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脳の三層構造から痛みをみる
腰下肢痛の50代男性がみえた。バイクでの配達業務を行っている。
慢性的な腰痛に加えて、1ヶ月前から右の下肢痛がひどくなった。思い当たる原因はない。
整形外科では、X-rayで腰の骨が捻じれているとされた。
にもかかわらず、湿布に鎮痛剤を処方されただけだった。
経過は思わしくなく、3週間前から歩行も辛くなり、夜間も痛みで目覚めることが多くなっていった。

右の大腿部に力が入り難いらしく、多少の跛行がみられる。
右の大腿四頭筋、中殿筋が、まるで廃用性の筋肉のように筋のトーンが低下している。逆に腸脛靭帯は過緊張を呈している。
左の骨盤隔膜は極度に緊張し、そのために仙骨尖部が左に大きくシフトしている。当然、大転子も突出したように触知できる。レントゲン写真を見なくても、歪んだ身体が見てとれる。

歪んでいるのが痛みの原因だったら、それを正してあげる以外ないない。が、骨盤の歪みも、腰の捻じれも、筋・筋膜の過緊張によって償された歪みなのである。したがって筋・筋膜系が調整されれば、こうした機能的な歪みは自ずと正されるはずである。

そこで圧変動と左骨盤隔膜のしつこい緊張をリリースした。弾性を感じないほどに緊張していた仙結節靭帯や仙棘靭帯のリリースが起こると、仙骨がリズム運動をはじめた。右の中殿筋のトーンも力強くなり、歩行もスムーズになった。
3日後に再診したときには、夜間の痛みも消えてよく眠れるようになり、とても楽になった、と語った。まだ少し大腿前部から前脛骨筋にかけて痺れるようなだるさがあるらしい。胃経のラインのようなので遠隔で解除キーを探すと、孔最と思われるポイントがよく反応してくれて痺れ感も消失した。とても素早く変化した症例である。

結局、脊柱や骨盤の歪みは筋・筋膜の緊張によって代償されたもので、痛みはその筋・筋膜にある受容器の興奮から起こっている。
こうした侵害受容性の痛みは、身体の信号網を上手く扱うことで皮質での痛みの認知を解除できる。もちろん皮質での認知に直接働きかけることも可能である。

では、なぜ痛みの信号系が作動するのだろう。
侵害受容器の閾値が下がったから...。なぜ閾値が低下したのだろう。閾値を決めているのはどこなのだろう。
交感神経が緊張したから...。なぜ今度だけ身体が反応したのだろう。

私は脳の三層構造から情報信号系を捉えて対応している。
乱暴にではあるが、脳を三階建てのビルと考えることにしよう。
すると、皮質は3階に相当し、2階が情動系で、1階は反射などの原始信号系が役割分担していることになる。
情報は、1階、2階を経由して、3階にあがる。痛みとして認知は、皮質に上がってくる情報によって起こるわけだが、実際に皮質上がる情報量は、ほんの数パーセントに過ぎない。多くは1階の閉鎖回路網で反射的な情報処理が行われている。

この1階での神経信号が十全であることがポイントではないか、と私は考えている。1階の情報系が揺らいでいると、その先に流れる情報もぶれる。したがって、1階部分の信号系のリセットはしっかりと行うようにしている。
このリセットを脳が上手に学習してくれると、身体のストレス軸がリリースされるから不思議でもある(この方法をセルフケアとして行うには、どこま可能だろうか)。
後は、皮質(意識に上がった痛み)と身体との情報ネットワークの滞りを解除してあげればよい。
それにしても厄介なのは2階部分の情動系である。上行性に3階にも影響し、下行性に1階にも影響を及ぼしてくる。今、取り組んでいるテーマです。
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by m_chiro | 2008-11-28 00:27 | BASE論考 | Trackback | Comments(0)
「千葉WANオリジナルカレンダー2009」が届いた
「千葉WAN」の2009年版オリジナルカレンダーが届いた。
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このカレンダーは、捨てられたり行き場を失った犬猫の緊急救助を行い、里親探しを進めているボランテアの会「千葉わん」が制作したものです。

1年の365日に、それぞれ里親を得て元気に暮らしている犬猫たちの姿や、現在里親募集中の子たちが載っています。カレンダーの売上金は、救助された動物たちの医療費や食餌の一部に使われます。
中に、次の一文を添えた手紙がが入っていました。

カレンダーを見る度に、千葉WANのようなボランテイア活動や、保護されて家族の温かさを知ることが出来たわんにゃんの尊い命について、また、今も助けを必要としている多くのかわいそうな仲間のことを思い出していただけたら幸です。

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我が家の愛犬「空;くう」は、この千葉WANからきた犬です。
千葉市の「セブンイレブン」をうろついていた2匹が捕獲され、「セブン1号」と「セブン2号」と命名されて緊急救助されました。
そのうちの2号をボランティアの一人mikiさんが、里親探しのために預かりました。彼女がセブン2号に「空;くう」と名づけて、里親探しの自身のブログに「うちの子日記」(http://mikitrm.exblog.jp/)に公開しました。
空は、2003年の2月8日に我が家に来ました。
というわけで、2月8日に下の写真が出ています。カレンダーには、「まだなの? 早く食べたいよ!! 2003年2月8日卒業 山形県酒田市」と添え書きがあります。
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mikiさんの熱意には本当に感心します。里親探しで預かりしたわんちゃんですが、病気があったり、老犬で里親に恵まれなかった子たちを自分の家族として引き取ってもいるのです。

我が家のもう一匹は、「桐子;きりこ」です。群馬県の伊香保で捕獲され保健所に連れて行かれるのをアパートの若夫婦が飼い主を探すからと引き取って、里親探しのサイトで募集した犬です。このブログのタイトル・ヘッドにある顔が桐子です。
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「外でなんかあったんかいな? どれどれ」

私の大好きなブログの一つである「座敷わらしのひとりごと」のsyarurukさんも、この頃は猫ちゃんの里親探しに奮闘中のようです。
Syarurukさんはご自身の病状や弱さをブログにさらけだしながら、それでも逞しく頑張っています。starurukさんのブログを読むと、なぜかホッとさせられます。凹んでいるときなど、分けもなく元気にさせられます。お人柄なのでしょうか。子猫たちの里親探しにも一生懸命です。

syarurukさんの子猫たちや、カレンダーのひとコマひとコマにある犬猫たちのくったくのない表情を見ながら、小さないのちを大切に思う気持ちを考えさせられました。
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by m_chiro | 2008-11-27 00:47 | わん・にゃん物語 | Trackback | Comments(7)
我が心のジェンシー先生
私が最初にアメリカの本格的なカイロプラクティックを学んだのは、当時アメリカのナショナル・カイロ大学の学長であったジェンシー先生のセミナーであった。

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ジェンシー(Joseph Janse D.C.)先生は、1909年にオランダに生まれた。
ヨーロッパからの移民としてアメリカに渡り、ユタ大学卒業後にナショナル・カイロプラクティック大学を卒業した(1938)。

後年に同大学の学長を務め、世界各国でセミナーを主宰し、その数も全米50州はもとよりヨーロッパ、アジアなど十数カ国に及び、多彩で精力的なカイロプラクティックの教育を行ってきた。教えることに大きな喜びを持った真の教育者の姿がダブる。実際に、ジェンシー先生はアメリカのカイロ大学における教育を向上させ、政府公認と大学と業界を一体として発展させたパイオニアでもあった。

学術面でも大きな貢献をしている。スイスで行ったDr.イリーとの脊柱・骨盤の共同研究はカイロプラクティックの古典的業績とされている。またカイロの基礎研究を重視し、自律神経研究の世界的権威である佐藤昭夫博士の下に研究員を派遣して、日本での共同研究に当たらせている。
カイロの教育と学術的貢献は計り知れないものがあり、1961年にはフランス文化省より、その医学生理学的貢献に対して「科学芸術賞」を贈られている。

1985年に亡くなられるまで、日本では5回の国際セミナーを開催した。日本のカイロの近代化はジェンシー先生の足跡に支えられていると言ってもよい。

私は晩年のジェンシー先生のセミナーを受けたに過ぎない。でも今振り返っても、技術的なことよりも、その物腰、力強いメッセージ、言葉の一言一言が胸に響いた。
ジェンシー先生の語る言葉は、何時もとても重く重要な示唆に富んでいた。
感動で胸が震える思いもした。まさに魂の教育者だった。
先生のスピーチの後に拍手が鳴り止まなかった場面に、私はアメリカでも日本でも立ち会った。

こうした体験が、柔整師の資格を生かさずにカイロプラクティックに向かわせたのかもしれない。もしもジェンシー先生との出会いがなかったら、私はカイロプラクティックを本格的に学ぶ気持ちにはならなかったのではないかとさえ思う。
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by m_chiro | 2008-11-24 23:16 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
劇的な変化ではあるけれど①
原因不明の歯茎の痛み

40代の女性が突然に歯の痛みを感じた。
右上の奥から3~4番目の歯で、虫歯にでもなったかと歯医者さんに診てもらった。
ところが虫歯もない。歯を噛み締めたり、歯軋りをする癖があるらしい。
それで歯科医師は、減圧するために歯を削った。
そのうちに歯茎も腫れてグラグラするようになった。
痛みは相変わらず続いている。頭痛と肩こりもある。
1週間以上経っても痛みが消えず、やむなく神経を抜いてもらうことにした。
その神経を抜いたら、今度は奥から2番目の隣の歯根部に痛みが移った。
その数日後に、何とかならないかと、当院へやってきた。

痛みの場所を確認すると、第1大臼歯の歯茎を中心に頬骨の下方に相当している。
頭蓋や顔面頭蓋をチェックすると、特に右側頭骨、前頭骨、上顎骨のリズムが失われている。打診でも反響反応が同調しない。
頭蓋療法を行い、顔面頭蓋を調整してみたが、痛みに大きな変化はない。

最初の痛みが胃経のライン上にあったようなので、左第2趾胃経の先端を押圧してみた。すると、そこからビリビリと歯茎のところまで痛みが走ったと、ビックリしたような声を出した。それではと、陰陽交差で左手の大腸経ラインの反応点を刺激すると、痛みが半減した。

神経を抜いた後の痛みは、小腸経ライン上にある。そこで左下腿の肝経ライン上に反応点を求めて刺激すると、今度は痛みが消失し僅かに重苦しさが残る程度になった。
歯噛みをさせても、噛み締めさせても大丈夫になった。

劇的に変化下と言っても、何がどう影響したのだろう。
不思議だね、痛みは。
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by m_chiro | 2008-11-22 12:45 | 症例 | Trackback | Comments(2)
治療の哲学は方法論(テクニック)を規定しない
どんな医学や治療にも哲学がある。
哲学や思想という言葉が重たければ、「考え方」と置き換えてもいい。

カイロプラクティックにも哲学がある。
その哲学は「自然」と「人間」の存在を捉えた、言ってみれば原初的な世界観あるいは自然観である。

人間を含めた大自然・大宇宙は秩序と調和を保っている。
その大宇宙としての知性を「宇宙的叡智(Universal Intelligence)」としている。
カイロプラクティックの創始者D.D.パーマーはその著「The Science,Art,Philosophy of Chiropractic」に、この宇宙的叡智を「God」と記している。
キリスト教文化圏における世界観であるから、当然の帰結なのかもしれない。
東洋的な自然観で言えば「タオ」とでも言えようか。
これに対して人間は「先天的叡智(Innate Intelligence)」を宇宙的叡智から得て、小宇宙としてのヒトの秩序と調和を保っている。

これらがカイロプラクティックの哲学である。
その先天的叡智を賦活させてヒトの健康を保つこと、これがカイロプラクティックの治療哲学(考え方)ということになる。

ところで、哲学は方法論(テクニック)を規定するものではない。
その哲学を遂行するための方法論は選ばないのである。
ただ、その方法論(テクニック)が科学的であるためには「理論」がなければならない。
「理論」は「方法論(テクニック)」を規定するからある。だから、全うなテクニックには理論がなければならない。

例えば、カイロプラクテックのテクニック(technique)には多くの種類がある。
マニピュレーションと呼ばれる高速低振幅のスラスト・テクニックから、ノンフォース・テクニックに分類されるものまで、数十種類の理論とテクニックがある。
中には、4g程度の僅かな圧を用いるテクニックもある。カイロの治療手技も多種多様である。

その治療手技のひとつであるマニピュレーションにも、スラストを用いる方法やドロップを用いるものまであり、それらは全てがマニピュレーション理論によって規定されている。
このマニピュレーション理論に規定されないテクニックは、つまりはマニピュレーションではない、と言うことである。

私はカイロプラクターなのでマニピュレーションを否定するものではない。その技法を私が日常的に使うかは、また別の問題である。
ただし、理論に基づかない「マニピュレーションまがいのテクニック」に対しては、無闇に使うべきではない、と忠告する。

カイロの創始者D.D.パーマーは、その哲学を疎外するものとして神経系の全体的あるいは部分的変調に注目した。
すなわち「神経のトーン」として表現した神経系の緊張状態である。
この「神経のトーン」に変調をもたらすものとして、脊椎の配列状態に求めた。
古典的な理論である。そこから方法論としての幾多のテクニックが生まれてきた歴史がある。

だが「カイロプラクティック」とは、テクニックによって表象されるものではなく、実は自然や人間を観るひとつの考え方(哲学)なのである。
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by m_chiro | 2008-11-19 01:58 | 動態学 | Trackback | Comments(0)
「ヘルニアという病名?」再考
11月12日の私の勉強記の日誌『「第11回・日本カイロプラクティック・セミナー」に出かける』に加茂先生が解説をつけて下さいました。二度勉強した気分で、感謝です。

「ヘルニアという病名?」

折角なので、復習のためにその部分を整理しておこうと思います。

椎間板ヘルニアによる症状の97%をマッケンジー・エクササイズで解決している脊椎外科専門の整形外科医・穴吹弘毅先生の講演「私の行う最先端の脊椎疾患に対する治療―保存治療から手術治療までー」を素材にしています。

では手術が必要な3%の椎間板ヘルニアとはどんなものか?
穴吹先生は、以下の3点が手術と保存療法を分ける要点であると主張しています。

1.腰の後屈エクササイズを行うと、エクササイズを行う前より下肢痛が悪化し、エクササイズ後も痛みや、しびれが続く場合。
2.腰の後屈エクササイズを1~2ヶ月行っても、腰痛が難治性で日常生活が著明に制限され、腰痛のために腰が完全に後屈できない場合。
3.下肢に重度の運動麻痺・膀胱直腸障害がある場合。


穴吹先生は「椎間板ヘルニア」という状態に対して、97%を保存療法で改善させ、3%が手術の適応であるとしているわけです。しかし、実際には何を改善させているのかと言えば「痛み」という症状です。
上記の3点がマッケンジー・エクササイズで改善しない症状で、手術の適応(3%)としているわけです。その中には「痛み」(1&2)と「麻痺」(3)という生理学的には全く違った現象が、椎間板ヘルニアに起因する症状としてあげているのです。

これを整理すると、つまりは今、椎間板ヘルニアに起因するとした症状が「疼痛性疾患」なのか「麻痺性疾患」なのかという問題が出てきます。この問題も、加茂先生がご自身のブログの中で再三にわたり指摘されてきたことです。

ヘルニアによって麻痺性疾患が起きることがあるのです。私は見たことがないのですが、それが馬尾症候群です。この病名も変です。症候群ではなくて、絞扼性障害です。つまり、48時間以内に圧迫を除去しないと不可逆となってしまう。緊急手術が必要なわけです。
「椎間板ヘルニアによる馬尾神経の絞扼性障害」・・・麻痺性疾患です。手術が必要です。
疼痛性疾患の代表的なものはたとえば「変形性膝関節症」「五十肩」です。上記の1、2は疼痛性疾患について書かれたものです。膝痛や肩痛で麻痺が生じることはないですね。
私は「疼痛性疾患」というカテゴリについて述べているのです。
麻痺性疾患は神経原性麻痺のことが多いのですから、どこかで神経が絞扼している可能性を念頭において検査しなくてはなりません。このとき、二次的に神経の混線が生じてCRPS2(カウザルギー)になることがあるのです。ヘルニアによるといわれている「あの痛み」がこれであるはずがありません。



下の図は、穴吹先生の論文「腰椎椎間板ヘルニア(LDH)に対するMckenzie exercise(ME)の効果」における調査対象77例(15歳~72歳:平均35歳/男性52例・女性25例/手術例8例を含む)の効果を示したものです。

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VASスケールで最初に約5あったものが、マッケンジー・エクササイズ直後で1.5に、2週間後ではほとんど0に近いスコアです。
エクササイズでこれほど顕著に変化すのは、疼痛性疾患の証拠です。つまり筋肉の痙攣性の病態がリリースされたからでしょう。

こうしたエクササイズで、2年後にはヘルニアが退縮した例も紹介されていますが、このこともヘルニアが筋筋膜からの2次的な代償した結果であることを窺わせます。マッケンジーの伸展エクササイズは、背部筋群の伸張反射により生じた筋筋膜性のトラブルをリリースする一つの方法なのでしょう。カウンター・ストレインやポジショナル・リリースなどでも同様の結果を出せるはずです。


五十肩、変形性膝関節症、いわゆるヘルニア、脊柱管狭窄症など「疼痛性疾患」を手術で治すという意味をよーく考えてみてください。これらの疾患に共通することは同じことなんです。ただ気まぐれにいろんな病名を付けているだけなんですよ。
「疼痛性疾患」「麻痺性疾患」このカテゴリをしっかり区別して別の病態、別の病気と思ってください。


だからこそ、我々のような徒手療法家が「疼痛性疾患」のお役に立てる機会があるわけなんですね。
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by m_chiro | 2008-11-16 21:59 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「第11回・日本カイロプラクティック・セミナー」へ出かける
11月8~9日、東京へ。
毎年恒例の「第11回・日本カイロプラクティック・セミナー」の実行委員を頼まれて、ささやかなお手伝いをしてきました。
このセミナーには、九州から北海道まで全国の所属団体の仲間が集う。
今年で11回目である。
2002年に福岡で行われた第4回のセミナーでは、加茂淳先生(加茂整形外科医院)をお招きして基調講演をお願いしたことがあった。

今年の来賓は、脊椎外科専門の整形外科医・穴吹弘毅先生(http://homepage2.nifty.com/anabuki-spine/index.html)である。「私の行う最先端の脊椎疾患に対する治療―保存治療から手術治療までー」の演題である。「腰痛治療革命」の近著がある。「諦めないで!その腰痛、手術なしで治る」のキャッチコピーがついている。
保存療法として使われているのは「マッケンジー体操」で、「椎間板ヘルニアの97%はマッケンジー法で治る」と断言している。

では手術が必要な椎間板ヘルニアとはどんなものか? 
次の3点が手術と保存療法を分ける要点だそうである。
特に外側性ヘルニア(椎間板ヘルニアの10%)は手術に至るケースが多いとしている。

1.腰の後屈エクササイズを行うと、エクササイズを行う前より下肢痛が悪化し、エクササイズ後も痛みや、しびれが続く場合。
2.腰の後屈エクササイズを1~2ヶ月行っても、腰痛が難治性で日常生活が著明に制限され、腰痛のために腰が完全に後屈できない場合。
3.下肢に重度の運動麻痺・膀胱直腸障害がある場合。
レーザー治療の適応となるヘルニアは、後方の靭帯線維を突き破っていない場合に限るのだ、と言い、保険適応がなく高額で(1回50万~80万)、しかも効果は70%だそうです。
これは顕微鏡視下手術の95%成功率に比べても低いとしていました。

実行委員は時々呼び出しを受けて最後まで集中して聞くことができませんでした。
椎間板ヘルニアによるとされる痛み治療に97%を保存療法で対応されている脊椎外科医の存在は心強い限りですが、どこまでもヘルニアに終始しており、その前にある痛みの生理学や機序がどこにも出てこないのが残念でした。印象的な感想です。

その他にも、基礎講座の一環として、このセミナーでは「除外診」に力を入れており、今回は「禁忌症としてのめまいと頭痛について」のレクチャーでした。めまいと頭痛について、除外すべき疾患の鑑別について詳細の教育講座でした。
また、「良性発作性頭位めまい症」については「セモン法」が紹介されていました。
臨床講座については、基礎講座として「検査と治療のポイント」が、応用講座については膜系へのアプローチについて頭蓋療法も含めて紹介されていました。

特別講演として、科学新聞社の斉藤信次社長がカイロ業界との係わりについて触れながら、業界の行く末を見据えて奮起を促す意向を感じさせる講話でした。斎藤社長のお話には、何かと考えさせられることが多々あります。長いことカイロ業界を見続けてきた人の話だけに、示唆されるたり反省させられたりすることが多々あります。
そんな諸々を考えながら、家路に着きました。
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by m_chiro | 2008-11-12 20:20 | Trackback(1) | Comments(5)
今度は右肩背部の痛みが...
9月16日の記事「階段を昇ると右足関節の内踝に痛みが...」http://mchiro.exblog.jp/9725703/の患者さんが、2ヶ月ぶりほどで治療に見えた。
右足関節の痛みは「あの後、ウソのように良くなった」と喜ばれた。

今度は右の肩背部の痛みを訴えている。右肩背部の痛みは、小腸経に一致している。
「今度はどうして痛くなったんでしょう?」と聞かれたので、「自分では、どうしてだと思う?」と聞き返したら、「寒くなってきたので、無理がたたったのかしら...」と言う。
彼女は医療従事者で、PCを良く使うのである。

「そうかもしれませんね」と言いつつ、治療を行った。
内圧変動をリリースして、最後に左足の腎経ラインと思われる反応点(KI3)を押さえて肩の運動をさせると、「とても楽だ」。

治療が終わって「今度はどこが悪かったのでしょう?」と聞かれた。
前回、足関節を治療したときの内臓機能関連の説明が、お気に入りになってしまったようである。
「消化吸収系かな...」と答えると、「そうなんです。何か消化不良なんです」と言う。
「どんなことに注意したらいいですか?」と聞くので、「乳製品や脂質のものをセーブした方がいいと思いますよ」と答えたら、「あっ! このところケーキばかり食べてるんです...」。

ますます内臓関連説明にハマられそうな状況になってしまったが、それにしても陰陽交叉法によく反応してくれる患者さんである。
ともあれ、良くなってくれることに越したことはない。
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by m_chiro | 2008-11-07 23:45 | 症例 | Trackback | Comments(0)
幻のきのこ?「ムキタケ」
山々が色づき、キノコの季節になりました。
鳥海山麓から治療に見えた方が、山奥で採取した色々な天然のキノコを持ってきてくれました。
その中に「ムキタケ」という珍しいキノコもありました。
私は初めて見たのですが、とても大きなキノコでした。
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天然のムキタケは、ナラ、ミズナラ、ブナなどの広葉樹の倒木や切り株に生えるらしい。
ところが昨今では、ブナ林保護のため伐採が禁止されている。
台風などで風倒木が起こらない限り、なかなかキノコの菌床が不足がちになって、この天然「ムキタケ」は採取量も激減状態なのだそうだ。
幻の天然ムキタケかな?
黄褐色か黄緑褐色で、柄はない。肉厚で表面の皮がむけやすく、皮の下はゼラチン状になっている。水分の含有量も多い。

これをたっぷりのモヤシと一緒に野菜炒めにして食べた。
ムキタケそのものは淡白な味だが、野菜炒めにすると風味がでて格別の味だった。
キノコの番付があり、それによると東の横綱が「マイタケ」で、西の横綱が「ムキタケ」と「ナメコ」なのだそうである。

このムキタケ、実は「ツキヨタケ」という毒キノコと間違えられる。
見分け方は半分に割って見る事だそうだ。
ツキヨタケは、どんなに小さくても黒いシミがあるので区別できるらしい。

秋にキノコ狩りが盛んなこの辺では、必ず毒キノコにやられたという事件がニュースになる。

毒キノコといえば、痛みの可塑性に作用する興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の役割が分かったのも、毒キノコにあたった事件からだった。

「毒ササコ」というキノコで、これを炊き込みご飯や味噌汁にして3日間食べた女性が、2日間の潜伏期間後に強いアロデニア症状を呈したことが発端となった。
この女性は、発症から2週間経ってもアロデニア症状が残り、布団が擦れても痛み、人が動く空気の気配でも四肢の末端に強い痛みが起こったそうだ。

毒ササコの主な化学成分が「アクロメリン酸」で、これが脊髄の抑制系介在ニューロンを選択的に破壊することから、強い持続性のアロデニア症状がおこるのだそうである。
このアクロメリン酸が、「グルタミン酸」を分子内に持っている。
というわけで、グルタミン酸は痛みの可塑性に大きな役割を演じていることが分かったらしい。
自然は、いろんなことを教えてくれるんだね。
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by m_chiro | 2008-11-07 15:37 | 雑記 | Trackback | Comments(3)
考える機会を持つ場としての学会活動
10月に開催された「第10回・日本カイロプラクティック徒手医学会」に参加された数人の方々からメールや電話で感想や意見が寄せられた。
その中に、うれしい感想文があった。

徒手医学会のような学術的な集いは、私たちが普段参加しているテクニック・セミナーと比べると、明日すぐに使えるものが得られるということが少ないのかもしれません。ですが、あるひとつのテーマに沿って、徒手医学やそれ以外の分野の方々の様々な角度からの講義を聴講する機会はなかなか得られるものではありません。それぞれの講義や研究発表や刺激がヒントとなり、これからの自分の臨床を構築していく上でも、大変有意義な場であると感じました。私も徒手医学会で学んだことを自分なりに反芻して、よりよい治療につなげていこうと思いました。


こうしたスタンスで徒手医学会に参加してもらえるとうれしい。
明日からすぐに使えるテクニック・セミナーとは異なり、あるテーマに対して検証あるいは反証する発表は、考える機会を与えられる場なのだろうと思う。

私もワークショップを担当し、ケアの本質というメーンテーマに添って「痛みのケアを考える」という口演を行った。

要約すると、以下のような内容です。
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by m_chiro | 2008-11-05 00:14 | 雑記 | Trackback(1) | Comments(2)



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