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患者さんの方がよく分かっていた
40代女性が左下肢を引きずって来院した。
昨日、園芸の仕事中に左殿部にビリッと電気が走ったようになり、左殿部から下肢の後面がビリビリするような痛みで歩行が困難になった。
会社を休まざるを得ない、ということで、会社に出す診断書を書いてもらうために整形外科医院を受診した。

X-Rayでの結果、「腰椎椎間板症」と診断された。
そして「椎間板ヘルニア」の疑いがあるのでMRIを撮るように、と病院に予約を入れられた。
予約は2週間後だそうだ。それまで仕事を休んで安静にしなさい、と指示される。

治療は神経根ブロックを受けた。しばらく臥位で休息後に立ち上がったが、全く効果がなかった。
それでは、「局麻もしておきましょう」と言うことで、一番痛いところはどこかと聞かれた。
殿部の痛む場所を示すと、2か所に注射をしてくれた。
これは神経根ブロックよりも少し楽になったが、それでも足を引きずらないと歩けない。

「私はヘルニアではなくて、ぎっくり腰じゃないのだろうか? だからブロック注射が効かないんだ!」と、この患者さんは思ったらしい。
「これって、ぎっくり腰じゃないんですか?」
「腰がギクッとなったの?」と聞き返したら、「いや、お尻がギクッとなった」。
「じゃ、ぎっくり尻じゃないの」と笑ったら、「そんなのあるんですか?」と言って、また大笑いになった。

左殿筋の深部が筋スパズムのように硬くなっている。中殿筋? 小殿筋かな?
骨盤から下部肋骨の機能系を安定させて、右の橈骨周辺を触診すると、橈骨手根関節の固着があり可動させると痛がった。
「今、球根を植えているので、手首が気になっていたんです」と言う。
肺経(LU)の8に圧痛が顕著で、このポイントを押圧して左下肢を動かしてもらうと「随分、楽に動く」。

そこで小殿筋の固縮した部位をカウンターストレインでリリースしてから、再び右の橈骨手根関節と肘関節を調節する。
更にLU8をポイントにして左下肢の運動と連動させる。
かなり動きやすくなった。
歩かせると、何とか脚をあげて歩行できるようになった。

「やっぱり、ヘルニアじゃなかったね。おかしいと思ったんだ」。
整形では何でも骨・関節に痛みの原因を求めたがる。患者さんの方がよく分かっていた。
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by m_chiro | 2010-01-27 00:24 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
砂川直子さんの喜ばしい快挙!
毎日新聞社・日本イタリア協会が主催する「第40回.イタリア声楽コンコルソ」が1月10日、銀座ブロッサムホールで開催された。

この「イタリア声楽コンコルソ」は、イタリアピアノコンコルソ、ミラノ部門、シエナ部門の三部門から成るコンクールである。

c0113928_235026.jpg酒田市出身の期待のオペラ歌手・砂川直子さんが、シエナ部門に参加した38名の中で優勝したらしい。

当日、コンコルソを聴きに行ったという直子さんのお母様が治療にみえて、その状況をお話ししてくれた。

砂川直子さんは、大会参加者で2番目の若さでの栄冠となったようである。

新年早々から、本当におめでたい。
優勝者には、イタリア国立音楽院に一年以上の留学の道が与えられるのだそうだ。


こうした学びを重ねて、また見事な歌声を聴かせてくれることだろう。
こんな喜ばしいことはない。

以前、彼女のリサイタルを聞きに行ったことを記事にしたことがある。
砂川直子ソプラノ・リサイタル」を聴きに行
再び、砂川直子さんの歌を聴きに行く

その直子さん、イタリア留学のことよりも愛猫との別れを心配していたとか。
おちゃめな彼女らしい。

この快挙は、応援しているフアンの一人としてもホントにうれしい。
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by m_chiro | 2010-01-22 23:59 | 庄内の記 | Trackback | Comments(0)
日本人は健康への不安感が強い?
読売新聞(2010年1月19日)の「展望2010」の記事・「健康世界一を自信に」と題する論説が掲載されていた。著者は読売の医療情報部長・田中秀一氏である。
こんなデータが紹介されていた。
2009年の経済協力開発機構(OECD)のデータによると、日本人の平均寿命は82.6歳(男性79.2歳、女性86.0歳)で、加盟30か国で最も長い。欧米に多い心筋梗塞による死亡率は最も低い。介護を必要とせず自立した生活ができる期間を示す「健康寿命」は75歳で、世界一。単に長生きなのではなく、健康で長寿なのだ。

ところが、このデータを裏付ける「健康状態は良い」と実感している成人の割合は下図のグラフのように30か国中で最低の33%だという結果である。
諸外国と比べても半分以下で、その不安度は顕著である。
健康労働省の調査でも「健康に不安がある」と答えた人は68%に及んでいるそうだ。
健康なのに、なぜ自信を持てないのか、と記事は問いかけている。

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人間ドッグの受診者は年間300万人いるそうだ。
その結果、「異状なし」とされる割合は年々低下して、2008年度は9.6%だった。
約90%の人に何らかの異常が見つかっているというわけだ。
それも年々低下していっているそうだ。それもそうだろう。
受診者の高年齢化を考えると疑うべくもない。
加えて、診断基準値も厳しくなった。
再三、検査をやって、その上に診断基準値が狭まれば異常者だらけになっても不思議ではない。
異常と言われれば、当然、不安がついて回る。
例えば、メタボ。患者さんの中にも、メタボを指摘されたと言う人の割合がここ数年で急増した。
血圧や血糖値、肥満度の項目に異常がなくても、ウエスト周囲の測定で注意されている。
それだけで不安になる人もいる。

厚生労働省研究班が、検診での問診や検査の25項目を調べたところ、十分に有効とする根拠が確認されたのは「喫煙」と「血圧測定」の2項目だけだったそうである。だから諸外国では「日本のように検診を政策として行う国はほとんどない」のだと言う。

「ゼロリスク」を求める風潮も指摘されている。
著者は次のように締めくくっている。
ゼロリスクに象徴されるように、健康に関する社会の基準や要求が高いほど、人々の不安は高まる。検査は健康的な生活習慣を育む上で役立つが、数値にとらわれ不安が増すのでは本末転倒だ。

検査値に依存し過ぎることなく、自分の身体感覚にもう少し意識を向けて、自分の不調を観察する習慣も大事なように思う。
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by m_chiro | 2010-01-20 23:56 | 雑記 | Trackback | Comments(2)
なぜ、根性痛に侵害受容性の治療モデルが有効なのか?
根性痛にも諸説があり、そのメカニズムも未だ十分な解明をみるには至っていないのが現状である。
一般的に合理的な機序とされている説には、神経根あるいは後根神経節(DRG)の機械的圧迫による「異所性発火説」がある。
神経根圧迫が根性痛の根本原因であるとすれば、異所性発火説の他に整合性のある機序は見いだせない。
また、近頃では炎症起因物質による「炎症説」なども散見する。
いずれも、神経因性疼痛とされる難治性の疼痛分類に入る。

しかしながら、カイロプラクティックの臨床の現場でも椎間板ヘルニアによる根性痛とされる病態の患者さんがよく来院する。
徒手療法の臨床報告にも散見するように、これらは徒手治療にも有効に反応する。
私も神経根の圧迫によると診断された下肢痛の患者さんに、徒手療法による効果を経験してきた。
あらためて言うまでもなく、徒手療法が行う治療セオリーは侵害受容性疼痛への対応である。

では、なぜ侵害受容性の痛みに対応する治療モデルが効果をあげるのだろうか。
答えは簡単である。
それは侵害受容性の痛みだからに他ならない。
要するに、神経根が圧迫されて異所性発火をみる神経自体の痛みではなかったからである。

それでも、徒手療法家がみている根性痛は本当の根性痛ではないからだ、と反論されるかもしれない。
あるいは、整形外科医は画像によって症状との一致を確認し、手術によって圧迫性の椎間板ヘルニアを外科的に摘出している、と代替療法との対応の違いを強調するかもしれない。

しかしながら椎間板ヘルニアの摘出手術こそは、まさに究極の侵害受容性の治療モデルに他ならないのである。
侵害受容性の治療モデルが効果的であるということは、その根性痛なるものの病態が侵害受容性疼痛であるからだろう。

なぜなら、それは機械的圧迫部位を摘出しても神経自体の可塑的な変化を解除することにはならないからである。
もしもそれが可能であるのならば、誰も難治性の痛みに悩まされることもないはずである。
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by m_chiro | 2010-01-18 23:49 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(0)
空、雪原を走る
寒波が緩んで陽が差し込むようになったので、雪原にでかけた。
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いい走りです。
空の写真を待ち望んでいるMikiさん一家にと、今日の撮り立てをご覧に入れます。

シャッターを切ると、もう走り去った後の雪原だけの画像だったりして、度々失敗しながら撮りました。
空もカメラマンの願いに応えて、よく走ってくれました。
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まるでカメラマンの要求に応じるかのように、カメラ目線でゆっくり走りこんできました。
なかなのモデルぶりです。
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ひと休み。

桐子は雪に背中を押しつけてゴロゴロ寝転がっていました。
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by m_chiro | 2010-01-17 12:27 | わん・にゃん物語 | Trackback | Comments(2)
オリックス・小林賢司投手の今季の活躍に期待
昨年、オリックスの小林賢司投手が練習中に転倒し、右肩鎖関節の脱臼で10月に手術した。

彼がこの正月に帰省した折に、コンデショニングを兼ねて治療にみえた。
小林投手は学生時代からみているので、彼の野球選手としての成長や体調の推移も概ね理解している。

コンデショニングからみれば、青山学院大学時代の3年生の時が最も良い状態だったように思えた。このまま成長すればいい選手になれるだろうと楽しみにしていたが、4年生になって腰痛になった。都内でいろいろ治療を受けたらしいが、不満足な管理が続いていたのだろう。私的には3~4割減の状態だったように感じた。

それでも2年前にオリックスからドラフト1位で指名され、子供の頃からのあこがれだったプロ野球選手になったが、プロでの2年間は1軍の舞台で活躍するまでには至らなかった。

飛躍を期しての昨年、不運な負傷でまた足踏み状態である。
今回の肩の状態は、野球選手としてはまだ9割の回復状態のようにみえたが、下半身は安定していたので今季の活躍に期待したいものである。

もうひとり今季に期待を込めて見ている選手がいる。ヤクルトの左腕・山本斉投手である。
彼も高校時代に腰痛に悩まされ、精神的にも辛い時代を頑張ってきた。
2人の野球選手の苦悩を見てきただけに、頑張ったほしいと思う。

高校時代に、二人の腰痛は整形外科医によって病理的な診断が下されていた。
1人は椎間板ヘルニアで、もう一人は腰椎分離症である。
その彼らも、今ではプロの運動選手なのだ。
腰痛が病理的な原因とされ、そのままに野球を断念していたら、今の彼らはなかったかもしれない。
それほどに、確定的な仮定は人生を左右することにもなりかねななかった。
治療に当たる者にとって、心して置かなければならないことだと思う


小林投手が帽子にサインをして残してくれた。
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by m_chiro | 2010-01-16 12:10 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
痛みから意識を離すことが大切
読売新聞連載のコラム「医療ルネッサンス」の1月13日(水)の記事は、「シリーズ痛み」の7回目で作家・夏樹静子さんの腰痛に関する内容だった。

医療ルネッサンスNo.4754(シリーズ痛み「絶食療法」ストレス解消)

夏樹静子さんには自身の腰痛体験を綴った「椅子がこわい」という体験記がある。
壮絶な2年間の腰痛との闘いを書いている。あらゆる医療、あらゆる代替療法にかかったが、どこにも異常は認められない、とされた。

結局は、心療内科医の平木医師が治療にあたり、指一本触れることなく回復した体験が書かれている。心因性疼痛とされる病態なのだろう。
平木医師は、夏樹さんに絶食療法を試みたのだそうである。
絶食して脳を一時的に飢餓状態することで、「ストレスに対する脳の感じ方を変えよう」という狙いである。

ところが夏樹さん、絶食2日目で「収まる気配を見せない痛み」に、「もう帰る」と猛然と抗議したとか。不思議なことに、「その瞬間、痛みが薄らいでいる」ことを意識させられ、「はっとした」と語っている。絶食12日間、入院2か月で、あれほど苦しんだ腰痛が消えた。

平木医師は、「腰に集中していた意識が、どっかにいったのでしょう」と話している。

どうも痛みの部位に意識を集中して過ごすのは、逆に良い結果に結びつかないようだ。

1月4日の私のブログ記事「痛みは同じ対象を共有できない」に、日頃お世話になっているsyarurukさんが、次のようなコメントを寄せてくれている。

私も病歴を語ると、大抵の方が、びっくりされます。そんな風には見えないと。一病息災ではないですが、自分の中でこの痛みをどう解釈しているかで、人生が変わってくる気がしています。痛みに囚われているときは、回復が難しいですね。痛みがあっても、囚われないように気をつけています。

やはり、痛みに囚われないことが、痛みと付き合う極意のようである。
痛みの理解や、その解釈によっても違ってくるのですね。
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by m_chiro | 2010-01-14 17:42 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
「脳が生み出す理不尽な痛み 慢性疼痛治療の新戦略」(日経サイエンス2010年2月号)
昨年末に、大阪で科学新聞社主催のセミナーがあって、私も徒手療法に痛み学をどう活かすかというテーマで話をさせていただいた。
このセミナーは、科学新聞社がカイロ関連事業の開始40周年記念として企画されたものの一つであった。2日間にわたって行われたが、私は初日に尊敬する中川貴雄DC先生とのジョイントで、大変光栄な時間を頂戴したことになる。2日目は盟友の馬場先信年先生と荒木寛志先生が受け持ち、この企画を4人のコラボで行った形になった。

さて、このセミナーに参加されたT先生からメールを頂戴した。
私がセミナーで、グリア細胞が痛みに関わることについて触れた内容が日経サイエンスの2月号で特集されていて読んだ、という報告だった。セミナーでの事前の情報が入っていたので、とても興味深く読むことができた、と日経サイエンスの記事を紹介していただいた。

c0113928_1254915.jpg「慢性疼痛治療の新戦略」と題するR.D.フィールズの論文である。著者は「Neuron Glia Biology」誌編集長で、慢性疼痛の難治性の痛みにグリア細胞がかかわっているという最新の研究と、そのグリア細胞にブレーキをかける製薬開発の事情が報告されている。

グリア細胞の数はニューロンよりはるかに多い。グリア細胞の種類も、その役割もさまざまである。末梢ではシュワン細胞がミエリン鞘を作っているが、中枢ではオリゴデンドロサイトがその役割を担う。ニューロンが電気信号による情報の伝導を行うのに対し、グリア間での情報交換は、ATPや神経伝達物質による液性の情報伝達系が作用している。同じ化学物質を利用していても、中枢神経と末梢では異なったメッセージを送ることができるのだそうだ。

ケガが治ったにもかかわらず、いつまでも消えない慢性痛に苦しむ人は少なくない。その多くは、興奮しすぎた痛み感知ニューロンが、理由もなく痛み信号を出し続けることが原因だ。

神経細胞に直接働きかける従来の鎮痛薬では、こうした異常な痛みはほとんど抑えられない。ニューロンを過敏にしているのは、グリアと呼ばれる脊髄や脳にある別の細胞の働きだからだ。

グリア細胞はニューロンの活動を常に監視し、ニューロンが正常に、効率よく機能するように補助している。しかし、強い痛みがある時には、本来の働きが裏目に出て、痛みを逆に長引かせるように働いてしまうことがある。


神経の損傷はグリアの反応を誘発することで、ニューロンが一層興奮する事態に陥る。神経が損傷されると、グリアはサイトカインを放出して炎症を起こす。それも治癒のための反応に他ならないわけだが、そのことがニューロンをさらに過敏にする、ということだろう。

グリア細胞にブレーキをかけてグリアの活性物質がいくつか見つかっているのだそうで、神経因性疼痛の患者さんには夢の薬の開発につながるのだろうか。今後の成果によっては,ニューロン中心だったこれまでの脳のモデルが劇的に変わるかもしれない。
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by m_chiro | 2010-01-13 12:13 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
痛みの実験や学問的発展には、多くの犠牲があったことを忘れたくない
c0113928_18391619.gifデカルトが「人間論」という著書の中で「痛みの経路」について言及したのは1644年のことである。そして、この痛み経路の生理学的なメカニズムが解明されたのは1980年代までとされている。つい近年に明らかになったわけだ。

この間340年ほどの時間的な経過がある。随分と長い時間だったと思う。
なぜこんなにも長い時間がかかったのだろう。

一つ明らかなことは、痛みの実験では再現性に困難が付きまとうからである。
ナチスのアウシュビッツじゃあるまいし、人に痛みを作る実験は倫理・道徳的にもできない。では動物実験で、と言っても、動物とてやたら虐待をするわけにもいかない。
そこで動物実験用の「脊髄動物」が作られる。頚髄で神経の経路を遮断した犬たちである。
これとて究極の虐待に違いないが、この実験動物の犬の足底に痛み刺激を入力すると肢が屈曲する。これを痛み反応とした。

しかしである。
頚髄で神経の伝達が遮断されている犬である。その上、犬が痛いと言うわけではない。
そんな議論は大昔から交わされていたのだ。当たり前のことを、面白おかしく話題にするのも私には腹立たしい。

さらに研究は続いて、痛みの経路は一本の神経経路ではないことが分かってきた。
末梢から脊髄後角に入り反射が起こる経路を一次ニューロン、後角から視床までの経路を二次ニューロン、視床から皮質までの三次ニューロンに分けられた。
神経の経路は段階的に構成されている。
こうして実験動物が末梢刺激で肢を引っ込めるのは逃避反射とされ、この一次ニューロンの反射を痛みの指標とした。
痛みの研究には、こうした動物たちの犠牲なくしては成り立たなかったのである。

私の愛犬たちは殺処分の対象とされる犬たちであった。保護センターが引き取り、あるいは個人的な里親探しを経て私の所に来た。千葉ワンの出身の「空」を引き取ったときは、随分と詳細な調査をされた。面接も受けた。不幸な犬の引き取り希望者に、なぜこんなにも面倒な手続きをするのだろう、と訝ったものだった。が、聞いてみると意外な言葉が返ってきた。
「里親希望者の中には、不幸な犬を引き取って実験動物用に売る人がいる」と言うのである。だから里親さんを調査して面接もするのだそうだ。不届きな輩もいるものだ。

また大きな戦争が続き、多くの負傷兵たちの不幸な存在もあった。
そうした記録を丹念に書きとどめた従軍医師たちの仕事は、貴重な資料として不幸な出来事を生かしている。

近代の痛み学における340年ほどの歴史を思うとき、痛み学の発展に伴う不幸な犠牲を悼まずにはいられない。
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by m_chiro | 2010-01-08 18:41 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
睡眠障害は痛みの原因か? 結果か?②
昨年秋の日本カイロプラクティック徒手医学会に、セロトニン研究の第一人者とされる東邦大学医学部・統合生理学教授の有田秀穂先生をお招きして特別講演をいただいた。
不肖・私がその座長を務めさせていただいたが、そんな関係から控室で直接お話をする機会があった。
これは役得だった。

そのセロトニンは、下行性疼痛抑制系に重要な役回りを演じる。
それだけでなく、徐波睡眠障害やストレスホルモンの調節にも大きく関与する。

下行性の鎮痛系は、通常は中脳水道周囲の中心灰白質のところでGABA(γアミノ酪酸)によって抑制がかけられている。
この鎮痛系を作動させるのは、視床下部(弓状核)からβ―エンドルフィンを遊離しGABAを抑制することによる脱抑制である。
こうして下行性鎮痛系が始動することで、延髄の大縫線核からセロトニンが放出され、脊髄後角で痛み信号を抑制することになる。

このセロトニンの前駆物質がトリプトファンという蛋白質である。
最近、トリプトファンを主成分にしたサプリメントが出回っている。
睡眠障害やストレス関連に働くとされているのだが、どうも怪しい。
脳には脳血液関門がある。従って、そのセロトニンが脳で作用するわけがない。

そのことを有田教授にお聞きしたところ、やはり、であった。トリプトファン入りのサプリメントを安易に勧めるべきではないのである。

健常な人はトリプトファンからセロトニンが生合成される一方で、キヌレニンが中間代謝され、この3者は微妙なバランスを保っている。
「キヌレニン」とはラテン語で「犬の尿」のことだそうなので、きっと性フェロモン物質なのだろう。
犬の散歩では、マーキングが彼らの仕事である。
他の犬の匂いをかいでは、自分の匂いでカバーしている。
キヌレニンはそんな物質なのだろうと思う。

ところで線維筋痛症や慢性痛の患者さんでは、トリプトファンからセロトニンを生合成されるよりも、キヌレニンをより多く中間代謝されるらしい。
キヌレニンの産生が増加すると、血中トリプトファンが減少する。このことは即ち脳内セロトニンの減少となる。

脳内でセロトニンが減少すると、どうなるか。
ひとつには徐波睡眠が障害される。つまり寝不足になる。
また、痛みの関連では下行性疼痛抑制系の機能が低下する。
下行性疼痛抑制系の作用が弱まると、筋肉痛が増幅するとされている。
更には、CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌が低下する。
すると当然のごとく、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌が低下する。
したがってコルチゾールの分泌も低下し、ストレスへの対応に都合が悪い。

そこで、トリプトファンを経口投与すれば良いのではないか、という発想でサプリメントが販売される。トリプトファン投与によって健康障害を引き起こした事例としては、好酸球増多・筋肉痛症候群もあげられている。
筋線維の問題ではなく、筋膜性の炎症とされている問題が発生するようだ。

いずれにしろセロトニンが合成されて、セロトニン神経系を鍛えることが大切なのだと言われる。有田教授の話である。それにはリズム運動が効果的らしいのだが、それも集中したリズム運動でなければならない、と話されていた。

歩行でも、ガムなどを噛む咀嚼運動でも、瞑想などの呼吸運動でも、要は下位脳で行われる無意識の集中した反射的なリズムがいいらしい。でも、このリズム運動、簡単なようで難しい。試してみる価値はありそうだ。

睡眠障害が痛みの原因か結果かと言うよりは、慢性痛、徐波睡眠、ストレス、この3者における脳内のセロトニン関連の悪循環が問題のようである。
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by m_chiro | 2010-01-08 15:49 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)



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