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「幸せ返し」
あるご家族が治療にみえるようになったのは、息子さんの治療がきっかけだった。
その家族の成人した息子さんが、社会人になって間もなく仕事に出られなくなって困り果てていたのである。
不眠症にはじまり、身体の不調が際立つようになった。腕の痺れや腰痛に肩こりもあって、身体がだるくなり、起きているのも辛くなっていった。検査を受けたがこれと言った問題は見つからない。結局、自律神経失調症ということに落ち着いたようである。
薬物治療を続けたが変化も見られず、母親に連れられて、私のところに治療にみえたのが始まりだった。

私は特別な治療をしたわけでもない。身体反応の入出力系をチェックして、問題の箇所を安定させる手法を用いただけである。後は、生活のリズムを作るように指導した。
間もなく元気になり、仕事に復帰するようになった。それから御家族が治療にみえるようになり、有難いことに多くの患者さんを紹介もして頂いた。

その息子さんが一昨年の秋には結婚することになった。婚約者とその家族までが治療にみえて、ご家族みんながクライアントのような存在になったのである。
そして、結婚式の披露宴には、私まで招待された。
披露宴が終わって、新郎新婦が出口で招待客を見送るときに、新婦さんがバラの花を一輪手渡してくれた。蕾が3分程度に開きかけた赤いバラだった。
私はこの一輪のバラを、タキシードの胸ポケットに差し入れて帰り、治療室の花瓶に活けてみたのである。
やがてバラの花が一杯に開いて、好ましい芳香が待合室に漂っていた。
あまり好い匂いのバラなので、花が終わってからダメモトで挿し木にしてみることにした。

結婚式後に若夫婦が治療にみえた時に、挿し木のことを話しながら、花が咲いたら「幸せ返し」をすると約束した。
若夫婦は「つかないでしょう」と言って笑っていたが、翌年には小さな苗木に育ったのである。そして昨年は、この若夫婦にも第一子が誕生した。

c0113928_22201587.jpgそのバラも、今年は鉢植えに立派な花や蕾を沢山つけた。
そして、あの時と同じ芳香で周辺を満たしている。

今年こそは約束の「幸せ返し」が出来る。

一輪のバラを若夫婦に贈ろう! 
「幸せ返し」のバラの花を贈り返そうと思う。
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by m_chiro | 2009-05-29 22:18 | 雑記 | Trackback | Comments(8)
須田裕子・人形展を見る
学会誌の編集作業に追われています。
先日、気分転換に知人の人形作家の個展を見に行きました。
人形作家の須田裕子さんは、酒田で活躍する若手の作家です。
私も彼女とはご縁があって一緒に制作の仕事をした仲です。
そのとき彼女はイラストを担当しました。
彼女は人形創りだけでなく、絵も描きます。
人形もそうですが、絵も女性を描いた作品が多いようです。
絵では「赤い服を着た女」という作品の女性にひとめぼれでした。
今回の個展は、松ヶ岡にある庄内映画村の事務所の隣の建物でした。
「松ヶ岡こうでらいね」という「手作りクラフトの店」の一室に、彼女の作品が展示されていました。
下の写真は会場になった「手作りクラフト」の店の玄関です。
「手作りクラフト」の店らしい、いい味が出ています。
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彼女の作品の人形で、私が一番気に入ったものは、犬を連れた女性の人形でした。
犬もかわいい!
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ところが彼女の作品での一番人気は、下の写真の人形だとか。
会場で写真撮影が出来ないので、作品の絵葉書から紹介しておきます。
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絵といい、人形といい、素敵な作品ですが、田舎の家では飾り置く場所を探すのに思案しそうです。
作品が都会風なのだろうか...。
才能のある人が埋もれているようで惜しい!!
須田裕子さんの応援団の一人としては、そう思います。
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by m_chiro | 2009-05-28 23:00 | 庄内の記 | Trackback | Comments(2)
「酒田まつり」創始400年・本年祭
上天気に恵まれて、創始400年「酒田まつり」本年祭が賑々しく行われました。
街は交通規制がひかれ、車で乗り込むことはできません。
それでも多くの市民や観光客が道路沿いに溢れていました。
市役所前には、酒田のシンボルの大獅子頭とその子獅子頭が出番を待って並んでいます。
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この獅子頭は、厄除けに子供たちを「獅子パックン」をしてくれます。
もちろん幼い子達は、大泣きです。
出店が並び、子供や若者たちは出店通りにいっぱいに行列して歩いていました。
年配者は、植木市通りに出向きます。

祭りと言えば、私などは「おめん」の出店がなつかしい。
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そういえば、ハッカのパイプも買ったなぁ~。
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子供の頃はサーカスも楽しみでしたが、近年では見かけなくなりました。
懐かしく想い出されます。
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山車が50種を超える数でした。
夜は「夜祭り」で、山鉾に灯りをともして街中を回ります。
夜祭りには、またいろんなイベントがあるようですが、人の出が多くなかなか見切れません。
歌舞伎、剣舞、獅子舞、奴踊りなどなど、惹かれるものが沢山あるようです。
まつりの模様は次の山形新聞の動画ニュースでご覧下さい。
地方の港町の伝統的なまつりの様子がわかります。
山形新聞・動画ニュース「酒田まつり」
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by m_chiro | 2009-05-21 01:09 | 庄内の記 | Trackback | Comments(8)
今夜は「酒田まつり」創始400年・前夜祭
慶長14年から続けられてきた「酒田まつり」が400年目を迎えました。
今夜は、その前夜祭です。
この祭りは昭和54年の酒田大火前は「山王祭」と呼ばれていましたが、酒田大火復興に願いをかけて「酒田まつり」と改められています。
以前は高い山車が名物とされていましたが、この創始400年を記念して山車が復活しました。
何でも天明時代から明治までは、この高い山車が見ものだったとか。
地方の小さな港町のささやかな祭りです。
夕方から、市民が前夜祭を見に集まってきました。

街路には、まつり提灯が続き、お祭り気分を盛りたてています。
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復活した「山車」のひとつ山鉾。
そこで前夜祭のイベントが開かれて、見物客も出始めました。
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傘福をあしらった山車。
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by m_chiro | 2009-05-20 00:42 | 庄内の記 | Trackback | Comments(4)
今や花盛りです
今年も君子蘭が見事に花をつけました。
早速、治療室に持ち込んで飾りました。
黄花の君子蘭です。
一本の花が毎年株を増やし、こんなになりました。
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オレンジの君子蘭も咲いています。
こちらは玄関へ。
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庭には満州芍薬が可憐な花を咲かせています。
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庭のえびね。
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遅い北国の春は、一気にやってきます。
寒さで縮こまっていた植物が、まるで背伸びしたようです。
同時に、松の花粉が舞い、道路も車上も黄色になりました。
沿岸にある防砂林の松の花粉が飛んでくるのです。
これだけは堪りません。
明日から春祭りがはじまり、街並みは祭りの準備で賑わっていました。
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by m_chiro | 2009-05-19 01:03 | Trackback | Comments(4)
「痛み学・NOTE」25. 神経を圧迫しても、通常は痛まない、これだけの理由
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

25.神経を圧迫しても、通常は痛まない、これだけの理由

簡単に「神経」と一括りに使っているが、神経とはどこまでを指すのだろう。
同じように、我々はどこまでを脊髄と認識しているのだろう。軟膜、クモ膜までだろうか。それとも脳脊髄液を含めているのだろうか。あるいは硬膜までか。脊柱管は脊髄の防御の役割も担っているので、脊髄に含めてもいいのだろうか。
そう考えると神経幹も同じように分けて考えることができる。
そもそも解剖学的な区切りは、人の都合で分けられているに過ぎない。

神経線維は結合組織の層に囲まれた束になっている。
そして、この組織形態そのものが機能的なユニットになっていると思われる。
そもそも結合組織だけで、末梢神経全質量の50~90%を構成しているとされているのである。
この結合組織は、神経内膜、周膜、上膜、間膜に分けられている。
これらについて、J.P.Barralの”Manual Therapy for the Peripheral Nerves”およびButlerの著作に学んでみよう。

神経内膜は、神経束内にある結合組織で、いくつかの神経線維で構成された最初の束を作り上げている。
ここにはグリア細胞が取り巻いて、それぞれの神経線維を増強している。
この神経内膜の束は、高密度の膠原線維の基質からなる膨張性の柔軟な構造体である。
そして栄養補給と保護機能を兼ね備えており、特に内液圧に重要な役割を果たしている。

神経内膜内スペースでは、僅かな陽圧を保つことで神経に一定の環境を提供しているのである。
ここで注目すべきことは、どうもリンパ管が存在しないことにありそうだ。
リンパ管があることで、もしも浮腫が起きるほどに内圧が変化すると、軸索の伝導や運動を妨げることになる。またリンパ管が損傷されると、神経腫や別のシナプス結合が起こり得る。
あるいは、神経組織が破壊される恐れがでてくる。
この事態は神経にとっての危機状態である。
リンパ管が存在しないことは、それだけ神経の保護に配慮されていることでもあるのだろう。

もうひとつの注目事項は、皮神経で神経内膜の割合が多くなることである。
身体表面の神経は、その分より以上の緩衝が要求されるからで、ここにも神経の環境に応じた保護作用が機能している。

神経周膜(perineurium)は、いくつかの束を取り囲む結合組織の鞘である。
つまり最初の束の集合がまとめられて、第二の束を形成している。
この神経周膜は線維芽細胞で密集した7~8つの層で構成されている。
哺乳類の神経幹には15層以上存在することがあるとされているが、神経線維を守る第二のバリアを形成しているのである。
要するに、神経線維自体の保護と異物を寄せ付けないように防御する隔壁となって、外圧に対する抵抗を提供している力学的バリアである。
また、力や物質を拡散させることでバリアとなっている。
そのため、周膜は張力に対する最も強い抵抗構造となっていて、神経が極度の牽引にさらされると最終的に損傷する結合組織でもある。
この事態での神経束内部の圧力は、約300~750mg以上とされている。

神経上膜(epineurium)は、すべての末梢神経幹を取り囲む鞘を形成する結合組織である。
上膜は、末梢神経の末端まで伸びる硬膜の延長で、機能的には2つの役割を担っている。
ひとつは内側の上膜の機能で、神経束どうしが分離した状態を維持することである。
そのために神経束間での滑りが促され、四肢の運動時における急角度の屈曲作動に適応することを可能にしている。
例えば、ピッチングでの肘のモーションなどは、この機能の恩恵を受けている。
もう一つは外部の上膜で、神経束を取り囲む明らかな鞘を形成している。

神経上膜の相対的容量は部位によって違っている。
例えば、手根管の領域のように関節が神経幹を横断する部位では、神経上膜は厚くなり、神経束を包む周膜以下の内部の膜から独立分化して「別の鞘」の形態を作っている。
こうして圧力などに対する防御機構は、ほとんど芸術的にさえ感じる。

この上膜内には、極小血管の新生を構成する神経脈管(vasa nervorum)がある。
上膜内を流れるリンパ毛細管網は、こうした血管網との連携で排出される。また「神経の神経(nerve nervorum)」を保有している。
これらの神経線維は、神経自体と脈管周囲神経叢から枝を伸ばし、周膜、内膜、上膜へと向かっている。
そして、上膜での終末には受容器がある。

神経間膜(mesoneurium)は、末梢神経を取り巻く最外層の組織である。
間膜と命名されているのは「腸間膜」に似ているためとされているが、どうも実際は似ているとは言えないようだ。
そのため「神経外膜」と呼ぶべきだとの見解もある。それは兎も角として、この神経間膜は末梢神経と隣接する組織を滑動する役割を担っている。
血管もこの間膜を貫いて神経に入るため、配列しながら収縮するようになっていて血流を阻害しないような構造になっている。
やはり神経間膜も力学的に重要な膜組織と言えるようだ。

こうして神経の結合組織をみていると、末梢神経は脊髄同様に二重のシステム構造体とみなすべきではないかと思える。
脊髄という情報伝達系と防御系、軸索という伝達系と結合組織という防御系の二重システム構造である。
やはり、機能的観点から別物と見た方がよさそうだ。
これだけ機能的役割が違っていることからも、こうした見方は強ち乱暴な見解ではないと思うのだが...。

ニューロンの多様な形態については、よく理解されているところであるが、その結合組織の形態や機能についてはあまり関心が向いていないようにも思える。
既存の分類に惑わされて、本来の機能的能力を見落とさないようにしたものである。

これまで見てきたように、末梢神経幹には二重三重に圧力に対するバリア機構が強固に保たれている。
末梢神経の結合組織にある神経線維の分配やタイプについては、未だ充分な研究が行われていないようだ。

「神経の神経(nerve   nervorum)」については、神経学の領域でも重要視されていないのかもしれない。
「神経の神経」は受容器を持つとされているが、上膜が損傷でもしない限り、簡単には発火しないように思える。なぜなら、神経幹は圧力に対して形を変えて対応しているからである。
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また、神経束の数が多ければ多いほど圧力に対する強い抵抗力がある。神経束の数や大きさも、神経の走行する部位によって異なる。
このことも保護機能に対応している証左であろう。
神経束が多ければ多いほど、比例して圧に対する抵抗も保護力も大きくなる。
例えば、総腓骨神経の膝窩部では神経束8本に対して、腓骨頭付近では16本と倍増されている。

神経の圧迫による痛みとやらは、やはりどう見ても疑わしい。
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by m_chiro | 2009-05-18 12:37 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
唐松の伐採枝を花瓶に生ける
連休に羽黒山に行った。
ブナの新緑を眺めながら歩いていたら、冬の積雪で折れた枝や伐採された枝が木の根元に置いてあった。
唐松の枝だと思うが、折れた枝の養分で生き延びたのだろう。蕾が膨らんでいる。
水上げしたら葉が出てくるかもしれない、と手折って持って帰った。
山のものを持ち帰るのはいけないことだが、処分される伐採枝だからいいだろう。
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可愛い松かさが付いている枝を選んで持ち帰り、花瓶に生けて治療室に飾った。
一週間も経って、緑の可愛い葉を出した。
生命力ってすごいなぁ~、と感心する。
北海道旅行のお土産にと、患者さんからもらった木彫りのフクロウと合わせて飾ったら、
なかなか味わいがある。

蕾のままのときは誰にも見向きもされなかったが、花瓶の中で新緑を出したら途端に患者さんの注目の的になった。
「これどうしたの?」、「いいわねぇ~」などと、ひとしきり眺めて帰る女性の患者さんが多くなり、その度に謂れを語ることになった。

治療室で、たわいもない話をする空間がある。
私はそのひと時がとても好きだ。
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by m_chiro | 2009-05-13 22:38 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
「プルーストとイカ」 
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「プルーストとイカ」―読書は脳をどのように変えるのか?― 
この本、最近とても面白く読んだ本でした。
書名にある「プルースト」とはフランスの作家マルセル・プルーストのこと。「失われた時を求めて」という代表作がある。伝記研究書の最も多い作家なのだそうだ。
なぜ、プルーストなのか。
プルーストは著書「読書について」の中で、本を読む行為とその影響について書いた。読み取った文章から、情景をありありとイメージすることについて掘り下げたのである。

このプルーストの書いた内容を、認知神経科学者メアリアン・ウルフが脳の発達や読字・言語という視点から説いたのが、この本である。
文字を読む脳の発達と進化に関するものだが、特に著者の専門の領域であるディスクレシア(読字障害)や発達心理学に触れている。

一方、イカは20世紀後半の神経科学者の研究素材にされた。
ニューロンの発火、興奮、情報伝達の解明に、イカの長い中枢軸索が研究対象とされたのである。
この科学者たちの研究心を煽ったイカは、読字のプロセスの解明に相補的な役割を演じた生き物だという訳である。

本を読む行為では、人の認知プロセスがフル稼働する。
注意、記憶、視覚、聴覚など、言語システムが使われる。
文字が作られ、文章化され、大作の物語が書かれるまでの人の発達の歴史は、そのまま脳の進化の歴史として辿ることができるのだそうだ。

ところが昨今、読書離れが指摘されている。
そうなると、文字や読書によって発達・進化した人間の脳はこの先どうなってしまうのだろう。読書脳は衰退してしまうのだろうか。
この本のサブタイトルである-読書は脳をどのように変えるのか?-が推論されて行くわけで、とても面白い。

私たちは何気なく読み書きしているが、実はこの行為、そんな簡単に括れる話ではない。ディスクレシア(読字障害)の存在を知ると、そんな思いを強くする。
ところが、この障害は特に珍しいわけでもなさそうである。エジソン、ダ・ヴィンチ、アインシュタインは、ディスクレシアの三大有名人だそうだ。ロダンもピカソ、ジョニー・デップなどの芸能人、ガウディなどの建築家、技師や医科学、財界などあらゆる分野にいるのだという。彼らはパターン認識などに独特の脳の働きを持っているようである。特に右脳の使い方に特徴があるようだ。

ところが読み書きは、遺伝子が決めているわけではない。
生後5年間が、読み書き脳を作る重要な時期なのだそうだ。それを怠れば、読み書きが出来ないままで終わってしまうし、読み書きをすることで脳のシナプスの結びつきが発達する。人の成長の歴史は、そのまま脳の進化の歴史だとする所以でもある。

ところが、文字によってそのシナプスの配線も違ってくるらしい。アルファベット、漢字、カナ、ひらがな、シュメールの文字とエジプトのヒエログリフでも違ってくる。
特に注目は、日本人が漢字、カナ、ひらがなを用いることである。
これらの言語は、それぞれ別々の脳の回路を使っているのだそうだ。
この独自の脳の使い方が、その文化、世界観や感覚に大きく影響しているのだろう。読書は脳の発達・進化に大きな影響を持っている。本を読むことは、「奇跡のような体験」なのだと著者は強調している。
その奇跡が本離れで衰退すると、どうなるか、とても深刻な問題である。
「読書脳」は、今や「検索脳」あるいは「google脳」に変えられようとしている。
その行き着く先に、脳の進化はどんな様変わりをするのだろう。

著者は、最終章「結論―文字を読む脳から“来るべきもの“へ」の中で、「オンライン・リテラシーの進展によって何が失われるのか?」と問いかけている。
リテラシーとは、「読み・書き・そろばん」のようなもので基本的な能力のことであるが、今日では教養や理解力、知識を操る能力といった幅広い意味合いを持っている。

より多く、より速い、情報オンラインに慣れ親しむことで、文字を読む脳が育ててきた「一連の注意、推論、内省の能力」が衰退しないかと危惧もされる。
しかし、「オンライン・リテラシー」が新たな脳の進化をもたらす可能性も否定できない。
この膨大な情報を瞬時に受け取る新しい情報社会に生きている。このスピードと量は更に進むことは確実である。
そうなると、読字、文章化といった文字文化によってもたらされた推論し、考察する時間をどのように築くべきなのだろう。
オンライン・リテラシーが、更に新しい脳細胞の再編成をもたらされることで、未だ見ぬ能力が得られるのだろうか。また、それによって失うものとは何だろうか。

この辺を考えるヒントが読字文化の構造を脳科学の視点から紹介しているが、ここではこれ以上は触れない。是非、この本を読まれることを勧めたい。
なぜなら、著者は文末に「読者へ―最後に考えていただきたいこと」として一言添えているからである。
「人類が文章を超越する術をいかに学んだかという本に最終章はない。結末はあなた、読者の筆次第だ...」。
いろいろ考えされられた本であった。
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by m_chiro | 2009-05-13 10:14 | Books | Trackback | Comments(0)
羽黒山へ
連休も最後の日となった。連休も過ぎてしまえば、アッという間に終わった。
今日は新緑をみながらドライブへ。山桜も散り始めていた。
先ずは、羽黒山へ。

出羽三山(羽黒山・湯殿山・月山)のひとつである羽黒山は修験の山である。
奈良時代の開山で(586年)、今年は丑歳に当たる。
12年に1度の丑歳に参詣すれば、12回お参りしたのと同じとされ、大変なご利益があると伝えられているのだ。
それなら是非に参拝しなきゃ、というわけである。
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羽黒山は標高414mで、三山の神々を合祀した社殿までは2446段の嶮しい石段と古杉の並木を登る。
途中に国宝の五重塔がある。
釘を一本も使っていない2本の代表的な建築だ。
平の将門の創建と伝えられている。
古杉の並木は、それだけでも神聖な雰囲気を醸し出している。
が、私は五重塔のところまで行って、後は車で山頂へ。
楽なコースを辿った。
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三山の神を合祀した社殿が羽黒山の山頂にあって、今年は出羽三山「丑歳御縁年」に当たる。
ちょうど本殿の茅葺屋根を修復中だった。
この茅葺屋根の管理も大変なものだ。とても貴重な場面に出くわした。
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藤沢周平の小説「春秋山伏記」はこの羽黒山の修験者を主人公にした物語である。
羽黒の「みずばしょう」も終わりかけだった。
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「山あじさい」の可憐な姿も印象的だった。
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by m_chiro | 2009-05-07 01:07 | 庄内の記 | Trackback | Comments(2)
神経を二重構造体とみるべきか ②
②末梢神経は二重三重に防御され、滑り可動する構造体である

脊髄は、どこまでが脊髄?
脊髄、軟膜、くも膜、脳席髄液、硬膜、脊柱管まで?

末梢神経は、どこまでが神経?
軸索、内膜、周膜、上膜まで?

例えば、腰はどこまでが腰? 膝はどこまでが膝?
解剖学的区分や名称は、人の都合で決められている。

簡単に「神経」とひとくくりに使っているが、下図にあるように神経線維は結合組織の層に囲まれた束になっている。
そして、この組織形態そのものが機能的なユニットになっていると思われる。
そもそも結合組織だけで、末梢神経全質量の50~90%を構成しているとされているのである。この結合組織は、神経内膜、周膜、上膜に分けられている。
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それぞれの結合組織の特徴をまとめると、次のようになる。
神経内膜(図の黄色の部分)の特徴
1.神経束内にある結合組織(いくつかの神経線維で構成された最初の束)
2.グリア細胞が取り巻く(それぞれの神経線維を増強)
3.神経内膜の基質は高密度の膠原線維
4.膨張性の柔軟な構造体
5.栄養補給と保護機能を兼備
6.液圧に重要な役割を果たす
7.神経内膜内スペースで僅かな陽圧を保つ(神経に一定の環境を提供)

神経周膜:perineurium(図の緑色の部分)の特徴
1.いくつかの内膜束を取り囲む結合組織の鞘(最初の束の集合による第二の束の形成)
2.線維芽細胞で密集した7~8つの層で構成
3.保護および異物に対する防御となる隔壁
4.外圧に対する抵抗を提供
5.周膜は神経が極度の牽引にさらされると、最終的に損傷する結合組織

神経上膜:epineurium(図の青色の部分)の特徴
1.すべての末梢神経幹を取り囲む鞘を形成する結合組織
2.末梢神経の末端まで伸びる硬膜の延長
3.二重の機能的役割
1)内側の上膜の機能で、神経束どうしが分離した状態を維持
2)上膜の外側は神経束を取り囲む明らかな鞘を形成
4.極小血管の新生を構成する神経脈管(vasa nervorum)の存在
5.「神経の神経(nerve nervorum)」を保有し、受容器を持つ
6.「神経の神経(nerve nervorum)」自体および脈管周囲神経叢から枝を伸ばし、上膜にある終末から周膜、内膜に向かう
7.可動性のある構造体
8.神経束間での滑走を容易にする

こうしてみると、末梢神経は脊髄同様に二重のシステム構造体とみなすべきではないかと思える。
神経線維自体と結合組織は、その機能的役割が全く違っているからである。
神経線維そのものと、その結合組織は、機能的みれば別物と見た方がよさそうだ。
これだけ神経線維が保護されているのであれば、外圧に対する抵抗に強く、可動性に富んでいる組織であることが分る。
受容器を持つとされる「神経の神経」も、どのような刺激に対して反応するのかよく分っていない。
この神経菅が圧迫されたとして、痛みが起るには相当の損傷が加わったときであろうと思われるし、また伝導が阻害されるようであれば麻痺の病態に至るのではないだろうか。
上膜が損傷でもしない限り、簡単には発火しないように思えるのだが...。

ただし、神経の結合組織を別の機能システム系として捉えると、侵害受容性の痛みが起こる可能性が残されてくる。

(次に続く)
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by m_chiro | 2009-05-05 01:10 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)



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