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「新しい治療モデル」へ。
日頃、ご指導いただいている整形外科医・加茂淳先生の著書「トリガーポイントブロックで腰痛は治る」が刊行された。
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先生がHPやブログ上で説かれている内容を、とても分かりやすく丁寧に書かれている。
痛みを抱える患者さんには心強い励ましにもなり、光明をもたらしてくれる本だろう。
私のような徒手治療家も加茂先生の教えに触発されて前に進めたように、痛みを持つ患者さんにも大きな勇気を与えてくれるであろうことは間違いない。

最早、筋骨格系の痛みにおける「損傷モデル」は、過去の治療戦略と言ってよい。
新しい治療モデルとして「生物・心理・社会的医学モデル」を確立することが医療サイドに求められている。このことは一貫した著者からの強いメッセージでもある。
この新しい痛みの治療モデルには、「手術」は相容れない方法論だろう。

整形外科医としての30年もの診療歴の中で、一度も椎間板ヘルニアによる麻痺症状を診たことがない、と加茂先生は書かれていた。
日本整形外科学会の「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」にも、ヘルニアによって麻痺が起こるとは一言も書かれていなかった。腰・下肢痛という「痛み症状」にのみ焦点が当てられている。
つまりは、椎間板ヘルニアによって麻痺は起こらない、ということなのだろう。
では「痛み」症状なのかと言うと、無症候性の椎間板ヘルニアの存在が提出され続けていること、あるいはその痛みの機序が明らかでない現況の中では、痛みそのものとの関わりも怪しいと言わざるを得ない。

この本には、そうした構造障害による痛みとみなされて苦しんできた患者さんたちの生の声と、それに丁寧に答える加茂先生とのやりとりも多く掲載されている。痛みと向き合い、手を差し伸べる加茂先生の慈愛が全編に溢れている本でもある。

MPS(筋・筋膜性疼痛症候群)という概念から、筋骨格系の痛みを評価しようとする加茂先生の眼は、既に「痛みの新しい治療モデル」の啓蒙に向けられている。
MPSの公式サイトを立ち上げる計画は、この本と共に痛み患者の心強い味方になってくれるものと思う。
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by m_chiro | 2009-01-14 00:25 | Books | Trackback | Comments(0)
「ツボに訊け! 鍼灸の底力」を読む
「ツボに訊け! 鍼灸の底力(寄金丈嗣 著)」
http://sansetu.exblog.jp/9867953/

「鍼灸師は患者さんが読むより前に、すぐに買って読んでおきましょう。」


sansetu先生がブログで推薦されていた本です。
ということで、鍼灸師ではないけれど面白くて一気読みでした。

鍼灸の歴史から、東洋医学の考え方、業界事情から鍼灸院の選び方に至るまで、鍼灸治療の良きガイドブックのようです。
時には鋭い突っ込みもあり、わかりやすく説得力のある論理展開で、読者を引きつける著者の力量を感じさせる本でした。

「バーチャル鍼灸体験」の章は、門外漢にとっては興味深深ものでした。
「鍼灸のことなんて知らない」女性のライターによる患者体験記という体裁ですが、これがまた面白い。
3つの典型的なタイプの鍼灸院を取材したリポートで、一見の初診の患者として出向いて治療を受けるという設定になっている。先方にはその報せはないので、余計にリアルな臨床現場を覗いた気分で読める。
こうした患者目線で、自分の治療院も取材シュミレーションしてみると、案外思いもよらない気づきがあるのではないだろうか。

カイロプラクティックはたかが百数十年の歴史であるが、日本のカイロプラクターの混迷ぶりは先行きの暗さを象徴するような実態です。著者の次の言葉は、そんなボンヤリした頭に一撃を喰らったようなインパクトで胸に沁みました。

いい加減に鍼灸界は安易なイデオロギーの押し付けや、借り物の西洋科学のよろいを纏ったり、神がかり的・オカルト的な臨床家にありがちな、安っぽい怪しげな雰囲気を払拭し、「人の身体で人の身体へ」という原点に立ち返るべきであろうと思います。


次の一節もしびれます。

入力と出力が常に同時にある。感じるものがあればそれに応じ、臨機応変にツボ一穴に身体総てを動員して立ち向かっているのが鍼灸師です。それはインプロビゼーションの世界であり、二度とおなじことはあり得ないのです。


治療はインプロビゼーション、つまり反応系における即興だという。一期一会の妙を重んじる特徴的技術が、人の手を通して生き延びてきたところに「伝統」があるのだ、と言います。こうした卓見が、ページのあちこちに散りばめられていて読後の爽快感は何とも言われませんでした。
鍼灸師に限らず、すべての治療家に是非一読を薦めたい本です。
治療の領域を問わず、共通した身体感や治療に関する普遍的な方向性をきっと学べることでしょう。
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by m_chiro | 2008-12-22 16:50 | Books | Trackback | Comments(2)
「生物と無生物のあいだ」
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この本、講談社の現代新書から2007年5月に発刊されました。
発行と共に話題になり、数々の賞を受賞した話題の本です。
遅ればせながら読んでみました。

著者は、分子生物学者の福岡伸一氏。
巧みな文章力に引き込まれて、まるで小説を読んでいるような感覚で一気に読めました。
タイトルはハードな内容を思わせるが、内容は科学者の日常を、それぞれの研究テーマを追いながら紹介したもので、分子生物学の紹介としてはとても良い案内書のように思いました。特に門外漢の私にとっては、DNAの発見をめぐる科学者たちの裏面史を面白く読みました。

ところで、本題の生物と無生物を分けるものは何か。
詳しくは言及されていませんでしたが、結局は「生命」の有無ということになるのでしょうか。
では、その生命とは何か? 
20世紀の科学が到達した一つの結論が「自己複製を行うシステム」とすると、ウイルスは生物か、と著者は問います。

ウイルスは栄養を摂らない。呼吸もしない。二酸化炭素も出さない。老廃物も出さない。つまりは、代謝を行わない。その上、ウイルスを混じり物がないまで純化精製して特殊な条件で濃縮すると「結晶化」するのだ。。

そうなると、ウイルスは鉱物に似た「まぎれもない物質」ということになる。ところが、ウイルスには単なる物質と一線を画す特性があり、それが「自己複製能力」を持つということで、このことからすればウイルスも近年の生命の定義に叶うことになります。

ところが著者は、分子生物学の視点に立って「動的平衡」こそが「生命」であるとみているようです。

新たな概念とは言えない「動的平衡」という生命観ではありますが、治療的介入を日常的に行っている私には、著者の次の言葉がとても印象に残りました。

生命という名の動的な平衡は、それ自体、いずれの瞬間でも危ういまでのバランスをとりつつ、同時に時間軸の上を一方向にたどりながら折りたたまれている。それが動的な平衡の謂いである。それは決して逆戻りのできない営みだり、同時に、どの瞬間でもすでに完成された仕組みなのである。
これを乱すような操作的な介入を行えば、動的平衡は取り返しのつかないダメージを受ける。もし平衡状態が表向き、大きく変化しないように見えても、それはこの動的な仕組みが滑らかで、やわらかいがゆえに、操作を一時的に吸収したからにすぎない。そこでは何かが変形され、何かが損なわれている。生命と環境との相互作用が一回限りの折り紙であるという意味からは、介入が、この一回性の運動を異なる岐路へ導いたことに変わりはない。

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by m_chiro | 2008-12-13 18:48 | Books | Trackback | Comments(6)
生命としての原始感覚を取り戻そう
ぶらり本屋を覗いていて、ふと目についた本があった。
「原初生命体としての人間」(野口三千三著、岩波現代文庫・社会80)である。
今、私が特に関心を寄せている原始の生命に関するタイトルだったので、取り出して見た。
著者は野口体操の創始者・野口三千三先生である。野口体操も、野口先生のことも知らなかったわけではないが、特に関心を持って著作に学んだことはなかった。

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立ち読みして、とても興味深かったので、買い求めて読んだ。
時間を忘れて、むさぼるように一気に読んだ。
独特の言葉や表現に吸い寄せられるように読みすすむと、自分のからだを原初生命体と感じてしまうほどに、言葉に感覚が込められているようである。しかも身体に対する深い洞察がある。それも半端には理解できない深みである。でも、なぜか感覚的に腑に落ちてしまう。

そもそも「原初生命体」とは「コアセルベート」のことで、未分化な全体、流体的軟体、界面さえも明確でない生き物のことを言う。
先日、マメクジウオが脊椎動物の祖先、つまりヒトの祖先であることがゲノム解読で判明したという記事を読んだ。ヒト遺伝子の9割がナメクジウオにもあったそうだ。ヒトの祖先はホヤからナメクジウオと変わったことになるが、コアセルベートとはそれより前の段階の生命体ということになるだろう。
そんなわけで、ヒトの体は本来柔らかいのだそうだ。

こんな寓話が紹介されている。
台所を這っていたナメクジにギョッとして立ちすくみ、次にはどうしてコイツを処分してしまおうかと考える。すると、ナメクジは次のような言葉を投げかけるのである。

「お前たち人間どもは、俺たちを下等な動物と、さげすみ差別して、理由もなしに殺そうとするが、いったいお前たち人間は、自分の脳の形が、色が、動きが、どんなだか知っているのか。お前の筋肉や内臓の形や色や動きはどうなんだ。俺たちと同じじゃないか。あんまり威張るな、ざまあみろ」

人間は進化した脳である高次の脳を持っていることを誇っているが、その脳ですら、実は末梢からの情報なしには何も生まれない。つまり脳は末梢の奴隷とでもいうべきなのだろう。

情報についての次の記述も興味深い。

私は、情報が物質・エネルギーの属性としてあるのではなく、むしろ、物質もエネルギーも、そのまま情報ではないかと思っている。そして、情報というものが、自分の外側にあって、それが自分に働きかけてくるのではなく、自分がそれを情報と感ずる自分の内側の働きによって、はじめて情報になるのだと実感するのである。

どの頁にも珠玉の意味を感じ取ることが出来る。
他にも、呼吸法や基礎的な運動のあり方など、ヒトとしての感覚の保ち方、動きの実際、身体の観察の仕方などなど、丁寧すぎるくらい解説している。
次の言葉にも、深い意味がある。

意識の存在を忘れよ。そのとき意識は最高の働きをするであろう。
筋肉の存在を忘れよ。そのとき筋肉は最高の働きをするであろう。
脳細胞140億のすべてを休ませよ。そのとき脳は最高の働きをするであろう。
働きは意識の指令によって起こるのではなく、イメージによって生まれるものである。

人間はそもそも意識で思うように制御するようには出来ていないのだ。
だからこそ、原初の生き物としての感覚が大事なのだろう。人は進化した高次の脳に振り回されて、本来の自分をも見失っているのではないのだろうか。
原初の生命感覚を取り戻すことが、治療の極意なのかもしれない。
そんなことを感じた本だった。
一般読者のみならず、徒手療法家にもぜひ読んでほしい本である。
そして、いつも側に置きたい本でもある。
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by m_chiro | 2008-06-21 16:00 | Books | Trackback | Comments(4)
ミトコンドリアを知っておこう
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「ミトコンドリアのちから」(新潮文庫)は、とても分かりやすく面白く読めた。
著者は「パラサイト・イブ」などで著明な作家・瀬名秀明氏と、ミトコンドリアの研究者である太田成男教授による共著である。

難解なものが多いこの手の本では、作家が書いた本だけにとても読みやすい。
引き込まれて読んでいるうちに、ミトコンドリアを知ることになる。
話題のメタボや活性酸素、老化やエネルギー代謝など身近な問題を取り上げながら、それらにかかわるミトコンドリアの働きをわかりやすく教えてくれる。

ミトコンドリアは様々な病気や疾患と深い関係があるようだ。
エネルギーの生産工場でもあるわけだから、そのエネルギーが正常に作られなければ身体機能に影響するのは当然なのだろう。
その上、ミトコンドリアは酸素を扱う。
酸素は生命活動に不可欠だが、極めて危険な物質でもある。
この安全管理はミトコンドリアが受け持っているわけで、ミトコンの失調はたんぱく質やDNAのダメージと結びつきやすい。

生活習慣病やエイジング、アルツハイマーや脳の変性疾患、がん、遺伝子病など、ミトコンドリアを知ることで参考にすべき考え方が得られるだろう。
著者の瀬名秀明氏は、作家で薬学博士でもありサイエンスライターでもある。
難しい内容をポイントを外さずに分かりやすく伝えている。その達人と専門の研究者の書かれた本だけに、入門書としても最適である。
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by m_chiro | 2007-12-30 00:01 | Books | Trackback | Comments(2)
ケラチノサイト細胞
第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界
傳田光洋 / / 朝日出版社
ISBN : 4255004013
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皮膚は考える (岩波科学ライブラリー 112)
傳田 光洋 / / 岩波書店
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「手当て」は昔から癒しの技法だった。皮膚上に接触して治癒に導く徒手療法の技法はたくさんある。ドロレス・クリーガーの「セラピューティック・タッチ」や「頭蓋療法;クレニオパシー」も皮膚上での軽い接触によるものだ。そこにどんな機序が働いてよくなるのだろう。

「痛いの痛いの飛んでけぇ~」は子供に良く効く。お医者さんが注射するときも刺す場所をしばらく圧迫してから刺すようだ。これは一時的に皮膚感覚を鈍くして、痛みを抑えるのだろう。一体、皮膚にはどんなからくりがあるというのだ。

 そんな秘かな疑問に答えを示してくれた気鋭の研究者が現れた。傳田光洋氏で、最近「皮膚は考える」と「第三の脳」の2冊を刊行している。著者が注目しているのは、皮膚の中でも表皮の中にある「ケラチノサイト細胞」である。ケラチノサイトこそ、実に多用なセンサーとして働いていると言う。

ポリモーダル受容器の受容分子は、異なる複数の刺激で作動し電気信号を発生させるが、そういった外部からの刺激は最初にケラチノサイトが認識し、それをC線維伝達していると述べている。確かに、C線維は表皮の裏までしか届いていない。

皮膚は脳と同じ外胚葉由来であり、著者が皮膚を「第三の脳」と呼ぶ根拠が示されている。例えば、表皮の最上層の角層が破壊されるとNGF(神経成長因子)が放出されて末梢神経が表皮内へ伸張すること。これは痛覚を考える上でも興味深い。

また、ケラチノサイトはL-ドーパミン、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンの合成・分解機能を持つていること。ACTHやサブスタンスP、βエンドルフィンを合成していること。各種刺激の受容体であるTRPV1~4を持っていること。記憶と学習の装置であるNMDA受容体があること、などなど。へぇ~と思うようなことが、たくさん出てきて皮膚の再認識でした。

 それでも痛みに関して言えば、皮膚は痛点に過ぎないのではないか。日常生活で問題になる痛みは、内胚葉由来の組織、筋・筋膜や靭帯、血管などであろう。確かにポリモーダル受容器は、皮膚からの痛み信号を受け取るのだろう。だが、その刺激を痛みの電気信号に変えるか否かの「比較」を受容器は行っているのではないか、と思わずにいられない
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by m_chiro | 2007-11-10 22:14 | Books | Trackback | Comments(3)



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