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頭が痛い、目の奥が痛い女性
後頭部から目の奥の方まで痛み、呼吸もしにくく動悸がする、と訴える42歳の女性が来院した。慢性的な肩こりがある。
数年前から度々こうした痛みに襲われ、鎮痛剤と安定剤を処方されている。


医療関係者で、頚部のレントゲン写真を持参する。
見ると、上部頚椎は前方に落ち込み、ミリタリーネックを通り越してS状に後湾している。
カーブの移行部(C3-4)では、可動性の亢進がみられる。
後頭下筋と右の頭板状筋および頚板状筋に、顕著な圧痛が数箇所ある。
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頭部を最大伸展位にすると、筋力は顕著に抑制される。
等尺性運動を応用して後頭下部を調整してから、TPをリリースした。

徒手療法でTPをリリースする方法は、TPを冷却してストレッチしたり、押圧する方法が一般的である。だが、私はこの方法を必ずしも用いない。再現性が高いように思えるからである。したがって、TPの種類や状態または部位によっても、いくつかの方法を使い分けている。多くの場合は情報系の操作で、同調作用を用いてリリースする方法を使っている。

例えば、筋膜系あるいは経絡のメリディアン・ライン上に出来たTPであれば、そのラインの起点あるいは終点とTPを同調させてリリースする(このケースでの一例を紹介すると、板状筋上にあるTPと眼窩内縁を同調させた)。強い圧は必要ではない。TPへの接触は、あくまでもモニターである。
TPがリリースされるのを感じたら終わるが、TPのあった筋の収縮と伸張運動を行わせて再び反応と圧痛をみる。

症状は消えたので、このまま安定してくれるだろうが、問題は上部頚椎が前方に落ち込んで固着していることである。
おそらく習慣性の問題があるのでしょう。
よく頬杖つく癖や、パソコンを使うときにデイプレイを見つめる仕草で、6時から4時方向に顎が出る姿勢が、後頭下筋を緊張させるようだ。
そんな習慣姿位で頚部痛や頭痛を誘発させている人がよくいる。
聞いてみると、頬杖癖がある。
今、資格試験に向けて勉強中でいつも頬杖ついて頑張っているらしい。
と言うわけで、習慣性姿位を注意させ、後頭下筋を緩めて頚椎カーブを修正するエクササイズを指導した。
このような可動性の亢進した関節を持つ患者には、マッサージなどの過剰な筋刺激を送ることは止めさせている。

筋肉の反応をみると様々な情報を教えてくれる。
筋活動をみることは、徒手療法家にとって必須の手法だとつくづく思う。
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by m_chiro | 2008-01-31 19:22 | 症例 | Trackback | Comments(6)
「痛み学]NOTE⑩ ポリモーダル受容器の活動は変幻自在、神出鬼没する
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

⑩ ポリモーダル受容器の活動は変幻自在、神出鬼没する 

さて、もう一つの侵害受容器であるポリモーダル受容器は、その名が示す通り多様な様式(polymodal)を持っている。
そもそも感覚受容器とは、身体組織に対する物理的あるは化学的刺激を神経の電気信号に変換する器官である。
その上、機械的、化学的、熱刺激に対して特異的に反応する。つまり分化されている。
しかも、単なるセンサーとして機能しているわけでもない。
受容器が刺激に対して反応するか否かは、それぞれの「閾」によって比較されるのである。

ところが、ポリモーダル受容器は未分化で原始的な受容器である。
つまり、機械的、化学的、熱刺激のいずれにも反応する多様性を持っている。
分化の程度が低いのである。

更に、分布範囲も皮膚、内臓、筋・筋膜の運動器など全身に及んでいる。
また、炎症などの組織の変化による修飾作用を受けて、更に興奮性を増す受容器である。
痛みはポリモーダル受容器を抜きにしては語れないし、効果器としての役割も見逃せない。

その特徴を要約すると、
第一に3つの「wideness」を挙げることができる。
1.多様性(wide‐variety)、2.広作動域(wide dynamic range)、3.広域分布(wide distribution)の3つである。

第二に、反復刺激に対する再現性が極めて悪いことである。これは他の受容器との大きな違いのひとつでもある。
ポリモーダル受容器は、刺激に関する情報を忠実に伝えるということはしないのだ。
むしろ、刺激によって生じた組織の変化に強い修飾を受けて、その組織の現状を伝えるために働いているのかもしれない。
これは生体内の環境をリアルタイムで伝える重要な情報網そのものとも言えるわけで、特に注目すべき特徴だと思われる。

第三に、神経ペプチドを放出することである。
主に、サブスタンスP(P物質)、CGRP(カルシトニン遺伝子関連蛋白)などで、一つのニューロンに共存することが多いとされている。
中でも、サブスタンスPは後根神経節(DRG)細胞体で合成産出される。

受容器が侵害されて興奮すると、一方は脊髄へ、もう一方は皮膚受容器末端へ、と双方向に運ばれる。
その95%は末梢の受容器に下行性に運ばれ、5%が脊髄内に放出されて痛覚情報の伝達として上行性に働く。
中枢性には痛覚の伝達物質として、末梢性には効果器として、対極にある作用を双方向性にもたらしているのである。
この比率をみると、末梢側での「感覚器」のみならず、いかに「効果器」としての重要な作用を担っているかを窺い知ることができる
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by m_chiro | 2008-01-30 00:36 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
ふらつきがあって歩行もままならない
ふらつきがあって歩行もままならない(36歳女性)
昨日の朝は問題なく起床したが、その後しばらくしてふらつき始めた。
今朝からは、めまいがして正常歩行ができない(壁伝いに手で体を支えながら歩く)。
慢性的な肩こりと、頭重感がある(普段、肩こりには患者自身がマッサージをして対応している)。
4年前から年に一回は起き上がれなくなる。
耳鼻科、内科、神経科、整形外科にて診察を受けるが検査では問題が見つからない。
下を向く仕事のせいだろう(縫製の業務)、と指摘される。
一度発症すると、1~2ヶ月は休職しなければならない。
過去の治療では、投薬治療と鍼治療を受けてきた。


さて、この患者には以下の特徴的な所見がみられた。
眼球運動では、右上から左下への動きでブレが起こる。
頚の動きでは、開眼でも閉眼でも「めまい感」が起こる。
右の上部僧帽筋線維(鎖骨の上部ポイント)と右顎二腹筋(後腹の乳様突起下方のポイント)に強い圧痛点がある。
右胸鎖乳突筋のトーンが著しく低下している。
右側頭骨に律動が感じられない。
筋の収縮活動に遅延がみられる(それは顔を左に向けたときに顕著である)。
横隔膜や副腎の反射に調整的な反応がみられない。

初回の治療は3点に重点を置いた。
1.筋の収縮活動の遅延信号をリセットする。
2.僧帽筋の上部線維と顎二腹筋のトリガーポイントをリリースする。
3.クレニオパーシー(頭蓋療法)で、側頭骨の律動を回復させる。
翌日(2回目の治療)
頚の右回旋の動きでのみめまい感が起こる(左回旋は問題なし)。
2回目の治療後に症状はほぼ改善し、その翌日から職場復帰した。
5日目に3回目の治療で来院したときには、症状も眼球運動のブレも圧痛点も改善していた。
症状は改善したものの、筋収縮活動の遅延はまだ残っている。
私には、この筋収縮活動における遅延が気にかかるのである。

さて、この患者は、起立時あるいは歩行時におこるバランス障害、平衡障害、めまい感、ふらつきを訴えての来院である。発症した翌日に来院した.
このような「めまい感」は回転性のめまいと異なり、「ふらつき」として表現するのが適切なのだろう。

こうした問題は、起立性低血圧や椎骨脳底動脈系における血流の左右差や低下があるとされている。神経学的には、身体の動きに対して前庭系、視覚系、体性感覚系において脳幹レベルでの統合調整に問題が生じて「回転性めまい」や「ふらつき」が生じるとされる。
この患者は、顔を左に向けると筋収縮活動の遅延が起こる。これは脳幹レベルでの統合調整信号に問題があるためだろうと推論できる。

僧帽筋上部線維のトリガーポイント(TP)は、めまい感の症候に関連することがあるとされる。したがって、上僧帽筋線維のTPは、症状の引き金となったのかもしれない。そうなると、めまい感は頚反射の問題かもしれない。

大脳にプログラムされている平衡感覚が調整できなくても「めまい感」や「ふらつき感」が起こるだろうし、大脳辺縁系や自律神経系のかかわりからみれば自律神経失調や心因性の問題から発症することも稀なことではないのだろう。

この患者は治療にうまく反応してくれたものの、私にはその先にあったはずの問題に関心が向く。
なぜ圧痛点が突然活性したのか。
なぜ筋・筋膜の引張りが起こったのか。
なぜ筋収縮活動が遅延されるのか。
なぜ1ヶ月以上も休職するほどのめまい感に、毎年のように襲われるのだろうか。
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by m_chiro | 2008-01-25 17:34 | 症例 | Trackback | Comments(4)
歪みのニューモデル
どのようなメカニズムが身体に働いて、歪み現象が起こるのだろう。
長年、身体の構造機能を扱ってきた徒手療法にとって、「歪曲モデル」は争点の一つだった。徒手療法で支持されてきた古いタイプの歪曲モデルは、「圧縮モデル」あるいは「加重負荷モデル」とでも呼んでもいいだろうか。

このモデルで重要なのは、身体構造の圧縮力を支える支柱そのものがコンセプトの核心になってきたように思う。
簡単に言えば、構造の上位にある階層が下位の階層に伝えられ、最下層が全体の荷重を受けとめるというものだ。
次の図は、その基本的な加重モデルを示している。
三角形の頂点が圧縮性の支柱に上位からの力学的負荷が加重して伝えられて行く。
もうこの旧タイプの圧縮モデルは、筋骨格系のもろもろの症状や病態に対する説得力を失ってしまったようだ。
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現在注目されている歪曲ニューモデルは、「テンセグリティー」である。
このモデルは張力を支える「引っ張り材」と、圧力を支える「圧縮力」のバランスに注目している。
人体の機能は、靭帯、腱、筋膜、筋肉などは連続した引っ張り材として捉えられ、骨は引っ張り材の要素を兼ね備えた圧縮材からなるとみる。
下の図は、テンセグリテイー構造としてみたウサギのモデルである。
ここには、腱、筋膜、筋肉が一本の引っ張り材の単位として描かれている。
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このモデルを、人体の歪曲モデルにすると次の図になる。
引っ張り材としての筋・筋膜などの作用に注目したモデルである。
そうなると支柱は単なる圧縮材ではなく、脊柱そのものも引っ張り材として機能し対応していることになる。
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さて、引っ張り材の機能が過度になった組織に何が起こったか。
組織の硬結は、その重要な要因となるのだろう。
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by m_chiro | 2008-01-22 00:30 | 動態学 | Trackback | Comments(5)
この冬一番の寒気で
この冬一番の寒気で、気温もマイナス4度になった。
雪を踏みしめて歩くとキュッキュッと音がする。
まるで泣き砂のような音だ。
軒先には見事なツララが下がって、軒下を歩くのも憚られる。
ツララが落ちてきたら、「ツララ殺人事件」なんて起こったりして...。

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こんなのはまだ、「きれい」と見れないこともない。
旭川のマイナス34度というのは想像を絶するものだろう。
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by m_chiro | 2008-01-19 22:49 | 雑記 | Trackback | Comments(4)
「日本の知力」を読んで、無意識の底力を思った
読売新聞が1月3日から連載した「日本の知力」を興味深く読んだ。
4日の第二回目は「封印された驚異の才」と題して、サヴァンという特異な能力を持つ知的障害者のことが書かれていた。

並外れた計算能力(記憶?)を持つ33歳の愛知県の男性。
4歳でピアノをはじめ、演奏会前夜にCDで一度聴いただけの交響曲を弾くという6歳の男の子。
映画「レインマン」では、ダスティン・ホフマンが演じた驚異の記憶力を持つサヴァンが印象に残っている。この映画のモデルになった人は、9000冊の本を写真のように記憶しているサヴァンだ。
下記のサイトから、東京上空から俯瞰した大パノラマの絵を見てほしい。
スティーブン・ウィルトシャー(33歳)が、2005年にサインペンで描きあげた縦1メートル、横10メートルの東京シティである。
30分ほど眺めた東京都を、記憶を頼りに1週間で描いたものだそうだ。
正確な記憶に驚愕し、見事な筆致に感動することだろう。

http://www.stephenwiltshire.co.uk/Tokyo_Panorama_by_Stephen_Wiltshire.aspx

ヒトは誰でも、こうした能力を潜在的に持っているのだが普段は封じ込めているのだ、と脳科学のアラン・スナダー教授がコメントしている。
進化心理学のニコラス・ハンフリー教授は、進化の過程で人類はサヴァンのような能力を積極的に放棄した、と語っている。
自分の脳力をふりかえると、ホントかいな? と頚を傾げたくもなる。

養老孟司先生も語る。
サヴァンの脳は「異質な部位の連合ができないだけ」で特別なことではないとしながら、「我々は自分の脳のことを意識のもとですべて把握しているわけではない」のだと言う。

ヒトは意識を中心にして人工物を作り続けてきた。
それだからこそ、養老先生は文明や都市を「脳化社会」と位置づける。
そこでは「脳も体の一部に過ぎず、無意識が人間の行動を左右している、という重要な事実が忘れ去られてしまった」と、脳化社会を断じている。

確かに、古来から日本人は「無意識」を色々な場面で重要視してきたことは間違いない。
「心をどこにも置くな」は剣の極意。
力が抜けて脱力した状態は、一見無防備なようで実は隙がない。
そういえば、ブルース・リーも映画の中で、「考えるな! 感じるのだ!」と言っていた。
禅では「自我を捨てろ」と説く。
人間の知性を考えるときは、身体性を無視してはならないし、無意識も考慮しなければならない。知性には、総合的な視点が大切なようだ。
その全文を紹介しておこう。

日本の知力 第一部最前線で考える②
(平成20年1月4日・読売新聞の1面と2面)
「封印された驚異の才」
「野良犬がウイスキー飲んだ。ふらふらしてどうなる? 13億6747万3723.75。まむしは猛毒? 2億7349万4744…」。男性(33歳)がとりとめのない話を間断なくしながらボードを数字で埋めていく。彼が「大きい数」と呼ぶ9から11ケタの数と、大好きな「0.0625」との掛け算だ。
 愛知県内の授産施設で働くこの男性を30年近くみてきた神野秀雄・愛知教育大教授(障害心理学)は、人並みはずれたこの計算能力の正体を「記憶」と見る。3~9ケタと1ケタの掛け算も1~2秒で即答でき、「計算にしては反応時間が短すぎるから」だ。


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by m_chiro | 2008-01-18 22:45 | 雑記 | Trackback | Comments(2)
「痛み学」NOTE⑨ 痛みに特異的な受容器がみつかった
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

⑨痛みに特異的な受容器がみつかった

痛覚の入力部である受容器の存在について考えてみたい。

19世紀末から20世紀にかけて神経組織医学の研究が著しく進み、いろいろな感覚受容器が発見されている。それまでは痛みの概念も時代とともに変遷してきた。

例えば、アリストテレスは「痛みは感覚ではなく不快な情動」であるとして「心臓説」を唱えたし、ダ・ヴィンチは「脳室説」を主張した。デカルトが痛覚系の本質的な発想を行ったのは、17世紀のことだった。痛みは、足先に飛び散った火の粉のエネルギーが、体内の管を通って頭の中の鐘を揺らした結果生じる、というものである。哲学者の発想、恐るべしである。

今日、「痛みを感じるところはどこか?」と問えば、それは痛覚受容器であるとなる。その受容器は、皮膚や他の組織などに枝分かれした神経の終末部にある。

痛み刺激によって終末の受容器に興奮が起こると、その痛点から伝導経路に乗って脳へ伝えられる。そして脳で「痛み」として認知される。侵害を受けた痛覚受容器が痛みの「第一現場」で、痛みを認知する脳が「第二現場」だ、という話である。ここは重要な押さえどころである。

もう一つの争点は、痛みの「特異的な受容器」の存在である。19世紀末からは「非特異説」が形を変えて度々提唱されていく。

受容器の特異性とは無関係に、どんな受容器でも過度の刺激を感知すれば痛み感覚になるとする「強度説」、あらゆる種類の感覚は神経インパルスの時間的・空間的な興奮パターンにより生じる「パターン説」、末梢からの求心性ニューロンの入力干渉によって痛覚が生じるとする「ゲート・コントロール説」(1965)へと展開された。

「非特異説」が覆された背景には、20世紀後半に2種類の受容器の発見があった。一つは「機械的受容器」で、もう一つが「ポリモーダル受容器」である。

例えば、こんな実験報告がある。刺激素子を鈍磨と鋭利な素子に分けて、圧迫による反応で比較すると、「機械受容器」の遅順応性タイプでは優位な差はなかった。一方、高閾値タイプでは、鋭利な刺激素子を用いると微弱な力による刺激でも放電反応がみられた。この実験から、「高閾値機械受容器」は痛覚専任の特異的な受容器であることわかった。

これは一次痛を伝える速い痛みの受容器であるが、痛覚受容器の存在が明らかになったからといって、病態時の痛みが解明されたというわけではないのである。
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by m_chiro | 2008-01-16 00:05 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
意識が先か、無意識が先か!?
脳は情報の入出力系である。
入力は、五感を通じて脳に入る。
つまり、入り口の情報系は知覚と感覚である。
入力情報は脳内で処理され、動き(行動)として出力される。
出力は、筋肉の収縮によって表現されるわけである。
人が体を動かせるのは筋肉があるからで、それ以外ない。
もちろん、その背景にはホルモンの動きがかかわっている。
というわけで内面では、液性(化学物質)の伝達と電気伝導が作用して筋肉の活動が起こっている。
だから脳の出力系は筋肉に限定される。

その筋肉が動くのは、行動を意図するからだ、と考えるのが普通である。
例えば、そこの新聞を取ろう、と意識されるから手が動くわけである。

脳の出来事では、本当にそうか。
それを確認する実験を行った博士がいた(1983年)。
その実験は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の医学部・神経生理学教室で行われた。ベンジャミン・リベット教授の研究室である。

頭骸骨を切開した人の大脳・随意運動野に電極をつけて、ひとさしを指を曲げる運動に対する運動準備電位を計測した。
運動準備電位は、無意識に始まる運動の指令信号である。
行動(筋肉の収縮)は、意識されて動くのかどうか、を確認する実験ということになる。
①指を動かそうと「意図」する。
②指令が随意運動野に伝わる。
③無意識のスイッチがONになる。
④運動準備電位が発生する。
⑤指が動く
この順番に神経活動が起こると考えるのが普通である。

ところが結果は意外なものだった。
①無意識のスイッチがONになる。
②運動準備電位が発生する(「意図」するより0.35秒前)。
③指を動かそうと「意図」する。
④指令が随意運動野に伝わる。
⑤指が動く(「意図」の0.2秒後)。
そんなバカな! と思うのは当然で、世界中の学者がみな驚いた。

でも、誰が追試しても、何度やっても結果は同じだった。
未だに、リベット博士の実験結果を反証した学者は出ていないのだそうだ。
この実験結果は、リベット博士の著書「マインドタイム」や、リタ・カーターの「脳と意識の地形図」などに詳しい。

脳への入力は0.1秒で伝わり、脳からの出力は筋の始動までに0.5秒、と学んだが、準備電位に0.35秒も遅れて「意図」されているなんて、何ということだろう。
そうなると、人の主体的な意識というのも怪しいものだ。
人が錯覚するのは当たり前のことなのだろうか。
治療も無意識の領域に踏み込まなければならないのだろうか。
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by m_chiro | 2008-01-14 20:54 | BASE論考 | Trackback | Comments(5)
ほどほどを考えた
毎日まいにち、わたくし達の食卓にあがり、ヒトのからだを育ててくれる食料。
その中でも重要な食料である穀物。
日本で生産されている量は年間1000万トンだそうだ。
輸入している量は5400万トンだと言うから、生産量の5倍強を輸入に頼って私たちの食生活が成り立っているのである。

ところが驚いたことに、残したり捨てたりして処分されている量が1400万トンあるという。
日本国内で生産する量より、はるかに多い量が捨てられている。
いや~! 驚きです。

これを豊かな暮らしだと勘違いしていては、どこかで反動が来るに違いない、と思うのは心配のしすぎだろうか? 

今、世界では8億人が飢餓状態にあるのです。
日本人が捨てている1400万トンの食べ物で、飢餓人口の半分・約4億人もの人たちが飢餓から脱出できるのだそうだ。
そうなると、そんなに多くを捨ててもったいない、と言う時限の話ではなくなってくる。

ヒトも自然界の中で生きている動物。
人はそこらの動物とは違う、と勝手な振る舞いをしていると、いつかそのツケが回ってきそうである。
環境問題は重要な今日的テーマでもある。
ほどほどに生きる、という生き方を考えてみたいものである。

両腕を伸ばし、手の指先を合わせて輪をつくり、それを地球の歴史だとしてみよう。
アメーバーの時代が左ひじの前で発生したとすると、肩を横切って右肩、腕、右ひじ、そして右の手首あたりまで続いたことになる。
恐竜の時代は右の中指一本分くらいの長さで、ヒトが生まれてから今日までは爪先をヤスリでゆっくりと擦り取ったほどの期間でしかないのだそうだ。

生命の歴史の中で、全体的なバランスを保ってきたからこそ続いた38臆年を、人間の
勝手な行動で崩すようなことがあっては、生命の健全な維持すら難しくなるのではないかと思えてくる。
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by m_chiro | 2008-01-10 22:31 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
腰下肢痛の冤罪とされたヘルニア
41歳の婦人が、長時間のハイヒールでの歩行の後に右腰下肢痛になり、痛みで跛行するようになる。
整形外科でMRIの結果(2004・8・10)、L5/S1の見事なヘルニアが見つかった。
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手術を勧められるが拒否、9月2日から保存的治療を試みる。
経過は良好で、跛行や運動痛も解消した9月28日に、再度MRI撮影を行った。
結果は、見事なヘルニアのままだった。
痛みが解消したにもかかわらず、ヘルニアに何等変化はなかった。
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上の2枚の画像は8月10日撮影で、下の2枚は9月28日撮影したものだが、ヘルニア像に変化は見えない。
そんな報告が「Journal of JCC(日本カイロプラクティック徒手医学会誌)Vol.7」に掲載された。報告者は私の学友・高橋克典氏である。

ヘルニアを腰下肢痛の犯人にした整形外科医には、そのヘルニアを除去する手術を勧められたが、結局は冤罪のヘルニアを切ることなく保存的徒手療法を試みた。

その結果、ヘルニアは微動もしなかったが、痛みは消えた。
痛みとヘルニアは無関係で、こんな例は沢山あるのだろう。

加茂整形外科医院のサイトからの以下の文献を参照下さい。

「大きな椎間板ヘルニアを手術以外の方法で治療するのは安全か?」http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_387.htm
大きな椎間板ヘルニアが存在すれば椎間板手術の適応と判断してよいのであろうか?南カリフォルニアの研究者らによれば、答えは『No』である。

Michael S.Sinel博士らは、「椎間板の大きさのみを、手術適応か否かの判断材料とすべきではありません。我々は、臨床的症状のある大きな腰椎椎間板ヘルニアの大部分は、馬尾症候群のような絶対的な手術適応でなければ、保存療法でもよいと考えています」と報告している(Sinel etal.,1999)。

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by m_chiro | 2008-01-09 00:30 | 症例 | Trackback | Comments(0)



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