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根性痛は本当に炎症起因物質による疾患なのか?
日本整形外科学診療ガイドライン委員会、腰椎椎間板ヘルニアガイドライン策定委員会、厚生労働省医療技術評価総合研究事業「腰椎椎間板ヘルニアのガイドライン作成」班の3つの組織が編集した「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」には、中程度のエビデンスに基づくとしながらも、坐骨神経痛の発現メカニズムについて以下のように書かれている。

坐骨神経痛は膨隆型に比べて脱出型椎間板ヘルニアにより強く認められ、発現機序としては圧迫より炎症との関連が考えられる。
(「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」)

また、福島県立医科大学の菊地臣一教授は「続・腰痛をめぐる常識のウソ」に、根性痛が椎間板ヘルニアによる機械的圧迫が症状発生の原因である、と単純に割り切れるものではないとしてコラムで次のように結論付けている。

椎間板ヘルニアの症状には、機械的圧迫のみならず、髄核による化学的作用が関与している可能性がある。

さて、椎間板ヘルニアによる炎症説であるが、どうも胡散臭く感じられてならない。
炎症筋物質とされるサイトカインは、これまでに数百種類が発見され、今も発見が続いている。
どんな炎症起因物質なのか定かではないが、髄核から遊離されるサイトカインは特にインターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF-α)などの関与が疑われているようだ。

例えばTNF-αにしても、硬膜組織を浸潤し、どうして後根あるいは後根神経節だけをターゲットにするのだろう? 
なぜ、前根は回避されるのだろうか?

後根神経節は脳脊髄液に浸されている。
したがって後根および後根神経節は、末梢神経というよりは中枢神経としての構造体と見た方がいい。
解剖学的に見ても、硬膜を通り抜けた炎症起因物質は、先ずは脳脊髄液を汚染するのではないだろうか? 
硬膜を通るぬけるならば、クモ膜や軟膜も通過して脊髄炎を起こすことはないのだろうか?

硬膜には洞脊椎神経が下図のように張り付いている。
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(STは交感神経幹、Dは硬膜、DRGは後根神経節、GRCは灰白交通枝、PLLは後縦靱帯、SNは洞脊椎神経、BVは血管、赤丸でヘルニア塊を書き入れた)

もしも炎症起因物質がヘルニア塊から遊離されるとなると、真っ先にこの洞脊椎神経の受容器が反応すべきである。
この洞脊椎神経の終末以外に、ヘルニア塊の周囲に受容器は見当たらない。
だとしたら、これは侵害受容性の痛みとなる。下行性には痛まないはずである。
やはり、根性痛の炎症説には無理があるようだ。
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by m_chiro | 2009-12-28 19:00 | 痛み考 | Trackback(2) | Comments(0)
椎間板は痛むか? 痛まないか?
近年、無痛性椎間板ヘルニアの報告が著名な学術雑誌に掲載されている。
いったい、有痛性と無痛性の椎間板ヘルニアを分けているものは何だろう。
どうも、それは炎症起因物質の量的差だとする説も見受けられる。

椎間板自体が痛みを発する病態は、考えられなくもない。
椎間板には感覚神経が乏しいとされているが、炎症起因物質であるサイトカインが髄核から遊離されるようになると、このサイトカインが椎間板外周に僅かに存在する洞脊椎神経の枝を伸長させるように働くらしい。

下図は「腰背部の痛み」(南江堂、大鳥精司、診察に必要な基礎知識ー解剖と生理、41p、2009)に掲載されたものである。イラストと画像で伸長されている洞脊椎神経をみてとれる。
aは正常な脊椎洞神経の枝、bは伸長された枝、cは伸長した枝の画像である。
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この神経終末の受容器が炎症物質を受け取れば、侵害受容性の痛みを出すことはあり得る話ということになるが、それでもこの痛みは神経が傷害されて発症するものではない。
あくまでも侵害受容性疼痛である。
だから脊椎洞神経が、例えば下肢などに痛みを起こすことはない。

それでも健常者に無痛性のヘルニアの報告は多い。
なぜ? と思う。

問題は受容器にありそうだ。受容器はセンサーではない。比較器として働いている。だから「閾」がある。
痛み信号として受け取るか否かは、その閾の値がどのレベルで設定されているかによる、ということになる。
閾が高ければ、多少の炎症筋物質は遮断されてしまう。
低ければ、僅かに遊離された炎症物質も拾い、痛みを引き起こすだろう。

推測するに、脊柱関連の閾は基本的に高く設定されているに違いないと思う。
そうでなければ、高難度の運動などできるはずがないからである。
この閾を設定しているのはどこか? それはよく分かっていない。
全く個人的な自己ニューロンとして設定されているのだろう。
だから、痛みが個人的なものだとされるのはこの閾の差にもよる。

したがって、椎間板が痛む侵害受容性の痛みは起こり得るとも言えるが、基本的にはそう安易に起こるというものでもないのだろう。
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by m_chiro | 2009-12-22 00:32 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
今朝の「つらら」
12月にこんなに長い「つらら」が出来るのも、近年ではめずらしい光景。
この連日の大寒波は、まだ続きそうな気配です。
飛行機も電車も運休があるようで、天気と相談しながら人も動いています。
駐車場の雪かきも大忙しの毎日です。
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by m_chiro | 2009-12-19 14:28 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
大寒波襲来!
この冬はじめての積雪が、いきなり大寒波襲来からはじまった。
17日の朝から本格的な雪となり、庄内映画村のある山間部では90センチを超えたとか。
12月では最高の積雪量だ。
酒田では22センチの積雪なので、山間部と比べれば同じ庄内でも随分と地域差がある。
早くも、鶴岡では屋根の雪下ろしをしていたご老人が亡くなったようです。
毎年、雪下ろしで死人が出ます。山間部でご老人だけの生活では、雪下ろしも命がけの作業です。
酒田での雪が降り始めた初日の様子。
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桜並木に雪の花が咲いたような雪景色がみられたが、視界は不良。
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今朝は山形新聞が小学生の登校風景の写真を載せていたが、なんかうれしそうな顔。
雪で喜ぶのは子供たちと犬たちだけかな?
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by m_chiro | 2009-12-18 13:01 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
ミケランジェロ・コード?
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この絵はミケランジェロの「アダムの創造」という絵。
システィーナ礼拝堂の天井画の一枚である。旧約聖書・創世記にある天地創造から大洪水までの9場面が描かれているそうだ。
この絵、神経学者の間でも注目されているらしい。
解釈にも諸説があり、この絵の中に隠喩されたとされる話題がいろいろとあるようだ。

共通しているのは神の居る場所である。
これは脳を模した図で、おそらくミケランジェロは神が天上にいるのではなく、人の脳の中にいるのだという考えを隠喩したものとされている。

確かに大脳があり、小脳があり、脳幹らしき背景が描かれている。
当時、「神は脳の中にいる」などと発言しようものなら処刑にされかねない。
それでもミケランジェロは、自らの考えを絵に中に織り込んだのだろう。

ミケランジェロが人体の解剖に精通していたことは知られるところである。
人体解剖に学んだ成果を彫刻や絵の表現に反映させていたことは疑うべくもない。
この絵のモチーフになったのは旧約聖書・創世記2章7節の次の一文である。
「主なる神は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。」

創世記では「アダムの鼻から命の息を吹き入れられた」とされているが、完成作ではデザインを変えて両者の指が触れあうように描かれている。
そこに生命が誕生する瞬間と評されているようだが、後世の人々は触れ合おうとする指先がシナプスのようにアダムに授けようとしたものアレコレと推測している。

それでも私には、動きを伝えるものは脳から下行性に、そしてすべての感覚は上行性に脳に伝えられる、という神経系の基本的な作用を隠喩した絵のように見えてしまう。
ミケランジェロの生命観に対する信念が窺えるような気がするのである。
ダビンチ・コードならぬミケランジェロ・コードを読み解きながら、人の機能の原理に思いを馳せた。
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by m_chiro | 2009-12-16 22:41 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
院外活動の仕事納め
12月13日は2009年の院外活動の仕事納めとなった。
日頃お世話になっている科学新聞社・カイロプラクティック関連事業の40周年記念イベントで今年の打ち上げとなった。
そのイベントが「It’s Chiro」と銘打って行われ、少しばかりのお手伝いをさせていただくことになって、大阪での企画に参加することになった次第である。
2日間のイベントを終えて帰ったのが13日の夜。
空港を出るとかなり冷え込んでいた。
明日は雪かな?

科学新聞社の斎藤社長が事前の紹介で懐かしい話を持ち出した。
初めて出会った頃の国際セミナーでのエピソードだった。
すると、突然、私の頭もその時代にワープした。
そう言えばそんなことがあったなぁ~、と、そんな思い出に浸っている自分がいた。
拍手の音で現実に戻った途端に、壇上の真ん中に立っている自分に気づいて、アレッ、なんでここにいるんだ?、と、うろたえた。
あれには焦った。
頭が変になったのかと思った。
おい、これが脳梗塞というものかい? なんて自問している自分がいた。
スライドのための暗幕がレールの上を滑るように移動しているのを、とても不思議な感覚でただボーっと眺めていた。
短い時間だったのかもしれないが、ずいぶん長い時間に感じられて、その最中では頭だけが妙に冴えわたっている感覚だった。
とにかく始めようと話しだしたら、やっと普段の自分に戻っていた。
こんな経験は初めてだった。

ともかく院外活動の仕事を無事に納めることができてホッとしている。
多少なりとも、お世話になっている斎藤社長のお役に立てただろうか。
早いもので、この一年も駆け足で通り過ぎようとしている。
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by m_chiro | 2009-12-14 01:05 | 雑記 | Trackback(1) | Comments(0)
動くべきか!、寝込むべきか?
整形外科の「運動器の十年」キャンペーンの影響だろうか、「ロコモティブ・シンドローム」に因んだキャンペーンが市町村の健康イベントに登場するようになった。
「メタボ・シンドローム」と並んで市民の関心を高める狙いがあるのだろう。
「運動を行って骨と関節を丈夫にしよう!」というキャッチコピーで案内される。
運動器というのは骨、関節、筋肉、神経などの総称であるが、なぜか「骨と関節」にばかり注目を集めている。

「ロコモティブ・シンドローム」と言っても、結局は運動不足の解消を狙って運動教室、体操教室を行っているわけだが、個々人の状態を把握せずに一律に運動が勧められている。
その結果、あちこちの痛みを訴える人が治療に見えたりする。
仲間内がいると競争意識が働くのか、痛かろうが歯を喰いしばって無理をする。
負けてはならずと競り合いにもなる。
TVで教えていた運動法を、お茶の間で真似て具合が悪くなった、と言ってみえる人もいる。
そうなると、もっと動くべきか、寝込むべきか、それが問題になる。

普段、運動と無縁の人が、一気に始めると思わぬ落とし穴にはまる。
まあ、急にはじめるわけだから、あちこち筋痛が起きても不思議ではないが、中には深刻な痛みが続く人が出たりもする。

1990年代半ば頃からだろうか、アメリカのカイロプラクターが「Dysaffarentation;求心性入力不全」なる概念を言い出した。「Dysaffarentation」をステッドマン医学大辞典で調べても出ていないので、誰かが考え出した造語かもしれない。
簡略して要点を言えば、「侵害刺激の求心性入力の増大」と「圧・動き入力の減少」によるコンビネーションが痛みを作り出しやすい、と言うことになろうか。

筋・筋膜組織や関節などの靭帯組織に微損傷が生じると痛みが起こる。
それは侵害受容器からの信号が求心性に入力が増大している状態である。
動けば痛い。だから安静位を保って、出来るだけ動かないようになる。
この状態は「圧・動き求心性入力」の減少である。
結果、筋・筋膜組織の柔軟性が減少し、モーター・ユニットの関節部は不動化する。
こうなると不随意の筋収縮が起こるようになり、トリガーポイントや筋スパズムの発生を増長することになる。

逆のことも言える。加齢や組織損傷の結果として筋・筋膜や靭帯などの組織が柔軟性を失い、そのために関節が不動化して不随意の筋収縮の温床となる。
結果、痛みが出て和痛位で過ごすようになり、痛みの悪循環がはじまる。
そうなったら圧・動き刺激入力を増大させればいいわけだが、肝心なことは侵害刺激入力を抑えて動きを与えることだと言う話だ。

寝込むことは決していいことはない。そうかと言って、やみくもに動かせばいいと言うものでもない。
ぎっくり腰の患者さんを無理に動かせば、とんでもないことになるのは目に見えている。
そこで、侵害刺激の入力をいかに抑えて、圧・動き刺激を作り出すか、それこそが鍵となる。
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by m_chiro | 2009-12-01 21:59 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)



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