カテゴリ:症例( 138 )
「しびれ」の現象と病態❷
先日来、治療にみえている60代男性は、バリバリの農業人である。
老境にあるのに、体が頑健でまるで鋼のようだ。
身体に触れただけで、働いて出来上がった強さであることが窺がえる。
春の田植作業の後に管理の仕事などが続いて、身体の右半身の痛みとしびれを感じるようになったのだという。
そのうちによくなるだろう、と思っていたが一向によくならない。
奥さんに背中を押されて治療にみえたようだ。
「とにかく、いつもと違う。右半身の具合が悪い。よろしくお願いします」と丁重に挨拶された。
実直な人柄からも、一生懸命に働き続けた農業人の姿が窺がえるようだ。
具体的には、右肩からの上肢痛と右腰臀部から下肢にかけてのしびれを伴った痛みである。

しびれを訴える患者さんにも、必要な情報を聴き出してみた。
この患者さんからの聴き取りでは、疾患による病態をうかがわせる情報は見当たらない。
引っかかったのは、草刈作業による反復動作である。
草刈機を肩掛けに背中に担いで、斜面を移動しながら同じ方向への反復作業である。
その作業の2日目に、具合が悪くなってきて作業を中断している。

しびれや痛み症状の出方からしても筋筋膜由来であることが推測できる。
しばらく他の作業をしたが、一向に回復しなかった。
しびれ感は、右脚外側部にビリビリするような鈍い感覚があり、特に腓骨周辺から足背にかけて際立っている。
デルマトームにも一致しないし、神経系以外の疾患症候もない。

もし神経学的疾患が疑われたら、これも徒手療法の現場でも簡易確認できる。
筋緊張や微細な不随意運動はないか。
腱反射や振動覚、ロンバーグ(Romberg)テストなどは必須の検査だろう。
情動系もしっかりしている。

この患者さんの「しびれ」は、身体の機能的な問題に絞っていいだろう。
機能的な身体問題を考えるときに、重力場空間におけるヒトの空間認知能力は基本的に重要である。
いわゆる脳と身体における神経系の入出力によるシステムである。

この姿勢運動制御系を考えると、重要な3つの軸が想定されている。
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ひとつは垂直軸(Z軸:Yaw)であり、顔や体幹の左右の回旋あるいは上肢や下肢の動きに代償しながら関わっている。2つめは、前額-水平軸(X軸:Pitch)で前後屈に関わり、3つめは、矢状-水平軸(Y軸:Roll)で左右への傾斜に関わる。
この患者さんは、3つの軸の問題をすべて内包していた。
内包しながら右側から体側左への動きも固着している。

刺激の入出力に対する身体応答の反射を見ると、「右の小脳から右の基底核へ」の刺激ルートに、修正する反射応答がみられる。
同側刺激を意識しながら隔膜系では右→左(CCW)の刺激で横軸を調整する。
前脛骨筋のしびれる部位には張り付いたように膜の動きが感じられない。
そこをリリースしてはみたが、中々に頑強なので補足的に伸縮テープで補助しておいた。

2回目の治療に見えた時には、症状が限局されている。
右仙骨底部と梨状筋部の痛み、右全脛骨筋から足背のしびれ、である。
緊張性頚反射をみようと頭部の左右回旋をさせたら、左回旋で仙骨、臀部の痛みがなくなる、と言う。
頸部右回旋では痛みの再現が起こる。
右頸椎の回旋筋短縮によって回旋運動がスムーズに行かないのだろう。

観るとC1とC5の左回旋方向に抵抗がある。そこにアジャストすると、首を右に回旋させても右仙骨・臀部へ関連して出現していた痛みが消える。
関連痛には、こうした身体機能性がもたらす存在が潜象しているようだ。

そう考えると痛み系というのは、潜象機能系にも存在するのだろうと思える。
人の体を見ながら、潜象して機能系の存在を強く感じている。
トリガーポイントの存在、あるいはカイロ界の用語である椎骨サブラクセーションも、潜象する機能系からの反射で現れた現象系の存在なのだろう。
だからこそ直接的にトリガーポイントにアプローチしても鎮痛機序が働くのだ。要するに、どちらも鎮痛機序の入り口なのである。
潜象機能系は、潜象であるがゆえに取り組みが難しいのかもしれない。

この患者さん、地域で総出の草刈り作業にまた出向いた。
その間も治療を続けながら、今度は4日間連続で作業したが無事に役割を終えたようである。
症状は、前脛骨筋部のしびれがわずかに残っている程度になった。
それも筋肉負荷が過度になると出やすい。でも日常の生活に悩まされることはない。
右の前脛骨筋部の筋膜の可動に、まだ左右差が残っているし、足関節の底屈の可動も悪い。

これは現象系である。現象系には、在宅でできる方法を指導する。
患者さんの努力も必要である。
神経疾患による下肢の「痺れ」であれば、神経の走行に一致するはずであるし、その他の感覚にも異常があるかを診ることは必須である。
筋筋膜由来の長年のしびれ現象は、確かにしつこいが、筋筋膜の機能が回復するにつれて消えていくだろう。
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by m_chiro | 2014-07-30 07:17 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「しびれ」の現象と病態❶
「しびれ」という感覚はありふれている。
通常は長時間の正座の後によく経験するが、酷い時は立ち上がろうとして脚が儘ならず、転倒することもある。
そこまでいかなくても脚がしびれて感覚が鈍くなったり、くすぐったかったり、奇妙な感覚に襲われることは間々あることだ。
ほとんどの人が少なからず経験している感覚だろう。
「しびれ」も、痛み同様に自覚的に訴えられる感覚である。

臨床でも「しびれ感」を訴える患者さんに出会う。
しびれの表現にも個性があり、ジンジン、ビリビリ、チクチク、ピリピリなど擬音が使われる。
かと思えば、電気が走る、鈍い、皮が一枚被っている感じ、力が抜ける、餅がくっついているようだ、などと表現も多様である。

長時間の正座などで起こる「しびれ」現象は、容易に推測できる。
脚を折り曲げて体重負荷が加わることで筋肉に虚血が起こるのだ。
虚血が起こると、筋肉の筋紡錘からの感覚神経である有髄のⅠa線維や腱紡錘からのⅠb線維の伝導も一時的に混乱する。
だから脚の動きも思うに任せないことが起こる。

時代劇のドラマで見かけるシーンがある。
正座させた腿の上に石板を載せていく拷問によって、立ち上がれずに役人に両脇を抱えられて運ばれていく。あれでも神経が損傷することはなかったのだろうか。
それはともかく日常的に経験する「しびれ」は、通常は可逆的な感覚の異常である。

でも、神経疾患やその他の病態に付随して起こる「しびれ」もあり、わたくし達の臨床でも疾患による病態を除外する必要がある。
「神経麻痺」いも「痺れ(しびれ)」という言葉が入っているのだから、侮れない現象である。

疾患を除外するには、聴き取り(病歴聴取)によっても、ほぼ判断できるとされている。
なにしろ「病歴と身体診察で90%の診断が可能」(R.ステファニー・向原圭、松原理司など)と言われているくらいだ。
疑わしきは専門医に委ねることが必要だが、聴き取りと観察は怪しい病態を除外する上で最も確率の高いスキルとされている。

しびれの部位はどこで、どんな性状のしびれか。
そのしびれはどんな経過で起こり、どのような現れ方をするか。
なにか病歴に関わっていないか。
反復業務も含めて、トリガーとなった出来事や変化はなかったか。
あるいは「最近変わったことはなかったか」でもいいだろう。
また、薬物治療を受けている既往歴や疾患はあるか。
自律神経の変調に関する症状はないか。
ストレスを感じていることはないか。
不眠や食欲の低下などはないか。
など、簡単な聴き取りをしただけでも、除外すべき「しびれ」症状を見分ける目安になる。

つづく
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by m_chiro | 2014-07-25 16:39 | 症例 | Trackback | Comments(0)
患者さんの死
先日、地方新聞の「おくやみ」欄に、覚えのある名前も見つけた。
2年半ほど前に、3回ほど治療にみえた方である。
住所も同じだから、あの患者さんだろう。
なぜ記憶しているかというと、専門医に紹介した患者さんだったからだが、その後の報告もなく何となく気にかかっていたからだ。

経緯はこうだ。
患者さんは60代後半の女性で、一年ほど前から発症した首から肩にかけての痛みを主訴にしていた。
整形外科を受診しており、首や肩、肋骨のX-Rayで異常なし。
心電図測定もリウマチ検査も行ったようだが異常はなかった。
結局、「50肩」と言われたようだ。
鎮痛薬、筋緩和剤などが処方され、マッサージも施されている。
確かに肩の可動域が正常範囲になく、上肢の挙上に制限があった。

2度目に来院したときには「肩が動きやすくなった」と言っていたが、「他に気になることがあるんだけど…」と切り出したのだった。

2か月ほど前に下痢をしてから、腹鳴がおこるようになったのだそうだ。
空腹時には特に酷く、ガスがお腹を回っているように音がすると言う。
便通は良いいが、食欲は落ちた。体重は5㎏ほど減ったらしい。
胃腸科を受診しており、「胃腸炎」の診断が出ていた。
活性生菌剤が2種類、消泡作用や過敏性腸症候に対応する薬も2種類出ていた。
2か月も経つのに改善する気配もなく、余計に気になっているということだった。

他に、循環器クリニックでは高血圧高コレステロールで長年治療を受けている。
循環器科で毎年検査を受けているようだ。
その検査結果の記録は取ってあるのかと尋ねたら、「家にある」と言うので今度見せてもらうことにした。

3回目の来院時に、検査結果をみせてもらって驚いた。
コレステロール値など30項目の血液検査は正常値内にあったが、ひとつだけCPKが異常値である。しかも昨年の検査値の数値を一気に倍以上も越えている。

CPK(クレアチンホスキナーゼ:CK)値
は体内のエネルギー代謝に関わっている酵素の値である。
骨格筋・平滑筋・心筋や脳などに多くみられる酵素で、こうした筋などに障害が起こると血中に流れ出すためにCPK値が高くなる。

おそらく循環器科では心疾患に備えて検査をしていたものと思われるが、筋組織や脳の悪性腫瘍でもCPK値は異常値を示すとされている。
CPK値が高いと、それが骨格筋由来か、心筋それとも脳疾患由来か、3種類のアイソザイムを調べることとされているようだが問題視されなかったのだろうか。

私は専門医を受診するように勧めて、治療適応から除外した患者さんだった。

その後の経過は分からずにいたのだが、そんな経緯があり気にかかっていたために名前を憶えていたのである。

あれから2年半経って、亡くなられたという訃報を新聞で知ったわけだが、もちろん死因については分からない。
CPK値の異常値が疾患の兆しだったのだろうか…。

只々、ご冥福を祈るばかりである。
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by m_chiro | 2014-07-21 18:47 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「左肘内側の靭帯が伸びた」女子高生
高校運動部の女子学生がみえた。
6月初めに、筋トレ中にダンベルを持ったまま左上肢を左後外側方向に捻って肘を損傷したらしい。

整形外科でのX-ray所見から、左肘関節の内側間隙が大きいことが確認されて、内側副靭帯の損傷とされた。
「内側靭帯が伸びている」と説明されて、スプリントで固定された。
25日ほどの固定期間を経て、サポーターに変わった。
肘を伸ばさないように、と注意されている。

「伸ばすと痛いし、靭帯が伸びたのは元に戻るんでしょうか?」と不安気である。
可動域と疼痛域を確認すると、前腕の伸展、外旋位で痛む。
それでも関節可動域には問題ないが、伸展位、回外位で腕橈関節を圧迫すると痛みが誘発される。
円回内筋、長掌筋などの筋膜を解放方向に戻して、再度圧迫してみると痛まない。
どうも筋膜のトラブルのようだ。

急激な外反ストレスが加わって、筋・筋膜が障害されたのではないのだろうか。
伸縮テープを利用して、筋膜の固着した部位に限局したテーピングでリリースさせた。

「さあ、それで動かしてみて…」

「えっ!痛くない。なんでぇ~...、感動したぁ~!!」
「どうやってテーピングするんですか?」
テーピングを使うことがあっても、貼り方の知識はなさそうだ。

それで急遽、テープの貼り方実習。
教え方が悪いのか、再三説明する羽目に。

それでもまた「感動した!」と言いながら、ニコニコで帰って行った。
若者は、こんなことでも感動してくれる。
運動選手には、テーピングの実習が必要かな….。
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by m_chiro | 2014-07-04 22:56 | 症例 | Trackback | Comments(0)
こんなアレルギー症状もあり、かな…
先日みえた医療関係者の女性。
出勤の運転中に胸が苦しい感じになり、気分が悪くなった。
なんとか仕事について凌いでいるうちに落ち着いてきたが、昼食後からまた増悪した。
動悸、吐き気、呼吸が苦しいなどの症状が出て、職場から直行して内科に受診する。

自律神経の問題じゃないかと言われ、血液検査を行ったようだ。
検査の結果待ちということになったが、内科医院からの帰路に治療予約の電話が入った。
結局、その日の仕事を終えてから来院したのだが、夕方には症状も大分落ち着いていた。

「何だったんでしょうね? 自律神経がおかしいのでしょうか?」
そうした不定の症状には当然のごとく自律神経は関係するのだろうが、なぜ突然そうなったかが問題である。

腹部の望診と触診をすると、小腸周辺のトーンが弱い

「何か朝食と昼食で食べたものに関係してるんじゃないの? 何を食べました?」
「朝は食べないので、昼はスパゲッティを食べました」

「じゃ、油類かなぁ~」
「油は使っていませんから…」

「えっ、スパゲッティって油を使うでしょう」
「油を使わないで私が作って、お弁当にして持っていくから..」

「あっそう!、食にこだわりでもあるの?」
「LDL値が高いんですょ。中性脂肪も…、それで気を付けてるんです」

「いくらあるの?」
「LDLが157….」

「HDLは?」
「82…」

「HDLとLDLの比率が1.5以下じゃない。何の問題もないと思うけど...。ま、いいや! それで、他に食のこだわりはあるの?」
「植物性タンパク質を摂るようにしているので、毎日、大豆を多く摂るようにしています」

「納豆とか?…」
「いや、納豆は食べないですね。豆腐や大豆を多く使います」

「へえ~、朝は何で食べないの?」
「朝は、豆乳を飲むだけにしています」

「大豆食品のアレルギーでもあるのかなぁ~?」
「えっ! そんなのがあるんですか???」

「別に皮膚炎が起きなくても、拒否反応の一種だったらアレルギー反応とみてもいいんじゃないの….、大豆かどうかは分かりませんけどね」

と、いうわけで筋力テストを使って確認してみることに…..。
幸い冷蔵庫に豆腐や納豆が入っていた。
大豆もあったし、ついでにサラダ油、砂糖、大豆、納豆、豆腐で筋力の抑制反応を調べてみた。
結果は、納豆以外の大豆食品で筋力ダウン、まったく力が入らない。砂糖とサラダ油には反応しなかった。

「エ~ッ、なんでですか…??」

近年、リーキーガット症候群(LGS:Leaky Gut Syndrome腸管壁浸漏症候群)が話題にのぼる。
あまり馴染みのある症候名ではないが、腸の粘膜が炎症などで微小に傷み、消化しきれない有害物質やアレルゲン、タンパク質や脂質までが浸漏して腸粘膜から体内に取り込まれてしまうために起こる症状とされている。

その症状についても確立されたものではないが、疲労、膨満感、食物アレルギー、関節炎、偽線維筋痛症、筋痙縮、高コレステロール、過敏症状、解毒不全、免疫力の低下、抗体過剰生成などが発症するとされているようである。

そこで昨年、勉強した「Neuro-Auriculo Therapy」の作用効果を試してみた。
耳介ポイントへの周波数刺激が筋の抑制バランス反応にどんな影響を与えるのだろう。

刺激ポイントは次の3点に絞った。
1.肝臓ポイント79に対して両側から5hzで、変化なし。
2.マスターオシレーションに同じく5hzで、変化なし。
3.小腸ポイント65に5hzで、抑制反応が解除された。

おそらく小腸からの腸間膜浸漏が起こり、大豆類に対する過敏反応として現れたある種のアレルギー症状ではないのだろうか。
当分、大豆類の食品を控えて症状が再発するか様子を見てもらうことに....。

それから1週間後に、血液検査の結果が出た、と報告があった。
高LDL値と高中性脂肪値、尿たんぱく(+1)、それ以外の問題はないとのこと。
症状の再発もない。

食後の不快症状には、食物アレルギーやLGSなども考慮に入れておくと治療やアドバイスの助けになるかも....。
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by m_chiro | 2014-04-02 16:15 | 症例 | Trackback | Comments(0)
機能的問題は複合する② 肩関節の固着に肝機能が関わるか!
機能的問題は複合する②
肩関節の固着に肝機能が関わるか!


先日、治療にみえた50代の男性。右肩関節の動きが悪い。
長年に渡って右肩の動きの悪さと苦しさが気になっている。
屈曲はなんとかいけるが、外転と伸展の動きが動き難い。
外転は90度の領域から制限されるが、完全なロック状態ではない。伸展の動きもひっかかる。

望診すると、右肩関節周囲と肝臓周囲が固着している。
さて、どちらを優先して治療すべきか。
「新マニピュレーションアプローチ」[科学新聞社刊)のバラルD.O.は、その著書の中で肩関節の治療の解説に120頁を費やしている。
それによると、基本的に「肩」は「6つの関節複合体」として捉えなければならない。

1.肩鎖関節、2.肩峰下関節、3.肩甲上腕関節、4.肩甲胸郭関節、5.肩鎖関節、そして第6の関節である烏口鎖骨複合体の「6つの関節複合体」を考慮せよ、ということである。
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当然そこには、それぞれの複合体を構成する骨、関節、筋肉が含まれる。
この患者さん、6つの関節複合体の全ての領域で大なり小なり可動制限があった。
肩の複合性局所疼痛症候群の原因も多様であるが罹患率は長く、退縮性関節包炎、五十肩に発展しやすいとされている。

この患者さんも肩の治療を長年続けていたにもかかわらず、肩の固着がリリースされていないのだ。ということは、このケースでは問題が他にあるのだろう。

「新マニピュレーション」の著者たちは、序文で「右肩関節周囲炎は、しばしば肝臓機能障害の結果である」と述べている。
この患者さんの肝臓周辺の固着した停滞感は、機能が複合していることを物語っているのかもしれない。

念のために健康診断の成績を聞いてみると、γ-GTPが高値のようだ。
「酒を飲むからなぁ~」と自嘲気味に言う。
γ-GTPは胆道菅酵素とも呼ばれている。だから胆汁の鬱滞にも関わる。
そこで最初に胆汁のドレナージを試みた。

するとどうだろう、肝臓周辺が息を吹き返したように柔軟になった。
それでも内部に停滞感のある部位がある。ちょうど肝右葉の門脈・静脈の分枝するところの外側部周囲であろうか。
その内部の停滞感がリリースされるポイントを探ると、空間に取れる。
そこから停滞部に干渉させていると、停滞感がリリースされた。
実感できなければただの怪しい方法だが、空間からの方がとても変化することがある。これを私は「なんちゃってガンマ・ナイフ」と呼んでいるが、感覚の問題なのでその機序はよく分からない。
おそらく組織の持つ周波数との干渉なのであろう。
例えば、波形の山の部分をプラス1、谷の部分をマイナス1とすると、その2つの周波数が同調すればプラス2とマイナス2の振幅に増大する。倍返しだ。
ところが山のプラス1と谷のマイナス1が合体すると波形は0になる。つまり組織のトーンも変調する。そんな関与なのだろうか。

さて、肩関節はどうなったか。
肩の複合体も随分とよく動くようになっている。肩甲上腕関節と第6の烏口鎖骨複合体がちょっと硬い。
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これらは上腕骨・骨内テクニックと肘内側部からのリリースをおこなった。
これで患者さんに上肢の動きを確認してもらう。
「外側から挙がらないんだよなぁ~….、アレッ挙がる。挙がりますね。肩の治療をしたんですか?」。

お酒をセーブするように忠告したが、果たして節酒できるだろうか…..。

機能的な問題は複合する。この視点はとても重要である。
バレルD.O.の「新マニピュレーション」(上肢編)は、複合する機能と手法を学ぶ良書である。
続巻の刊行が待たれる。
これからも「機能的な問題は複合する」をテーマに症例の紹介を試みようと思う。
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by m_chiro | 2013-12-20 09:20 | 症例 | Trackback | Comments(0)
もしかして、あの腰痛は関連痛だったのだろうか!?…
2年ほど前から腰痛に悩まされるようになった女性。
重い物を持ったり、階段の昇り降りなど、よく動いた後に増悪する痛みである。
朝起きるときも、しばらく辛い。
整形外科では骨粗鬆症と診断され治療中でもある。

腰部の可動動態は骨盤の左側方移動がスムーズで、その他の全方向における可動動態で腰痛があり、体幹伸展と骨盤右側方移動の動きに可動制限がある。
姿勢制御系を調整して、右鎖骨胸骨端の固着をリリースした。

数回の治療で動きも改善し、腰痛も解消した。
ところが腰痛が消えたと思ったら、今度は心窩部の周辺が重苦しくなってきたと言って、また治療にみえた。

胆嚢周辺膜のトーンが高くなっていて、逆に心窩部のトーンは下がっている。
内圧を追うと心窩部に停滞を感じる。心窩部を触察すると不快感がある。
緩解因子はない。
彼女はストレスも抱えていたので、もしかしたら胃炎でもあるのでは?….。
そんな状況で、内科での受診を勧めた。

胃カメラでは、病理的所見が見つからなかった。
ところが超音波造影では、胃の後方に影があるとされた。
それでMRIの予定が組まれた。その結果は「リンパ腫」だった。

1週間の入院検査が行われたが、結局は大学病院に転医してPETによる検査が行われた。
そこで「腹部の悪性リンパ腫」と確定診断が出された。

もしかして、あの腰痛はリンパ腫からの関連痛だったのだろうか…。
思わぬ隠れた病態があるものだ。
疑わしい症状や病的徴候に出会ったら、医療との連携を視野に入れておくことは欠かせないのである。
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by m_chiro | 2013-09-30 18:24 | 症例 | Trackback | Comments(0)
虫垂炎、触診手技
昨日の記事「ベッドサイドの話題から、虫垂炎の典型例を学んだ」に、sansetu先生がコメントでERのドクターのブログ記事を紹介してくれました。

とても分かりやすく、勉強になります。

以下のタイトルにクリックしてみてください。

「救急医の挑戦 in 宮崎」より
「虫垂炎~盲腸の診断は奥が深い~」の記事。

この記事の中に、下のブログ記事で虫垂炎の触診手技が書かれていました。
参考までに。腹部の触診や圧痛検査にも応用できそうです。
target="_blank">"H Panji Irawan:Pemeriksaan Appendicitis"より

The Posas Sign:右大腿の受動的伸展(患者は左側臥位)
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検者が患者の右腰部にカウンターの抵抗をかけてるときに、患者は右大腿を進展させる。
その時に大腰筋が伸張されて虫垂部が刺激される。

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The obturator sign大腿屈曲位からの受動的内線による痛み(患者仰臥位)
股関節屈曲、大腿内旋位で、検者は大腿骨が内旋するのを膝外側の黒い点で抑え、その間に患者は下腿を速報に動かすときに傷みが出る。
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炎症を起こしている虫垂は、検査による動態で内閉鎖筋のストレッチによって接触刺激で痛みが起こる。
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反跳痛を引き出す触診手技

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腹部の触診法
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by m_chiro | 2013-09-26 17:11 | 症例 | Trackback | Comments(0)
ベッドサイドの話題から、虫垂炎の典型例を学んだ
患者さんに聞いた話。ご自分の20代の息子さんのことでした。

その息子さんが強烈な腹痛と吐き気に襲われ、救急診療科へ。
担当の医師は消化器科のドクターだった。そして、このドクターは「食中毒」と診断した。抗生物質等を処方し、「これでよくなるだろうから、明日は会社に出でても大丈夫!」と断じた。

「食中毒」と言われても、家族と同じものを食べたのに「なぜ自分だけが….?」

腹痛や吐き気は治まるどころか一層悪化。
あげく、墨汁のような便が出だした。
翌日の早朝に、前医の病院に電話で状況を説明したところ、「すぐに来るように」指示される。それでも診察が始まるまで、待合室で辛い時間を待たされる有様だった。

診察したドクターは前医とは別の消化器科の先生で、カルテを見て「食中毒か…」。
墨汁のような便は「悪いものが出るのだから大丈夫、白血球数も下がってきている」と言って問題視されなかった。

帰宅してもドンドン具合が悪くなっていき、その息子さんは「ぼくは死ぬんじゃないか!」と言い出す始末。お腹は膨満してきて、夜になって堪らずに再び救急診療科へ。

その夜の担当医は外科医だった。
診察するなり「これは大変だ!」、盲腸が化膿して破裂し、腹腔中に膿が….。
すぐに手術しなければならないが、病院に今、麻酔医がいないので、近くの手術可能な病院に搬送するからと、急遽その外科医も同乗して手術することになった。
幸い、快方に向かっているとは言え、命に係わる大失態だった。

腹部の触診もなかったそうだから、もしもそれが事実なら食中毒と予断して診察のプロトコルを省いた大失態である。それでも触診すれば虫垂炎が確実に確定できるわけでもないだろうが、特に外科医は際どいところでの診断が求められている。

虫垂炎の判断は、マックバーネー点の身体反応から推定するという古典的な手法がある。
しかし、症候は必ずしも典型的にパターン化されて現れるとは限らない。

基本的には右下腹部の「圧痛」と「反跳痛」を確認するようであるが、他の疾患が否定されていれば先ずは「虫垂炎」とみなすのが原則のようである。

もしも画像で確認できなくても、開腹して目視することで初めて「虫垂炎」と確定されることもあるらしい。
そうなれば、疑わしきは開腹してからの確定となるのだろう。

「診断は正確に!」と言っても容易な話ではないということだが、今回のケースで「食中毒」の確定は、いったい何を根拠にしたのだろう。
腹痛、嘔吐の訴えに、どう対応したのだろう。
虫垂炎は頻度のとても高い腹痛にはじまる。触診もしなかったなんて想像できない。

もしも、我々がそうした患者さんに遭遇したら、どう対応すべきなのだろう。

典型的なパターンは、食欲低下にはじまり、心窩部の痛みや臍周囲が間欠的に痛むようになり、悪心や嘔吐が起こる。
嘔吐が腹痛に先行することはまずないとされ、痛みが右下腹部に移動してくるようになると微熱がでるようになる。
もしも穿孔があったりすると高熱を伴ったりする。


これが虫垂炎の典型的な徴候とされているようだが、必ずしもパターン通りではなく、腸炎との鑑別診断に悩まされるのだそうだ。
それだけ誤診も多いのだろうが、典型的パターンであれば誤診はまずないとされている。
今回の話題の症例は、典型例を触診もせずに誤診したのだろう。悲惨なことだった。

だから、①典型例か否か、②右下腹部の圧痛と反跳痛の身体所見があるか、典型パターンでは、これが決め手となるのだろう。

仮に心窩部の痛みや臍周囲の訴えであっても、右下腹部の圧痛を確認したら躊躇うなかれだ。
病的サインを確認したら、医療機関との連携を視野に入れておかなければならない。

幸いにも、私の虫垂は、いまだ健在である。
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by m_chiro | 2013-09-25 17:17 | 症例 | Trackback | Comments(4)
危うく「寝違い」にするところだった
老婦人が、ご主人に伴われて治療にみえた。
昨日の朝起きてから首が回らなくなったのだそうだ。
痛くて、痛くて、こんな辛いことはない!….、と訴える。

「朝起きて痛みを感じたのだったら、寝違いでもしたのかもしれませんね」
「寝違いじゃないと思うんだけど…..」
「何で寝違いじゃないと思うの?」
「朝起きた時は大丈夫だったんです。けど、朝ごはんを食べた後から痛み出して首を回せなくなったんです」。
(摂食と関係あるのかな...)

それで、病院の整形外科に行ったそうだが、X-rayで問題がないと言われて終わりだった。
でも辛いので、降圧剤の処方を受けている内科医院で診察を受けることにした。

冬期間の4か月ほどで体重が5㎏減り、最高血圧が170㎎だった。
医師は、胃カメラ、血液検査などの精査を指示し、別の病院に紹介された。
結果は、一週間後に判明する。

頸部の可動域をみると、右回旋に痛みによる制限がある。
発痛部位は、右胸鎖乳突筋の3分の1ほど上部の領域にある。
左回旋は動きやすいが、それでも右の同じ部位が痛む。
仰臥位は長くはできない、寝て起きる動作が大変だと言う。
歩行で腰部も痛むが、それよりも首の痛みの方が強くて歩くのもしんどい。
座位が最も楽な姿勢のようである。
鎖骨の胸骨端や上部肋骨も固着している。
座位のまま、間接的手法で筋スパズムのリリースを試みた。

筋が半分ほど弛んだ頃に、患者さんが大きく深呼吸をした。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。なんか空気が抜けたようにゆっくりしました…」

頭部を支えるために前頭部に手を添えたら….「あれっ!、熱があるんじゃない…」。
「熱はないですヨ」
「測ってみたの?」
「いいえ、風邪もひいたこともないし、熱が出たことがないから….」
「ちょっと熱を測らせてもらえるかな….」
37.8度だ。夕方にかけてもっと上がるかもしれない。

「首が痛むだけでなくて、身体全体が痛だるくて、シンドイんじゃないの?」
「ええ…、辛いです」
風邪症状はなかったそうだ。

風邪やインフルエンザもそうだが、全身疾患や感染症などの熱に伴う筋肉痛がある。
細菌やウイルスを取り込んだマクロファージは、インターロイキンという内因性発熱物質を出す。
このインターロイキンは、筋肉にも運ばれてプロスタグランジンE2がつくられる。
プロスタグランジンE2は酵素(リリソーム)を細胞外に遊離して、筋肉のタンパク質を分解するために筋痛が起こるのである。

発熱によって痛みが起こる仕組みであるが、さて、この患者さんの問題は熱の原因にある。
内科医院で再診を勧めたのであるが、危うく「寝違い」にするところであった。
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by m_chiro | 2013-04-24 07:49 | 症例 | Trackback | Comments(1)



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