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これだから痛みは不思議だ
腰臀部痛の50歳主婦。
一週間ほど前から思い当たる誘引もなく、次第に腰痛に悩まされるようになる。
左腰仙部と右臀部に痛みを訴える。
腰部の側滑運動で圧縮が起こる側が痛む部位である。
屈曲、伸展運動でも、歩行時も痛む。
明後日には、娘さんの大学卒業と就職準備と引越しのため、京都から東京へと回らなければならない。行けるだろうか、と心配している。

右臀部と左腰仙部に強い圧痛があり、特に腰仙部位の機能を調整し、圧痛点をリリースする。治療後は歩行も問題なく、僅かに違和感を残すほどになった。

その主婦が10日後の今日、2度目の治療にみえた。
歩行でもかばうように歩き、左の腰臀部痛がある。
寝ると、腰臀部が布団に触れるので痛いそうだ。

娘さんの卒業式はどうしたのかと聞いたら、
「心配だったけど大丈夫だった」と答えた。
就職先の東京では、引越しの手伝いをして、東京見物を楽しんできたらしい。
六本木ヒルズ、築地、池袋サンシャイン、上野公園など、ずいぶん動き回ったが腰は痛くなかった、と思い出話をしてくれた。

ところが帰宅した翌日から、再び腰の痛みがはじまった。
痛みは、左腰臀部に集中している。歩行でもかばう。最初の状態とほぼ同じである。
患者さんは、歩きすぎたせいだろうと思っている。

「そんなに動き回って問題なかったのに、家に帰ったらまた痛くなったなんて、何か心理的に緊張するような悩み事でもあるんじゃないの?」。
「ストレスで腰が痛むんですか?」ということになり、ストレスと痛みの関係を説明する。

最近、同居の母親がボケはじめて悩まされているらしい。
そんな気苦労から解放されて、卒業式の喜びや新生活の準備を手伝いながらの観光は、とても良い気分転換になったのだろう。
これだから痛みは不思議である。
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by m_chiro | 2008-03-28 00:32 | 症例 | Trackback | Comments(0)
勉強の旅② 前田胎生学・頭法
23日早朝、羽田空港から伊丹空港に向かう。
朝日が差し始めた頃、搭乗ゲートに。
朝日の指し初めを見るのも久し振りのような気がします。
すがすがしい気分で機上の人になりました。

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23日、24日の両日は、大阪で前田正喜先生の「胎生学・頭法」を学んできました。
前田先生の独自の概念に基づいた興味深い内容でした。
身体的介入を最小限にした治療で、大きな身体的変化がもたらされる方法です。
前田先生は、多くの学びの中から努力して独自の領域を拓かれたものと思います。

治療家は、いつも「理想的な身体像」を想定して治療にあたっているのでしょう。
その時の身体的基準とは何だろう、そう自問するとハタと困ってします。
関節可動域や筋の状態、などなど思いつくものは個々の運動分析や機能に行き着きます。
前田先生は、発生学を学んで「胎児」の状態や動きに、ヒトの原初的な基準を見出したようです。
その基準に基づいて、治療方法を開発してきたのでしょう。
面白い発見や、目から鱗を感じました。

私も頭蓋療法(クレニアル)を使いますが、私の知るクレニアルと前田先生の「頭法」は似て非なるものでした。
短時間で、微小の介入で、頭蓋や身体をたちまちに変化させるのです。
独自の概念や哲学を披瀝しながら、治療の有り様を見せていただきました。
24日は、オフィスで特別にレクチャーと指導を受けて、学ばせていただきました。

前田先生のような俊英の登場は、徒手医学界の将来を明るくするもので、
今後の益々の活躍に期待したいと思います。
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by m_chiro | 2008-03-26 23:17 | 雑記 | Trackback | Comments(1)
勉強の旅① ポジショナル・リリース・セラピー
3月20日~22日までの3日間、日日本赤十字社で「PRT(ポジショナル・リリース・セラピー)のセミナー」が開催された。
ちょこっと勉強して、有意義な時間を過ごしてきました。

PRTとはカウンター・ストレインを発展させた技法である。カウンター・ストレインのルーツは古代にまで遡るが、近代ではオステオパスが受け継いできた技術であり、今では多くの徒手領域で使われている。

講師はKerry J.D’Ambrogio氏。その著書、「ポジショナル・リリース・セラピーー筋骨格系機能障害の評価と治療―」が櫻井京DCの翻訳で科学新聞社から出版されている。
手元に置きたいお勧めの一冊である。
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セミナーを通してKerry J.D’Ambrogioは、テンダー・ポイント(トリガーポイントや圧痛点、経穴などの総称)の活性しているポイントを見つけて対応する技法を教えてくれた。頭から足の先に至るまで全身くまなく存在するテンダー・ポイントのリリース法である。

そのセミナー・テキストの中から、興味深い文節を紹介しよう。

筋骨格系の痛みと機能障害の大部分は神経や関節の組織からよりも、筋膜から起こっているという前提を指示している。

Rosomoffらは、90%以上の腰痛は筋膜から起こっている可能性があると結論づけた。
彼らは腰痛の最も普及した理論である椎間板変性や椎間板突出の場合に起こる神経圧迫については、沈黙する神経になるはずであるとして論争した。

腰痛は神経圧迫とは無関係で手術の対象外と考えるべきである。

神経圧迫は感覚低下と運動機能低下を引き起こすが痛みは伴わない。

これは腕を椅子の背に置いて、どのように腕がしびれるかという簡単な実験で証明することができる。この間にしびれ感と運動のコントロール消失があるが、痛みはない、圧力から解放されたとき、運動機能が徐々に回復すると共に初めて痛みが感じられるのである。

多くの外傷に伴う突然のストレインは筋伸張反射アークが関わっている。これらは筋骨格系の外傷に常に伴う筋膜トリガー・ポイントの形成、防御的筋スパズム、可動域減少、筋力低下に関係している可能性がある。

筋肉は身体の神経活動の最も大きな受容体である。

などと、主題をMPSに置いている。PRTは筋の走行とその収縮する肢位を作る事ができれば、簡便に応用できる手法である。

セミナーを終えてホテルに向かうと、桜が満開を迎えようとしていた。
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by m_chiro | 2008-03-25 23:45 | 雑記 | Trackback(1) | Comments(0)
サッカー少年の腰殿部痛(MPS)から観えたこと
4日前に、隣県の中学校からサッカー部の選手が腰殿部痛で来院した。
10日ほど前に、筋トレで腹筋運動の最中に右腰部にグッグッとした痛みが起こったのだそうだ。内科の医師から鍼治療と電気治療、注射を3回にわたって受ける。
快方に向かったので練習を再開したら、またぶり返したらしい。
一週間後には関東での強化試合に向けて遠征が組まれているらしく、焦っていた。
昨年5月には左腰部痛で整形外科のお世話になったようだ。X-Rayで問題がなく、身体が硬いからと言われて、運動メニューをもらっている。

特に、腰部の左側滑、右後方伸展(ケンプス・テスト)、前屈運動、で右腰殿部痛が増強される。左腸腰筋群の始動が遅延する。横隔膜にも過緊張があり、下腿は外転・外旋している。右下肢(立ち足)にしっかり体重を乗せて蹴る(静的キック)を多用するためと思われる。左足でのキックはとても精度が高い、と自信があるように言う。逆に言えば、右足でのキックでは精度が低いのだろう。

膜系のストレス軸は、左上肢から左肩へ、そこから右腰殿部、右下肢へと流れている。左足でのキック時における身体の傾斜を、右前腕部に力を入れてカバーしているせいだろう。
右中殿筋と腰方形筋に顕著な圧痛、TPがある。

筋活動の遅延をリセットし、TPと右前腕の反応点と同調させて治療した。
治療後は、ほぼ全域での可動が可能になったが、ケンプス・テストでの違和感がL5右外側に残る。

その2日後、2度目の治療にみえた。
痛みがなくなり、ランニングを始めていると言う。
腰部の可動も全域で問題ない。

サッカー選手のインサイドパスについては、問題が指摘されている。
彼のインサイドキックは左蹴り足にウエイトが置かれている。その上、身体の中心軸で体幹を後方にそらすようにして軸足をつくり、蹴り足だけを前に出すようなキック(静的安定キック)を行うために、どうしても腰は右にスライドして力点が出来る。そのため腰部にTPを作りやすいのだろう。
下の写真は「静的安定インナーキック」の例である(「スポーツ選手なら知っておきたいからだのこと」小田伸午著より)。

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この方法で左足キックを行うと、右の軸足に過剰な負荷が加わることがわかる。その上、アンバランスになり、スピードも落ちるだろう。

インサイドキックの方法を、動的安定キックに変えるべきだと思う。
それは蹴り足が軸足で、立ち脚は膝を抜いて反地力を利用し、蹴り足の骨盤を前に出していく方法である。次に写真が、その「動的安定キック」の例である(同上著より)。

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この方法は「動的安定インナーキック」で、左の写真がキックに入る前で、右の写真がキックの後になる。動きに静止がなく、蹴り足(この場合は右)が軸足になっている。体軸の捻じれもなく、蹴り足の骨盤を前に出している。左の立ち脚では、膝が弛んで反地力を利用している。

股関節の外旋/内旋エクササイズも指導した。
遠征前に、もう一度コンデショニングのための治療することになった。
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by m_chiro | 2008-03-17 12:26 | 症例 | Trackback | Comments(0)
脳の情報処理プログラムを書き換えるには
人は何のために生きるのかと問われれば、私は「成長するため」と答えます。
生きることと成長はイコールだと思うからです。
これは人に限らず植物も同様です。ただ成長するために生きています。
アスファルトの小さな隙間からでさえ、草は成長してきます。生き物は開放系(オープン・システム)に依存しています。

成長するためには二つのことが欠かせません。
ひとつは、「食物、空気、水」を体外から体内に取り込み、生化学的に処理して私たちのからだを再構築する「物質・エネルギー」の出入りです。

もうひとつ、重要なものが「情報」の流れです。
情報はヒトの五感を通して脳に入ります。五感というのは、眼、耳、鼻、舌、身体のことで、これらの情報は、脳で価値判断され、意味づけされて出力します。
出力は、すべて筋肉に作用します。
こうした出力作用に依存して、ヒトの脳は「学習」を行っています。これは生命活動の基本的なシステムです。
もしも身体の半分がやけどを負ったら死んでしまいます。それは皮膚からの情報が遮断されるために、身体機能を維持できなくなるからです。

では、脳は何のために「学習」をするのでしょうか? それは物事に遭遇したときに、どう対処するかについて、その「方法や答え(アルゴニズム)」を獲得するためです。つまり情報処理プログラムを創ることです。
多くの「答え:アルゴリズム」が作られて、解答集が厚くなれば厚いほど、いろいろな場面に遭遇しても対応がスムーズになります。この解答集も固定されたものではなく、その都度、より良い解答に書き換えられて記録されていきます。

例えば、自転車に乗りたいと思った子供の頃を思い出してみましょう。
自転車に乗りたい、というのは目的意識です。そのために何度も転びながら、足を擦りむきながらも練習します。つまり学習です。
筋肉の動きに出力されてバランス感覚が学習され、自転車の乗る方法を獲得するわけです。これはスポーツのトレーニングも同じです。一旦、獲得された情報は消えることはありません。脳のメモリーに刷り込まれるからです。

こうして、ヒトは自ら生きるための方法や物事に対処するための方法を獲得するわけです。一人ひとりがそれぞれの方法で獲得して行きます。そして、この方法を獲得するための方法は古い脳が担当しているのです。更に言えば、遺伝的に決められた戦略はもっと古い脳で行っているのでしょう。

脳に新しく入力された情報は、すでに獲得した神経回路を活性化するための、いわばトリガー(引き金)として使われ、これによって脳は出力を行う。そして出力を行うことで学習効果が生じ、アルゴリズムが書き変わるのである。すなわち、脳は学習によって「表引きテーブル」にあらかじめ答えを用意しており、入力された情報によって、その用意された答えの中から入力情報との関連度の高いものを選択し出力する。そして出力することで新たな学習効果を生じ、そのとき用いた答えを、必要とあれば修正するのである。(松本元著「愛は脳を活性化する」より)


ここに神経の可塑性に対する治療戦略のヒントがあると考えました。
新たな入力情報と出力依存性の学習効果による脳のアルゴリズムの書き換えである。
徐放処理のプログラムを換えていくことになる。
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by m_chiro | 2008-03-14 00:35 | BASE論考 | Trackback | Comments(2)
ある高校野球選手のヘルニア、実はMPS
野球留学で他県の高校に行った選手が、昨年8月頃から腰痛に悩まされる。
とうとう一ヶ月前頃から左下肢痛と痺れが出て、MRIでの画像診断を受けた。
結果はL4-5間に巨大なヘルニアが、L5-S1間には中程度のヘルニアがあると指摘された。
現在、高校2年生で主力組みだが、春の遠征から外される。
帰省して治療に専念するように指示され、高校から指定された郷里の整形外科医の元で治療することになった。その整形外科医は手術ではなく保存療法を勧め、投薬、牽引と電気治療を毎日行う計画を立てたようである。

昨日、その彼が親と一緒に当院にやってきた。
右腰部から殿部、左下肢後面の痛みと痺れを訴えている。腰も足も、かばうように動いている。

深部反射は正常で、小殿筋に顕著な圧痛がある。
バビンスキーも膝クローヌスも正常である。
腰部の側滑可動と前屈・後屈運動で、痛みが誘発される。仙骨尖が前方での可動固着があり、腰部の固有筋のトーンが低下している(こうした患者の多くは、坐骨で座るのではなく、仙骨尖を支点にしてもたれて座る体癖傾向があるようだ)。胸腰移行部では、下部肋骨に回旋性の固着がある。

神経学的な徴候が診られないこのような患者を、画像診断だけで下肢痛や痺れの原因とする根拠は、見当たらないのである。どう考えてもMPS(筋・筋膜性疼痛症候群)である。

椎間板ヘルニアと痛みの因果関係が認められないこと、MPSによる痛みと痺れであることを、彼に告げて治療を行った。筋活動における始動の遅延をリセットし、圧痛点をリリースした。

今日、彼は2回目の治療にきた。
痺れもほとんど感じなくなり、歩行や動きも「大分楽になった」と言う。確かに昨日のようなかばった動きがなくなっている。
腰部の側滑可動と前屈の動きで、左腰仙部に多少の痛みが残る。
伸展の動きはスムーズにできるようになった。
深部に残る小殿筋のTPをリリースしながら、腰仙関節と骨盤底を調整する。

このように症状が劇的に変化したことは、ヘルニアによる痛みではなく、MPSである何よりの根拠ともなろう。でも、なぜMPSが発症したのか、それが問題として残る。
筋の微小な損傷であれ、過度の筋負荷であれ、彼は野球選手としての日常的な運動を難なくこなしてきたはずである。
私には、筋活動が初動での立ち上がりに遅延することが、大きな要因になっているように思えてならない。
筋の立ち上がりの遅延は、代償として他の筋群に過剰な負荷をかけることになる。
そんな動きの重積が、脳と身体を結ぶ神経システムに情報の変調をもたらすのではないのだろうか。
痛みの部位にダイレクトに対応しなくても、圧痛点やTPをリリースすることができる。このことはTPが情報系の問題として発生することを、強く示唆するものと思える。

彼には、特に左腸腰筋の不安定感がある。これでは投球フォームで左下肢を踏み出したときに膝が割れる。つまり、からだが開く。ボールのリリース・ポイントがまる見えになる。バッターにとっては打ちやすい投手、ということになる。肩甲骨間の支点もぶれている。したがって、ボールのリリースにも無駄が出る。
彼には、痛み治療を早めに切り上げて、投手としての身体機能をつくる方法に取り組んであげたい。
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by m_chiro | 2008-03-11 23:07 | 症例 | Trackback | Comments(2)
変形性の膝の痛み、と言うけれど
80歳になろうかというお婆さん、昨年の11月末頃から右膝が痛み出した。
それまでは家庭菜園をやっていたという元気な人である。
整形外科を受診したら、レントゲンを撮り、骨粗鬆症で骨が減っているからと診断される。
痛み止めの注射と薬、湿布薬を処方される。
それでも悪化する一方で、とうとう膝の痛みで自転車にも乗れなくなった、と寂しそうに言う。3ヶ月も痛みを抱え込んできた。娘さんの運転で、遠方から来院した。

右膝は軽度の屈曲位で固着している。完全伸展も出来ず、90度までの屈曲もできない。歩行も膝を軽く曲げた状態で出来るだけ動かさないようにして歩く。
痛みは膝の外側裏側に起こり、腓骨頭まで続く。大腿二頭筋長頭筋腱部位と外側広筋部位である。圧痛点が数箇所ある。外側広筋には索状の硬結がある。脈診では肺と心の脈に変調があるようだ。

右膝関節にカウンター・ストレインを使って可動させる。索状の硬結には、ダイレクトにオーソパシック・ストレッチを行う。強い索状の硬結には、直接アプローチした方が早いように思う。再び動かすと、可動域が広がり腓骨頭周辺に圧痛が限局された。左前腕の肺経メリディアン・ラインから反応するポイントを探して圧迫しながら、膝の屈曲/伸展運動をやらせると、痛みは消失し可動域も130度位まで広がった。

歩行させて動態認知リセットを行う。しっかりリセットされるまで反復し、歩行運動を改善する。行進するような動きも可能になった。自転車にも乗れそうだ、とヒョイヒョイと歩いてみせる。
座れるようになるまでには、もう少し治療が必要だろう。

骨粗鬆症で変形があるから痛いのだと言われるが、形態よりも機能である。
痛みは電気的なエネルギー系、情報系の問題である。
お婆さんの変形した膝の痛みも、結構、回復するものです。
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by m_chiro | 2008-03-07 21:43 | 症例 | Trackback | Comments(4)
吉野弘・詩「奈々子に」の一節
郷里の詩人・吉野 弘さんが娘さんに宛てた・「奈々子に」の詩の一節、
前文を割愛して贈ります


唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。

お父さんが
お前にあげたものは
健康と
自分を愛する心だ。

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。

自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。

自分があるとき
他人があり
世界がある。

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた。
苦労は
今は
お前にあげられない。

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむずかしく
はぐくむにむずかしい
自分を愛する心だ。
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by m_chiro | 2008-03-06 23:29 | 雑記 | Trackback | Comments(2)
警告系では脳幹に注目したい
生体は内外の環境の変化や異常に対応して、生存してきた。
そのためには環境の異常に対して適切な反応を起こし、行動をとらなければならない。
この時々の異常や変化によってもたらされた情報を、脳は警告として受け取る。
そして、脳は変化に適切に対処するために指令を出す。
このシステムが生命保持に役立っている。

ところが、異常シグナルは身体的症状を伴って、不快や不安、恐怖などの情動反応に転換される。
すると脳は危機から回避するように指令を出す。
こうして生体の恒常性(ホメオスターシス)が維持されている。

脳の警告系は、生体維持における重要なシステムと言える。
この警告系の重要性は、医科学における共通の認識である。
それにしても警告系は、あまりにも複雑である。
その複雑さ故に、いまだ未解決ともされているのだ。

生体の警告系については、1985年と87年に「脳の生体警告系シンポジウム」が開催されている。
それによると、生体の警告系における今日的研究課題は、次の6項目に集約されている。

1.異常環境を感知する種々の生体センサー
2.生体センサーに作用する内在物質
3.警告信号の神経性および体液性の伝達機構
4.警告信号の脳における受容部位
5.脳での信号処理機構
6.脳による神経性および体液性調節系を介する回避機構

警告系の研究課題を展望すると、その中心的テーマは痛みである。
つまり警告系の神経路と制御メカニズム、そこにかかわる基礎的な内因性物質が研究対象である。
警告系のメカニズムでは、脳における受容部位とその信号処理機構に関する研究である。その受容部位についてはここに興味深い論文がある。
第一回・「脳の生体警告系シンポジウム(1985年10月)」で発表された山田仁三教授の論題「痛みの上行路」である。「まとめ」のところに、次の一文がある。

ヒトの触覚、視覚および聴覚などは、大脳皮質にそれぞれ一次中枢を持っているが、痛覚にはそれがない。したがって、痛みは触覚、視覚および聴覚のような純粋な知覚系に属するものではなく、種々の知覚現象を痛いと解釈することから始まるようにみえる。換言すれば、種々の情報を種々の領域で受ける大脳皮質が、いま個体に“のっぴきならない状態が生じている”と解釈することにある。このように考えると種々の条件で、すなわち年齢、性、民族、文明、知能、精神状態および薬物などによって、種々に修飾されている現実をよく理解できる。

この論文の中で、山田教授は脳幹領域に注目している。
脳幹領域には上行路が終止し、そこから間脳を経て対応するそれぞれの大脳皮質に投射される。こうした活動の変化は局在的なものではなく、比較解剖学的な脳の新旧にかかわらずに広範囲に及んでいることも指摘している。
また、脳幹領域では脊髄に向けて下行線維を出し、一種の「脳幹関門」を作っている、としている。脳幹関門には、上行性および下行性線維を出す網様体内に存在する多数の「閉鎖回路」が関与している。
ここで注目したいことは「閉鎖回路」と「脳幹関門」に関する言及である。
反射的に行われる純粋の警告系の信号の授受は古い脳で行われ、大脳皮質では学習を踏まえて痛みとして修飾され解釈されるのではないだろうか。

閉鎖回路でやり取りされる情報が、誤情報に基づくようになると、神経系のプログラムの信号に異変が起こり、その信号情報が辺縁系の情動的修飾を得て皮質に投射される。身体マップには誤情報のマップがつくられる。脳幹からの情報投射のフィルターが歪んでいないか、そこに注目して行きたいと思う。
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by m_chiro | 2008-03-06 00:00 | 「神経学」覚書 | Trackback | Comments(0)
内臓刺激からくる関連痛
あることから、ふと昨年6月に診た70代の老婦人のことを思い出した。

この婦人は、2年ほど前から腰から右股関節、大腿部にかけて痛みだす。
長く歩くことが出来ない。500メートルが限界だと言う。
無理をすると辛くなるので、大事を心がけている。
整形外科に通院中で「軽い椎間板ヘルニアからくる痛み」と言われている。
痛み出すと注射と坐薬で凌ぎ、夜間に痛むと病院の夜間診療に駆け込む。


初診で、MPS(筋・筋膜性疼痛症候群)と判断した。腸腰筋や大腿四頭筋に圧痛が随所にあった。特に右の腹部には冷感が強かった。
圧痛をリリースすると、ずいぶん軽るくなった、と喜ばれる。
その日は食欲も出て、よく眠れたようだ。

そんな経過を数回繰り返したある日の夜に、この老婦人から電話があった。
午後から町内会の集会で正座していて、夕方から台所に立っていたら右の大腿部が痛み出し、安定剤と痛み止めを服用したが治まらない。夜分だが診てもらえないだろうか、ということだった。

いつものように圧痛をリリースしたが、痛みに変化はなく歩行がつらい。
見逃したTPがないかと再び触診していたら、なんと鼠径部の内側下方にふくらみを触れる。
腸ヘルニアかもしれない。
そのまま紹介状を持たせて夜間診療に向かわせた。

案の定、ヘルニアだった。しかも、とても見つけにくい場所に出ていたらしい。
結局、この婦人は手術した。その後の経過は良好で、あれほど悩まされた股関節と大腿部の痛みから解放されたようである。
整形外科医は椎間板ヘルニアと診断し、私はてっきりMPSと思った。
が、実際は腸ヘルニアからくる関連痛だった。いよいよ限界になったのだろう。
あれ以来、快適に過ごしている、という知らせが何よりの救いである。

内臓からの侵害情報は、内臓と遠く離れた体表面に過敏な感覚や痛みを起こすことがあるとされている。こうした関連痛は、傷害された内蔵を支配する病変臓器と同じ脊髄分節の皮膚に起こるとされているようだ。痛みには情動反応と同時に、逃避反射として交感神経による緊急反応がつきまとう。当然、圧痛点やTPもできるのだろう。
なぜ、圧痛やTPができるのか、そんな思いがいつもその裏側に向く。
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by m_chiro | 2008-03-04 23:41 | 症例 | Trackback | Comments(0)



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