カテゴリ:症例( 134 )
内臓膜からの関連か ②
内臓膜からの関連か ②
症例2 「嘔吐と悪心」


40代の女性(就業)。3日前から悪心と吐き気があり、昨日は食後に嘔吐。
それ以来、水だけにして一日食事を絶った。
「いつもムカムカして気持ちが悪い。食べると吐きそうなので….」。
2~3日前には、熱も出たと言う。
風邪に伴う胃炎のようだ。

腹部の触察を行う。
肋骨下水平面に相当する胃の部位だろうか。緊張度が低下して凹みを感じる。
自律神経症状を呈しているケースでは、周辺組織の緊張低下をみることをよく経験する。
触診でも「ムカムカする」ようだ。

その部位からの内圧の伝導をみると、左下腿部で停滞している。
足の趾先から軽微な牽引をかけて、左下腿部での内圧伝導の停滞ポイントを探ると、第4趾から腓骨近位三分の一ほどのところで停滞していて、そこには圧痛がある。
リコイルを加えた。

もうひとつ。
3趾からは腓腹筋内側頭の脛骨上端後面のポイントで停滞し、その部位にはジャンプ徴候の圧痛がある。

ジャンプ徴候の圧痛部位は、リリースしながら腹部の凹部と同調させる。
しばらくして凹部に緊張感が出てきた。

骨盤と下部肋骨には、カウンターの捻じれ(Yaw)がある。
左水平眼球運動で抑制がある。
出来るだけ腹部への刺激を避けて、視経路から右外膝状体部の停滞をリリースしてYawを修正する。
状態の変化を聞くと、「今は、気持ち悪いのはなくなった」。

やはり風邪からきている胃炎のように思える。
悪心を抑えることができても、胃炎が解消されない限りぶり返しそうだ。
念のために、内科の先生に診てもらうよう指示した。

流行りのお腹に来る風邪のように思えるが、ノロウイルスも警戒しておくべきなのだろう。
業界の仲間である田中先生がブログで「ノロウイルス」について記事にしていたので、それも参考に利用させていただいた。
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by m_chiro | 2012-11-20 23:23 | 症例 | Trackback | Comments(0)
内臓膜からの関連か ①
内臓膜からの関連か ①
「肩甲間部が痛苦しい」


続けざまに内臓膜関連を思わせる患者さんが続いた。
治療で主に内臓膜へのリリースを行ったケースである。

不思議なことに、同じような問題の患者さんが続くことがよくある。
これって偶然なのだろうか。
それとも私の観点が予測的に作用するせいだろうか。
例えばTMJ問題を観ると、またぞろTMJ問題の患者さんが続く。
実は患者さんが続いているのではなく、私の観る視点が続いているのでは?、と訝ってしまう。
機能性の身体問題には、関連する入口が多々ある。
だからいつも、「一期一会」。
自分自身の観る視点を、常にリセットして臨むこと。
そう心がけてはいるのだが….。

症例1「肩甲間部が痛苦しい」

30代の女性(就業)。1週間ほど前から肩甲間部から肩にかけて痛苦しく、時に右菱形筋部に強い痛みが出ることがある。動きによる特異的な変化はない。

内圧変動を観ると胃底部の周辺の組織に緊張と圧痛がある。
お腹にくる風邪が流行っているらしいので、「風邪でもひいた?」と聞いてみた。

「風邪はひかなかったけど….。そう言えば、背中が苦しくなる前に胃が痛んだことがあって内視鏡検査を受けたけど、異常はなかった」そうだ。

その胃底部周辺の内圧の停滞が、どこで内圧の伝導が阻害されているかをみると、同側の横隔膜背側ドームの天井部周辺で止まる。
その部位に掌をすべり込ませてカウンターCW方向へのトークを加えると、胃底部の緊張が更に抑制される。

今度は、その位置で胃底部を水平面におけるCW方向と横断面におけるCW方向の組み合わせ方向可動を行うと、2点間での最も良い同調緩和が起きた。
「あ~、楽になってきた」。

「胃が痛んだ」ときの反射性の緊張が内臓膜周辺に起こって、その関連痛ではないかと推測した症例であった。
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by m_chiro | 2012-11-20 18:57 | 症例 | Trackback | Comments(0)
先生様、まさかのご乱心ですか! それとも常習的なんですか?
整形外科医院を受診されていた交通事故による「むち打ち症」の患者さんが、私のところに治療にみえました。

なんでも加害者が今年就職をしたという若い女性だったそうです。
彼女は、事故後に泣きながら何度も何度も「ごめんなさい、ごめんなさい」と誤ったとか。
被害者は中高年の女性でしたが、自分の娘ほどの加害者を気の毒に思い、「早く治すから心配しないで」と逆に励ましたほど、彼女は憔悴していたそうだ。

でも、なかなか好転しないからと、私のところに紹介されてきました。
頚背部痛と腰臀部痛を訴えておりました。
下の図の「ケベック・タスクフォース分類」では「グレード2」でした。
可動域の減少と圧痛が含まれる損傷ということになります。
c0113928_8255156.jpg

ほどなくして快癒されましたので、「治癒」としました。

これで早く加害者にも安心してもらえると、その足で前医の整形外科医院を訪ねて「すっかり好くなったので、...」と書類の提出を申し出たそうです。
ところが、その先生はカルテをみて「なんだ、あんまり来ていないじゃないか!」と言い、「MRIを撮りなさい」と言ったとか。
「エッ! MRIですか?」。

「交通事故の保険でMRIを撮れるんだから、自分で費用を出すわけじゃないし、ちょうどいいだろう」と言って、病院に予約を入れてくれたのだそうです。親切です!?
MRIを撮ることに対する医学的根拠の説明はありません。
予約は1ヵ月先のことになりました。

ケベック・タスクフォースのむち打ち症(WAD)診断に関する文献調査からは、次の事実が判明しています。
1)患者の評価は詳細な病歴聴取と理学検査により十分可能である。
2) グレード1では画像検査や特別な検査は必要ない。
3)グレード2と3では頚椎のレントゲン撮影が必要である

(http://1.usa.gov/LammYr)

私のところにみえた時点で、この患者さんはグレード2でした。
必要な画像検査は、整形外科医院での初診時にレントゲン撮影が行われています。
要するに、それ以上の画像検査は必要ないとされているわけです。
しかも「よくなった」と言っている患者さんです。
「それまで私はどうしたらいいのでしょう?」と尋ねると、「その間は電気をかけに来なさい」ということになったそうです。

被害者の女性の頭の中は、早く保険の決着をつけてやりたい、その一心だったのでしょう。
たまらず、患者さんはその旨を保険会社にも連絡しました。
担当者はウ~ンと唸って、「しかたがないですから、そうしてください」。

被害者の女性、その足で今度は私のところへやってきました。
そして、その経緯を語りながら、「これっておかしくないんですか? 最初にMRIと言われるのは分かるんだけど、治ったと言っているのに…。逆じゃないんですか?」と訴える。
私に言わないで、その先生に言ってよ、という思いでした。

何か、MRIを撮らなければならいような徴候があったのでしょうか?
ないとすれば、ご乱心ですか?
それとも単なる引き伸ばしでしょうか?
あるいは年齢的にみても骨の変性があるだろうから、その後は骨粗鬆症の治療へと結びつける計算でも働いたのでしょうか? 
先生のクリニックでは、こうしたプロセスを踏むことは常習的なんでしょうか?

???.....なんとも腑に落ちない顛末でした。
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by m_chiro | 2012-10-04 08:36 | 症例 | Trackback | Comments(0)
むち打ち症患者、何でこうなるの!?
-視覚系-小脳系のシステムから姿勢制御の代償作用へアプローチ-

8月に入ってからみえた「むち打ち症」の患者さん。中年を過ぎた女性である。
今年の冬に追突事故で負傷した。事故直後から首が痛み、外科医院で診察を受けたがX-ray(-)で、湿布と投薬の治療を開始した。

それから間もなくして、また追突された。今度は、友人に勧められて接骨院で治療を受けることになった。同じように首の痛みだけだった。ドロップするカイロベッドで施術されたようだ。治療中から頭痛がおこったが、「あなたは大分薬を飲んでいるから反応が出るんだ」と言われたとか。

それでも治療の度に頭痛、腰痛と痛む場所が広がっていくので、MRIを撮ってもらうことにした。結果は異状なしだった。接骨院での治療を中止し、最初事故で受診した外科医院に転医した。
電気治療と投薬の処方を受けて7か月が経過した、という患者さんである。

経過は良くなっているのか、悪くなったのか分からないと言う。
痛みは軽減してきたが、食欲はなく味もあまり感じない。下肢の冷えが起こり、眼もはっきりしないし、熟睡もできていない。とにかく体が疲れるようになり、脚に力がはいらないと訴える。
この猛暑に、タイツを履いて長ズボンに長袖を着用し、タオルケットを手放さないでいる。
当初の頸部痛が、自律神経症状に変化したような印象である。
筋力評価は、左下肢筋(腸腰筋、ハムストリング、殿筋など「3」である。数回反復させると、評価「2」としてもいいような状態である。右下肢では「4」。左右差が顕著である。筋のトーンも相対的に弱い。

このむち打ち症患者は、当初はおそらくケベック分類の「グレーⅠ」であったろうと思う。ケベック・タスクフォースの「むち打ち疾患(WAD)」の定義では、「加速-減速の機序による頸部へのエネルギー転移」とされている。
c0113928_8475118.jpg

この枠組みに入る症状には、「動きを促進するモビリゼーション、マニピュレーション、運動のような介入を鎮痛剤や非ステロイド系抗炎症剤と組み合わせて短期的に使う」ことを勧めている。
だからと言って、強い刺激による介入は、時に侵害刺激になって痛み症状をつくりかねない。
侵害刺激は、痛み症状よりも自律神経症状をもたらすこともあるのだ。
侵害刺激の応答は一様ではない、ということだろう。

このように刺激に敏感な患者さんには、マニピュレーションの治療計画はとらない方が賢明だろう。この患者さんのように、身体に傾斜や捻じれがあり左右差が顕著なケースでは、それが神経系の統合不全によって表現されたものと考えてみる。

まずは、神経学的代償作用を利用して姿勢制御系に働きかけてみたい。視線運動反射をチェックすると、ほとんど全方向で興奮/抑制バランスが起こる。視線運動性反射の遅延である。頭位と頸部の動きを組み合わせると、更に問題となる姿勢制御系の代償作用が明らかになる。

そもそも、重力場というヒトに共通する環境刺激の場で、関節や筋・腱、四肢の動きは求心性刺激として小脳を興奮させる。それから中脳、大脳・前頭葉へ送られ、最終的に小脳で誤差修正されて出力する。

中脳では線条体、淡蒼球の経路で興奮と抑制が行われ、感覚運動系を興奮させる。
視線運動反射に遅延があるということは、網膜での画像ブレの調整反射の遅れている証拠でもある。小脳系をはじめ感覚運動系の経路に出力バランスの不均衡が起こっているのであろう。

ここは視覚神経系と小脳の誤差修正機能を回復させることを狙いとする治療に専念することにした。視覚神経経路を想定して、そのルートに内圧変動による停滞を感じ取り、そのリリースを行った。

それだけで体幹や四肢の出力系が安定する。この方法で5回目の治療の段階で、食欲が出て下肢筋の左右差も評価「4」になった。味覚障害は残っているが、よく眠れているようだ。

末梢からの刺激に過敏に反応する患者さんには、ダイレクトに脳内の停滞した変動をリリーするだけで身体の姿勢制御系の不均衡も是正できる。
こうした方法を用いると、身体は、脳を介在した受容器と効果器の応答による仕組みであることが実感できる。
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by m_chiro | 2012-09-03 08:53 | 症例 | Trackback | Comments(0)
ご報告:メニエール症候群で治療中だそうです
S先生のご紹介で、患者さんが治療にみえました。

でも、私のところまで車で1時間はかかるそうです。それに患者さんはメニエール症候群で治療中です。
運転ができないので、ご主人が運転していらっしゃいました。

この患者さんは20年前にめまいに襲われ、それ以来悩まされているということでした。
MRI検査も含めて大抵の検査を受けたようですが原因は特定できず、「メニエール症候群」として治療を継続中ということでした。

発症は突然やってきました。
会社で事務仕事中にグルグルと回り出して起き上がることが出来ず、2日間ほどは寝ていなければならない状態だったとか。起きると吐き気がある。そんな酷いめまいが年に2回位起きるのだそうです。
ひどい発作的なめまいが治まっても、常に動揺感があるということでした。
それが20年も続いているようです。

現在も会社勤務で、ほとんどはパソコンでの業務を行っているとのことでした。
トラベルミンを処方されていています。薬効もあり、今では会社を休まなければならないような状態はほぼなくなったそうです。
が、動揺感は止むことなくつづいていて、それも調子に波があるというのが現状でした。
1ヵ月位前からの右肩関節伸展不全の訴え(痛みと可動制限)もありました。
慢性的な首から肩の凝り感も訴えておりました。

ベッドに仰臥位になってもらったところ、仰臥位でも動揺感が起こっていると言います。
その揺れが「感じなくなるような体位や動き」を尋ねました。
すると、「いつもは左を向く」と動揺感が治まるそうです。確かに治まるようです。
頚反射の問題がありそうです。耳石について説明を受けたり、運動を指導されたことはあるか聞いてみましたが、「耳石の問題はない」と言われたようです。

そこでもう一度、頭部を正中位にして、今度は目を閉じてもらいました。
すると、「あっ、止まりました」。
眼反射かもしれない。目を閉じたまま、眼球運動と「刺激/抑制バランス」をチェックしました。
結果は、左外直筋(+)、右外直筋(-)、CW(+)/CCW(+)でした。

大脳鎌と小脳テントのテンション、顔面頭蓋をリリースし、眼反射の異常なシグナルを調整しました。
これで開眼してもらうと動揺感が治まりました。

それでも、左の橈骨と右の脛骨に停滞軸を感じます。それもリリースして、立位での感覚を確認してもらうと、「止まっている」そうです。「歩いても揺れがない」と言ってましたので、眼反射の問題が鍵かもしれません。右肩の伸展不全も問題なく可動出来ました。

さて、この患者さんには、眼反射に対する治療の持続性や変化を確認しながら治進めることになりますが、併せて眼球運動のエクササイズを指導しておきました。
この運動は効果的だと思います(同様の症状の患者さんで経験しています)。

S先生、ご紹介ありがとうございました。ご報告としておきます。
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by m_chiro | 2012-07-29 11:50 | 症例 | Trackback | Comments(0)
それってホントの話ですか?
昨日みえた県外からの患者さんは、昨年末に負傷した男性である。
会議が終わって階段を降りているときに、左膝がガクッとなり踏み外しそうになったらしい。
足を踏むと激痛で、やっとの思いで帰宅したそうだ。
しばらく安静にしていたが、痛みも引かず腫れてきた。

こうしてはおれないと、近所にある総合病院の整形外科を受診。
X-rayで問題ないが、膝に水が溜まっているので抜きましょう、ということになった。
抜かれた水はドス黒い色をしていたそうだ。
医師からは、安静にしていないで膝の屈伸運動をするように指導された。
帰宅してから、指導に従って寝ながら膝の屈伸運動を行っていたが、痛みは益々ひどくなり歩けなくなった。
3日目に水を抜いたときは、鮮血混じりの水だった。

不安に思った患者さんは、県庁所在地の総合病院まで出向いて診てもらうことにした。
X-rayで、大腿骨下端にV字状の亀裂が見つかり「骨折」と診断された。
ギブスをされ、最初の病院で治療するようにと言われ、X-rayを持たされて、前医のところに戻ってきたのだそうである。

その前医は、「折れてたのか」と淡々としたものだったとか。
2か月後にギプスが外れ、リハビリをしてもらえると思っていたら「これで終わり」だと告げられた。
「リハビリはしてもらえないんですか」と聞くと、「勝手にやらないように」とストップをかけられた。結局、普通に生活するように勧められただけだった。
「何か注意することはありますか」と尋ねると、「ジャンプしたり、走ったりしないこと」と言われる。

骨折を見逃して運動を勧め、リハビリ期に入ったのにただ単に普通の生活を勧める。
それって、ホントの話ですか?
これは、その医師の個人的資質や考え方の問題としか思えないが、レッドフラッグが除外できたら普通の生活に戻すことは確かに重要な働きかけである。
ところが痛みや不調を抱える患者さんは、不安や痛みを恐れて普通に動かせなくなる。
だから「habit(癖、習慣的行為)」を「re(再度、新たに、更に)」するために「re-habilitation」が求められるのだろう。


この患者さんはギプスが外れて4か月が過ぎても、いまだに跛行する。
「ジャンプや走ること以前の問題なんだ」と憤慨している。

これではあぐらも出来ないはずだ。
主に膝の屈曲と伸展の双方向での可動域改善リリースを行い、歩行の運動認知法を試みた。
傷害そのものは治っているのだから、あとは可動域が改善すれば跛行せずに歩けるはずである。
それでも正常歩行ができないのであれば、歩行機能の誤った認知をリセットすればいい。
歩行させると、左膝に意識が集中し過ぎていて歩行運動機能がバラバラの感じである。
運動認知のプログラムをリセットさせると、3回目で「あれっ! あれっ! ちゃんと歩けるヨ!!」。劇的に歩行が変わった。
その様子を待合室から見ていた人たちからも拍手が起こっていた。
患者さんの不安を残したままで、ちょっとした働きかけをする労力を惜しむべきではないのになぁ~。
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by m_chiro | 2012-06-28 14:18 | 症例 | Trackback | Comments(0)
身体機能の組織化と眼球運動
身体機能の組織化と眼球運動
症例1:「身体の左半身が沈んでいく....」


昨日、治療にみえた20代の患者さんは、身長180㎝以上の筋骨隆々とした立派な体躯の青年だった。まるでアメフトかラグビーの選手のような体格である。仕事がデスクワークなので運動不足にならないようにと、ランニングやエクササイズなどで鍛えているそうだ。

一見するに健康そのものようなこの男性の訴えは、「身体の左半身が沈んでいくような感じで傾いていく」というものだった。
メデイカルチェックで異常は見当たらない。それで治療にみえた。

望診すると、捻じれた停滞軸が感じられる。
抑制バランスをチェックすると、見事なほど反射の遅延がみられ、顕著に左一側性に抑制バランスがある。
c0113928_1783851.jpgこうした身体機能を組織化することができないでいる症例では、眼球運動の機能の偏向がみられる。
眼球の運動軸が身体の筋運動に影響を与えているからだ。

この患者さんは左右の上直筋、左の外直筋と右の内直筋、左下斜筋による眼球の運動がスムーズではない。
反時計回り(CCW)の眼球運動では良好であるが、時計回り(CW)の運動では1時~3時方向での回転運動で眼球が動揺する。

出力系は脳から足部へと、筋運動のトーンを統合する組織化が行われる。
だから眼球運動の偏向による頭位は、治療上かなり重要なカギとなる。
眼球運動頭位反射(OCR)の異常というわけではなく、眼球運動の誤差修正が行われていないためではないかと考えている。

運動のコントロールは、神経レベルでは大脳基底核位が制御している。
しかし最終的な誤差は小脳が行う。小脳は前庭系と密接にアクセスし、誤差学習能力を発揮している。運動機能プログラムの誤差調整が十全でないのだろう。

左Tiltがあり、先ずはそれをリリースしてみたが上体の回旋軸の停滞が残る。
そこで眼球運動を調整するために、小脳テント、顔面頭蓋、後頭骨-Cのつくる菱形ライン(私はダイヤモンドヘッドと呼んでいるが)のテンションを調節した。
まだCWで2時方向の動きが飛ぶので、これは眼球運動の認知を行う手法でリリースした。これで停滞軸が消失した。

立たせて歩かせてみると、「全然違う」と言う。
身体の運動機能については眼球運動のチェックは欠かせない。頭位や眼球の軸運動の偏向は、左右の筋のトーンを変えて眼球運動を代償するからである。
だから感覚のミスマッチも起こるのだろう。
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by m_chiro | 2012-06-05 17:09 | 症例 | Trackback | Comments(0)
皮肉のひとつも言いたくなるなぁ~!
他県から治療にみえた保育士さん。
今年から赤ちゃん担当になって、抱っこにおんぶしての仕事になった。
右膝が痛み出して整形外科に受診すると、お決まりの診断になった。
膝の軟骨が減っているそうで、週一回のヒアルロン酸の注射を続けている。
それでもよくならないから、と治療に見えた方である。

その方に、帰り際「今度は友達を連れてくるのでみてもらえませんか」と聞かれた。
「お友達も膝が痛いの?」と聞き返すと、「いや、田植えの手伝いをして肩のスジが切れたので、手術するんだそうです。
スジが切れたのなら、場合によっては手術も止むを得ない話だ。
が、田植えの手伝いでスジが切れたなんて、一体どんな手伝いだ?

ともかく一度みてほしいと言って、昨日連れて見えた。

ちょうど1年前の農繁期には、腰痛と脚の痺れ感でMRIを撮るハメになった。
結果的に「L5腰椎すべり症」の診断を受け、手術を勧められている。
今はしたくないと断ったら、「今に脚が麻痺をして車椅子生活になるぞ」と言われたそうだ。深部反射も正常なのに、麻痺という予測は「腰椎すべり症」を根拠にしているのだろうか。それに、「今に」って一体いつの話だ?

会社務めであるが、半農なので農繁期になると休日は手伝いをする。
去年、今年と、2年連続で具合が悪くなったのだそうだ。
去年は腰で、今年は左肩が痛みだした。夜も左肩が痛んで目覚める。それで又、整形外科を受診した。

X-rayと超音波検査で「肩のスジが切れているから、手術になる」と診断された。
来週には、MRI検査の予定が組まれたそうだ。

自動運動でも肩関節の可動域は、ほとんど問題ない。
伸展運動だけが最終可動域で、三角筋後部から三頭筋にかけて痛みを訴える。
負荷をかけた動きで、それが顕著になる。それでも、最近は痛みも大分楽になったきているそうだ。
明らかに上腕三頭筋膜のスベリ運動ができていない。そのリリースを行うと、痛みは7割ほど軽減した。伸展可動域を改善するテーピングを行う(上腕骨頭の突出部の皮膚・筋膜を弛緩させる方向に伸縮性テープを貼った)。すると、三頭筋への負荷運動でも良好になった。明らかに筋筋膜痛である。

「本当にスジが切れているって言われたの?」
「はい、超音波検査で言われて、来週MRIです。今、手術は困ると言ったら、スジは再生できないから手術以外ないそうなんです」。

腰はどうなったとも聞かれたようだ。
「今でも痛む時はあるが、脚の痺れは治った」と言ったら、「それなら腰の手術は今でなくてもいい」という話になったようである。

筋筋膜の問題に意識が向いていないと、とんでもない診断に強引に結びつけられてしまう。
それとも別の狙いが働いているんだろうか。
「そのセールストークに学んだ方がいいでしょうか?」と、皮肉のひとつも言いたくなる診たてだなぁ~!
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by m_chiro | 2012-05-27 08:40 | 症例 | Trackback | Comments(6)
ブラッドパッチ承認の明と暗
脳脊髄液減少症 「髄液漏れ」先進医療承認 ブラッドパッチ、健保適用へ一歩

「脳脊髄液減少症」が先進医療として承認されることが決まったようだ。各メディアが報じていた。
本当に髄液漏れで苦しむ患者さんにとっては朗報だろう。

もう一つ、頭蓋療法を行う徒手治療の領域にも明るい兆しとも言えるだろうか。
頭蓋療法では脳脊髄液の循環を促す手法が使われたりする。。ところが脳脊髄液の循環は治療者の感覚に委ねられていて、その役割やメカニズムが明らかになっているとは言えない。

第一に、成書に記載されている脳脊髄液の循環経路そのものが怪しい。
大阪大学名誉教授・解剖学者の橋本一成先生の学説からも、そのことを知ることができる。
以前の記事「再び、第3の循環系「脳脊髄液」について①」でも紹介したが、従来の循環経路では水頭症になるだろうという話でもある。
ウサギやネズミにはクモ膜顆粒は存在しないらしい。実体顕微鏡でも、走査電子顕微鏡でも観察できないのだそうだ。にもかかわらず、アメリカの「脳脊髄液」という大書には「目に見えないクモ膜顆粒から髄液が吸収されていると考えられる」(橋本一成著「解剖学の抜け穴」)とされている。

ところで水頭症の病理では、脳室からクモ膜下腔へ、そしてクモ膜顆粒から静脈洞へ排出されるルートで通過障害がある交通性水頭症として病態分類されている。

クモ膜顆粒は果たして最終的な吸収・排出の部位なのか、実際の循環ルートも明らかになってほしいと願うばかりである。

それだからこそ脳脊髄液の問題に焦点が当たり、関心が集まることで明らかになることがあるのでは、と期待したいのだ。
逆に、根拠がないと証明されることにもなりかねない。それでも、これもまた一歩前進である。

その一方で、この疾患に関する暗部も見え隠れする。
十分な診断基準が確立されているとは思えないからである。
例えば、脳脊髄液減少症による頭痛に「ブラッドパッチ」を行っても、その「軽快率は半数程度」という報告もある(斉藤洋一著「頭痛・疼痛治療の最前線」、2004)。
ブラッドパッチの限界も指摘されているのである。
c0113928_1634798.jpg
例えば、この疾患の頭痛は、立位で悪化し臥位で消失するのが特徴とされている。
と言うことは、症状を追うことで診断が行われているのだろうか。

確定的には「RI脳槽シンチグラフィー」で髄液漏れを確認することになるのだろう(シンチグラフィーの図で明らかなように髄液漏れの痕跡が認められる)。

ブラッドパッチで軽快しなければ外科的に硬膜の破れを塞ぐのだろうが、二者の手法の違いを分ける基準は何だろう。

ブラッドパッチの軽快症例は、本当に「脳脊髄液減少症」なのだろうか。

診断基準の曖昧さは、そのままこの病態のよく分からないところでもあるように思えてくる。
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by m_chiro | 2012-05-25 18:35 | 症例 | Trackback(2) | Comments(4)
えっ!、50肩?
朝、起きたら首が回らなくなった女性。
次第に悪化してきて、左右を見るのに首を動かさずに体幹を捻って確認しなければならなくなってきた。たまらず、整形外科医院に受診。
レントゲン写真を撮ったが「骨は何ともありません」。
「どうなったんでしょうか?」
「50肩です」
「えっ! 50肩ですか?」

結局、骨には問題がないという理由で「50肩」とされたようだ。
この整形外科医は、画像や検査所見に問題がなければ医師の務めを放棄するのだろうか。いや、そんなことはないはずである。
MPSの概念が欠落していることが根本的な問題なのだろう。
概念がないということは、存在しないことに等しい。
存在しないのだから、MPSに思いが至らないのは当然である。
だから、お医者さんが悪いわけではない。MPSの概念がなく、教育されていないのだから「MPS素人」とでも言えようか。
それでも「50肩」では、あまりにも芸がない。

「50肩」とは俗称で、正しくは「肩関節周囲炎」である。
当然、肩の動きを行わせれば痛みや可動制限を確認できる。
この患者さん、肩関節の運動域は全方向に痛みもなく可動できる。
ところが頭位の回旋と側屈で、左の上僧帽筋部に痛みが起こるのである。

最も強い痛みは左回旋と左側屈である。その強い痛みは肩甲挙筋の領域に1ポイントに現れる圧縮性の筋・筋膜の障害である。そのポイントにソマセプトを貼付して、再び可動させると可動範囲が随分広くなった。
左側屈では、斜角筋に1ポイントの強い痛みが出現する。この痛点にもソマセプトで対応し、後は主な機能障害あるいは副次的な機能障害を調整した。
先に痛みを抑えて、機能障害の治療に入ると、やり手にとっては治療しやすい。

今日2回目の治療にみえたが、動きにも日常生活にも問題なく良好だった。
「50肩なんて、何なんだろうあの医者!....」とは、患者さんの弁。
筋・筋膜の概念も、痛みの教育も、残念ながら医学教育にはないらしい。
存在しないということは、そんな痛みはないことである。
そして、それは筋骨格系の痛み症状の患者さんにとって、とても不幸なことでもあるのだ。
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by m_chiro | 2012-04-19 16:13 | 症例 | Trackback | Comments(0)



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