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「動きで痛みを伴うとき:評価し理解し処置をする」
「動きで痛みを伴うとき:評価し理解し処置をする」
このフレーズは国際疼痛学会のキャンペーン「世界筋骨格痛年」のシンボルマークに書かれていた。
「世界筋骨格痛年」キャンペーンは光明をもたらすだろうか。

アメリカが政治主導ではじめた「バイオメディカル振興策」の第2弾「痛み10年宣言」は2001年にはじまり、来年はその10年目を迎える。
日本にいてその影響を顕著に感じることはないが、欧米などでは痛み医療に大きな変化をおこしているようだ。

同時に始まったWHOのキャンペーン「運動器の10年」は整形外科主導で行われているようであるが、日本では「運動器」が「骨と関節」に置き換えられたのだろうか。
キャンペーンの記事やポスターをみても、筋肉は無視されているのか、あるいは軽視されているような印象を受ける。

そこで、国際疼痛学会(IASP)が後援するキャンペーン「世界筋骨格痛年」が、今年の10月から一年かけ行われる。
一連の流れは「脳の10年」を皮切りに、「痛み」、「運動器」そして「筋骨格痛」と、普遍的な真理に迫ろうとする確かな方向性が窺える。期待したいものである。

筋骨格痛は地球規模に拡大しており、社会経済的にも重大な影響をもたらしていることに注意を喚起する狙いのようだ。
こうした筋骨格痛の複雑な背景を指摘しながら、その病態や症状には根本的なメカニズムや治療の可能性に共通するものがある、としている。

「世界筋骨格痛年が開始・国際疼痛学会がキャンペーン」におけるキャッチフレーズは「"When Moving Hurts: Assess, Understand, Take Action," :動きで痛みを伴うとき:評価し理解し処置をする」である。

私も、どのような状況で痛みが発症するのか、それを見極めることを治療の鉄則と理解してきた。
ところが、動くと痛い患者さんをスタティツクな画像から、すべてを推し量ろうとする診断が後を絶たない。

先日も3ヶ月前からの左膝の痛みを訴える50代の婦人がみえた。
発症当初から整形外科を受診し、画像から「変形性関節症」と診断された。
「ヒアルロン酸を試みて、それでも痛みがとれなかったら人工関節にする」、という治療計画を言い渡されている。
何とか手術しなくてもいいようにと、近所の接骨院で電気治療と併用して治療を続けてきたそうである。
それでも歩行や階段の昇り降りが辛い。もちろん正座はできない。逆に、動きや痛みが悪化しているような印象だと言う。

痛みの部位を示させると、腓骨頭から上下にそれぞれ10cm幅位のエリアが最も痛む部位のようだ。また、膝蓋骨の内側下方にも限局した痛みを訴える。屈曲すると膝窩部が苦しくなる。

筋筋膜とその機能性にアプローチしたら、その場で痛みもなく歩けるようになった。
2回目の治療のときには、正座で膝窩部の苦しさが残るまでに回復していた。
筋骨格痛は筋筋膜とその機能性に注目して治療すると、結構いい結果が出る。
こんなことは日常の徒手療法の現場ではよく見られることだろう。
運動器と言いながら、「骨と関節」ばかりを注目するスタンスには疑問が残るだけである。

IASPのG・F・ゲプハルト会長が、筋骨格痛のキャンペーンに次のコメントを載せていた。
「研究者、医療の専門家ならびに政府やコミュニティーの指導者など、すべての痛みの関係者がわたしたちと一緒にこの重要な試みに参加して、筋骨格痛のあらゆる面での挑戦に向かい合ってもらいたい。共同作業をし、最新の研究や治療方法を共有することで世界の何百万という患者の痛みや苦痛を大幅に縮小することができる」


大いに期待したいものである。
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by m_chiro | 2009-10-25 16:01 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
呆れた食い意地!
c0113928_2154526.jpg群馬県の伊香保で捨てられた幼犬が、保健所行きを免れて我が家に来てから9年になった。

確かな素性は分からないが、おそらくMix犬だろう。
それでも大部分は甲斐犬の血に違いない。風貌や虎毛の模様などからそう思う。
ふとみると、パーフェクトな甲斐犬のようにも見える。

散歩で犬に詳しい人と出会うと、「甲斐犬ですね」とよく声をかけられたりもする。
ある時などは、自動車の走行中に見かけたらしい人が、わざわざ車を止めて寄って来て声をかけてくれた。
一見するに甲斐犬なのだろうが、本当の血筋は分からない。
それでも、我が家の桐子は甲斐犬の外見的特徴だけでなく、賢さと忠実さも持ち合わせているように思う。
何しろ、甲斐犬は天然記念物指定の犬なのである。

そんな忠犬が一変した。
やんちゃ娘の「空」が来て、随分と感化されたようだ。
空は留守番をさせると、ごみ箱をひっくり返してゴミを散らかすのは朝飯前。
ティシュペーパーの箱を引き破っては、部屋中にティッシュを散乱させていたことも一度や二度ではない。あの頃の空のやんちゃぶりには、本当に閉口した。
その空が今ではとてもお利口なお姉さんになり、かつての「やんちゃぶり」はすっかり影をひそめてしまった。

一方、桐子が代わって持前の知恵を働かし、留守中に物色するようになった。
桐子の関心は、ほとんど食べ物だけである。無駄な荒らしは決してしない。
どこに何をしまってあるか、人のやることなすことジッと見ている。
大好物のパンを戸棚に入れて置こうものなら、留守中に戸棚をあけて失敬するのはお手のものである。
煮物の鍋も、背の届くところには置いておけない。
怒られても、怒られても、摂食行動にはブレーキが利かないようだ。
だから、うっかりできない。
この頃は、家人も防御に余念がない。

ところがである。この間は買い物に出かけて帰宅したら、ちょっと様子が変である。
帰宅すると待ちわびたように寄ってくるのに、空だけがお出迎え。
しかも何やらブツクサと訴えている。まるで桐子の所業をタレこんでいるように、まくしたてる。
桐子の姿はない。いやな予感である。

台所に入ると、缶詰の空き缶が転がっていた。
空き缶など、どこから引っ張り出してきたのだろう? と思いながら桐子を探したら、テーブルの下で恐縮している。

空き缶を取って見ると、なんと今夜の酒の肴にしようと用意していた「サバの味噌煮缶」である。テーブルの上に置いておいたものだが、俄かに事情が呑み込めない。
酒の肴が空になって床に転がっていたのだ。
空き缶に歯形がついているところをみると、缶を開けて完食したようである。
まさか、缶詰まで開けるとは思いもしなかった。呆れた所業だである。
それにしても見事に開けたものだ。缶詰を開ける犬など聞いたことがない。
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申し訳なさそうな顔で恐縮しているのは、ポーズだけかも???
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怒られたらしょうがない、とも見て取れる。
やれやれ、桐子の食い意地と執念には、ただただ呆れ果ててしまった。
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by m_chiro | 2009-10-19 21:26 | わん・にゃん物語 | Trackback | Comments(4)
「科学的と言う前に、せめて論理的であろう」
第11回・日本カイロプラクティック徒手医学会で武術家の甲野善紀氏のワークショップを受けた。
c0113928_1814974.jpg 徒手医学会で武術家がワークショップを行ったのも初めてだったが、私自身も武術による身体の使い方を直接聞き、また実際に目の当りにしたのも初めての経験だった。
甲野氏によれば、自らの動きを科学的と称する学者諸氏の評価に曝されたことが度々あり、その都度、科学的とされる見解が示され、それを滑稽な思いで聞いてきたそうである。

例えば、体を硬直させて動かされないようにガードした人をいとも簡単にひっくり返したり、又ある動きに抵抗す様を簡単に投げ飛ばしたりするのは、相手の体に接近して持ち上げるから可能な技だと、したり顔に科学者に評されたことがあったそうだ。

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重いものを持ち上げるときに自分の体にくっつけてあげる、と言うことは小学生でも知っていることだ。

「科学、科学と言っている人達は往々にして自説に固執するあまり、きわめて部分化・限定化した状況設定の中で辻褄を合せようとしている場合が多い。そのため実際の場に展開すると、いろいろと問題が出てくることが少なくないが、それらの事実には目を閉じてしまうようだ」。

そこで、タイトルにした「科学的と言う前に、せめて論理的であろう」というワークショップのテーマにあげられた言葉が胸に落ちてくるのである。

カイロプラクティックの科学性と言っても、自慢げに披露できるものなど何もない。
では、なぜ学会などをやっているのかと問われれば、「せめて科学的に見て、科学的に考える姿勢を持ちたいからだ」と答えたい。

そうした姿勢を継続しているうちに、そこに共通する普遍的な事象が浮かびあがり、あるいはその可能性を垣間見ることが出来るかもしれないからである。

竹内薫博士は「99.9%は仮説」という本を書いた。だとしたら、せめて「論理的であろう」とする「ものの見方」や「考え方」は、科学する上での基本的な姿勢でもあろう。
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by m_chiro | 2009-10-17 18:11 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
第11回・日本カイロプラクティック徒手医学会10.11~12
c0113928_22543395.jpg今年も徒手医学会が開催される。

10月11~12日の両日にわたり、東京有明の「東京ビッグサイト」での開催である。
なんとビッグな会場だ。

テーマは「ココロと身体」である。

基調講演は、清泉クリニック整形外科・スポーツ医学センターの脇本幸一理学療法士で、「レントゲン画像から診る心身機能評価と治療」と題しての講演である。

特別講演は、東邦大学医学部・有田秀穂教授で「身体に働きかけると、セロトニン神経が活性化される」と題して以下の前振りがある。

「脳幹・縫線核群に分布するセロトニン(5-HT)神経は広汎な脳領域に軸索を投射して、さまざまな脳機能に影響を与える。中脳・背側縫線核の5-HTは大脳、大脳辺縁系に投射して、α波の出現やネガティブな気分の改善に働く。大脳縫線核群の5-HT神経は内因性痛覚抑制系として機能し、延髄縫線核群の5-HT神経は、姿勢筋や抗重力筋の促通効果を発揮する。これら5-HT神経活動を賦活する因子は、リズム運動(呼吸、歩行、咀嚼)とリズミカルなタッチである。これらについて、自験データをもとに解説する」

一言で言えば、下位脳に対する反射的なリズミカル運動で、セロトニン神経を賦活させる、と言うことになろうか。

私が有田教授の座長を務めることになり、ここのところ有田先生の著書を読みまくった。

その他に、古武術研究家の甲野善紀氏、日本生体咬合研究所の中村昭二先生、加瀬健三先生はキネシオテープについてなど、盛りだくさんの内容で「ココロと身体」に迫るという企画のようである。
勉強してきます。
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by m_chiro | 2009-10-10 22:56 | 雑記 | Trackback | Comments(2)
「痛み学・NOTE」30. 交感神経の活動に依存する慢性痛の機序
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

30. 感神経の活動に依存する慢性痛の機序

慢性痛症は、侵害刺激によらずに痛みが憎悪する厄介な病態である。
例えば、気圧の変化、気温の変化などは侵害刺激ではない。
ところが、こうした自然現象によって痛み信号が発火しやすくなるということが分かっている。

こうした気候と痛みの研究は、名古屋大学環境医学研究所が力を入れている分野のようだ。
佐藤純・准教授が、交感神経に依存する慢性疼痛の機序に対する仮説(「慢性痛と交感神経系」)を論じているので、図を引用して紹介しておきたい。

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これらの仮説の要点は、次の2点にある。

①低気圧によって内耳の気圧受容器が興奮すると自律神経系とリンクして交感神経が緊張する。
②気温の低下によって皮膚および中枢における冷受容器が興奮すると自律神経系とリンクする。

ところが、このリンクがどのような機序で作動するかについては、今一つ曖昧なところである。
慢性痛のラットモデルでの実験では、交感神経を除去すると疼痛増強は起こらない、という結果がその根拠とされている。

一方、気温低下による痛みは、交感神経を除去しても消失しない。
どうも、気温低下による痛みの増強に交感神経の活動は、必ずしも重要な要因にはなっていないようである。
と言うことは、皮膚温の低下は、直接的に冷感受容線維を感作させることによって痛みが増強するルートが存在するのだろう。
気圧による痛みの増強には交感神経が重要な役割を果たし、気温の低下には皮膚の冷却による受容線維の興奮が鍵になっているようである。
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by m_chiro | 2009-10-01 16:30 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(3)
「痛み学・NOTE」29. 神経因性疼痛の基本的な仮定
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

29. 神経因性疼痛の基本的な仮定

神経因性疼痛の機序について、未だその詳細な真実は藪の中にあるようだ。
私たちが知り得るものは仮説とその証拠に過ぎない。ここでは定説的な概念を紹介しよう。

神経因性疼痛を最初に発表したのは神経科医・ミッシェル(S.Weir.Mitchel;米国)だった。
ミッシェル医師は、南北戦争時代にフィラデルフィアで病院を開いていた。
そこで、南北戦争で負った末梢神経外傷の患者さんを、数百万人も診察治療している(1871)。

その内の10%の患者さんは、外傷を負った神経分布領域に激しい灼熱痛を訴えていた。
この時代に経験した症例から、基本的には2つの観察結果が私たちの神経因性疼痛の核心的な理解になっている。

1つは、末梢神経の部分的損傷は完全損傷よりも痛みを起こす可能性がより高いということ。
2つ目は、患者は鋭敏な過敏症をみせるということ。

これらの痛みを起こした病変は、末梢神経の部分的な損傷が関与していたことが報告されている。
私たちが痛みの機序を考えるときに、「痛みの悪循環説」でも触れたように仮定する経路はよく知られた痛み経路である。
末梢の刺激にはじまった痛覚刺激は、脊髄に入って反対側の脊髄視床路に渡り、視床に伝達されて皮質に広がる。

神経因性疼痛の基本的な仮定は、この経路に沿ったどこかの活動を増幅させる、あるいは末梢の侵害受容器に極めて異常な活動がある、と仮定することである。
この仮定は最も単純である。

もうひとつは、中枢神経系における下行性疼痛抑制系のルートで、何らかの抑制のポイントを阻むことによって痛覚伝導ニューロンを解放することになる。
当然、痛みの信号は発信され続け、神経自体が痛みのジェネレーターとなる。

また、末梢神経、特に有髄線維の損傷はその線維に形質的変化を起こし、通常は痛みを起こさないはずの有髄線維そのものが、痛みを送信し続けることになる。
そして脊髄に配線の取替えが起る。これは振動や触刺激の感覚が灼熱痛を引起すことにもなりかねない。
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by m_chiro | 2009-10-01 16:24 | 痛み学NOTE | Trackback(1) | Comments(2)



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