カテゴリ:症例( 137 )
三代受け継いだ松葉杖
構造的異常を痛みの原因にしない③

半月板の手術のあと膝痛が続いている人をしばしば見かけます。それは関節鏡を使った半月板の手術を得意とする病院があるからでしょう。半月板が悪いから膝痛があるという理論はなりたちません。痛みのない膝でも半月板が損傷している膝はよくあることです。

痛みの本態はこれらの筋肉の筋筋膜性疼痛症候群だとおもいます。筋肉に対してトリガーポイントブロックやマッサージ、電気治療、ストレッチをしてやれば症状は改善します。
筋痛→筋短縮→膝アライメントの変化→半月板の障害、このように半月板の障害は痛みの原因というよりは、結果とみたほうが理にかなっているのかもしれません。
私も、関節鏡を使った手術のあとに続いている膝痛の人をみました。
今年の7月に、松葉杖をついて50代の婦人がやってきました。随分年季の入った古びた松葉杖でした。聞くと、祖父の代から、父親そして自分と三代にわたって使い続けてきた杖だそうです。豪雪の山間部から、はるばるやってきました。

彼女は、今年の2月にあまりにも多い積雪に、屋根の雪おろしをする羽目になったそうです。屋根の不安定なところでの作業がこたえたのか、その翌日から右膝に強い痛みが走るようになりました。次第に膝がはれてきたので、整形外科を受診すると、レントゲン写真で膝の関節軟骨が減っていると言われました。

水を2回抜いてもらい、さらに週一回のステロイド注射を続けたのですが、経過は思わしくありませんでした。とうとう仕事に出るのもつらくなり、5月末には入院・手術になったそうです。

入院中、内視鏡で傷めた半月板を取り除き、更に関節の内部をきれいに掃除してもらう。その時はとてもつらい状態だったようですが、入院生活で無理をしないように努めたこともあって6月中旬頃には松葉杖を使わずに歩けるようになる。その後も、とにかく無理をしないように心がけてきたのだと言います。

ところが、6月末頃になって、また痛みだしました。その後も注射を週一回続けてきたのに、また松葉杖のお世話にならないと、歩くのもままならなくなった。

彼女は見るからに痛々しい感じで、松葉杖をついてやってきました。最初のきっかけは、本人も感じているように屋根の雪おろしでしょう。三代も松葉杖を使ってきたと言うから、豪雪地帯の雪下ろしは不安定な場所での大変な作業なのだと思います。大変なその時に何が起こったのかと言えば、無理な体勢で右膝に負担をかけて、膝周辺の筋・筋膜や軟骨組織に微損傷ができたものと想像できます。

彼女の膝周辺にも、図のような圧痛点がいくつもありました。面白いことに、膝蓋骨上の筋膜に一ヶ所ピンポイントでとても強い圧痛があり、「こんなところにも!」と思ったのを覚えています。

歩行が完全になるまでに20日間ほどかかりましたが、日常生活にも支障なく、仕事にも復帰しました。
構造を診る前に、先ずは筋・筋膜に注目すべきだと痛感します。
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by m_chiro | 2007-12-04 15:48 | 症例 | Trackback | Comments(1)
「今回は、脊柱管狭窄症の痛み?」の後日談
今回は、脊柱管狭窄症の痛み?

Iさんは仕事にも復帰し、跛行もなく、順調に回復したが、疲れると昨年手術した腰部が気になる、そうだ。
最近、こんなことも言い出した。

「頚も腰も、手術する必要なかったんじゃないだろうか?」
そう言われても返事に窮してしまう。
「...。通常、痛みは身体の電気系統のトラブルなんだから、大工仕事をするんじゃなくて、電気屋さんの仕事なんだけどね」。
「私、電気屋なんですよ」(笑)。
「じゃ、家の電気のトラブルが起きているのに、大工さんを呼んで柱を切ってもらった人がいたら、どう思う?」
「そりゃ、バカもんじゃのぉ~。 あ!、おれがバカか...」。
こんな会話が出るようになったのも、余裕が出てきたからでしょう。

加茂先生の心療整形外科のブログやHPには、そんな筋・筋膜の病態が沢山紹介されている。

TravellとSimonnsは、中殿筋障害の注意点として「モートン足」を確認するように勧めている。モートン足とは第一中足骨が短く、第二中足骨が長い構造になっている。だから第2指が母趾よりも極端に長い。その構造的不均衡を代償して歩いたり、立つことで、中殿筋にTrPを生じやすくする遠因にもなると指摘している。
Iさんの足も確かにモートン足だ。第2指が極端に長い。オーバーユースで緊張のみられる足底の筋膜も調整すると、歩行時の足の返りもスムーズになった。
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by m_chiro | 2007-11-30 21:37 | 症例 | Trackback(1) | Comments(7)
今回は、脊柱管狭窄症の痛み?
64歳の男性・Iさんの腰殿部痛と左下肢痛の例。

平成16年に、頚から肩・上肢の痛みで「環軸椎亜脱臼」と診断されて手術。
平成18年11月には、両側の腰下肢痛で腰部椎間板ヘルニアの手術。
「その都度、整形外科の手術で助けられた」そうだ。
兎も角、「それはよかったですね」。

ヘルニアの手術から1年経たずに、今年の7月末から両殿部痛と左下肢痛に苦しむ。
今度の診断は「脊柱管狭窄症」である。

手術が必要だが、昨年手術したばかりだから今回は様子をみましょう、ということで入院治療になった。1ヶ月の入院期間中、ブロック注射を行う。

痛みに変化はない。結局、坐薬と鎮痛剤、シップ薬を処方されて通院治療に変わる。

このままでは仕事に復帰できない。
頼りにしていた整形外科医に投げ出された思いで、他の方法を試そうと来院する。

痛む側を上にして、股関節を屈曲させた側臥位でないと痛みをしのげない。

これは中殿筋障害の特徴的な姿のようだ。
股関節を屈曲する方が楽だというのは、大殿筋の緊張はないのだろう。
こうしたケースでは、圧痛が深部にあるため見逃しやすい。
中殿筋の障害は仙腸関節に関連痛を起こすこともあり、深部にある本命の中殿筋TrPを見逃してしまうことがある。

そんなわけで「増悪因子と寛解因子」は治療の必須聞き取り項目である。
負荷が加わる組織や寛解される組織が特定しやすく、治療のターゲットをしぼりやすくなるのだ。

やはり、中殿筋に強いTrPがあった。腸腰筋付着部周辺にはバンド状に圧痛と拘縮した組織が触れる。リリースしていくと、1週間ほどで跛行もなくなり随分と動作も楽になって、仕事をはじめるまでになった。

根性痛や狭窄症の痛みと言われるものは、本当に怪しい。
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by m_chiro | 2007-11-27 22:35 | 症例 | Trackback(1) | Comments(0)
「腰の骨にトゲが出来て、神経が圧迫された」と診断された症状
お盆すぎから、右殿部から下腿にかけての痺れと痛みに襲われ、頻繁に強い症状が出るようになったMさん(男性、49歳)は、整形外科で「骨棘が神経を圧迫している」と診断される。

もう2ヶ月になるというのに、跛行する上に腰を伸ばしては歩けない。
デスクワークなので何とか仕事は続けているが、最近は頻繁にそんな状態になる、と言う。

「自分では何で痛くなったのかと思う?」と聞いたら、「お盆前に登山をしたが、その時は大丈夫だった。よく山には行くので、思い当たることは登山しかない」そうだ。

腓腹筋に顕著な再現性の圧痛、外側広筋や腸腰筋付着部にもTrPがある。
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リリースすると腰を伸ばして歩行できるようになった。

1週間で跛行なしで支障がなくなり、10日目を過ぎて平常の状態に回復した。
治療と併せて在宅でのストレッチ運動を指導した。

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腓腹筋」のストレッチは方法に注意が必要である。×印の方法にならないようにアドバイスが必要。

問題は筋・筋膜にあるので、「腰の骨にトゲが出来て、神経が圧迫された」症状などではない。
うまくリリースできれば、割合早くに解決するはずです。
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by m_chiro | 2007-11-26 22:24 | 症例 | Trackback | Comments(0)
プロ野球に進んだ2人の腰痛
今日は、大学・社会人のプロ野球ドラフト会議が行われた。

一巡目で関西の球団に指名された○○選手は、高校3年の夏に2年連続甲子園出場をめざして頑張っていたのだが、地区予選大会前に腰痛になって投げられなくなった。

野球部のチームドクターの診断は「椎間板ヘルニア」で、ブロック注射を続けていたのである。
ところが、一向に良くならない。
それどころか腰は逃避姿勢に歪み、座っているのも辛い状態に陥ったのである。

エース不在では闘えないと、たまりかねた監督とコーチ、それに父親が私のところに連れてみえた。

身体は逃避姿勢で歪んでいるものの、どう診ても「椎間板ヘルニア」とは思えない。深部反射も全く正常だった。

私は、この腰痛はヘルニアとは無関係だと告げ、「何とか、後半戦までには間に合うかもしれない」と予測して、私のところで治療することになったのである。

ところが、チームドクターは激怒して「それならMRIを撮れ」ということになった。

結果は、背骨がまがっているものの、ヘルニアの痕跡は見つからなかった。
私にとっては別の意味でホッとした瞬間で、MPS(筋・筋膜疼痛症候群)として治療を行ったのである。

腰痛は順調に回復していった。
1週間後には軽めの馴らし運動をはじめることができるまでになり、どうにか後半戦を投げぬいた。
たが、残念ながら決勝戦では涙を呑んだ。
2年連続甲子園の彼の夢は終わった。

彼は進路を社会人野球に行くと決めていたのだが、私は大学で野球をすることを勧めたのである。

結局、彼は東都野球チームの大学に進学し、エースとして活躍することになる。
大学進学後も、帰省した折には必ずコンデショニングを兼ねて治療を続けてくれた。

今日、その彼がTVの会見で満面の笑顔でインタビューに答えていた。念願であったプロの道へ進む喜びが溢れていた。堂々とプロ野球での活躍を約束していた姿を見て、私の胸にも熱いものが込み上げてきた。

もうひとり、高校生ドラフトで在京チームに2順目で指名された○○君は、高校1年の秋に腰痛に苦しめられた選手である。診断は「腰椎分離症」で、野球を断念すると語っていたのだが、私は「この腰痛は分離症とは関係ないよ! また野球をやれるよ!」と励ましながら治療した選手である。
その彼も2年生の秋には復活し、プロ野球に進むことになった。

今年のドラフト会議は、いろんな意味で心に残る。これもMPSの概念と、痛みの生理学を学んだ賜物だろう。
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by m_chiro | 2007-11-19 22:04 | 症例 | Trackback | Comments(4)
脳脊髄液減少症
低髄液圧症候群

「低髄液圧症候群」と診断され、首から髄液が漏れていると言われた方でも改善がみられる事もあるという事をどうかご記憶下さい。

「低髄液圧症候群」と「脳脊髄液減少症」は、同一の疾患を指しているようですが、発症にかかわるのは髄液圧の低下ではなく、髄液量の減少にあるようです。「脳脊髄液減少症」の提唱者である篠永正道先生の講演を、ある学会で聞いたことがあります。話しを結んで次のように言っておりました。

脳脊髄液減少症の初期の段階では自然に治っていく例も多い。脳脊髄液減少症の可能性のある患者さんが来られたら、この病気では安静にすること、水分を多めに取ることが大切であることを説明してほしい。

痛み、筋緊張亢進の改善、自律神経症状の改善、脳脊髄液循環の改善などで、何かできることがあるのではないかと期待している。


脳脊髄液の循環については、頭蓋療法(クレニオパシー)の狙いとする方法ですし、痛みや筋緊張、自律神経の調整など、徒手療法が貢献できる部分がかなりあるのではないかと感じました。脳脊髄液症候群なるものの病態は良く分かりませんが、安易に診断されると、痛みをヘルニアや変形と結びつけるような誤解が生じかねないように思います。あくまでも仮説で、まだまだ調査・研究の余地が残されているのでしょう。

また、整体治療で発症する例や悪化する例も少数ながら存在するので、マニピュレーションを行うには細心の注意が必要だ、と注意もしておりました。

診断のポイントとして7項目をあげておりました。

1. 症状:頭痛、頚部痛、脳神経症状、倦怠、高次脳機能障害などの組みあわせ
2. 起立時に悪化、横になると改善傾向
3. 臥床安静、十分な水分補給で症状改善
4. 低気圧が近づくと悪化、脱水時に悪化する傾向
5. 軽微な外傷の既往がある
6. 造影MRIで髄液腔拡大(偽脳萎縮)、静脈拡張、小脳扁桃下垂、硬膜肥厚などの所見がある
7. RI シンチグラフィーで早期膀胱内RI集積、髄液漏出像がみられる


脳脊髄液量の低下が起こると、髄液中の神経伝達物質量が低下し、脳・脊髄機能を変化させるのではないかという仮設でもあります。分かりやすく言えば、自動車のエンジンオイルが減少した状態でしょう。車は動くが、エンストしやすく馬力がでない。このような状態に脳が陥っていると考えているのでしょうが、いまひとつ釈然としないものも残ります。
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by m_chiro | 2007-11-16 16:10 | 症例 | Trackback | Comments(2)
歩行中、たびたび足裏に突然の激痛が!
今日の患者さんのSさん(54歳男性)は、歩行中に小石を踏んだりした時や体重のかけ方で、右足底の4趾周辺に突然の激痛が起こるという。いつも小趾側周辺にしびれ感があるそうだ。

整形外科でのレントゲン写真では異常がなく、腰部のMRIを撮った。
MRIの結果「脊髄が曲がって、脊髄後方の空間が無くなっているからだろう」と診断された。
???何のこと?
血流を改善する薬を処方され、様子をみているが、しびれ感は少し軽くなったかな、という程度で、「たいした変化はない」、と言う。

足関節の最大屈曲/伸展でも趾の最大屈曲/伸展でも痛みは起こらない。歩行すると少し苦しくなり小趾側を浮かしぎみて歩く。でも、歩けない痛さではない。それが突然激痛が起こるのだと言う。

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圧痛点を探していたら、2-3趾間の横を走る母趾内転筋を圧したときに、「イタッ! それ、それ、その痛みが起こるんだ!」と叫んだ。
母趾を横に開いてストレッチしながらTrPをリリースすると、痛みがおさまった。
歩行しても普通に歩けるようになり、何かを踏みつけても大丈夫になった。

「以前、くじいたとか、何か怪我をしたことがなかったの?」

「思い当たらないなぁ~。...そう言えば、前に家に中でピンを踏みつけたことがあったが、この辺だなぁ」

多分それでしょう。ストレッチとマッサージの方法を教えて様子をみることにする。
それにしても、誰の眼にも明らかな侵害刺激で発症してるのに、何で腰部のMRIになるのだろう。
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by m_chiro | 2007-11-12 13:58 | 症例 | Trackback | Comments(0)



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