カテゴリ:カイロプラクティック( 51 )
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り(2)
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り
2.D.D.パーマーの素性①


D.D.パーマーは1845年3月7日、カナダのオンタリオ州ポートペリー(portperry)に生まれている。
ポートペリーはトロントの近郊に町だ。カイロプラクティックの創始者・D.D.パーマーがこの地に誕生したことを記念して、「カナデイアン・メモリアル・カイロプラクティック・カレッジ(CMCC)」がトロントに建てられたことは周知のことである。

D.D.パーマーは、成人するや生まれ故郷を離れてアメリカに移住し、イリノイ州ニューボストンに居を構えて雑貨商を営んでいる。
ところが家業は家族に任せきり。D.D.は、あるひとつのテーマに没頭する日々を過ごす。
それは極めて素朴な疑問に端を発していたようだ。

「同じ親から生まれ同じ食物を食べ、なぜひとりは強く、ひとりは常に病弱なのか」。
「同じ身体でも、なぜある臓器は弱く、他は正常なのか」。

こうした疑問に対する答えを求めて、彼はあらゆる治療法に目を向けるようになった。
その中でも、特に熱心に学んだのは「磁気療法」と「骨相学」だったようである。
当時、D.D.は磁気療法の治療家として周辺地域でも知られる存在になるのだが、オステオパシーの創始者であるA.スティルも同様に前身は磁気療法の治療家として有名だったらしい。
磁気療法は、当時の流行の治療でもあったのだろう。
骨相学も、当時はホットな学問として注目されていたようだ。

ところで、磁気療法とはどんな療法なのだろう。遡れば「メスメリズム」に思いが至る。
メスメリズムとは、ウィーンの医師・F.A.メスメル(1734~1815)が提唱し、パリで実践して名声を得た「動物磁気説」の流れを汲む考え方と治療に基づいている。
メスメリズムのひとつの流れは、やがて「催眠療法」(1842)を誕生させることになり、精神医学の領域に影響を与えることになった。

当初、メスメルは磁石を用いていたようだが、やがて自らの手を患者の身体にかざすだけで同じ現象をもたらすようになる。
こうして「動物磁気」としての磁気療法を行い、患者をトランス状態に導くことで様々な病気を治したと伝えられている。
このブームに押されるように、当時の科学界がメスメルの治療法を調査している。
その結果、指先から出ているのは磁気ではなく汗だけだったとして「似非療法」と断じられている。

それも今では「電磁気」として認められるようになった経緯があるが、メスメルの手法は精神科学の領域に発展する流れと、手技療法による補完療法に分岐していった。
D.D.が具体的にどのような磁気療法を行っていたのかは定かではないが、治療の原初的な手法である「手当て」による生体磁気療法ではなかったかと思われる。

もうひとつD.D.が熱心に学んだと思われる「骨相学:phrenology」は、ウィーンの医師であったランツ-ヨゼフ・ガル(1758-1828)を学祖としている。
そして、骨相学は19世紀のヨーロッパを席巻し、アメリカにも普及していく。
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ガルは進化論におけるラマルクの「用不用説」を唱導した人でもあり、その概念は「骨相学」にも反映されている。つまり、こういうことだ。

脳でよく使う器官は発達し、使わない器官は退化する。
この脳器官の発達あるいは衰えは頭蓋骨に影響し、頭蓋の凹凸を形成することになるとする説である。

したがって、頭蓋骨を脳機能が局在された骨相とみなして、その地勢的形状や構造計測することで個々の能力・性格・精神状態まで視覚化できるというのである1)。
所謂、「脳局在理論」であるが、今日の脳科学の成果に照らすと実に怪しい理論ではある。

1)「形の文化誌5」(1998,工作舎)「ある画家についてのメモ―トマス・コールと骨相学―」(小川正浩)より図を転載

  続く
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by m_chiro | 2013-07-04 19:09 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
「どっちの脚が短いですか?」
「どっちの脚が短いですか?」。
脚の長さを気にする患者さんがいる。
そう聞いてくる患者さんは、カイロや整体などの徒手療法を経験している人のようだ。
それだけ徒手療法では、「脚長差症候群」という概念を重視しているのだろう。
きっと両脚の長さが揃ったことを、治療の成果として説明しているのかもしれないし、体調不良の目安にでもしているのかもしれない。

しかし、よくよく考えれば、これほど怪しい話はない。
非対称性は自然界の常であり、ヒトの身体とて左右対称ではありえないからだ。
例えば心臓や肝臓、胃の位置も正中にあるわけではないし、腎臓も左右の位置関係は違う。
数ミリ単位の脚長差なんて、あって当たり前である。

特に、カイロプラクティックでは脚長差を検査項目に入れているメソッドもある。
しかし、それはあくまでも検査手技であって、脚長差を無くすための方法論としてあるのではない。
あくまでも刺激に対する興奮と抑制の神経シナプスの反応を見るためのものである。
だから治療の結果として、脚の長さが揃ったかどうかなんて関係ない。
繰り返すが、脚長差の検査は身体の動きや刺激に対する反射的な振る舞いを見ることに意義があるのだ。
そこから、身体における機能的な状態を推測できるし、効果的な刺激が入力されたかの確認にもなる。

ところが、どこで勘違いしたのか、脚長差を無くすことが治療の目的になってしまった。
脚長差を気にする患者さんが多いのも、そんな誤解が少なからずあるのだろう。
そこでは「解剖学的短下肢」が、いつの間にか「生理学的短下肢」にすり替わっている。

「生理的短下肢という客観性のないあいまいな用語はさけるべき」、と提言をしている論文もある。
その論文の記載によると、解剖学的短下肢は次のように定義されている。
「短下肢とは、一方の下肢が他方と比べ、大腿骨頭重力負荷表面から床までの長さが、実際上短いことを意味する。(Bayley & Beckwith,1937)」

要するに、体重負荷、重力負荷による大腿骨頭表面から床までの長さのことである。
だから大腿骨や脛骨の長さが同じでも、解剖学的脚長差は存在することになる。
J.F.Winterstein,DC.の論文「脚長差症候群について」(日本カイロプラクティック学会雑誌Vol3,No2)によれば、150人のX-ray撮影の結果では93%に1㎜以上の脚長差が認められている
左右差に有意な差はない。
脚長差のない人の方が稀だということである。
この構図は、椎間板ヘルニアと痛みの関係の主張にどこか似ている。

一方、生理的短下肢は下肢長を測定しているものではない。
仰臥位あるいは腹臥位で、患者の踵あるいは内踝の位置的な比較をしているだけのことである。
それが治療の結果として揃ったことに何ほどの意味はない。
だから、生理的短下肢を揃えるための治療行為なんて、健康妄想の都市伝説という他ないのである。
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by m_chiro | 2013-04-15 09:05 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り(1)
「カイロプラクティック・コンセプト」ひとり語り
1. ことのはじまり


2012年2月、衝撃的な事件が起こった。これを事件と呼ぶべきかどうかは人それぞれだろうが、少なくとも私にとっては重大なひとつの事件だった。
かれこれ30年以上もカイロプラクティックとかかわってきて、こんなに驚いたこともなかったように思う。

この事件を知ったのは、科学新聞社が発行する「カイロ・ジャーナル」紙「論壇」のコラム記事だった。「CCE 哲学教育丸投げ、サブラクセーションも無視」というタイトルが付けられていて、こんな書き出しではじまっていた。
著者は櫻井京D.C.2)である。
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「サブラクセーションという言葉が米国カイロプラクティック教育審議会(CCE)基準から消えたことは、世界のカイロプラクターに衝撃を与えたが、世界に4つあるCCEの基準を見てみると、実にびっくりするような状況になっている」1)。

それ以前からアメリカのカイロ界における不穏な動向は、小さくではあるが報じられていたので、まったく寝耳に水の話ではなかったのだ。
にもかかわらず驚かされたのは、あまりにも想定外のことだったから、と言う他ない。
カイロプラクティックの本場である米国のカイロ教育審議会(CCE)が、よもやあのような決断を下すとは夢にも思わなかったのである。
どんなに激論が続けられようと、カイロプラクティックの基本的な考え方を捨て去ることなんてできないはずだ、と見くびっていた。
ところが事態は急転した。
これまでのカイロの教育基準に、CCEは見切りをつけたのである。

カイロプラクティックの基本的な概念を象徴するキーワードをあげるとすれば、少なくとも3つの言葉に集約できるだろう。
ひとつはカイロプラクティック哲学の用語である。「イネイト・インテリジャンス」、「ユニバーサル・インテリジャンス」として語られている。
二つ目は、「サブラクセーション」というカイロプラクティックの専門用語であり、三つ目はカイロプラクティックのアプローチを表現した「アジャストメント」という技術用語である。
このカイロプラクティックの用語とも言えるキーワードが、カイロプラクティックの教育基準から外されたのである。

この流れは米国CCEだけに留まらない。
むしろ最後の砦ともいえる米国CCEも陥落したのだ。
この事態は、カイロプラクティックの歴史的な転換期を迎えたことを象徴しているようにみえる。

ところが不思議なことに、このCCE基準は必ずしも教育の現場(大学)あるいは研究の現場に適応させるものではないらしい。
CCEの役割は「教育の必須要件を規定」するのであって、「教育や研究を制限するものではない」ということのようだ。

要するにCCEは「教育の自由と規律性を重視」するがゆえに、「特定の哲学、原理、臨床を定義、支持しない」というのである。
煙に巻いたような説明だが、カイロプラクティックの概念を「特定」のものと位置づけたところがミソのようだ。

何に対して「特定」なのか。それは、いわゆる医学教育に対峙する内容ということなのだろう。
だからこそ、医学教育としてコンセンサスが得られない特定の概念は、カイロ教育の基準から除外しなければならない。
カイロ哲学も、サブラクセーションも、今日の医学・医療の概念としては受け入れないのである。
そう読める。

ところが見方によっては、本音と建て前は違いますよ、と言っているようにも聞こえる。
どうも政治的な配慮の匂いがしないでもない。

いったい、カイロプラクティックはどこに向かおうとしているのだろう。

ところで、私などは自称カイロプラクターであるがゆえにこそ、せめて自分自身の中に「カイロプラクティックとは何か」ということに整合性のある解釈を構築しておかなければ、カイロプラクティックの治療家として前に進めない気がするのだ。

「特定」の概念で「特定」の臨床に携わっている以上、自分で「特定」に決着をつけるしかない。
ここは今一度、D.D.パーマーの原点に回帰しながら再考してみようと思い立った。
カイロプラクティックとは何か、
そしてその原理とはどのようなものなのか。
それを探ってみることにした。

とは言っても、あくまでも自称カイロプラクターの「ひとり語り」に過ぎない。
それでも、このハードルを乗り越えずに、カイロプラクティックを名乗ることはできないと思うからである。


1)「カイロ・ジャーナル」第74号、2012.6.26、科学新聞社刊
2) カナディアン・メモリアル・カイロ大学卒(D.C.)、「ポジショナル・リリース・セラピー」、「統合的徒手療法」(科学新聞社刊)などの訳書がある。
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by m_chiro | 2013-03-12 09:19 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
青沢蕎麦で年越しです。
今年の師走はホントにバタバタして過ごしました。
寒さも半端ではなく、例年の2月の冬空でした。

それでも29日(土)に仕事を納め、30日(日)は治療室の大掃除でした。
一年間で、机の回りもゴチャゴチャです。
山積みの資料なども整理しましたが…..。
(あまり変わり映えしませんねぇ~。)

大晦日の今日は、自宅の年越し準備でした。
毎年簡単にしているのですが、それでもひと仕事です。

夕方には、わんこ達と今年最後の散歩。
肌を刺すような雪まじりの冷たい風が吹いて….。身が縮みます。
それでもわんこ達は元気、雪に残った犬の足跡を嗅ぎながら後を辿っています。
何が楽しいのか…、随分と張り切ってます。

散歩の後は、注文していた「年越し蕎麦」を受け取りに行きました。
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鳥海山の南麓で育てた青沢産の蕎麦です。
「でわかおり」という蕎麦粉で、そば粉が9割の手打ちです。
これがまた美味しい!!

これを食べて佳い年を迎えたいものです。

今年一年、拙い記事にお付き合いいただき有難うございました。

みなさんも、どうぞ佳い年をおむかえください。

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by m_chiro | 2012-12-31 19:04 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
JSCセミナー(東京):「頭と頸のなりたちと機能について」(すこやか塾・馬場信年先生)
11月4日(日)、学兄・馬場信年先生がJSC関東支部セミナー(於東京)に出向いてこられた。
テーマは「頭と頸のなりたちと機能について(序)」である。
とても楽しみに思いながら参加させていただいた。

姿勢制御系に関わる問題も「頭と頸」を切り口にして解説され、その機能連鎖からのアプローチを披瀝されて下さった。
私たちにとって「姿勢制御系」は重要なテーマのひとつである。
今回、馬場先生が提示された内容は、姿勢制御のテーマを眼球運動の視点から捉える手法などを反証する視点を提示するものだった。

ヒトの空間認知に関わり姿勢制御系をコントロールするのは、①視覚系の情報、②聴覚系の情報、③頭位、④頸部の回転、⑤迷路刺激、⑥固有受容器、⑦体内における化学物質やガスの調整系などである。
固有受容器については、筋・関節・靭帯などカイロプラクターが特に関心を寄せている部位でもある。
こうした相関する姿勢制御系は反証されることでより本質に近づいてくるので、とても意義深い内容だった。

特に「頭と頸」について、進化による形態学的変化とその機能的変化から、ヒトの頭と頸の観方を独自の観点で切り開かれていた。
その独創する探究心に敬服させられたが、学びは相関的で多面的、だから極めていくと面白くなる。そんな教えをいただいたように思う。

頭頸部から全身に及ぶ機能連鎖も身体表現から読み解いて解説し、変化する様を創りだして見せてくれた。
また、頭頸部、中頚筋膜・腱膜に関与する循環系については、興味深い機能的な関わりを症例や最新の研究報告を織り交ぜながら紹介していただいた。
盛り沢山の内容、深い洞察、細部にわたる考察、そのいずれもが刺激的な内容でした。
それでもまだ「序」である。
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by m_chiro | 2012-11-05 17:35 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
六然社・直伝講習(9.19)「復習Guide ⑦(了)」
参加者のために「復習のためのガイド」を記しておきます。

⑦ クロストーク現象とソマシリーズ・ツール


この講習会で紹介した「刺激/抑制バランス」のチェックを、必要性を感じるケースでは初診時にほぼ行っている。このチェックの良いところは3つある。ひとつは、小脳の誤差修正機能に働きかけることができること。2つめは、患者さんの認知機能を促すことができること。そして3つめは、抗重力筋に対するフィードバック機能を増強できることにある。あくまでも個人的な感想である。

ところが、このチェックで整合性のない反応をする患者さんがよくいる。
また、機能障害が明らかであるにもかかわらず、全く正常な応答をするケースもあるが、これは決して正常であることを意味しない。
だから、いずれのケースでも「クロストーク現象」を疑う必要がある。
クロストーク現象によって本来の反応が打ち消されているのである。
別の言い方をすれば、イレギュラーな反応が身体上に表出されていることが疑われるからである。

クロストークとは、生物学では「あるシグナル伝達経路が情報を伝えるときに他の伝達経路と影響しあうこと(ウイキペヂア)」とされている。

なぜ、クロストーク現象が起こるのだろう。
この疑問に対する確かな答えは見出されてはいないようだ。
カイロプラクティックでは頭蓋問題を指摘するグループもあるが、具体的に頭蓋問題の何かはよく分からない。

私の印象ではストレスを抱えている人に多いように思える。
例えば、無言の会話(怒りや不満などの)や心配事などの問題を抱えている人、寝不足などや自律神経機能の問題が表現されているケースなどである。
クロストーク現象が現れている患者さんに、そうした問題の有無を聞いてみるといい。

このクロストーク現象は、便宜的にKI27とCV8の経穴ポイントによってキャンセルすることができる。AK(アプライドキネシオロジー)では、この経穴ポイントを神経学的統合不全に対応する部位としているが、その根拠についてはよく分からない。

また、正穴F6でキャンセルされるケースもある。

先日もこんな患者さんがみえた。
右半身がモヤモヤした感覚がある。眠れない。胸が苦しくて呼吸がつらい。朝起きるときに腰痛があるという患者さんである。
視動反射も頚眼反射もすべての方向で抑制がみられ、応答に整合性がみられない。
KI27とCV8周囲に同時に圧テストを行うと抑制が起こる。
これはクロストーク現象が推測されるケースである。
クロストークを解除する手法もいろいろあるが、簡便に解除するには長谷川先生のソマシリーズが便利に使える。
そこで3ポイントに長谷川先生のソマシリーズのツールを貼付したところ、クロストーク現象が起きなくなった。

再度、視動反射と頚眼反射をチェックし直すと、左水平注視、Yaw2とYaw3の問題が明らかになった(組み合わせ運動による反射を見る場合、両者に抑制があると「抑制1の抑制2」で興奮が起こり、正常と判断されやすい。これは要注意である)。

この患者さんは3日後に再来院。2日間は良好であったが、また同じ状態になったと訴える。やはりクロストーク現象が残されていた。F6でも「刺激/抑制バランス」チェックに抑制がみられる。そこでF6にピソマを貼付した。するとKI27とCV8の応答も解除された。

これはF2が抑制2の役割を果たしていると推測できる(「復習Guide ⑥」を参照のこと)。
こうしたケースではF2がクロストーク現象の解除をもたらすポイントになるのだろう。
これでクロストーク現象が消えて、本来の機能障害を治療することできた。今度は主訴も解消され、安定した状態に導くことができた。

また、こんな応答をする患者さんもある。刺激/抑制バランスで正常だった。一見、問題なさそうな応答である。
ところがKI27とCV8に対して同時に圧テストを行うと、抑制バランスが起こる。便宜的にピソマを4ポイント添付して解除すると、本来の問題点が応答されてくる。
クロストトーク現象の起こる要因はよく分からないが、便宜的に長谷川先生のツールはとても便利に使えるツールだろう。
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by m_chiro | 2012-10-15 23:25 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
六然社・直伝講習(9.19)「復習Guide ⑥」
参加者のために「復習のためのガイド」を記しておきます。

⑥ 「刺激/抑制バランス」現象からみた障害と治療の部位


直伝・講習会(9.19)紹介した検査法は「刺激/抑制バランス」に関わる方法である。
神経系の出力は筋活動によって表現されている。
この神経細胞間のつながりは「興奮性」の作用によるひとつの活動(興奮性シナプス後電位:EPSP]だけである、と長い間了解されてきた。
ところが1950年代に入り、別の信号系が見つかっている。
それは興奮性とは逆向きの「抑制性」作用を起こすニューロンである(抑制シナプス後電位:IPSP)。
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伊藤正男著「脳の設計図」より転載

その後、また「シナプス前抑制(EPSPの抑圧)」という興奮性シナプスの上にもうひとつのシナプスがあって抑制するものだが、あまり一般的ではない限られた存在のようだ。

これらの3つのタイプの中でも、基本的にはEPSPとIPSPの作用の異なる2つのニューロンで機能しているという単純な話になってしまう。

このニューロンの働きを、分かりやすくスポーツゲームに譬えると理解しやすいかもしれない。
例えばサッカーでも、ラグビーでもいい。ボールを伝達物質と仮定すると、そのボールを手にした選手は一気にゴールを目指す。これは興奮性シナプスの作用と言える。
ところが、その行く手を阻んでボールを奪い、あるいはタックルしてボールを持つ選手の動きを抑制しようとする対抗チームの選手が出てくる。
ボールという伝達物質をゴールに導く選手は「興奮性シナプス」で、その行く手を阻みボールを奪う選手は「抑制性シナプス」である。

ゲームでは、抑制する選手(抑制1)を更に相手チームの選手が阻む(抑制1に対する抑制2)が行われる。すると抑制の抑制による興奮性シナプスが再活動し、ゲームではボールを持つ選手がゴールに向けて突き進む。
つまり、抑制1の抑制2は「興奮」になる。

この時の「再興奮」をもたらす「抑制2」の刺激が、ひとつの治療ポイントということになる。それは特定の動きであったり、圧刺激あるいは触刺激であったりすることで、興奮性ニューロンが抑制される現象と見ることができるだろう。

この抑制が解除されるポイント(抑制2)を、治療部位のひとつとして提示したものである。
刺激/抑制を解除する入力系は、決してひとつだけとは限らない。
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by m_chiro | 2012-10-13 07:59 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
六然社・直伝講習(9.19)「復習Guide ⑤」
参加者のために「復習のためのガイド」を記しておきます。
(前回の記事に掲載した眼球運動の図を変更しています。)


⑤ 患者モデル(女性)の検査結果からの推論

記憶が薄れていて正確かどうか怪しいものがあるが、モデルになっていただいた女性のケースで肝心の検査結果とその姿勢制御系に関する推論を述べておきたい。

②視動反射:左(+)、右(+)
③眼球運動:水平運動注視(左+)、斜め下方運動注視(+)
④頚眼反射:頭頸部左回旋位(+)、頭頸部左側屈位(+)
⑤胸部-腰骨盤部:胸部回旋(左+)-腰骨盤部回旋(右+)
⑥股関節:外転(右+)
⑦足関節:背屈(右+>左)
⑧仙骨:基底部の後方回旋(右+)

(+)の表示は神経学的な異常を示すものではない。刺激/抑制バランスの存在を示している。「刺激/抑制バランス」については次回に解説したい。

上記の結果から、このモデルでは2つの姿勢制御の歪みパターンを見てとれる。
ひとつは頭位の左傾斜(Tilt)で、これは前後軸(Y軸)における頭の傾きという現象である。この左傾斜は、右斜め下方運動注視(+)による代償作用であろう。
前回の記事の眼球運動の図で、右斜め下方注視における左眼の上斜筋と内直筋による眼球運動反射に遅延があるのではないかと推測できる。

股関節では右外転位で代償しているパターンであるが、モデルのTiltパターンはおそらく右足関節の異常なシグナルによって代償されているように思われた。
足関節の固有受容器は、姿勢制御系でも重要な意味を持っている。
このモデルの足関節問題には注意すべきと感じた。足関節の固着を解放することで、Tiltパターンもリリースされることが臨床上よく経験するからである。
あくまでも推論に過ぎないが、このモデルは右足底足尖部にウエイトをかけて立ち、右斜め下方視線を使うことが多いのではないだろうかと思えた。そのために足関節が固着し、可動制限があった。重要な治療ポイントのように思えたのである。

しかし、ここではあくまでも視覚系へのアプローチする手法の紹介であるため、足関節への対応はしなかった。

このモデルの本質は、左水平運動注視(+)と頭位との組み合わせによる頚眼反射(左+)に抑制バランスが起こることにある。ただし、注意しなければならないことは、頭頚部を左回旋させた時に、眼球を左水平注視位にしないでリラックスさせなければならない。抑制(左水平眼球注視+)の抑制(頭頚部左回旋+)は興奮になるからだ。
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モデルでの頚眼反射(左+)は、Z軸(Yaw軸)における回旋障害として表現されている。
これは後頭部における回旋(Yaw1)、胸―腰骨盤部における回旋(Yaw2)、仙骨部の回旋(Yaw3)のすべて、あるいはいずれかに代償パターンがみられることになる。

モデルでは、Yaw2における「右前方寛骨―下部肋骨左前方」の回旋、Yaw3「右仙骨基底部の後方回旋」の代償作用が現出していた。

この現象に対して、視覚経路に直接にアプローチを紹介したわけである。
この手法で、モデルの抑制バランスは解消した。が、最終的には右仙骨基底部の後方回旋が残された。これは別個に、右仙骨基底部へのリコイル、および右股関節外転に対して梨状筋に対するリコイル、によって対応する手法を紹介した。

次の視神経経路をよく観察してもらいたい。内圧変動を視るときの参考になる。
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by m_chiro | 2012-10-11 23:12 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(0)
六然社・直伝講習(9.19)「復習Guide ④」
参加者のために「復習のためのガイド」を記しておきます。

④ 視動反射、頚眼反射からみた姿勢制御系


この直伝講習のテーマは「姿勢制御系」である。それを「視覚系からの入力」という視点からみるというのがテーマである。
姿勢制御系は、基本的に①視覚系の情報、②聴覚系の情報、③頭位、④頸部の回転、⑤迷路刺激、⑥固有受容器によって制御されている。あえて追加するとすれば、⑦体内の化学物質とガスの調節系を含めることができるだろう。

さて、視覚系情報では、視線運動反射(視動反射)と眼球運動、頭位との組み合わせ運動と頚眼反射による調節系からの観方を重点的に紹介した。

次の図は眼球運動にかかわる作用筋と、そこに関与する神経についてまとめられている。
直伝講習での紹介は、この眼球運動に関わる神経病理がないことを前提とした。あくまでも一見正常な眼球運度にみられる反射の遅延の存在である。この反射の遅延によって、姿勢制御系に機能的な障害を生じされる出力をみる方法である。

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この眼球運動にかかわる筋の作用を思い切り簡略化すると、下図になる。
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また、眼球運動には座標軸が想定されている。
垂直軸(Z軸)と水平軸(X軸)、それに前後軸(Y軸)である。
これは頭位に関する座標軸でも同様に設定されている。
垂直軸(Z軸)で行われる眼球運動は水平移動(水平眼球運動)である。
あくまでも臨床的推論ではあるが、この運動は最も重要な意味を持つ眼球運動であろうと思える。

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水平軸(X軸)における前後運動である。前後軸(Y軸)は、上斜筋と下斜筋の組み合わせによる斜め下方あるいは斜め上方の傾斜運動である。これらの反射の遅延は、頭位に同じ運動の偏移をもたらすことになる。頭位の偏移は直立姿勢分析でも観察される

こうした眼球運動と頭位の組み合わせによる頚眼反射をみることで、それが姿勢制御系にどうかかわるかを窺うことができる。

鳥類は、大気中で自己の空間認知を感知するセンサーによって空中での活動を制御している。
このセンサーは船舶や飛行機の空間認知のメカニックにも応用されていて、それが重力場におけるヒトの姿勢制御系にも取り組まれている。

頭部の前後運動(X軸)の偏移は、頭位の伸展/屈曲障害(Pitch)となる。その多くは屈曲障害として出現するとされている。この動きは股関節の屈曲/伸展の機能障害によって代償される。

頭部の傾斜運動(Y軸)では頭位の傾斜(Tilt/Roll)が見られるが、下肢、股関節(屈曲あるいは外転障害)、骨盤に一側性の回旋による代償障害が起こり得る。

骨盤の回旋は反対側で仙骨を固定する梨状筋の代償作用と思われる。
下肢で特に足関節の障害、あるいは一側性の外眼筋の作用で代償されることがある。

さて問題の回旋運動の偏移(Z軸)は、頭位にも回旋運動(Yaw)による姿勢制御をもたらす。
この制御は頭位の回旋だけでなく、後頭骨の回旋および胸腰・骨盤部の回旋が代償する制御系でもある。

Z軸における水平眼球運動(外転神経と動眼神経)は、姿勢制御系の中でも最も重要な制御系であろうと思っている。

痴呆の簡易診断に眼球運動計測を用いた論文がある。長岡技術科学大学工学部生物系医用生体工学教室の研究論文「眼球運動計測を用いた痴呆簡易診断システムの基礎研究」である。水平眼球運動の重要性を思わせる内容であり、関心のある方は参照されたい。
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by m_chiro | 2012-10-08 12:49 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(2)
六然社・直伝講習(9.19)「復習Guide ③」
参加者のために「復習のためのガイド」を記しておきます。

③ 小脳による誤差修正作用による適応系

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上の図(伊藤正男先生の著作より転載した)を見ると、眼前に一本の指がある。
この指を左右に振ると、それを見ている眼からの情報は「ブレている指」の映像となる。
逆に、眼前の指を動かさずに頭を左右に振ってみよう。
すると、指は静止したままの状態として映しだされる。

これは網膜からの像に対して、頭位の動きに応じて眼球が頭位と逆方向に動くことで像がブレないように調整されるからである。
この調整は、前庭器官と頭位の動きと網膜からの情報を、小脳の誤差修正機能を介して行っていることになる。

もう少し具体的に辿ると次のようになる。
前庭器官は頭と首の動きを受容する。すると前庭核にその情報を送って、映像がブレないように眼球を逆方向に動かすようにする。

ところがこの回路網には、眼球から前庭器官のフィードバックあるいはフィードフォワード経路は存在しない。要するに自分で誤作動を修正する能力は装備してないわけだ。

そこで、この前庭動眼反射の経路に小脳片葉(系統発生的に古い小脳)に前庭系神経核群の延長部分が挿入されている。反射の正確性を補完するためなのだろう。
こうして前庭系の反射は正確性を高めて、姿勢制御や抗重力筋の制御を行っている。

図からも分かるように、前庭からの信号は苔状線維から小脳の平行線維に入り、プルキンエ細胞に入力される。

プルキンエ細胞からの出力信号は前庭系核に入り、動眼神経(Ⅲ)を興奮させ、逆側の滑車神経を(Ⅳ)抑制して眼球を頭位と反対方向に動かすのである。

このことで外界からの映像はブレることなく認識される。頭の動きに応じて、適当なだけ逆方向に眼を動かすのである。動き過ぎても足りなくても用をなさない。

しかし、ここで網膜からの誤差が生じると、一個のプルキンエ細胞に登上線維(たった1本だけ存在する入力線維)から「誤差修正せよ」の信号が入る。実は、おもしろいことに、プルキンエ細胞という出力系の細胞には、入力線維の入り口が2つあることになる。

するとプルキンエ細胞は、もう一つの入力線維である平行線維(1個のプルキンエ細胞に約8万のシナプスが入る)からの関連情報を長期的に抑制する。この抑制に働くのがグルタミン酸である。

このことでプルキンエ細胞は登上線維からの情報を優先して前庭核に信号を送り、誤差の修正が行われるのである。

姿勢制御や運動系に関する小脳の役割には注目である。
こうした誤差修正を行って適応させている小脳の働きを、治療で利用することは運動認知に欠かせないアプローチでもあるだろう。
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by m_chiro | 2012-09-30 10:17 | カイロプラクティック | Trackback | Comments(2)



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