カテゴリ:センタリングの技法( 5 )
身体平衡機能系を統合する技法① PRYTテクニックと宮本式・新正体法
身体平衡機能系を統合する技法
①PRYTテクニックと宮本式・新正体法


身体の基本単位を頭、頚部、肩、胸郭、骨盤、上肢、下肢として、それらの相互の情報機能系により統合される身体のあるべき姿を求める技法に、PRYTテクニックがある。

アプライドキネシオロジー(AK)では、PRYTテクニックを基本的な検査と治療に加えている。

PRYTとは、ピッチ(pitch)、ロール(Roll)、ヨー(Yaw)、ティルト(Tilt)の頭文字を集合した用語であるが、船舶や航空機の位置を示すための言語から採用した。
それを身体の傾斜や歪みに対応させて用い、それぞれの歪みの検出法と矯正法が考案されたのである。

c0113928_10253785.jpgPitchは、基本単位である頭部と骨盤が身体に対して前方あるいは後方に位置してる状態を意味している。

そのために、股関節の外転や屈曲運動に制限がみられることがよくある、とされている。

(掲載した図や写真は、「アプライド キネシオロジー シノプシス」(栗原修DC訳、科学新聞社刊、2008より転載した)

c0113928_10265396.jpgRollは、基本単位が横断面における傾斜という歪みとなって現れる状態を意味している。
Rollには、視覚性立ち直り反射が関与するとされる。

c0113928_10273844.jpgYawは、肩に対する頭部の回旋、足部に対する骨盤の回旋が存在する状態を意味する。

Tiltは、頚部の筋に由来する身体の一側性の傾斜である。

PRYTテクニックは、頚部と骨盤の固有受容器の検査によって確認されるのである。
頚部の小さな筋の1g中には約500の筋紡錘が含まれており、特に頚部の問題は体幹下部に及ぼす影響は大きいと見られる。

下の写真は、Yawの動態における抑制バランスの反射テストによる検査である。
c0113928_10282144.jpg

こうした身体の平衡機能系の問題は、身体治療の根幹をなす概念であろう。

昨日、記事にした「宮本式・新正体法」を概観すると、身体平行機能系を統合する方法論の一つに位置付けられるように思う。
c0113928_1271730.jpg
もっとも宮本先生の操法は、治療者の技法を応用する形で行う体操であるが、個々人が自らの身体調整を在宅で行うことができるということに公法としての意義を持つ方法であろう。

宮本式による「動診」は、とてもPRYTの検査にも通じる観方のように思える。

本の表紙の写真を見ても、PRYTの動態が見受けられるだろう。

リセット操法も軽微な刺激を身体に伝搬させることで身体平行系の機能を取り戻すことを狙っているように解釈した。

宮本先生の発想力、着眼力、そして弛まぬ努力が、独自の身体理論として世に出されたのだ、と思えてくる。
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by m_chiro | 2012-03-14 10:43 | センタリングの技法 | Trackback | Comments(4)
「見・診・観」三様
「みる」という行為は、徒手療法においても特に重要である。
富山セミナー(2.25-26)で、この「みる」ということの三様を紹介したのだが、例にあげた3D画像はスライドでは難があったようである。
ここに補足しておきたいと思う。参加者がもう一度再現してもらえれば幸いである。
c0113928_1613679.jpg

この画像を「見る」ときは、視点が見る対象にフォーカスされる。
焦点が対象で結ばれるから、お花畑の蝶であったり、ピンクの花であったり、フォーカスされた対象が見えることになる。

臨床上で「診る」という行為は分析的である。医学的知見を動員して問題を分析的に診ることになる。
例えばこの画像では、蝶はどんな種類で学名は何であるか、何羽飛んでいるか、この種類の蝶はいつ頃の時期によくみられるか、などを分析する。
花は何と言う種類で、咲く季節はいつか、などを分析的にみることになる。

もう一つの「観る」という方法は、私が記事中で使う「見ないで観る」という視点である。
望観する、あるいは俯瞰する観方だ。

私は内圧変動をよく観るので、この観法は特に重視している。
見るのとは違った身体が観えてくる。
この観法は、「二軸視線」を使う。つまり、右目で右側をみて、左目で左側をみる。いわゆる「二軸視線」である。
あるいは「二軸交叉視線」を使ってもよい。
右目で左側を見て、左目で右側をみることで視線が対象の前で交差する。視点が中空に作られるのである。虚空視点とも言えるだろうか。

この観法で、先の3D画像を観てほしい。
セミナー会場で、スライドでは観れなかった画像が観える。
だからといって、観法で観ると身体内部が見えるわけではない。
見るのとは違った身体を望観することで、停滞した内圧を感じることができるのである。
これが「見ないで観る」ことの視線である。
3D画像を観るのと同じような感覚で観ているように思う。

触診での「押さないで押す」、「引かないで引く」という感覚は指先に集中しないことである。
指先に集中すると押された面との反力が生じるために、内圧の変化を感じることができないのである。
少し視点を変えると、違ったことを感じることができるだろう。
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by m_chiro | 2012-03-02 16:08 | センタリングの技法 | Trackback | Comments(4)
神経系のフィルター能力
「目から入ってくる溢れるような視覚情報を "くっきり"させて脳に伝える仕組みの一端を解明」(自然科学研究機構・生理学研究所)

米国神経科学会雑誌(ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス)2012年2月15日号(電子版)に掲載された上記の研究は、とても興味深いものだった。

視覚情報は網膜を通して視床に中継され、視覚野で映像が結ばれる。
多くの情報が一気に入り込むと、脳は明確な整合性のある画像を結べないのだろう。
研究チームは、情報伝達の中継点である視床の外側膝状体が、情報をフィルターにかける役割を担っていることを突き止めたというものだ。
フィルターの役割に加担しているのがグルタミン酸で、このアミノ酸物質が情報の取捨選択を行うことになる。

つまり網膜からの多種多様な情報入力は、最初に多シナプスされた視床の外側膝状体に入ると、次に入ってくる情報に対してグルタミン酸を漏出してまわりのシナプスの反応を低下させるらしい。 
中継点である視床には無数の視神経が集まっていて、それぞれにシナプスが5~30個程度並んでいることを電子顕微鏡で明らかにした。これは相当数のシナプスの数である。

そこに入力されてきた視覚情報は、最初の情報を優先して後からの情報を低下させることで、明確で整合性のある画像が作られていることになる。だから、視覚野に入る前に不必要な情報はカットされているわけだ。

この論文を読んで、小脳における誤作動学習メカニズムに、同様の情報伝達のフィルター機構の存在がダブった。

小脳にはプルキンエ細胞という特殊な樹状突起がある。
この細胞群は小脳皮質に奇麗に並んでいて、そこに2種類の情報の入力線維が入ってくる。情報の入口が1つの細胞に2つあるのも特殊である。ひとつは顆粒細胞からくる20万もの平行線維が垂直にシナプスしている。そして、ひとつのピキンエ細胞に8万個ほど平行線維からの入力があるとされている。もううひとつはプルキンエ細胞にまきつきながら上がってくる登上線維である。

ひとつの細胞に入力される平行線維が8万個に対して、登上線維は1本という奇妙な構図である。
平行線維はグルタミン酸によるシナプスであるから、視床での外側膝状体シナプスと同様の仕組みなのだろうか。

登上線維から運動情報が誤っているという入力が入ると、いわゆる誤れる平行線維からの情報はスイッチオフになり、運動出力が修正されて学習されるという仕組みなのだ。
プルキンエ細胞は運動協調性に関する小脳からの出力系であるが、1本の登上線維からの情報を優先して、平行線維からの入力を抑制して運動系の誤作動を修正しているわけである。
こうしたシナプスにおける情報系のフィルター機構は、多くの入力情報が処理される必要があるところに存在しているのかもしれない。
そう思いながら、この論文を読んだ。
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by m_chiro | 2012-02-16 17:43 | センタリングの技法 | Trackback | Comments(0)
「地震酔い」と「センタリングの技法」
大震災の後も余震が続いて、いつも微妙に揺れている感じがする、という患者さんがこのところよくみえる。
軽めの人はちょっと嫌な感じぐらいで済んでいるが、中にはめまいや吐き気が酷く、脳の重大な病気かと驚いて、脳外科を受診しCT検査を行ったという患者さんもいた。

結局は「地震酔い」とされたが、船酔いや車酔いも同じで「動揺病」の範疇である。「慣れるしかない」と言われたり、神経を休める薬を処方されたりしている。車酔いの薬で対応できている人もいる。

「動揺病」は地震や車酔いに限らず、日常的に観察される現象でもある。
だから、よく患者さんの愁訴に「ふらつき感」や「めまい感」が出てくる。
なぜ、こうした動揺が起こるのだろう、と不思議に思っていた。
そんな疑問が切っ掛けになり、今では私のテーマの一つになっている。
今、模索している「センタリングの技法」は、そんな探求から導きだしたものだ。

センタリングとは、構造的な正中軸の概念として考察したものではない。
あくまでも動的なエネルギーのバランス軸と考えている。要するに、平衡系に関わる神経反射みるのだが、大事なことはそれらの個々の反射の失調を如何に統合させるかにある。ここが悩みどころではある。

さて、この地震酔いのために仰臥位でも揺れが収まらず、吐き気があった30代女性の患者さんに、「センタリングの技法」を用いて平衡系の神経反射の失調を調整した。これで寝ていても揺れる感じが治まった。

足関節の底屈の位相でイレギュラーな反応もみられたので、併せて井穴療法の概念を参考にして自律神経系に対する末梢からの刺激も試みることにした。
足の2~3中足骨間の短趾伸筋と、同じく4~5間の短趾伸筋に圧痛がある。
短趾伸筋の圧痛をリリースして、最後に井穴F5、F6ポイントに井穴用ソマセプトを貼付してみた。

ベッドから降りても全く揺れを感じなくなったようだ。
まだまだ課題はあるが、「センタリングの技法」を詰めて行きたいと思っている。
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by m_chiro | 2011-03-28 19:11 | センタリングの技法 | Trackback | Comments(0)
骨盤の両側がだるい
今年の冬、当地では観測史上初という大雪で、この時期は除雪作業での筋痛や急性腰痛の患者さんが多くなる。ほとんどは痛みや強張りで、動きにも制限が起こっている。
そんな中で、骨盤の両側がだるい、という女性がみえた。
痛いわけでも動けないわけではない。とにかく、立っていても骨盤の両側が「だるい」のだそうだ。
看護師さんである。最近は重度の患者さんを扱うようになって、寝返りなどの介助で力仕事が多くなったせいだろか、と言う。

痛い筋ではなく、「だるい」筋には、筋の弱化が見られることがよくある。
骨盤部に関連した筋のMMT(徒手筋力テスト)を行うと、明らかに両側での弱化がみられた筋は、大腿筋膜張筋と中殿筋であった。

カイロプラクティックのAK(アプライド・キネシオロジー)では、両側の筋の弱化は2つ以上の連続した椎骨に存在するフィクセーション(固着)複合体と関連する、との仮説がある。その中で、「フィクセーション複合体」と「両側の筋の弱化」との相関を8種のタイプに分けている。

例えば、「両側の膝窩筋の弱化」は「下部頚椎のフィクセーション」と相関する。あるいは、「両側の大腰筋の弱化」は「後頭骨フィクセーション」と相関する。また「大殿筋の両側の弱化」は「上部頚椎フィクセーション」と相関する。

このようなAKパターンには8種の相関が堤示されているが、中殿筋や大腿筋膜張筋における両側の弱化に関わるフィクセーションとの相関は示されていない。

そもそも、なぜこうした「両側の筋の弱化」と「フィクセーション複合体パターン」が相関するのだろう。

AKでは、脊柱の靭帯に存在する平衡固有受容器にその機序を求めている。
であれば、こうしたパターンはまだまだ想定できるのだろう。
例えば、仙腸関節をベルトでしっかり固定すると(そこにフィクセーションをつくると)、頚部伸筋に弱化が起こる、といったデモによっても検証できる。

こうしたパターンは、ほとんどの者に適用できるというわけだが、それでも身体機能が高度に統合された神経システムを持つ者にはこのパターンがみられないことがある、とも記している。

さて、ここが肝要である。
フィクセーション複合体と両側の筋の弱化は、平衡固有受容器の代償パターンでもある、ということだ。
身体の平衡系が不安定であるがゆえに、両側の筋の弱化という代償パターンが出来上がる。逆に言えば、動的あるいは静的な平衡反射が正常に機能していれば出現しないパターンでもある、ということになる。

私は「センタリング」という概念を治療の基本技法に用いている。
センタリングという用語は、いろいろな領域で使われている。「身体の中心軸」といった構造的概念から、「心のセンタリング」というコアな概念など様々である。
私の概念を定義しておくとすれば、次のようなものになる。
「重力場において身体平衡系の神経反射シグナルがつくる静的あるいは動的にバランスされたエネルギー軸のこと」。

AKパターンに捉われずに、この考えに従って先の患者さんの身体平衡系の神経反射をチェックした。イレギュラーな神経反射シグナルをセンタリングの技法を用いて再起動させ、再び大腿筋膜張筋と中殿筋の両側の筋の弱化をMMTで確認すると、しっかり安定した筋力を回復していた。
立位、立ち座り、歩行を反復させてみても、もう骨盤両側のだるさもない。

両側性の筋の弱化をもたらすとするフィクセーション複合体は、必ずしもそこにアプローチしなければならないと言うことではない。
AKで述べているように、「高度に統合された神経システムを持つ」身体をめざすことが大事なのだろう。


参考文献:「AKシノプシス」第2版95頁、D.S.Walther、科学新聞社刊、2008
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by m_chiro | 2011-02-10 13:04 | センタリングの技法 | Trackback | Comments(0)



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