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「痛み学」NOTE36. 筋の攣縮は痛みの悪循環の基になりやすい
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

36. 筋の攣縮は痛みの悪循環の基になりやすい

筋肉の緊張による痛みは、多くの人が経験しているだろう。ありふれた痛みである。
筋緊張が更に高まると攣縮(spasm)となる。
侵害受容性疼痛には、必ずつきまとう現象である。

その仕組みを次のように説明できる。
侵害受容性疼痛には2つのルートがあって、一つは筋肉とその他の組織の傷害や病変によって脊髄反射性の攣縮が起こるルートである。
もう一つは、脳の不安情動系が心理的・情動的緊張や持続的ストレスによって作動し、交感神経が緊張する。
あるいは副腎が刺激されることで血管が収縮する。
いずれもが血管の収縮に関与し、この事態は筋肉組織の虚血状態となって酸欠がもたらされる。
酸欠は筋組織の危機状態である。そこで攣縮が起こる。攣縮が更に血流を阻害する。

こうした筋組織の変化は、必ずしも明らかな損傷だけによるものではない。
さまざまな要因で起こり得る。
心理・情動的な問題から修飾された痛みルートもあれば、筋のオーバーユースでも起こる。
または、外部環境の変化、例えば冷気などにも反応するだろう。
これらが脊髄への求心性入力の異常な増加となり、脊髄反射が遠心性の異常なインパルスとなって、筋の過緊張がつくられることになる。

この痛みとスパズムのメカニズムは「悪循環パターン」を作りやすく、このサイクルには持続性がある。したがって、この悪循環パターンを断ち切るためには、どうしても外部からの介入が必要とされるのである。

こうした虚血性の攣縮をリリースすることで、何がもたらされるのだろう。
先ずは、局所の血管が拡張されることで疲労物質や痛み物質などの排泄を促進することが出来る。
次に、エンドルフィンが放出されて鎮痛機序が働きだす。
また、筋の過緊張がもたらす異常な反射を抑制することができる。
そして、筋のトーンが正常に回復し筋機能が正常に作用する。
代償性の姿勢変化を改善することも可能だろう。
まだある。体性―内臓反射を正常化できるし、関連痛をも軽減できる。

カイロプイラクターは、患者の症状を脊椎や関節のミスアライメントに根拠を求めるが、それは筋の異常な過緊張に先立つものではない。
こうした後発性の影響を考えると、筋の攣縮には早めに手を打つ必要がありそうだ。
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by m_chiro | 2010-12-22 13:57 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学・NOTE」35. 筋の攣縮は痛みの悪循環の基になりやすい
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

35. 筋の攣縮は痛みの悪循環の基になりやすい

筋肉の緊張による痛みは、多くの人が経験しているだろう。ありふれた痛みである。筋緊張が更に高まると攣縮(spasm)となる。侵害受容性疼痛には、必ずつきまとう現象である。その仕組みを次のように説明できる。

侵害受容性疼痛には2つのルートがあって、一つは筋肉とその他の組織の傷害や病変によって脊髄反射性の攣縮が起こるルートである。もう一つは、脳の不安情動系が心理的・情動的緊張や持続的ストレスによって作動し、交感神経が緊張する。あるいは副腎が刺激されることで血管が収縮する。

いずれもが血管の収縮に関与し、この事態は筋肉組織の虚血状態となって酸欠がもたらされる。酸欠は筋組織の危機状態である。そこで攣縮が起こる。攣縮が更に血流を阻害する。

こうした筋組織の変化は、必ずしも明らかな損傷だけによるものではない。さまざまな要因で起こり得る。心理・情動的な問題から修飾された痛みルートもあれば、筋のオーバーユースでも起こる。

または、外部環境の変化、例えば冷気などにも反応するだろう。これらが脊髄への求心性入力の異常な増加となり、脊髄反射が遠心性の異常なインパルスとなって、筋の過緊張がつくられることになる。

この痛みとスパズムのメカニズムは「悪循環パターン」を作りやすく、このサイクルには持続性がある。したがって、この悪循環パターンを断ち切るためには、どうしても外部からの介入が必要とされるのである。

こうした虚血性の攣縮をリリースすることで、何がもたらされるのだろう。

先ずは、局所の血管が拡張されることで疲労物質や痛み物質などの排泄を促進することが出来る。
次に、エンドルフィンが放出されて鎮痛機序が働きだす。
また、筋の過緊張がもたらす異常な反射を抑制することができる。そして、筋のトーンが正常に回復し筋機能が正常に作用する。代償性の姿勢変化を改善することも可能だろう。

まだある。体性―内臓反射を正常化できるし、関連痛をも軽減できる。カイロプイラクターは、患者の症状を脊椎や関節のミスアライメントに根拠を求めるが、それは筋の異常な過緊張に先立つものではない。こうした後発性の影響を考えると、筋の攣縮には早めに手を打つ必要がありそうだ。
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by m_chiro | 2010-07-23 01:23 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE34. 頻発する「こむら返り」
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

34. 頻発する「こむら返り」

通称「こむら返り」と称される痛みは、「有痛性痙攣;cramp」の病態である。痙攣と共に強烈な痛みが起こり、ほとんどは一過性に終わる。

「こむらがえり」とは方言由来の言葉である。多くは腓(こむら;腓腹筋)に起こることから通称されるようなったようだ。要するに、骨格筋に起こる筋痙攣である。

局所の筋線維が膨隆して強烈に痛み、しばし動けなくなる。何らかの機械的刺激が筋線維の一部を強く収縮させたもので、大抵は一側性に発症する。

一般的には、運動や過酷な労働で関節部や筋肉が酷使された時などによく起こる。
睡眠中に起こることもあるが、これも原因は神経ではなく筋肉由来のものとされている。
下位運動ニューロンの終末部での自発性興奮が引き金となって、痙攣痛が起こるのである。

大量に汗をかいた後、下痢症状後や利尿剤の服用あるいは透析などによる脱水、体液の急激な喪出によっても誘発されることがあり、これはCaとMgの電解質代謝異常に起因するとも言われている。
それでも、健常な人にも起こるので、明確には原因を特定できない痛みを伴った筋痙攣である。

一過性で深刻なものではないのだが、それが頻発するようになると重篤な問題が潜んでいることもあり、鑑別による除外が肝要とされる。
頻発する場合は心しておかなければならない痛みでもある。

例えば下位運動ニューロンの障害としては、筋委縮性脊索硬化症、多発性ニューロパシー、陳旧性ポリオ、ラジクロパシーなどがあげらる。これらは大きな筋肉の線維束攣縮(fasciculation)で、運動に関連した中間の痙攣である筋性防御によるものとみられている。

代謝障害によるものでは、 妊娠 尿毒症 甲状腺機能低下症、副腎機能低下症腎不全、下肢静脈瘤などがあげられている。

例えば、こんな患者さんがみえた。
数年前からの慢性的な腰痛があって、椎間板ヘルニアと診断されている。牽引と鎮痛薬、湿布剤を処方されていたが、今度は首の具合が悪くなった。いつもの整形外科医院で診察を受け、X-rayで首の老化を指摘された。いつもの処方に加えて筋緩和剤が出された。2年前からは、内科医に尿酸値を抑える処方も受けている。老後のゴルフを何よりの楽しみにしていて、多少の腰痛があってもゴルフを楽しんでいた。ところが、頸の痛みが出た2か月前から、ゴルフもできなくなって悪化する一方だった。

両腕と両大腿前部の痛みで動作痛がある。寛解因子は安静位である。運動の始動が増悪因子で、立ち上がり動作、寝返り動作、歩行など、どうしても緩慢な動きがみられる。動き始めると、どうにか動けるが、痛みが無くなるわけではない。特に、両腕、両大腿前部と両側性に対称性の痛みを訴えている。

最初の治療直後の結果でも、思ったような改善は見られない。2度目の来院時にも変化はみられなかった。

「こむら返りは起きない?」と聞くと、「たびたび起こる」と言うので生化学検査を勧めることにした。紹介した神経内科で50項目の生化学検査を行ったところ、19項目に陽性所見があった。
特に重要な検査所見はCRP値で、正常値の10倍高かった。神経内科医の診断は「リューマチ性筋炎」である。

さて、この患者さんの頻発する「こむら返り」は何だろう。おそらく、筋炎や代謝障害による線維束攣縮(fasciculation)に関連した中間の痙攣で、筋性防御が働いていたものではないかと推測できる。
こうした「こむら返り」の所見から、病態を推測できることもある。
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by m_chiro | 2010-07-12 22:48 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学・NOTE」33. 筋線維に痛覚線維があるわけではない
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を 代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

33.筋線維に痛覚線維があるわけではない

侵害刺激を受け取る神経線維はAδ線維とC線維である。
この神経線維の受容器は熱刺激や化学物質などにも反応する。
前述したように、筋肉の筋線維に痛覚線維があるわけではない。

例えば、ギックリ腰になったとしよう。
ギクッとなる瞬間に背部の筋が傷害される。多くは前屈位で物を持ち上げたりする時に、腰方形筋などが傷害される。だから側屈も起こる。

こうして筋線維が傷害されると、発痛物質が遊離する。
それを痛覚線維の受容器が受け取ることで興奮する。
結果、痛みが起こる。筋の攣縮もみられる。

この痛覚線維は筋線維を包む結合組織や筋腱接合部、細動脈周辺組織にある。
毛細血管には痛覚線維はない、とされている。
だから、一般的には筋線維自体に痛みは起こらない。

例外的な筋線維の痛みに横紋筋融解症がある。
事故や負傷などの外傷的要因や、脱水、薬剤投与などの非外傷的要因によって発生する疾患で、筋肉痛が起こる。
血液生化学検査では、赤い筋肉由来のタンパク質であるミオグロビンが上昇し、筋肉収縮のエネルギー代謝に関与する筋原酵素(クレアチンキナーゼ;CK/CPK)が著しく上昇する。
これらは診断上での所見とされるが、CPKやミオグロビンの上昇は運動後の筋肉や外傷にもみられるので、CPKなどの単独の評価は決定的なものではない、とされている。

ともかく、筋線維自体の痛みは特別のケースを除いて起こらないのである。
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by m_chiro | 2010-04-21 12:17 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE32. 「訳あり筋」が痛むわけ③
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

「訳あり筋」が痛むわけ③
 酸欠で痛むわけ


ATP産出の経路には、酸素を利用する系(好気性解糖)と利用しない系(嫌気性解糖)とがある。

自動車で譬えると、最初のエンジンの駆動に使われるエネルギーは、筋肉中に僅かに存在するATPで、約1秒程度の瞬発力に使われる量である。
この筋肉中のATPが消費されると、次にはやはり筋肉中にあるクレアチンリン酸(CP)からATPを産生することになる。
このときの瞬発力は10秒前後のフルパワーとなるが、これらは酸素を必要としないエネルギー産出系である。
クレアチンリン酸(CP)は筋肉中にATPの5倍の量が有るとされている。つまりATPの貯蔵物質がクレアチンリン酸である。
例えば、瞬発力を使った競技には100m走ダッシュ、相撲、野球のピッチングやバッテング、テニス、ジャンプなどなどがある。いずれも数秒の短い時間の間に消費される。こうした運動のエネルギー系は酸素を利用しない解糖系で賄うことができる。筋肉の収縮力・瞬発力は強いが持続性はない。つまりは、限界のあるATP産出系に依存しているのだ。
筋肉内に貯蓄されたクレアチンリン酸(CP)が使い尽くされてしまうと、今度はグリコーゲン(糖質)を分解してATPを合成するのだが、この経路でも酸素を使わない。
こうした素早い解糖系では酸素を使わないでATPを産出する。

グリコーゲンが乳酸に分解される過程で3分子のATPが作られる。かつて、この乳酸が筋肉を収縮するとする「乳酸学説」が主流だった。この学説は1919年にノーベル生理医学賞を受賞した。ところが、後に乳酸は筋肉の収縮に直接関与しないことが判明した。「乳酸学説」が破綻したのである。
その後に、筋肉を収縮させる直接の物質はATPだということになった。
実際には、筋肉の収縮や弛緩に関与するのはATP濃度によるとされている。
ATP濃度が増加すると収縮した筋肉が弛緩するからで、そこに働くのが「エネルギーリン酸結合」を触媒する「クレアチンキナーゼ」や「アデニル酸キナーゼ」ということになる。

解糖過程でピルビン酸を経て乳酸が蓄積されると、その乳酸から解離した水素イオンがタンパク質と結合する。それまでくっついていた陰イオンは、タンパク質から離れて細胞膜を通過して細胞外に流れ出す。カリウム・イオンも流出して細胞外液の濃度が上がる。
通常は、ナトリウム/カリウム・ポンプによってナトリウムを排出しカリウム・イオンを取り込む。この細胞内外のバランスを保つためにATPのエネルギーが使われる。

ここからミトコンドリアに入って、酸素を利用したクエン酸回路(TCA回路)から電子伝達系で多くのATPを合成するようになるのだが、筋肉に酸素の欠乏が起こると、この経路の活動に支障が起こる。ATPの産生が減少する。

さて、酸欠によるATP産生不足が起こるとカリウム・イオンを取り込めない。
ますます細胞外液のカリウム・イオン濃度が上昇する。
この細胞外のカリウム・イオンは神経線維を興奮させることになる。

また、局所の酸素欠乏はアシドーシスを招く。すると血漿プレカリクレインが活性され、ブラジキニンがつくられる。ブラジキニンを分解するキニナーゼⅠが阻害されると、ブラジキニンは蓄積する一方になる。
これが筋肉の痛覚線維を刺激する。
こうして虚血による訳あり筋は、痛みを発症することになる。
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by m_chiro | 2010-02-19 22:45 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(2)
「痛み学」NOTE31. 「訳あり筋」が痛むわけ②
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

31. 「訳あり筋」が痛むわけ②
   血流が不足するとなぜ痛むのか?


筋活動のエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)である。
よく自動車のエネルギーであるガソリンに譬えられる。
ヒトでは、このガソリンに相当するエネルギーがATPということになる。

ところで、このATPの基質はなにかというとグルコース(ブドウ糖)や脂質であるが、骨格筋のエネルギーの貯蔵原資としてはクレアチンリン酸(CP)である。
ここからATPを産出することになる。

しかしながら、閉塞性動脈硬化症やバージャー病のように血流の絶対量が不足すると、筋エネルギーの原資であるクレアチンリン酸(CP)が枯渇する。
更には、エネルギー源そのもののATPが不足することになるようだ。
そうなると、細胞内にはアデノシンという物質が蓄積される。
血管を拡張させようと、アデノシンが修飾作用として働くのだろう。

アデノシンは神経系に多く存在する物質でDNAやATPの材料となる神経の修飾性物質とされている。
どうも、このアデノシンが血管を拡張させようと働くようであるが、細胞外に遊離されて発痛物質としても作用する。

それでも、アデノシンなどが発痛の起因となる濃度に達していなければ、直接に痛覚線維を興奮させるわけではない。
少なくとも痛覚線維を過敏状態に置いているわけで、このような状況下では筋収縮に反応して痛覚線維が興奮するということになる。
したがって、「駆血帯疼痛試験」の結果にみるように運動に伴って痛みが起こるのである。

つづく
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by m_chiro | 2010-02-11 23:17 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE30. 「訳あり筋」が痛むわけ①
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです

30. 「訳あり筋」が痛むわけ①

「駆血帯疼痛試験」を用いた痛みの研究がある。
今は故人となられたが滋賀医科大学・横田敏勝名誉教授の同門で、芝野忠夫先生や小山なつ先生ら三著者による共同研究である(感覚に関する生理学的研究「駆血帯疼痛試験によるバレーボール練習効果判定の可能性についての検討」)。

この研究内容はともかくとして、「駆血帯疼痛試験」は血流が悪化した「訳あり筋」と「痛み」との関連を示唆するものとして興味深いものがある。

骨格筋に圧刺激や熱刺激を加えて痛みの閾値を測定すると、筋肉は皮膚などよりも鈍感だという結果になる。
それは筋肉の痛覚線維が筋線維そのものにあるではなく、筋線維を包む結合組織にあるからだ。が、もしも筋に血行障害が起こると、その筋は反復収縮によって容易に痛みが現れる。この現象を指標にしたのが「駆血帯疼痛試験」である。

下のグラフは、芝野忠夫先生と小山なつ先生が行った「駆血帯疼痛試験」の結果である。
例えば上腕の血流を20分間遮断しても、安静位を保っていれば痛くない。
ところが最大握力の半分の力で握力計を2秒間隔で握る運動を反復すると、1分以内に痛みが出て、3分以内に耐えがたい痛みが現れるという。
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3分以内で最大の痛みがでるわけだから、以外に早い反応である。

慢性的な動脈の狭窄がある疾患では、歩行などの反復的な動作で虚血筋に容易に痛みが起きやすいということになる。したがって、高齢者の閉塞性動脈硬化症やバージャー病などは、動きによって当然の如く間歇性跛行や下肢痛となる。
こうした病態でなくても、虚血などによる「訳あり筋」は容易に痛み症状を作り出すのだろう。

つづく
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by m_chiro | 2010-02-06 16:04 | 痛み学NOTE | Trackback(1) | Comments(2)
「痛み学・NOTE」29. 交感神経の活動に依存する慢性痛の機序
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

29. 感神経の活動に依存する慢性痛の機序

慢性痛症は、侵害刺激によらずに痛みが憎悪する厄介な病態である。
例えば、気圧の変化、気温の変化などは侵害刺激ではない。
ところが、こうした自然現象によって痛み信号が発火しやすくなるということが分かっている。

こうした気候と痛みの研究は、名古屋大学環境医学研究所が力を入れている分野のようだ。
佐藤純・准教授が、交感神経に依存する慢性疼痛の機序に対する仮説(「慢性痛と交感神経系」)を論じているので、図を引用して紹介しておきたい。

c0113928_16293072.jpg


これらの仮説の要点は、次の2点にある。

①低気圧によって内耳の気圧受容器が興奮すると自律神経系とリンクして交感神経が緊張する。
②気温の低下によって皮膚および中枢における冷受容器が興奮すると自律神経系とリンクする。

ところが、このリンクがどのような機序で作動するかについては、今一つ曖昧なところである。
慢性痛のラットモデルでの実験では、交感神経を除去すると疼痛増強は起こらない、という結果がその根拠とされている。

一方、気温低下による痛みは、交感神経を除去しても消失しない。
どうも、気温低下による痛みの増強に交感神経の活動は、必ずしも重要な要因にはなっていないようである。
と言うことは、皮膚温の低下は、直接的に冷感受容線維を感作させることによって痛みが増強するルートが存在するのだろう。
気圧による痛みの増強には交感神経が重要な役割を果たし、気温の低下には皮膚の冷却による受容線維の興奮が鍵になっているようである。
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by m_chiro | 2009-10-01 16:30 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(3)
「痛み学・NOTE」28. 神経因性疼痛の基本的な仮定
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

28. 神経因性疼痛の基本的な仮定

神経因性疼痛の機序について、未だその詳細な真実は藪の中にあるようだ。
私たちが知り得るものは仮説とその証拠に過ぎない。ここでは定説的な概念を紹介しよう。

神経因性疼痛を最初に発表したのは神経科医・ミッシェル(S.Weir.Mitchel;米国)だった。
ミッシェル医師は、南北戦争時代にフィラデルフィアで病院を開いていた。
そこで、南北戦争で負った末梢神経外傷の患者さんを、数百万人も診察治療している(1871)。

その内の10%の患者さんは、外傷を負った神経分布領域に激しい灼熱痛を訴えていた。
この時代に経験した症例から、基本的には2つの観察結果が私たちの神経因性疼痛の核心的な理解になっている。

1つは、末梢神経の部分的損傷は完全損傷よりも痛みを起こす可能性がより高いということ。
2つ目は、患者は鋭敏な過敏症をみせるということ。

これらの痛みを起こした病変は、末梢神経の部分的な損傷が関与していたことが報告されている。
私たちが痛みの機序を考えるときに、「痛みの悪循環説」でも触れたように仮定する経路はよく知られた痛み経路である。
末梢の刺激にはじまった痛覚刺激は、脊髄に入って反対側の脊髄視床路に渡り、視床に伝達されて皮質に広がる。

神経因性疼痛の基本的な仮定は、この経路に沿ったどこかの活動を増幅させる、あるいは末梢の侵害受容器に極めて異常な活動がある、と仮定することである。
この仮定は最も単純である。

もうひとつは、中枢神経系における下行性疼痛抑制系のルートで、何らかの抑制のポイントを阻むことによって痛覚伝導ニューロンを解放することになる。
当然、痛みの信号は発信され続け、神経自体が痛みのジェネレーターとなる。

また、末梢神経、特に有髄線維の損傷はその線維に形質的変化を起こし、通常は痛みを起こさないはずの有髄線維そのものが、痛みを送信し続けることになる。
そして脊髄に配線の取替えが起る。これは振動や触刺激の感覚が灼熱痛を引起すことにもなりかねない。
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by m_chiro | 2009-10-01 16:24 | 痛み学NOTE | Trackback(1) | Comments(2)
「痛み学・NOTE」27. 神経根はそんなに無防備な組織か
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

27.神経根はそんなに無防備な組織か

前項で触れたように、神経幹には強力なバリアとしての結合組織が二重三重に張られている。ところが、その根部では様相が大きく変わっている。第一に、神経根には神経幹にみられるような結合組織は、ほとんど存在しない。

神経根の皮膜としては髄膜があるだけで、シュワン細胞も存在しない。
そして、脳脊髄液が根部を栄養する半分を担当している。こうして見ると、神経根は末梢神経というよりは中枢神経の一部と見た方がよさそうだ。
形態学的に大きな違いがあるということは、生理的効果についても同様である。
神経幹と根は、全くと言ってもいいほど別組織である。
こうした根部の特徴は危弱な存在として注目され、臨床上では損傷の根拠とされている。
果たして、根部はそんなに無防備なのだろうか。


c0113928_10142487.jpg

A:クモ膜、B:椎体、D:硬膜、DuL:硬膜靭帯、DeL:歯状靭帯、DMS:背内側中隔、DR:後根、SAS:クモ膜下腔、SAT:クモ膜下柱、SN:脊髄神経、SP:棘突起、VR:前根




上図の脊柱管と脳脊髄幹および髄膜に付着する組織の横断面を見ると、衝撃に対応する緩衝機構が見えてくる。

神経根には結合組織らしきものが欠落し髄膜があるだけなのに対して、神経幹では多層からなる結合組織で保護されている。
神経は圧迫よりも牽引に弱いとされているが、この膜組織のアンバランスな強弱の差は、一見するに神経根を容易に損傷する可能性を想定し得る。

ところが神経幹の結合組織は、根部の膜組織の延長ではなく、硬膜外組織や硬膜(D)と結合して神経幹の外層を形成しているのである。
そのために、末梢神経を牽引しても後根神経節が椎間孔から引き抜かれることも、硬膜袖が椎間孔に引き込まれて圧迫されるということも起り得ない仕組みになっている。

更に、その牽引力の伝達は歯状靭帯(DeL)を経由して脊髄に伝達される。
硬膜外では硬膜靭帯(DuL)や中隔(DMS)が、硬膜内部ではクモ膜下柱(SAT)が、脳脊髄液とともに内部環境としての圧力配分を行い、動的恒常性を保っているのであろう。

こうしてみると後根神経節を含む後根は、脳脊髄液によって栄養、エネルギー代謝、緩衝、保護されている。やはり、生理学的にも中枢神経の一部と見た方が分りやすい。
根部の損傷は重篤な問題を引き起こすだろうが、受容器のない後根神経節が圧迫によって痛みの信号を送るとは、どうしても考え難い。
したがって、伝達が阻害されれば運動麻痺になるのだろう、と思わざるを得ないのである。
そう考えると、無症候性の椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄があっても不思議な話ではないだろう。
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by m_chiro | 2009-08-15 10:22 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)



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