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圧迫骨折痕も椎間板の磨耗も関係ない、多くの痛みは情報系のトラブルだろう。
昨日、2回目の治療を行った70代男性は、一昨日に初診で来院した方である。

3月に左殿部から大腿後面外側の下肢痛を発症、整形外科医院を受診した。
「X-rayで椎間板が無くなっている。圧迫骨折?の痕跡があり神経も圧迫されている」と言われ、硬膜外ブロック注射を1回行った。

大分楽になったので様子を見ていたら再悪化、再び受診すると「続けてこないからだ!」とえらく怒られたらしい。
それでまじめに通院したが、なかなか思うほどに回復しない。
通院では電気治療とマッサージも受け、朝晩2回の坐薬を使って3ヶ月になるそうだ。

腰を伸ばして歩けなくなり、前屈位で跛行する。
腹臥位は痛みが増すので無理、仰臥位も膝を軽度屈曲位にしないと辛いようだ。
膜系のストレス軸が右前腕部から肩へ、上腹部から左下肢へと流れている。
最初に、伸展・屈曲障害を頭蓋の圧変動をリリースするアプローチを行った。
更に、いつものように筋活動の始動の遅延をリセットする。
これは私の治療における「下ごしらえ」のようなものだ。
これだけでほとんどの圧変動や膜系のストレス軸が調整される。
この時点で残っているのは、右上肢の強い膜系のストレス軸である。

治療の最後に受容器がつくる情報網のトラブルをリリースするのだが、痛みが膀胱経と胆嚢経のルート上にあるので、その対角上のポイントを探す。
結果的に、対側の右前腕の心経と心包経のルート上にある反応点を選んで、対応する経絡上の痛み領域と同調させる。

すると、この患者さん「右の腕と何か関係あるんですか?」と聞く。
「あるみたいだね」と答えたら、
「右腕の方を治療してもらっていたら、今思い出した! 腰と腿が痛くなったのは、3月のとっても寒い日に、外で長時間、前かがみでコンクリートを塗る作業をしていたら、腕が辛くなって、寒くて寒くて、足腰も辛くて、もう勘弁してくれ!」と思ったらしい。
「その翌日から、痛みが腰から腿までいたくなったんだ!」。

思わぬところに負荷がかかって、この患者の受容器がつくる情報系にトラブルが生じたのだろう。

腹臥位にさせると、腰仙部が少し苦しい感じがする、が大丈夫のようだ。
仙腸関節と腰仙関節の可動を調整してから歩かせると、腰を伸ばして歩けるようになった。

その患者さんが2回目の治療に見えたのだが、ときどき少し苦しさがあるが歩行もしっかりしていた。
近所の人からも「どうしたんだ?」と言われるくらい歩行も姿勢も改善した。

こうした患者さんの反応をみるにつけ、骨がつぶれた痕があるだとか、椎間板がつぶれて神経を圧迫しているだとか、痛みにはなんら関係ない、と思う。
末梢の受容器がつくる情報網のルートに障碍が起こったのだろう。
その障碍ルートを解除するキーが見つかれば、意外に早く変化してくれる
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by m_chiro | 2008-06-29 19:58 | 症例 | Trackback | Comments(1)
生命としての原始感覚を取り戻そう
ぶらり本屋を覗いていて、ふと目についた本があった。
「原初生命体としての人間」(野口三千三著、岩波現代文庫・社会80)である。
今、私が特に関心を寄せている原始の生命に関するタイトルだったので、取り出して見た。
著者は野口体操の創始者・野口三千三先生である。野口体操も、野口先生のことも知らなかったわけではないが、特に関心を持って著作に学んだことはなかった。

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立ち読みして、とても興味深かったので、買い求めて読んだ。
時間を忘れて、むさぼるように一気に読んだ。
独特の言葉や表現に吸い寄せられるように読みすすむと、自分のからだを原初生命体と感じてしまうほどに、言葉に感覚が込められているようである。しかも身体に対する深い洞察がある。それも半端には理解できない深みである。でも、なぜか感覚的に腑に落ちてしまう。

そもそも「原初生命体」とは「コアセルベート」のことで、未分化な全体、流体的軟体、界面さえも明確でない生き物のことを言う。
先日、マメクジウオが脊椎動物の祖先、つまりヒトの祖先であることがゲノム解読で判明したという記事を読んだ。ヒト遺伝子の9割がナメクジウオにもあったそうだ。ヒトの祖先はホヤからナメクジウオと変わったことになるが、コアセルベートとはそれより前の段階の生命体ということになるだろう。
そんなわけで、ヒトの体は本来柔らかいのだそうだ。

こんな寓話が紹介されている。
台所を這っていたナメクジにギョッとして立ちすくみ、次にはどうしてコイツを処分してしまおうかと考える。すると、ナメクジは次のような言葉を投げかけるのである。

「お前たち人間どもは、俺たちを下等な動物と、さげすみ差別して、理由もなしに殺そうとするが、いったいお前たち人間は、自分の脳の形が、色が、動きが、どんなだか知っているのか。お前の筋肉や内臓の形や色や動きはどうなんだ。俺たちと同じじゃないか。あんまり威張るな、ざまあみろ」

人間は進化した脳である高次の脳を持っていることを誇っているが、その脳ですら、実は末梢からの情報なしには何も生まれない。つまり脳は末梢の奴隷とでもいうべきなのだろう。

情報についての次の記述も興味深い。

私は、情報が物質・エネルギーの属性としてあるのではなく、むしろ、物質もエネルギーも、そのまま情報ではないかと思っている。そして、情報というものが、自分の外側にあって、それが自分に働きかけてくるのではなく、自分がそれを情報と感ずる自分の内側の働きによって、はじめて情報になるのだと実感するのである。

どの頁にも珠玉の意味を感じ取ることが出来る。
他にも、呼吸法や基礎的な運動のあり方など、ヒトとしての感覚の保ち方、動きの実際、身体の観察の仕方などなど、丁寧すぎるくらい解説している。
次の言葉にも、深い意味がある。

意識の存在を忘れよ。そのとき意識は最高の働きをするであろう。
筋肉の存在を忘れよ。そのとき筋肉は最高の働きをするであろう。
脳細胞140億のすべてを休ませよ。そのとき脳は最高の働きをするであろう。
働きは意識の指令によって起こるのではなく、イメージによって生まれるものである。

人間はそもそも意識で思うように制御するようには出来ていないのだ。
だからこそ、原初の生き物としての感覚が大事なのだろう。人は進化した高次の脳に振り回されて、本来の自分をも見失っているのではないのだろうか。
原初の生命感覚を取り戻すことが、治療の極意なのかもしれない。
そんなことを感じた本だった。
一般読者のみならず、徒手療法家にもぜひ読んでほしい本である。
そして、いつも側に置きたい本でもある。
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by m_chiro | 2008-06-21 16:00 | Books | Trackback | Comments(4)
ただ今、手作りホームページを製作中
ただ今、手作りホームページを製作中で、カイロに関するものはこの本から知ることが出来るようにしたい思っています。関心のある人は、目次から、内容を読めるように作ろうと思います。

「re-bone-等身大のカイロプラクティック―」
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1991年に発刊した「re-bone―等身大のカイロプラクティック―」は、私の編著によるMOOK版・変形A4サイズの本です。
2万部を発行して、現在は廃刊となっています。アメリカ取材もあり、著名人との対談もあり、養老孟司先生やイラストレータの真鍋博さんら寄稿もあり、17年前に私が思い入れたカイロプラクティックのありのままを、アメリカ取材などを通してまとめた本です。

この本は、一般読者向けにカイロプラクティックの等身大の実態を紹介しようと思いながら創りました。
「それ以上でも、それ以下でもない。等身大のカイロプラクティック」
この言葉を、企画の段階で編集上での基本コンセプトにしました。

少なくとも10年後でも色あせない本を目指したのですが、私の中のカイロプラクティックは大きく変化しました。でもカイロプラクティックの紹介本としては、まだ十分に用を足せるものと思っています。

もうひとつ心がけたことは、カイロプラクティックの哲学でもある「イネイト:INNATE」を、全編を通じて底辺に流したことです。
「人体はそもそも、自ら回復しようとする能力を持ち合わせている:INNATE」
これもカイロプラクティックの重要な基本的概念なのです。

既に廃刊した本ですが、私が版権や著作権を所有しておりますので、カイロプラクティックの紹介のために内容の一部をホームページ上で再現しようと考えました。
私が心血を注いだ作品でもあり、カイロプラクティックを知りたいと思われる方の参考になれば幸いです。
写真は、すべて友人の山岳写真家・佐藤要さんが撮影したものです。

「re-bone-等身大のカイロプラクティック―」の目次

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by m_chiro | 2008-06-20 16:18 | 雑記 | Trackback | Comments(6)
迷走する診断名の影で苦悩する患者さん
3月初めに左腰部を傷めた60代の男性。
きっかけは、リクライニングの椅子で寝返りをした時に、腰に起こったピリッとした痛みだった。軽い腰痛になったとは言え、別に動けないわけでもなく、その後にスキーに出かけた。
すると左腰殿部へと痛みが強く広がり、整形外科医を受診した。
X-rayで「左股関節炎」と診断される。
腰部の牽引と低周波治療を受けて、鎮痛剤を処方される。
それにしても、股関節炎で腰部の牽引は理解できないが、治療を受けても悪化する一方で、下肢痛が外果のところまで起こるようになった。
下腿は全体的に痺れているので、総合病院の整形外科に転医した。

MRIを撮ると、診断名は「脊柱管狭窄症」に変わった。
追検査をするので入院が必要とされ、5月半ばから3週間の予定で入院した。
造影剤を入れての検査などで、最初の一週間は検査に明け暮れる。
結果、今度は「L4-5間の椎間板ヘルニア」と診断名が変わった。

予定の3週間の入院中2回の神経根ブロックを受けて、後はただひたすら安静を心がけて寝ているだけ。随分楽になった。
担当医からは、これで良くならなければ手術と言われて、6月3日に退院することになった。 

今でも殿部の軽い痛みと下肢痛、下腿の痺れがある。
最近は、朝起きて顔を洗う動作をすると痛みが強く出るようになったが、それも次第に落ち着いてくる。温泉に入ると楽になるので、もっぱら温泉療法を行っていると言う。

深部反射は正常。運動分析では、中殿筋に負荷がかかる動作で殿部痛と下肢痛が強まる。
下腿の痺れは常にある。
触診すると、左下腿は相対的に冷たい感じがある。
一見するに左短下肢で、左股関節は可動性の固着が見られる。おそらく筋性の防御が働いているのだろう。そんなわけで、最初に股関節炎と診断されたのかもしれない。
下肢痛の発症部位は膀胱経に符合している。
治療の最後に、肺経で最も反応するポイントを2ポイント選んで押圧しながら膝の屈伸運動を行わせた。
すると、痛みが膝窩に限局された。肺経のポイントを変更して再び運動を行わせると、今度はリリースされた。歩行も問題ない。

固着した股関節の可動を修正したので、筋性防御もリリースされ短下肢もみられない。
治療のターゲットを脳と身体を結ぶ情報系のネツトワークに向け、筋・筋膜問題を解決できれば自ずと良い結果になるだろう。
この病態は筋・筋膜性の疼痛に違いないだろうが、診断名は「股関節炎」から「脊柱管狭窄症」、そして「L4-5間の椎間板ヘルニア」へと迷走した。

診断名など、どうでもいい話ではあるが、病名に怯えて心理的にも、行動にも、生活の質も悪影響をもたらすとしたら、どうでもいいでは済まされない。
この患者さんも、病名に怯えていた。
その認識を変えてあげるのも治療のひとつではあるのだが、その分時間も労力もかかる。
ましてや、医師が画像を見せて断定的な物言いで説明したのである。
私のような一介の治療家の言葉に耳を傾けさせるのも一苦労なのである。
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by m_chiro | 2008-06-10 00:43 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(5)
ストレス対応を学ぶ
先週は札幌へ。
「BASE研究会」に行きました。
札幌駅前ではソーラン踊りのリハーサルでもあったのでしょうか、大勢の人垣が出来てパフォーマンスに釘付けでした。
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写真はそのワンカットです。
それにしても、札幌は寒かった。でも演舞は、その寒さを吹き飛ばすような熱気でした。
その余波を受けて、BASE研究会でも熱が入りました。

ヒトは地球の1Gという重力場で生活している。
この1Gの重力場で正常な行動ができないほどに抑制系が作動してしまうと、我々は身体的な不調に悩まされてしまう。
なぜ、抑制系が作動しているのか。その機序を考え、抑制系をリセットする手法を研究するのがBASE研究会の目的でもある。

生き延びるための必要な条件を整えるには、入力系と出力系がコントロールされていなければならない。この起源は、なめくじ魚の逃避反射でしょう。
入力系は情報系で出力系は筋活動であり、運動系の基本はすべて反射で成り立っている。それを運動野が統合しているわけだが、あくまでもこうした運動の主体は脳幹にある。
こうした入力系と出力系の不調和は、大きなストレスにもなる。

と言うわけで、今回はストレス対応について検証する機会になった。
高次の脳が認識している個々のエピソードが、身体の抑制系にどう関わっているか。
あるいは、古い脳が発動する不安情動系が、身体の抑制系にどのように影響しているか。
こうしたテーマに学びながら、議論し、リセット法を検証した。
北海道ならではの夕べの食と酒も楽しめたし、有意義な札幌での2日感でした。
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by m_chiro | 2008-06-08 22:59 | BASE論考 | Trackback | Comments(2)



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