらゆる働きをコントロールする上で大切な役目を担っています。例えば、人が歩く時、足は交互 に前に出て身体を前進させていますが、右足と左足が先を争って出ようとしたなら、歩くことなど、おぼつかないことになるでしょう。

この時、右足と左足がお互いに話し合って、どちらが先かを決定するわけではありません。それを決めるのは人体の 総司令部である「脳」であり、脳の決議をそれぞれの足に伝えるのが、身体にはりめぐらされた情報ネットワークとしての「神経」であります。

この神経の通信網を微弱な電気エネルギーが身体の情報を運んで、時速400kmの超スピードで駆け巡っているの ですが、もし神経がなければわれわれはチグハグな行動を取ってしまうことになります。この通信網がスムーズに連絡することができなくなると、情報も滞 り、人間の身体は健全に機能することができなくなってしまうわけです。

これは病気やケガの場合でも同じで、もし転んですり傷ができると、その部分にばい菌という外敵が侵入しますが、そ の時、神経は超スピードで脳に「膝をすりむいた」と報告します。そして身の危険を察知した脳は、負傷した膝に白血球をたくさん集め、ばい菌と戦わせるの です。もちろん、こうした指令は神経によって全身に伝えられます。こうして、身体に起こった変化は神経を介して伝達され、防衛策もまた神経を介して指令 されるわけです。

こうした神経による身体の情報網は、内臓も含めて全ての身体の活動を支配しているのですが、神経を意識的に操作す ることはできないため、神経は寝ている間も休みなく働き、身体の内部環境に異常がないか、いつもパトロールを怠ることができません。

カイロプラクティック的にみれば、関節とその周辺の組織に発生したカイロプラクティック・サブラクセーションが、 神経系を介して全身にシグナルを送るということになります。人間の身体が有機的に結びついた存在だからこそ、身体に現われるそれぞれの症状は身体からの 警告シグナルだと言えるでしょう。

こうした、もの言わぬ身体の叫びとしての様々な症状は、神経の通信システムを通して様々な身体の不定な愁訴として現われてくるのです。

脳から出た神経は、すぐに背骨の中に入りますが、もしも背骨にトラブルが生じると、神経のネットワークにも混乱が起こり、身体の色々な組織や各臓器に機能 的な障害が起こってきます。そうなると、身体の修復作業も困難になります。こうして、身体はますます本来のリズムを崩してしまうことになります。

カイロプラクティックは、こうした神経の作用に注目しながら、身体に起こったシグナルを読み取り、身体の内部環境 の調整に協力していく治療でもあります。その意味では、生命のダイナミズムとしてのリズム変化は認めるものの、大方は基調を設定する調律師といったところ でしょうか。
(転載を禁じます)
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by m_chiro | 2010-04-13 23:11 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
身体という宇宙② からだは交響楽である 1.基調
      THE BODY AS COSMOS
          身体という宇宙②
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        からだは交響楽である。
人間が音楽を発明するきっかけとなったのは、集団労働の際の掛け声や、会話の抑 揚、感情の興奮と共に発する音声、大勢の人が一度に声を発した時の老若男女の音程差など、諸説があって定説はありませんが、宗教的な心の平安と歓喜に源泉 があったことは確かなようです。そして無限の音の世界を展開する交響楽。
しかし、音が音楽であるためには、リズム・旋律・和声など身体の機能バランスと同様に、ある秩序が必要であること は言うまでもありません。
無限と秩序。こうしてみると、身体という宇宙には、あなただけが奏でられるシンフォニーが流れているのかもしれま せん。

 
1.基調The Keynote

c0113928_2356346.jpg見落とされがちなことですが、音が音として聞こえるためには、ある一定の静寂が必要です。そしてその響きが心地よかったり、躍動感を与えてくれるのも、背景に静寂という舞台があるからに他なりません。その意味において、静寂こそ音楽の基調と言えるでしょう。

では、喜怒哀楽を全身で表現する身体の基調とは? それは人間の身体の60%を占める筋肉・骨格系にあるのです。ここでは、その基調はどのようにできているのか、どう機能しているのかをみてみたいと思います。

人間には200個以上の骨がありますが、その中でも重要な役割を担っているのが背骨と骨盤です。背骨は24個の椎 骨が仙骨という土台の上に、まるで一家の大黒柱のように立っており、これが背骨が脊椎といわれる由縁でもあります。そして仙骨を安定させるために、両側で は寛骨という大きな骨が支えているのです。

この脊柱が人間の姿勢や動きを支える骨格ですが、肋骨や骨盤と協働して内臓も支えています。頭蓋骨の下には7個の 頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎と、5個の仙椎が癒合した仙骨と、4個から5個の尾骨が集中して脊柱を形成しているのです。まるで、大管弦楽団を擁しているような壮観さです。

そして、この30個以上の骨は強靭で柔軟性のある組織で連結されており、その一つが、椎間板という軟らかい組織 で、1個1個の脊椎の間にあり、クッションの役目を果しています。もう一つは、靭帯というテープ状のすじが、脊椎の前後左右斜めから連結し、さらに小さい 筋肉や大きい筋肉がしっかりと脊柱をガードしています。

また、背骨は1本の柱として、人間の身体を支える重要な器官ですが、同時に、筋肉の作用が働いて、細やかでダイナ ミックな動きを演出する運動器官でもあるのです。特に頚椎は重い頭蓋を支えながら、全方向に対応して動きます。硬い骨でできている背骨に運動性があるの は、背骨の一つ一つの椎骨の間にある、柔らかくて強靭な組織である椎間板の作用によりますが、逆に言えば背骨はゆがみやすい造りでもあるのです。まさに、 椎間板は弾力性に富んだ「柔」と、重い身体を支える「強」と相反する二面性をもった組織で、音楽記号でいえば、瞬間的な強奏ののち、ただちに弱奏を要求す るフォルテピアノのようなものと言えるでしょう。

カイロプラクティックでは、特にこの背骨の運動機能単位である。関節間(モーター・ユニット)に注目しています。 中でも、骨のずれ、といった単なる構造的な関節障害のみならず、モーター・ユニットの機能的、あるいは動的な変調を重視しています。こうした関節間ユニッ トの変調は、その周辺を構成する筋肉、靭帯、循環系や神経系にも影響を及ぼすことになります。この概念は、臨床上でも重要な考え方になっており、既存医療 に対するカイロプラクティックの斬新な主張でもあります。

関節間ユニットの動的な変調は、日常ごく一般的に起こり得るのです。人間にとって、椎骨の一番最初のトラブルは、 出生の時であると言われています。赤ん坊は生まれる時に、首が捻じられ、鉗子で引っ張られ、大変困難な作業の中から産声を上げるわけですが、これが新生児 の脊椎不整列の原因となっています。

背中を不意に押されたり、何かにつまずいてバランスを崩したり、階段から落ちた、滑って転んだ、交通事故、スポー ツでのたいしたことがないと思われているケガ、悪い姿勢、重い荷物を抱えての旅行等々。何とも思わないで通り過ぎて行った、身体へのマイナスな刺激は、次 第に人間の身体を歪め、関節間ユニットに動的な変調をもたらし、それに関連して神経系、循環系、運動系のトラブルをつくり出していきます。

このように、背骨は、まさに人間の身体をコントロールする支柱であり、健康の基調をなすものなのです。そしてま た、身体の諸器官をオーケストラの諸楽器とみなせば、背骨はその指揮者であるとも言えるでしょう。
(転載を禁じます)


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by m_chiro | 2010-04-12 23:58 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
身体という宇宙① 2.カイロの科学性
           身体という宇宙①

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2. カイロの科学性

民間治療として世に出たカイロプラクティックは、その驚異的な普及に呼応するように、当然の如く、医学界の格好の批判 の的となりました。その多くは、「カイロプラクティック・アジャスメントはすべての病気を治す(Cure all)」という世評に対して、それを実証する科学的根拠がないという点に向けられていました。「イネイトが治す」という説明では、医学という分野であま りにも説得力を欠いていたのです。

しかし、インチキ治療という非難や、カイロプラクターを締め出そうとするアメリカ医師会の画策にも屈せず、彼らはそれ らと闘い続け、ついには今日の地位を勝ち取ったのです。そのカイロプラクターを勇気づけたものは、非難の声にもまして、「カイロプラクティックのおかげで 病気が治った」という人の数が、うなぎ上りに増えていったことでした。同時に、この事実を裏付ける科学的研究にも、心血を注ぐことを忘れなかったのです。 これはカイロプラクティックを支持する声にもまして重要なことでした。

デカルト以来の心身二元論に基づく現代科学の手法は、生命を全体として捉えようとするカイロプラクティックにとって、 適切な手法とは言えません。そもそも人間を対象とした科学は、すべて「未科学」の状態であり、「事実」を冷静に見つめながら、そこに存在する因果関係を追 求していく姿勢の中にも、科学は存在するのです。その意味では、カイロプラクティックの科学は、「理論から事実」ではなく、「事実から理論」の証明であり ました。

このカイロプラクティックの科学の果敢に取り組み、カイロの学問的レベルの向上に貢献したのが、J・ジェンシーやJ・ R・バーナーらでした。彼らは、新しい神経生理学の知識やベーシックサイエンスから、カイロプラクティックの理論的根拠を求めていきました。 それまでの「椎骨のずれが神経を圧迫する」といったカイロプラクティックの根拠の不充分さを指摘した彼らは、圧迫のないサブラクセーション概念を打ち出し ています。

こうして関節障害に注目した一方、「全体であると同時に個である」という生物学的認識論(ホロン的概念)にカイロプラ クティックの理論的根拠を求めていきました。それは、医学医療の盲点とも言える分野に目を向けた新しい見方だったのです。

カイロプラクティックは、あらゆる治療法と同様、限定的な治療法であることは否めません。しかし、その特色は、著しい効果を発揮し、健康と疾病の関係に新 たな視点を提起した治療学ということでもあります。

カイロプラクティックの基本的論原理を簡単に表現すると、生物学的な根拠に立脚しています。言い換えれば、カイロプラクティックは、人間が二足歩行である 故に生み出された必然の原理と言えます。人間は直立することで自由になった手で道具を使うことを覚え、物を捕まえたり、つくったりすることで脳を発達さ せ、考えることを可能にしましたが、その反面、重力に抗した直立姿勢からくる宿命的な欠陥は意外に知られておりません。

実際、脊椎を中心とする人体力学の機能的研究は、最も遅れている分野と言えましょう。人体特有のS字カーブの脊柱は完 成美のように見えますが、南カリフォルニア州大学のR・カリエ教授は「人間の背骨は決して完成されたものではなく、いまだに重力に対応する進化の過程であ る」と言い、カークスビル大学のH・ライト教授は、「今日われわれが直面する多くの健康上の問題は、直立姿勢に対する不充分な適応からもたらされている」 と述べています。

この分野で最も進んだ研究と臨床実績を積んでいる、ナショナル・カイロプラクティック大学のJ・ジェンシー教授は、 「人類が直立姿勢であるという事実は、骨格・筋肉系と神経系との相関関係を非常にユニークなものにしており、カイロプラクティックでは特にこの点を重視し ている」と語っています。

では、カイロプラクティックの理論的根拠になっている、直立姿勢が人体に及ぼす影響について考えてみましょう。

人間と他の動物を比較すると、構造的には非常に類似点が多いにもかかわらず、二足動物と四足動物ではタテとヨ コの関係にあり、各部の働き(機能)にはかなりの差があることに気づきます。人間の構造は、本来バランスのとれた四本柱(四足)の設計から、重力に逆らう 二本柱(二足)となって、いままでなかった余分な働きや負担が、骨格・筋肉・靭帯等に強いられることになったのです。

特に腰部には、構造上最も大きなストレスがかかり、前かがみになって何かを持ち上げる時に感じる不安感と痛みは、ほと んどの人が経験しています。

直立姿勢では、骨盤は、新たに生殖器や内臓諸器官を支える床の役目を強いられてお皿状に変わり、しかも運動性を維持す るため、仙骨は前傾斜となって産道を狭め、難産の原因になっているのです。幼児期の未骨化な腰部、骨盤への加重は、成人期において多くの変形をもたらして います。

カイロプラクティックは、このような直立姿勢からくる構造的ストレスと、派生した機能不全を研究する学技であります。 とりわけ直立姿勢からくる骨格・筋肉系・特に脊椎と骨盤における構造的な「ずれ」が神経の伝動障害となり、その支配する組織や器官に機能障害を起こしま す。

疾病は、単に心臓・肝臓・胃などの組織や器官にみられる形態(器質)的変化だけでなく、それら組織や器官による動き (機能)によって引き起こされるのです。

このような機能異常は、身体のコントロール・メカニズムである神経系による影響が非常に大きいと言われます。ソ連の生 理学者スぺランキーは、疾病の発生、経路、病理変化を決定する因子として、神経系が非常に重要な役割を果していることを、実験によって証明しています。
(転載を禁じます)
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by m_chiro | 2010-04-10 00:07 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
身体という宇宙① 1.カイロの生命観
c0113928_2124431.jpg1991年に刊行した「re-bone ―等身大のカイロプラクティック ―」より、順次ここに掲載したいと思います。「re-bone」を書いたのは、もう20年も前のことでした。10年は色あせない本にしようと意気込みまし たが、早20年です。色あせた部分は差し引いてお読みください。(転載を禁じます)

今回の記事は、
"THE BODY AS COSMOS"「身体という宇宙」です。




        THE BODY AS COSMOS
かつては、人体と星辰とを結びつけた。ここでは、大宇宙と小宇宙 との間に、構造的な対応がある。自然科学の進展と共に、両者は確実に無関係なものとして、分離していく。しかし、両者は、相変わらず「脳で」結びついてい るのである。そもそも両者を結びつけたのも脳である、切り離したのも脳である。〈ロバート・フラッドによる 17世紀〉

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          身体という宇宙①

大宇宙に対すると言われるほど、複雑で神秘に満ち満ちた人 間の身体。しかし、ある根本的な支配法則がなければ、これほど多種多様な機能をバランスよく発揮できるはずがありません。その謎に迫る。―カイロプラク ティックは、そこに新たな生命観を生み出したのです。また、複雑な数式や科学式で表現されるハード科学のみを「科学的」とみる風潮がありますが、本来は、 ペニシリンや万有引力などのように、すべての科学の出発点は偶然の産物でした。ただし、数式化しにいく分野もあり、「人間の科学」は、その筆頭と言えるで しょう。カイロプラクティックは、その「未科学」に挑んでいるのです。


1. カイロの生命観

カイロプラクティックの生命観は、古代ギリシャや インド、東洋などの生命観に共通した考え方を持っています。それは、現代の科学から見れば、神秘的な生命思考と言えるかもしれません。

「医学の父」と呼ばれたヒポクラテスは、野生動物の本能的治療を持ち出すまでもなく、どんな病気でも、病人を回復させ る一番の力は「自然治癒力(Vis medicartirxnature)」であると考えていました。したがって、医者の役目は、このエネルギーが正しく流れるように障害を取り除くか、少な くすることである、と説いています。東洋医学にも「気」という概念があり、このエネルギーが身体中を循環して、生体を維持しているという考えに基づいてい るのです。

同様に、伝統的なカイロプラクティックの教えも、D・D・パーマーの説いた「イネイト・インテリジェンス(先 天的知能)という生体エネルギーの仮説を発展させていきました。パーマーは、「このイネイト・インテリジェンスが神経系を通して、身体中くまなく伝達され ている」と考えてたのです。そして、病気はイネイトと呼んだこの生体エネルギーの流れが妨げられた時に生じると考え、カイロプラクティック治療によって、 その障害を取り除くことができると説いたのです。

現代医学の知識をもって、このカイロプラクティックの生命観や治療の原理を理解しようとするならば、まず「イネイト」 の存在を理解することから始めなければ充分とは言えないでしょう。しかし、イネイトの存在を現代科学で実証することは難しく、実際、カイロプラクターの間 でさえ、イネイトの原理については統一されていないのです。中には、宗教的な観念で説明する意見もあり、当時、カイロプラクティックが医学の世界に容認さ れなかった理由の一つが、このイネイトにまつわる生命論にあったのも事実です。

それも今では、新たな知識による今日的解釈が試みられています。イネイトは、正しい身体の内的外的環境を統御し、身体 を健康状態に保つ力であり、メカニズムである。という理解であります。しかし、この問題の真の解決は、後世の研究に委ねることになるでしょう。

イネイトという超科学の生命観を、ひとまず置いて、カイロプラクティックは、神経生理学の知識に基づいた新たな生命観 を構築していきました。それは、神経系が身体の主要な制御組織であり、神経インパルスの正しい伝導の阻害が身体の機能障害や病気を誘発するという考えで す。こうして、筋肉・骨格系の構造的トラブルが、神経系への影響による身体の不調和をもたらすというカイロプラクティックの考え方は、基礎医学の裏付けの もとに、新たな視点の生命観を生み出したのです。

時代は、今や大きな転換期を迎え、唯物主義者的な現代科学のパラダイム(思考の枠組み) を乗り越えようとする新たな動きが台頭してきました。ニュー・サイエンスという潮流です。現代科学の枠組からは、生命の一側面しか見えてこない。そこで、 角度を変えて、生命の姿を見つめ、そこから人間の潜在的可能性を探る、別な側面の科学なのです。

そういった柔軟な姿勢で、生きた人間を見据えた時に、カイロプラクティックの伝統的な生命観である「イネイト」の存在 も、将来白日のもとに明かされる時が来るに違いありません。こうした新たな「生命思考」によって、「生体エネルギー」というカイロプラクティックのダイナ ミックな生命観が証明されることを期待したいものです。
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by m_chiro | 2010-04-08 21:46 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)



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