カテゴリ:症例( 134 )
こんなアレルギー症状もあり、かな…
先日みえた医療関係者の女性。
出勤の運転中に胸が苦しい感じになり、気分が悪くなった。
なんとか仕事について凌いでいるうちに落ち着いてきたが、昼食後からまた増悪した。
動悸、吐き気、呼吸が苦しいなどの症状が出て、職場から直行して内科に受診する。

自律神経の問題じゃないかと言われ、血液検査を行ったようだ。
検査の結果待ちということになったが、内科医院からの帰路に治療予約の電話が入った。
結局、その日の仕事を終えてから来院したのだが、夕方には症状も大分落ち着いていた。

「何だったんでしょうね? 自律神経がおかしいのでしょうか?」
そうした不定の症状には当然のごとく自律神経は関係するのだろうが、なぜ突然そうなったかが問題である。

腹部の望診と触診をすると、小腸周辺のトーンが弱い

「何か朝食と昼食で食べたものに関係してるんじゃないの? 何を食べました?」
「朝は食べないので、昼はスパゲッティを食べました」

「じゃ、油類かなぁ~」
「油は使っていませんから…」

「えっ、スパゲッティって油を使うでしょう」
「油を使わないで私が作って、お弁当にして持っていくから..」

「あっそう!、食にこだわりでもあるの?」
「LDL値が高いんですょ。中性脂肪も…、それで気を付けてるんです」

「いくらあるの?」
「LDLが157….」

「HDLは?」
「82…」

「HDLとLDLの比率が1.5以下じゃない。何の問題もないと思うけど...。ま、いいや! それで、他に食のこだわりはあるの?」
「植物性タンパク質を摂るようにしているので、毎日、大豆を多く摂るようにしています」

「納豆とか?…」
「いや、納豆は食べないですね。豆腐や大豆を多く使います」

「へえ~、朝は何で食べないの?」
「朝は、豆乳を飲むだけにしています」

「大豆食品のアレルギーでもあるのかなぁ~?」
「えっ! そんなのがあるんですか???」

「別に皮膚炎が起きなくても、拒否反応の一種だったらアレルギー反応とみてもいいんじゃないの….、大豆かどうかは分かりませんけどね」

と、いうわけで筋力テストを使って確認してみることに…..。
幸い冷蔵庫に豆腐や納豆が入っていた。
大豆もあったし、ついでにサラダ油、砂糖、大豆、納豆、豆腐で筋力の抑制反応を調べてみた。
結果は、納豆以外の大豆食品で筋力ダウン、まったく力が入らない。砂糖とサラダ油には反応しなかった。

「エ~ッ、なんでですか…??」

近年、リーキーガット症候群(LGS:Leaky Gut Syndrome腸管壁浸漏症候群)が話題にのぼる。
あまり馴染みのある症候名ではないが、腸の粘膜が炎症などで微小に傷み、消化しきれない有害物質やアレルゲン、タンパク質や脂質までが浸漏して腸粘膜から体内に取り込まれてしまうために起こる症状とされている。

その症状についても確立されたものではないが、疲労、膨満感、食物アレルギー、関節炎、偽線維筋痛症、筋痙縮、高コレステロール、過敏症状、解毒不全、免疫力の低下、抗体過剰生成などが発症するとされているようである。

そこで昨年、勉強した「Neuro-Auriculo Therapy」の作用効果を試してみた。
耳介ポイントへの周波数刺激が筋の抑制バランス反応にどんな影響を与えるのだろう。

刺激ポイントは次の3点に絞った。
1.肝臓ポイント79に対して両側から5hzで、変化なし。
2.マスターオシレーションに同じく5hzで、変化なし。
3.小腸ポイント65に5hzで、抑制反応が解除された。

おそらく小腸からの腸間膜浸漏が起こり、大豆類に対する過敏反応として現れたある種のアレルギー症状ではないのだろうか。
当分、大豆類の食品を控えて症状が再発するか様子を見てもらうことに....。

それから1週間後に、血液検査の結果が出た、と報告があった。
高LDL値と高中性脂肪値、尿たんぱく(+1)、それ以外の問題はないとのこと。
症状の再発もない。

食後の不快症状には、食物アレルギーやLGSなども考慮に入れておくと治療やアドバイスの助けになるかも....。
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by m_chiro | 2014-04-02 16:15 | 症例 | Trackback | Comments(0)
機能的問題は複合する② 肩関節の固着に肝機能が関わるか!
機能的問題は複合する②
肩関節の固着に肝機能が関わるか!


先日、治療にみえた50代の男性。右肩関節の動きが悪い。
長年に渡って右肩の動きの悪さと苦しさが気になっている。
屈曲はなんとかいけるが、外転と伸展の動きが動き難い。
外転は90度の領域から制限されるが、完全なロック状態ではない。伸展の動きもひっかかる。

望診すると、右肩関節周囲と肝臓周囲が固着している。
さて、どちらを優先して治療すべきか。
「新マニピュレーションアプローチ」[科学新聞社刊)のバラルD.O.は、その著書の中で肩関節の治療の解説に120頁を費やしている。
それによると、基本的に「肩」は「6つの関節複合体」として捉えなければならない。

1.肩鎖関節、2.肩峰下関節、3.肩甲上腕関節、4.肩甲胸郭関節、5.肩鎖関節、そして第6の関節である烏口鎖骨複合体の「6つの関節複合体」を考慮せよ、ということである。
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当然そこには、それぞれの複合体を構成する骨、関節、筋肉が含まれる。
この患者さん、6つの関節複合体の全ての領域で大なり小なり可動制限があった。
肩の複合性局所疼痛症候群の原因も多様であるが罹患率は長く、退縮性関節包炎、五十肩に発展しやすいとされている。

この患者さんも肩の治療を長年続けていたにもかかわらず、肩の固着がリリースされていないのだ。ということは、このケースでは問題が他にあるのだろう。

「新マニピュレーション」の著者たちは、序文で「右肩関節周囲炎は、しばしば肝臓機能障害の結果である」と述べている。
この患者さんの肝臓周辺の固着した停滞感は、機能が複合していることを物語っているのかもしれない。

念のために健康診断の成績を聞いてみると、γ-GTPが高値のようだ。
「酒を飲むからなぁ~」と自嘲気味に言う。
γ-GTPは胆道菅酵素とも呼ばれている。だから胆汁の鬱滞にも関わる。
そこで最初に胆汁のドレナージを試みた。

するとどうだろう、肝臓周辺が息を吹き返したように柔軟になった。
それでも内部に停滞感のある部位がある。ちょうど肝右葉の門脈・静脈の分枝するところの外側部周囲であろうか。
その内部の停滞感がリリースされるポイントを探ると、空間に取れる。
そこから停滞部に干渉させていると、停滞感がリリースされた。
実感できなければただの怪しい方法だが、空間からの方がとても変化することがある。これを私は「なんちゃってガンマ・ナイフ」と呼んでいるが、感覚の問題なのでその機序はよく分からない。
おそらく組織の持つ周波数との干渉なのであろう。
例えば、波形の山の部分をプラス1、谷の部分をマイナス1とすると、その2つの周波数が同調すればプラス2とマイナス2の振幅に増大する。倍返しだ。
ところが山のプラス1と谷のマイナス1が合体すると波形は0になる。つまり組織のトーンも変調する。そんな関与なのだろうか。

さて、肩関節はどうなったか。
肩の複合体も随分とよく動くようになっている。肩甲上腕関節と第6の烏口鎖骨複合体がちょっと硬い。
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これらは上腕骨・骨内テクニックと肘内側部からのリリースをおこなった。
これで患者さんに上肢の動きを確認してもらう。
「外側から挙がらないんだよなぁ~….、アレッ挙がる。挙がりますね。肩の治療をしたんですか?」。

お酒をセーブするように忠告したが、果たして節酒できるだろうか…..。

機能的な問題は複合する。この視点はとても重要である。
バレルD.O.の「新マニピュレーション」(上肢編)は、複合する機能と手法を学ぶ良書である。
続巻の刊行が待たれる。
これからも「機能的な問題は複合する」をテーマに症例の紹介を試みようと思う。
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by m_chiro | 2013-12-20 09:20 | 症例 | Trackback | Comments(0)
もしかして、あの腰痛は関連痛だったのだろうか!?…
2年ほど前から腰痛に悩まされるようになった女性。
重い物を持ったり、階段の昇り降りなど、よく動いた後に増悪する痛みである。
朝起きるときも、しばらく辛い。
整形外科では骨粗鬆症と診断され治療中でもある。

腰部の可動動態は骨盤の左側方移動がスムーズで、その他の全方向における可動動態で腰痛があり、体幹伸展と骨盤右側方移動の動きに可動制限がある。
姿勢制御系を調整して、右鎖骨胸骨端の固着をリリースした。

数回の治療で動きも改善し、腰痛も解消した。
ところが腰痛が消えたと思ったら、今度は心窩部の周辺が重苦しくなってきたと言って、また治療にみえた。

胆嚢周辺膜のトーンが高くなっていて、逆に心窩部のトーンは下がっている。
内圧を追うと心窩部に停滞を感じる。心窩部を触察すると不快感がある。
緩解因子はない。
彼女はストレスも抱えていたので、もしかしたら胃炎でもあるのでは?….。
そんな状況で、内科での受診を勧めた。

胃カメラでは、病理的所見が見つからなかった。
ところが超音波造影では、胃の後方に影があるとされた。
それでMRIの予定が組まれた。その結果は「リンパ腫」だった。

1週間の入院検査が行われたが、結局は大学病院に転医してPETによる検査が行われた。
そこで「腹部の悪性リンパ腫」と確定診断が出された。

もしかして、あの腰痛はリンパ腫からの関連痛だったのだろうか…。
思わぬ隠れた病態があるものだ。
疑わしい症状や病的徴候に出会ったら、医療との連携を視野に入れておくことは欠かせないのである。
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by m_chiro | 2013-09-30 18:24 | 症例 | Trackback | Comments(0)
虫垂炎、触診手技
昨日の記事「ベッドサイドの話題から、虫垂炎の典型例を学んだ」に、sansetu先生がコメントでERのドクターのブログ記事を紹介してくれました。

とても分かりやすく、勉強になります。

以下のタイトルにクリックしてみてください。

「救急医の挑戦 in 宮崎」より
「虫垂炎~盲腸の診断は奥が深い~」の記事。

この記事の中に、下のブログ記事で虫垂炎の触診手技が書かれていました。
参考までに。腹部の触診や圧痛検査にも応用できそうです。
target="_blank">"H Panji Irawan:Pemeriksaan Appendicitis"より

The Posas Sign:右大腿の受動的伸展(患者は左側臥位)
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検者が患者の右腰部にカウンターの抵抗をかけてるときに、患者は右大腿を進展させる。
その時に大腰筋が伸張されて虫垂部が刺激される。

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The obturator sign大腿屈曲位からの受動的内線による痛み(患者仰臥位)
股関節屈曲、大腿内旋位で、検者は大腿骨が内旋するのを膝外側の黒い点で抑え、その間に患者は下腿を速報に動かすときに傷みが出る。
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炎症を起こしている虫垂は、検査による動態で内閉鎖筋のストレッチによって接触刺激で痛みが起こる。
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反跳痛を引き出す触診手技

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腹部の触診法
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by m_chiro | 2013-09-26 17:11 | 症例 | Trackback | Comments(0)
ベッドサイドの話題から、虫垂炎の典型例を学んだ
患者さんに聞いた話。ご自分の20代の息子さんのことでした。

その息子さんが強烈な腹痛と吐き気に襲われ、救急診療科へ。
担当の医師は消化器科のドクターだった。そして、このドクターは「食中毒」と診断した。抗生物質等を処方し、「これでよくなるだろうから、明日は会社に出でても大丈夫!」と断じた。

「食中毒」と言われても、家族と同じものを食べたのに「なぜ自分だけが….?」

腹痛や吐き気は治まるどころか一層悪化。
あげく、墨汁のような便が出だした。
翌日の早朝に、前医の病院に電話で状況を説明したところ、「すぐに来るように」指示される。それでも診察が始まるまで、待合室で辛い時間を待たされる有様だった。

診察したドクターは前医とは別の消化器科の先生で、カルテを見て「食中毒か…」。
墨汁のような便は「悪いものが出るのだから大丈夫、白血球数も下がってきている」と言って問題視されなかった。

帰宅してもドンドン具合が悪くなっていき、その息子さんは「ぼくは死ぬんじゃないか!」と言い出す始末。お腹は膨満してきて、夜になって堪らずに再び救急診療科へ。

その夜の担当医は外科医だった。
診察するなり「これは大変だ!」、盲腸が化膿して破裂し、腹腔中に膿が….。
すぐに手術しなければならないが、病院に今、麻酔医がいないので、近くの手術可能な病院に搬送するからと、急遽その外科医も同乗して手術することになった。
幸い、快方に向かっているとは言え、命に係わる大失態だった。

腹部の触診もなかったそうだから、もしもそれが事実なら食中毒と予断して診察のプロトコルを省いた大失態である。それでも触診すれば虫垂炎が確実に確定できるわけでもないだろうが、特に外科医は際どいところでの診断が求められている。

虫垂炎の判断は、マックバーネー点の身体反応から推定するという古典的な手法がある。
しかし、症候は必ずしも典型的にパターン化されて現れるとは限らない。

基本的には右下腹部の「圧痛」と「反跳痛」を確認するようであるが、他の疾患が否定されていれば先ずは「虫垂炎」とみなすのが原則のようである。

もしも画像で確認できなくても、開腹して目視することで初めて「虫垂炎」と確定されることもあるらしい。
そうなれば、疑わしきは開腹してからの確定となるのだろう。

「診断は正確に!」と言っても容易な話ではないということだが、今回のケースで「食中毒」の確定は、いったい何を根拠にしたのだろう。
腹痛、嘔吐の訴えに、どう対応したのだろう。
虫垂炎は頻度のとても高い腹痛にはじまる。触診もしなかったなんて想像できない。

もしも、我々がそうした患者さんに遭遇したら、どう対応すべきなのだろう。

典型的なパターンは、食欲低下にはじまり、心窩部の痛みや臍周囲が間欠的に痛むようになり、悪心や嘔吐が起こる。
嘔吐が腹痛に先行することはまずないとされ、痛みが右下腹部に移動してくるようになると微熱がでるようになる。
もしも穿孔があったりすると高熱を伴ったりする。


これが虫垂炎の典型的な徴候とされているようだが、必ずしもパターン通りではなく、腸炎との鑑別診断に悩まされるのだそうだ。
それだけ誤診も多いのだろうが、典型的パターンであれば誤診はまずないとされている。
今回の話題の症例は、典型例を触診もせずに誤診したのだろう。悲惨なことだった。

だから、①典型例か否か、②右下腹部の圧痛と反跳痛の身体所見があるか、典型パターンでは、これが決め手となるのだろう。

仮に心窩部の痛みや臍周囲の訴えであっても、右下腹部の圧痛を確認したら躊躇うなかれだ。
病的サインを確認したら、医療機関との連携を視野に入れておかなければならない。

幸いにも、私の虫垂は、いまだ健在である。
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by m_chiro | 2013-09-25 17:17 | 症例 | Trackback | Comments(4)
危うく「寝違い」にするところだった
老婦人が、ご主人に伴われて治療にみえた。
昨日の朝起きてから首が回らなくなったのだそうだ。
痛くて、痛くて、こんな辛いことはない!….、と訴える。

「朝起きて痛みを感じたのだったら、寝違いでもしたのかもしれませんね」
「寝違いじゃないと思うんだけど…..」
「何で寝違いじゃないと思うの?」
「朝起きた時は大丈夫だったんです。けど、朝ごはんを食べた後から痛み出して首を回せなくなったんです」。
(摂食と関係あるのかな...)

それで、病院の整形外科に行ったそうだが、X-rayで問題がないと言われて終わりだった。
でも辛いので、降圧剤の処方を受けている内科医院で診察を受けることにした。

冬期間の4か月ほどで体重が5㎏減り、最高血圧が170㎎だった。
医師は、胃カメラ、血液検査などの精査を指示し、別の病院に紹介された。
結果は、一週間後に判明する。

頸部の可動域をみると、右回旋に痛みによる制限がある。
発痛部位は、右胸鎖乳突筋の3分の1ほど上部の領域にある。
左回旋は動きやすいが、それでも右の同じ部位が痛む。
仰臥位は長くはできない、寝て起きる動作が大変だと言う。
歩行で腰部も痛むが、それよりも首の痛みの方が強くて歩くのもしんどい。
座位が最も楽な姿勢のようである。
鎖骨の胸骨端や上部肋骨も固着している。
座位のまま、間接的手法で筋スパズムのリリースを試みた。

筋が半分ほど弛んだ頃に、患者さんが大きく深呼吸をした。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。なんか空気が抜けたようにゆっくりしました…」

頭部を支えるために前頭部に手を添えたら….「あれっ!、熱があるんじゃない…」。
「熱はないですヨ」
「測ってみたの?」
「いいえ、風邪もひいたこともないし、熱が出たことがないから….」
「ちょっと熱を測らせてもらえるかな….」
37.8度だ。夕方にかけてもっと上がるかもしれない。

「首が痛むだけでなくて、身体全体が痛だるくて、シンドイんじゃないの?」
「ええ…、辛いです」
風邪症状はなかったそうだ。

風邪やインフルエンザもそうだが、全身疾患や感染症などの熱に伴う筋肉痛がある。
細菌やウイルスを取り込んだマクロファージは、インターロイキンという内因性発熱物質を出す。
このインターロイキンは、筋肉にも運ばれてプロスタグランジンE2がつくられる。
プロスタグランジンE2は酵素(リリソーム)を細胞外に遊離して、筋肉のタンパク質を分解するために筋痛が起こるのである。

発熱によって痛みが起こる仕組みであるが、さて、この患者さんの問題は熱の原因にある。
内科医院で再診を勧めたのであるが、危うく「寝違い」にするところであった。
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by m_chiro | 2013-04-24 07:49 | 症例 | Trackback | Comments(1)
MPSの概念がない痛みの診断基準なんて「帯に短し」だなぁ~!
先日みえた中年のご婦人は、両膝に手をついて脚を杖代わりにしながら治療室に入ってきた。次のような経過を辿って歩くのが困難になったようだ。

10日前の朝のことである。起床して、歩きだしたら足元がヨタヨタして歩きづらい。
次第に歩けるようになったが、それでも右鼠蹊部や股関節周辺に多少の痛みがある。
そんなことが3日ほど続いて、4日目の朝にはとうとう歩けなくなった。
膝に手をついて杖代わりに歩かなければならない。右の鼠蹊部に腫れや痛みがある。

病院の整形外科を受診し、X-rayでは骨には問題がない、とされた。
でも、どこかに病巣があるかもしれないからとMRI検査を予約される。
それも一週間後ということになった。
MRI検査まで我慢しているのも辛いから、と治療にみえたのである。

この患者さん、寝ていれば痛まない。
寝返りなど動くと右股関節周辺が痛む。
直立歩行は辛いので、膝に手をついて腰を曲げて歩く。
動作痛で、深部反射は(+)である。
骨折など関節の病変もなかったわけだから、先ずは筋・筋膜障害を想定できる。
だが、更にMRIの画像診断の手順が選択された。

特に、股関節後面の筋群に過緊張と圧痛点(TP)がみられた。ある意味で単純な筋の病態である。
その筋群に負荷をかけたのであろうことが推測できる。
痛みの前日の過重負荷が問題かもしれない。

ところが本人は考えあぐねている。
例として、股関節を外転させる運動を模擬で示すと、ヨガ教室でそんな運動をしたことを思い出したようだ。「股関節はいのちだ」と教えられたらしい。だから、苦手な股関節の外転運動を一生懸命やった。
でも、この運動は股関節に「良い運動」と思っているので、憎悪因子として思い至らなかったようである。

TPのある筋群をリリースすると、直立して歩けるようになった。2回目の治療では通常歩行も可能になった。
MPSに思いが至れば決して難しい病態ではなかったのだが、治療は特異的な病巣の有無が画像的に明確になるまで待たされることになる。

昨年末には、筋骨格系の問題に対する診断基準が発表されたばかりである。
そのことを記事にした。「腰痛診察の在り方が変わるか!?」
そこでは、85%が「生物・心理・社会的モデル」とされ、画像診断は必要がないものとしている。
それでも画像診断依存は変わる気配もない。

加茂先生のブログ記事が明確に分けている「崩れゆく整形外科的理論」
痛みの画像診断は「悪性腫瘍、感染症、リウマチおよびその周辺の炎症性疾患、骨折、生来の不具合」の鑑別の意味しかない。
先日、先々日、ブログに書いたように、最近は「慢性痛」がトレンドだ。しかし、整形外科医の出番は少なく、主として生理学者やペインクリニック系、心療内科系が主役だ。整形外科の理論だと慢性痛をうまく説明できない。整形外科医はかわいそうなことに、人力車時代の勉強をさせられたわけだ。少しずつ頭を切り替えていかなくてはならない。痛みの損傷モデルでは生理学的にも疫学的にも臨床経過からも説明できない。
生物・心理・社会的モデル(機能的疾患、functional somatic disease、筋痛症モデル)」

MPSの概念がなければ、どこまでも特異的な病態を画像で探ろうとするのだろう。
結局、MPSの概念が欠落した痛みの診断基準なんて、「帯に短し」と言わざるを得ないように思う。
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by m_chiro | 2013-04-03 22:48 | 症例 | Trackback | Comments(0)
痛む場所にリリース・ポイントがあるとは限らない
若いママさんが、右膝関節内側の痛みを訴えて治療にみえた。
しゃがむ動作で最大屈曲ができない。
思い当たることはないが、子供を抱っこして膝に負担がかかっているからだと思っているようだ。
膝関節の可動は制限されていない。

その痛む部位からの内圧伝導をみると、左胸郭の5-6肋骨のところで留まる。
そこを触診すると身体を捻じって痛がるジャンプ徴候のポイントがあった。
「何でこんなところが痛いの!」
「さあ~、何んでだろうね….」

その圧痛ポイントに、リリース方向のトルクを加えて緩むのを待った。
そのまま吸気について行くリコイルを行った。
今度は触圧しても大丈夫になる。
背臥位のまま右膝関節を最大屈曲位に誘導した。
「あ、いい感じ!」
立位からしゃがむ動作をさせる。
「大丈夫、できます!」

身体にはいろんな筋・筋膜のワナ(下図)がある。
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下の写真の男性は活動中のラセン線が明瞭に見て取れる。
一側の肋骨を対側の臀部に近づける姿勢制御がある。Yawである。
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内腹斜筋のワナから、ASISの転車台で下肢下方に走るエネルギーラインがある。
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(図はすべて「アナトミー・トレイン」より)


「解除キー」の存在は、必ずしもトリガーポイントのマニュアル通りではない。
だから機能的診察は重要なんだ。
内圧変動の停滞を探ると、そんなポイントも観えてくることがある。

「解除キー」の存在はおもしろいねぇ~。
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by m_chiro | 2013-03-14 10:42 | 症例 | Trackback | Comments(0)
頚性めまい
今朝、家内がベッドから出ようと半身を起こしたときに、「あぁ~、ダメだ! 目が回る!!」と叫んで、そのままベッドに寝込んでしまった。
見ると、眼をつむって頭を押さえこんでいる。

「眼をつむってても回ってる?」
「回ってる~!」

「眼を開けると、どう?」
「回ってる~!」

おそらく「頚性めまい」だろう。
医学的には「良性発作性頭位めまい(BPPV)」と言うのだろうか。

発作は長くは続かない。頭を動かさなければ、だぶん2分以内でおさまる。
おさまったところで、頭位を中間位にして眼球運動をみた。
頚性めまいでは、眼球運動による発作は起きにくいはずである。
全方向で筋力が抑制されている。クロストーク現象(信号の誤作動)だ。
脱抑制が起こるポイントを調べると、右足関節の背屈の動きで影響される。
右足関節の可動を調整し、それぞれの趾先から牽引と圧の伝導をみると第1趾と3趾で停滞している。
そのラインをリリースすると眼球運動も安定し、左水平位での抑制だけが残った。
左水平位での眼球運動の抑制反応は、視経路の停滞をリリースして解く。

頚部を触診すると、右項部に一側性の過緊張がある。
頭頸部を中間位に維持したまま、項部のリリースを行った。

これで頭部の回旋が可能になった。
起きても大丈夫になったが、「頭の中が揺れている感覚がちょっと残っている」。
それも次第に安定し、何とか無事に今日一日を働いてもらえた。
やれやれ、である。

めまい(vertigo)・めまい感(dizziness)は、「空間における身体の定位障害の意識」として広義に解釈されるようになった。
固有受容感覚の異常は、空間での身体の定位に重要な問題をきたしやすいのである。
だから、脳の中から飛び出た理解も含まれるようになったのだろう。

頸椎は、平衡感覚に関わる固有感覚の重要な源である。
だから、こうしたケースでは緊張性頚反射の障害と考えてよいだろうが、それが関節由来か筋性かの判断となると、よく分からない。

ところが、椎骨脳底動脈の血流障害を含む障害では、こうした単純な症候だけに限らない。
なぜなら、椎骨動脈や脳底動脈は前庭核にだけ血液供給しているわけではないからである。
だから、「めまい」や「めまい感」が優先的症状であったとしても、付随して最終的には虚血による徴候が現れるはずである。
例えば、視覚障害、複視、落下発作、三叉神経感覚障害、構音障害や片麻痺などなど。
動脈による血液供給を受けている組織に、虚血によって引き起こされる徴候がみられるようになるというわけである。
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by m_chiro | 2012-12-01 00:38 | 症例 | Trackback | Comments(0)
内臓膜からの関連か③
内臓膜からの関連か③
症例3:6年間苦しんだ右肩の痛み


農家の老婦人。6年ほど前から右肩が挙がらなくなり、整形外科で治療を継続中。
「50肩」とされ、鎮痛薬、骨粗鬆症の薬の処方と物療を行って来た。
肩関節は動くようになったが、動作痛が肩周辺部にある。
最近は、就寝時も肘周辺まで痛む。

最近の血液検査ではリウマチ反応陽性とされ(炎症所見は不明)、リウマチの薬を処方されたが発疹が出て中止された。
内科も受診するようになって、不眠症、逆流性食道炎、動悸の治療薬を服用中。

右上肢を90度以上の屈曲および外転で肩関節周囲に痛みが起こる。
そのための可動制限はみられないが、自発痛もある。
5~6年もの長い間、鎮痛薬を処方されている患者さんである。

腰部は後弯し、骨盤は右側方にややシフトしている。
このシフトの原因は容易に推測できる。
おそらく畑仕事の体勢であろう。
左肘を左大腿部に乗せて体幹前傾姿勢を支え、右手を動かして農作業をする体勢である。
このとき骨盤は右側方にシフトする。
こんな姿勢での作業が、この老婦人の身体の歪みとなって現れていることをみて取れる。
本人も「そのとおりです。いつもそんな恰好で働いてます」。

内圧変動をみると、左下腹部で強い停滞がみられる。
その部位には索状の過緊張と圧痛がある。
その停滞部位から右腹直筋が付着する第5~7肋骨部が牽引されるように停滞軸が続いている。
この軸が、農作業での体勢の支軸になってきたのだろう。

眼球運動が左上方斜位と左水平運動で抑制バランスがみられる。
左上方斜位の眼球運動は、左足関節部位で長趾伸筋を圧縮させることで脱抑制が起こる。
長趾伸筋にリコイルを行い、左上方斜位方向の眼球運動の抑制バランスをリリースする。

左下腹部の固着した深部の停滞は、右5~7肋骨部との2ポイント間で、抑制がおこる回旋刺激を肋骨部に加えながらリリースした。
緩んできたところで、右上肢の組み合わせ運動を追加して更にリリースを促した。

終わって、右上肢の外転運動も屈曲運動も痛みなしに動かせるようになっている。
「6年間も苦しんできた右肩なのに・・・・・」、と老婦人。

筋・筋膜系における索状の停滞緊張がもたらした機能的連鎖は、侵害刺激の閾値を低下させる内部環境がつくられるのだろう。
内臓膜系における機能の問題が長い間放置されてきたために、改善点がみつからなかっただけである。
痛む部位は結果である。
必ずしも、そこに原因があるとは限らない。
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by m_chiro | 2012-11-21 23:42 | 症例 | Trackback | Comments(0)



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また勉強になりました。
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