カテゴリ:症例( 134 )
「左肩がズキズキ痛んで眠れなかった」:カプサイシンは辛味成分それとも痛み成分?
「昨晩、左肩がズキズキ痛んで眠れなかった」と言って、事務職の中年女性が治療にみえた。

慢性的な腰痛をかかえていて整形外科で治療中である。
左肩を上げられなくなったのは1年ほど前からで、これも腰痛と一緒に治療中だが好転しない。
でも夜眠れないほど肩がズキズキ痛んだのは、初めてのことだったようだ。
整形外科医院では、レントゲン所見で骨が減っているから「腰は治らない」、「肩は50肩」と言われている。

それで鎮痛剤の処方と腰の牽引、首から肩にかけて電気治療を、リハビリとして続けている。
このまま保存的に治療しなさい、ということらしい。

聴き取りをすると、いろんな問題が出てきた。
B型肝炎、肝血腫、腎嚢胞、高血圧、時に頭痛。
肝炎も血腫も嚢胞も安定しているので、1~2回/年のCTスキャンによる経過観察が行われている(今のところ治療の必要性はない)。

肩の痛みの発症状況を聴いてみる。
夜寝てからズキズキして目を覚まして、それからずっと痛みが続いているらしい。
安静位でも痛んでいるので、仕事を休んだ。

何か外傷を思わせることもなく、無理に使った覚えもない。
寝る前までは、いつもと変わらない仕事と生活だった。

「何だろうか?」と思いながら望診していると、左肩から肝臓、胆嚢、空腸周辺にかけて停滞軸が走っている。

それで、「夜は何を食べたの?」と聞いてみた。
「外食したから…」
「そこで何を食べたの?」
「韓国料理」

唐辛子成分が怪しい、かな?
韓国ドラマが大好きで、その女子会があったのだそうだ。
韓国料理を食べながら、韓国ドラマを語る会だという。

痛みは、機械的刺激や熱・化学物質による刺激が脳に伝わって認知される仕組みになっている。
それを末端の受容器が刺激として受け取るのだ。
機械的刺激で思い当たることがないのであれば、熱・化学刺激を押さえておくべきだろう。


それで唐辛子を持たせて筋の抑制反応をみることにした。
見事に抑制される。まるでバレー徴候陽性反応のように、筋力の維持ができくなる。
「ナニ、コレッ~!」

左肩から肝臓-胆嚢-空腸ラインの筋膜リリースをしながら、内臓機能の緊張を緩解させた。
治療しながら「カプサイシン」という痛み物質の話もした。
いわゆる炎症性疼痛の発症機序に関わる問題である。

さて、唐辛子の辛子成分とは、「辛味成分」なのだろうか?、それとも「痛み成分」なのだろうか?
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「辛味成分」となれば味覚の話である。ところが舌に辛味を感じる味蕾はないのだそうだ。
では、どのようにしてわれわれは「辛味」を感じるのだろう。
4つの基本味以外の辛味、渋味、金属味、アルカリ味、電気の味などは、臭覚、触覚、圧覚、痛覚、温度感覚などを刺激することによっておこる複合感覚とされているようだ。
そうなると「辛味」は味覚ではなく、「熱」と「痛み」の感覚に似たものらしい。
それが、唐辛子を食べたときに舌が痛く感じ、口が熱く感じる理由のようである。

辛子成分のカプサイシンの受容体は「TRPV1」である。
「TRP1」受容体の同定に関わったのが、生理学研究所の富永真琴教授である(「痛みと鎮痛の基礎知識・上」200頁、小山なつ著)。
TRPチャンネルの感受性を示した富永真琴教授の図によると、43度以上の温度とカプサイシンが痛み刺激となることを知ることができる。
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この患者さんも、カプサイシン受容体の閾値が低下して痛みを発症したのだろう。
しばらく唐辛子を控えることをアドバイスした。

その3日後、再び治療にみえた。
「肩が痛くなくなったよ! 今度は腰も治して~!」
「韓国料理と痛みと、どれか一つ止めるとなったら、どっち取る?」
「韓国料理~!」

ありゃ~、のど元過ぎて熱さ忘れるだなぁ~!
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by m_chiro | 2015-03-31 17:54 | 症例 | Trackback | Comments(4)
家内の左眼の不調
一年ほど前から、家内が左眼の不調を訴えだした。
左目がゴロゴロする感じがあり、いつも重苦しい痛みがとれず、左眼球が飛び出てるように感じるらしい。
左眼から左後頭顆部に痛みが走ることもあるようだ。
まばたきしても後頭部に引っ張られている感覚があるらしい。

あまりしつこく訴えるので治療をした。
眼球運動や網膜反射など神経学的な検査を行い、頭蓋リズムなどを調べながら、できる治療を試みてきた。
治療後は症状が半減する。が、翌日には戻ってしまう。

あまり大きな変化がないので、眼科で診てもらうことにした。
検査の結果は異状なし。
白内障が出始めているが、積極的な治療が必要な段階ではない。
要するに、医療が必要な対象ではない。
医学的には老化ということのようだ。

メガネが合わないせいだろうかと、レンズも調整して変えた。
それでも変化がない。

それでは何とか頑張って、私が治療するしかない。
こうして時々治療してはみたのだが、情けないことに直後に軽減がみられても大きな満足を与えることなく半年ほどが過ぎてしまった。

今年の1月のセミナーで○○先生の指導を受けた。
そのときの感覚を忘れないうちにと、帰宅後まもなく家内の治療も試みたのである。
有難いことに、家内は私にとって最も率直な評者である。
もちろん技術に関する専門的な評価ができるわけではないが、治療を受けた身体的変化や感覚的印象は率直に教えてくれる。
その意味でも、技術研鑽の良きパートナーでもあるのだ。

教わった基本的なことを忠実に応用してみた。
私は初心者でもあり、技術的な詳細を紹介できないのだが、特に「り○○○」を感覚的に意識した。それを眼窩や眼球でも試みた。

これまで行った方法では満足する変化が得られなかったのだから、まったく新たな視点で治療するほかない。
治療後、家内が興奮気味に「凄い!! 劇的に変わった」
「ほとんど気にならなくなったよ。何が違ったの?」

「10→1」の変化だという。「何が違ったのか」と問われても分からない。
翌日にはちょっと戻って「3」程度になったようだが、それでも劇的な変化である。
それからあまり間隔を開けずに5回ほど治療しただろうか。
今では、ほとんど気にならなくなった。
悪いときでも「2」程度に安定している。

最初の試みから1カ月を過ぎた。
状態は安定したままである。いったい何がどう作用したのだろう。
いまだに何が違うのか、と家内には聞かれる。
不思議だと思うのは、分からないからにすぎないのだ。
私自身としては、その推論をどうにか構築しておかないと気がすまない。
治療は奥が深い。今更ながら思う。
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by m_chiro | 2015-02-28 16:48 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「50肩ですか…?」、遠隔部位から刺激で著効の症例
「50歳になったと思ったら、右肩が挙がらなくなった。これって50肩ですか?…」

以前から右肩から腕が重苦しくなって、50歳になった途端に挙がらなくなってきたようだ。
右の第2~3指に力が入らない感じで、右の顔面の感覚も鈍い感じがする。
眠りも浅くなって、汗がどっと出たりするようになった。
「更年期障害なんでしょうか?…」
こんな訴えで中年女性が治療にみえた。

可動域を見ると、外転90度、屈曲140度ほどで痛みがあり、運動が制限される。
関節の拘縮はみられないので、機能的な問題だろう。

隔膜系と心膜系をリリースして、頸部の右側屈とそれに伴う頚神経節周辺の緊張を解放した。

さて、立位で右肩の可動域を確認するとまだ痛みが残るようだ。
「やっぱり痛い! 挙げられない!」

その位置から傾聴すると、右の足背部にテンションがある。
右足背部をみると、どうも第4中足骨近位端周辺に続いているので圧痛を探してみた。
ジャンプ兆候のあるポイントがある。
そこを圧迫しておいて、右肩を動かさせてみた。

すると、
「あれっ! 挙がる! なんで??…」

図の赤○のあたり、経穴で言えば、「臨泣」というところだろうか。
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そこに皮膚考学研究所の刺さない鍼「ピソマ」を貼付しておいた。
遠隔刺激で顕著な改善を示した症例だった。
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by m_chiro | 2015-02-10 16:07 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「自己ベストが出た!」
先日、高校一年生の男子が治療にみえた。
高校に入ってウエイトリフティング部に入部したそうだ。
もう1年近くになるわけだが、なかなか上達しない。
というか結果が伴わない。
心外なことに、周囲からは「真剣にやってるのか!」などと言われるらしい。
連れてみえた母親が話してくれた。

2日後に大会があるので、肩も痛いし、コンディションを上げておきたいのだそうだ。
望診すると、一見して身体内部に中心軸のブレがある。
肩の水平レベルの差もあって、頭部にも捻じれがある。

足方から調整入力を入れただけで、身体の輪郭がとてもクリアになった。
もうこれでOKなのだろうが、痛いといっていた肩と頭蓋の軸変化を確認する意味で診ておいた。
立たせて動きを確認するが、問題はなさそうだ。

基本的に、彼は筋骨格系における局所的な機能に、加療が必要な障害があるわけではないようだ。
身体の中心あるいは重心の置き場所が見失われているだけなのかもしれない。
そこで練習や本番前のアップの運動で取り組む簡単な方法を2つほど伝えておいた。
身体の中心・重心の在り様を体に覚えこませるために、本番前に修正を心掛ければ持てる能力を出せるようになるだろうと思ったからだ。

大会が終わって、母親が報告にみえた。
「自己ベストが出た!」
これまでの成績に15㎏も上乗せして、全国大会に向けての強化指定選手に入ったようだ。
もともと持っていた能力なのだろうが、身体置のちょっとした変化で統合する力や筋力を引き出すことができたのだろうと思えた症例だった。
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by m_chiro | 2015-01-30 13:32 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「咳が治らない…..!?」
中背部が痛苦しい、という40代の主婦が治療にみえた。

治療歴を聴いてみると、9月初めころから咳が出るようになった。
「風邪だろうか?」と思って内科を受診している。
でも風邪の兆候は咳だけである。
「咳止め」を処方されて様子を見ることになった。

それでも咳が止まらない….。
そのうちに中背部が痛苦しくなってきたのだという。

咳で筋の緊張が起こったのだろうが、「その咳は何、なぜ?」である。

「ストレスになっていることでもあるの?」

「ある、ある….。アタマがイタイ!!…」
受験生の親だから、何かと心配なのだろう。

治療は肋骨、横隔膜、呼吸筋の緊張をリリースして、ストレス反応と副腎系の働きも調整してみた。
1週間後に再び治療にみえて、背中はだいぶ楽になったが、やはり咳が治まらない。
「治療した後はほとんど咳が出なかったのでラッキーと思っていたが、夕方になってぶり返した…。」

内科医も「風邪兆候が咳以外ないしなぁ~」と言いながら、咳どめで様子を見ることが続けられている。

「でも、このごろ鼻水も出るようになったから、アレルギーのときのような感じなんだけど…」

「アレルギーがあるの?」
「ブタクサで花粉症になったことがあって、そんな感じ….。」

ブタクサの花粉症患者は、バナナやキウイを食べると口の周りがかゆくなるらしいが、そんな兆候はないようだ。
それに、「春先だけに起こり、秋に起きたことはない」
「それじゃ、ブタクサのアレルギーではないんじゃないの?」

では、とアレルギー・チェックを行う。
アレルギー検査キットの出番である。
今年は、歯科医師・幸田秀樹先生の歯科材料の検査素材も分けてもらったので、全部で200種類ほどある。
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結果は、「pollen:花粉」に反応した。筋活動が抑制される。

「確かに花粉で反応するけど、最近、家や庭に花が咲いてる?」
「ええ、おばあさんが畑でダリアを沢山育てて、畑に咲かせてるのではもったいなくて、9月から家中のあちこちにダリアを飾ってます」。

咳が出始めたのも9月初めからで、確かに符合する。
ダリアの花粉が怪しそう。我が家も、今年はダリアを楽しんだ。
その実際のダリアに触れさせて筋活動をチェックすると、これが見事に抑制された。

ダリアの花粉に対する反応をリリースするために、「Neuro-Auriculotherapy:神経耳介療法」によるアレルギー治療を行った。
ポイントは3ポイントを用いた。

ひとつはアレルギーポイント(Allergy Point)に10Hz/30sec.のパルスを、自律神経のポイントにも同様のパルスを、そして副腎のポイントには5Hz/30sec.のパルスを入れた。
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その結果、「Pollen:花粉」の抑制反応が消失、実際のダリアに触れても筋活動は正常に働いた。

その10日後、今度は膝痛の患者さんを連れてみえた。
その後の咳の状態を聞いてみると、「咳が治った」そうだ。
大胆にも、「家のダリアも、畑のダリアもすべて処分した」らしい。

アレルギー治療が効いたのか、ダリアの花粉を遠ざけたから治ったのか判然とはしないが、苦しんだ咳から解放されたのであれば幸いなことだ。「神経耳介療法」も侮れないかも....。

私としては、おかげで新しい患者さんを紹介してもらった。
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by m_chiro | 2014-11-13 17:38 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「頭が右回りに回っている」
「今朝起きるときに頭が右回りに回ってグラグラした」
「下を向いて頭を上げるときもグラグラする」


そう言って、看護師さんが治療にみえた。
歩いているときは、そんなに問題ない。
が、寝て起きるときとか、下向きから頭を起こすと、グラグラする。

●チェック結果
Pitch(X軸)で屈曲障害がある。
Yaw(Z軸)での右前方寛骨(RAIN)、右股関節-屈曲不全、右足関節-屈曲不全の代償作用がある。
眼球注視は、上方注視(右↓)、左外側注視(右内直筋↓)で抑制
クロスクロール・歩行パターン(左右で↓)

●治療ポイント
❶Pitch屈曲障害をリリース
❷L4-5間の右筋性フィクセーションを牽引スラスト
❸C1-LL(CCWリコイル)
❹後頭骨RL(CWリコイル)

●変化
これでX軸とZ軸代償(―)、歩行パターン(-)、眼球注視(-)。
起き上がり時のぐらつき、下向きから頭位を起こす時のぐらつきも起こらない。

施術後の会話から
「何か後頭骨-C1の間に負荷のかかることはしませんでしたか?」
「夜中に、うつ伏せで頬杖をついて斜めになってDVDをみてました」

「じゃ、寝不足もあったんだね」
「そうです」

「今日はしっかり眠りなさい...」
「そうします!」
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by m_chiro | 2014-09-09 23:26 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「しびれ」の現象と病態❷
先日来、治療にみえている60代男性は、バリバリの農業人である。
老境にあるのに、体が頑健でまるで鋼のようだ。
身体に触れただけで、働いて出来上がった強さであることが窺がえる。
春の田植作業の後に管理の仕事などが続いて、身体の右半身の痛みとしびれを感じるようになったのだという。
そのうちによくなるだろう、と思っていたが一向によくならない。
奥さんに背中を押されて治療にみえたようだ。
「とにかく、いつもと違う。右半身の具合が悪い。よろしくお願いします」と丁重に挨拶された。
実直な人柄からも、一生懸命に働き続けた農業人の姿が窺がえるようだ。
具体的には、右肩からの上肢痛と右腰臀部から下肢にかけてのしびれを伴った痛みである。

しびれを訴える患者さんにも、必要な情報を聴き出してみた。
この患者さんからの聴き取りでは、疾患による病態をうかがわせる情報は見当たらない。
引っかかったのは、草刈作業による反復動作である。
草刈機を肩掛けに背中に担いで、斜面を移動しながら同じ方向への反復作業である。
その作業の2日目に、具合が悪くなってきて作業を中断している。

しびれや痛み症状の出方からしても筋筋膜由来であることが推測できる。
しばらく他の作業をしたが、一向に回復しなかった。
しびれ感は、右脚外側部にビリビリするような鈍い感覚があり、特に腓骨周辺から足背にかけて際立っている。
デルマトームにも一致しないし、神経系以外の疾患症候もない。

もし神経学的疾患が疑われたら、これも徒手療法の現場でも簡易確認できる。
筋緊張や微細な不随意運動はないか。
腱反射や振動覚、ロンバーグ(Romberg)テストなどは必須の検査だろう。
情動系もしっかりしている。

この患者さんの「しびれ」は、身体の機能的な問題に絞っていいだろう。
機能的な身体問題を考えるときに、重力場空間におけるヒトの空間認知能力は基本的に重要である。
いわゆる脳と身体における神経系の入出力によるシステムである。

この姿勢運動制御系を考えると、重要な3つの軸が想定されている。
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ひとつは垂直軸(Z軸:Yaw)であり、顔や体幹の左右の回旋あるいは上肢や下肢の動きに代償しながら関わっている。2つめは、前額-水平軸(X軸:Pitch)で前後屈に関わり、3つめは、矢状-水平軸(Y軸:Roll)で左右への傾斜に関わる。
この患者さんは、3つの軸の問題をすべて内包していた。
内包しながら右側から体側左への動きも固着している。

刺激の入出力に対する身体応答の反射を見ると、「右の小脳から右の基底核へ」の刺激ルートに、修正する反射応答がみられる。
同側刺激を意識しながら隔膜系では右→左(CCW)の刺激で横軸を調整する。
前脛骨筋のしびれる部位には張り付いたように膜の動きが感じられない。
そこをリリースしてはみたが、中々に頑強なので補足的に伸縮テープで補助しておいた。

2回目の治療に見えた時には、症状が限局されている。
右仙骨底部と梨状筋部の痛み、右全脛骨筋から足背のしびれ、である。
緊張性頚反射をみようと頭部の左右回旋をさせたら、左回旋で仙骨、臀部の痛みがなくなる、と言う。
頸部右回旋では痛みの再現が起こる。
右頸椎の回旋筋短縮によって回旋運動がスムーズに行かないのだろう。

観るとC1とC5の左回旋方向に抵抗がある。そこにアジャストすると、首を右に回旋させても右仙骨・臀部へ関連して出現していた痛みが消える。
関連痛には、こうした身体機能性がもたらす存在が潜象しているようだ。

そう考えると痛み系というのは、潜象機能系にも存在するのだろうと思える。
人の体を見ながら、潜象して機能系の存在を強く感じている。
トリガーポイントの存在、あるいはカイロ界の用語である椎骨サブラクセーションも、潜象する機能系からの反射で現れた現象系の存在なのだろう。
だからこそ直接的にトリガーポイントにアプローチしても鎮痛機序が働くのだ。要するに、どちらも鎮痛機序の入り口なのである。
潜象機能系は、潜象であるがゆえに取り組みが難しいのかもしれない。

この患者さん、地域で総出の草刈り作業にまた出向いた。
その間も治療を続けながら、今度は4日間連続で作業したが無事に役割を終えたようである。
症状は、前脛骨筋部のしびれがわずかに残っている程度になった。
それも筋肉負荷が過度になると出やすい。でも日常の生活に悩まされることはない。
右の前脛骨筋部の筋膜の可動に、まだ左右差が残っているし、足関節の底屈の可動も悪い。

これは現象系である。現象系には、在宅でできる方法を指導する。
患者さんの努力も必要である。
神経疾患による下肢の「痺れ」であれば、神経の走行に一致するはずであるし、その他の感覚にも異常があるかを診ることは必須である。
筋筋膜由来の長年のしびれ現象は、確かにしつこいが、筋筋膜の機能が回復するにつれて消えていくだろう。
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by m_chiro | 2014-07-30 07:17 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「しびれ」の現象と病態❶
「しびれ」という感覚はありふれている。
通常は長時間の正座の後によく経験するが、酷い時は立ち上がろうとして脚が儘ならず、転倒することもある。
そこまでいかなくても脚がしびれて感覚が鈍くなったり、くすぐったかったり、奇妙な感覚に襲われることは間々あることだ。
ほとんどの人が少なからず経験している感覚だろう。
「しびれ」も、痛み同様に自覚的に訴えられる感覚である。

臨床でも「しびれ感」を訴える患者さんに出会う。
しびれの表現にも個性があり、ジンジン、ビリビリ、チクチク、ピリピリなど擬音が使われる。
かと思えば、電気が走る、鈍い、皮が一枚被っている感じ、力が抜ける、餅がくっついているようだ、などと表現も多様である。

長時間の正座などで起こる「しびれ」現象は、容易に推測できる。
脚を折り曲げて体重負荷が加わることで筋肉に虚血が起こるのだ。
虚血が起こると、筋肉の筋紡錘からの感覚神経である有髄のⅠa線維や腱紡錘からのⅠb線維の伝導も一時的に混乱する。
だから脚の動きも思うに任せないことが起こる。

時代劇のドラマで見かけるシーンがある。
正座させた腿の上に石板を載せていく拷問によって、立ち上がれずに役人に両脇を抱えられて運ばれていく。あれでも神経が損傷することはなかったのだろうか。
それはともかく日常的に経験する「しびれ」は、通常は可逆的な感覚の異常である。

でも、神経疾患やその他の病態に付随して起こる「しびれ」もあり、わたくし達の臨床でも疾患による病態を除外する必要がある。
「神経麻痺」いも「痺れ(しびれ)」という言葉が入っているのだから、侮れない現象である。

疾患を除外するには、聴き取り(病歴聴取)によっても、ほぼ判断できるとされている。
なにしろ「病歴と身体診察で90%の診断が可能」(R.ステファニー・向原圭、松原理司など)と言われているくらいだ。
疑わしきは専門医に委ねることが必要だが、聴き取りと観察は怪しい病態を除外する上で最も確率の高いスキルとされている。

しびれの部位はどこで、どんな性状のしびれか。
そのしびれはどんな経過で起こり、どのような現れ方をするか。
なにか病歴に関わっていないか。
反復業務も含めて、トリガーとなった出来事や変化はなかったか。
あるいは「最近変わったことはなかったか」でもいいだろう。
また、薬物治療を受けている既往歴や疾患はあるか。
自律神経の変調に関する症状はないか。
ストレスを感じていることはないか。
不眠や食欲の低下などはないか。
など、簡単な聴き取りをしただけでも、除外すべき「しびれ」症状を見分ける目安になる。

つづく
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by m_chiro | 2014-07-25 16:39 | 症例 | Trackback | Comments(0)
患者さんの死
先日、地方新聞の「おくやみ」欄に、覚えのある名前も見つけた。
2年半ほど前に、3回ほど治療にみえた方である。
住所も同じだから、あの患者さんだろう。
なぜ記憶しているかというと、専門医に紹介した患者さんだったからだが、その後の報告もなく何となく気にかかっていたからだ。

経緯はこうだ。
患者さんは60代後半の女性で、一年ほど前から発症した首から肩にかけての痛みを主訴にしていた。
整形外科を受診しており、首や肩、肋骨のX-Rayで異常なし。
心電図測定もリウマチ検査も行ったようだが異常はなかった。
結局、「50肩」と言われたようだ。
鎮痛薬、筋緩和剤などが処方され、マッサージも施されている。
確かに肩の可動域が正常範囲になく、上肢の挙上に制限があった。

2度目に来院したときには「肩が動きやすくなった」と言っていたが、「他に気になることがあるんだけど…」と切り出したのだった。

2か月ほど前に下痢をしてから、腹鳴がおこるようになったのだそうだ。
空腹時には特に酷く、ガスがお腹を回っているように音がすると言う。
便通は良いいが、食欲は落ちた。体重は5㎏ほど減ったらしい。
胃腸科を受診しており、「胃腸炎」の診断が出ていた。
活性生菌剤が2種類、消泡作用や過敏性腸症候に対応する薬も2種類出ていた。
2か月も経つのに改善する気配もなく、余計に気になっているということだった。

他に、循環器クリニックでは高血圧高コレステロールで長年治療を受けている。
循環器科で毎年検査を受けているようだ。
その検査結果の記録は取ってあるのかと尋ねたら、「家にある」と言うので今度見せてもらうことにした。

3回目の来院時に、検査結果をみせてもらって驚いた。
コレステロール値など30項目の血液検査は正常値内にあったが、ひとつだけCPKが異常値である。しかも昨年の検査値の数値を一気に倍以上も越えている。

CPK(クレアチンホスキナーゼ:CK)値
は体内のエネルギー代謝に関わっている酵素の値である。
骨格筋・平滑筋・心筋や脳などに多くみられる酵素で、こうした筋などに障害が起こると血中に流れ出すためにCPK値が高くなる。

おそらく循環器科では心疾患に備えて検査をしていたものと思われるが、筋組織や脳の悪性腫瘍でもCPK値は異常値を示すとされている。
CPK値が高いと、それが骨格筋由来か、心筋それとも脳疾患由来か、3種類のアイソザイムを調べることとされているようだが問題視されなかったのだろうか。

私は専門医を受診するように勧めて、治療適応から除外した患者さんだった。

その後の経過は分からずにいたのだが、そんな経緯があり気にかかっていたために名前を憶えていたのである。

あれから2年半経って、亡くなられたという訃報を新聞で知ったわけだが、もちろん死因については分からない。
CPK値の異常値が疾患の兆しだったのだろうか…。

只々、ご冥福を祈るばかりである。
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by m_chiro | 2014-07-21 18:47 | 症例 | Trackback | Comments(0)
「左肘内側の靭帯が伸びた」女子高生
高校運動部の女子学生がみえた。
6月初めに、筋トレ中にダンベルを持ったまま左上肢を左後外側方向に捻って肘を損傷したらしい。

整形外科でのX-ray所見から、左肘関節の内側間隙が大きいことが確認されて、内側副靭帯の損傷とされた。
「内側靭帯が伸びている」と説明されて、スプリントで固定された。
25日ほどの固定期間を経て、サポーターに変わった。
肘を伸ばさないように、と注意されている。

「伸ばすと痛いし、靭帯が伸びたのは元に戻るんでしょうか?」と不安気である。
可動域と疼痛域を確認すると、前腕の伸展、外旋位で痛む。
それでも関節可動域には問題ないが、伸展位、回外位で腕橈関節を圧迫すると痛みが誘発される。
円回内筋、長掌筋などの筋膜を解放方向に戻して、再度圧迫してみると痛まない。
どうも筋膜のトラブルのようだ。

急激な外反ストレスが加わって、筋・筋膜が障害されたのではないのだろうか。
伸縮テープを利用して、筋膜の固着した部位に限局したテーピングでリリースさせた。

「さあ、それで動かしてみて…」

「えっ!痛くない。なんでぇ~...、感動したぁ~!!」
「どうやってテーピングするんですか?」
テーピングを使うことがあっても、貼り方の知識はなさそうだ。

それで急遽、テープの貼り方実習。
教え方が悪いのか、再三説明する羽目に。

それでもまた「感動した!」と言いながら、ニコニコで帰って行った。
若者は、こんなことでも感動してくれる。
運動選手には、テーピングの実習が必要かな….。
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by m_chiro | 2014-07-04 22:56 | 症例 | Trackback | Comments(0)



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