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MPS発症の罠は、どこにでもある! ①
MPS発症の罠は、どこにでもある!
①「さて、あなたの腰痛はどれでしょう?」(ある腰痛患者との会話から)


雪の季節になると、除雪作業での腰痛患者や滑って転倒した患者さんが多くなる。
ところが、こんな患者さんもある。
久しぶりに治療にみえた女性。2年ほど前にも、腰痛で1度治療にみえたことがあった。
その時は、1度治療を受けてよくなったらしい。

今回は、正月前から腰痛になり1週間ほど経過したが寛解する気配もない。
思い当たることもなく痛みだした。常に鈍痛があり、時に強く痛むことがあるが、何が憎悪する因子なのか、これといって思い当たらないようだ。寝ている時にも、動作に関係なく痛むことがあるとか。

全体的に左頸部から腰背部に緊張があり、特に左腰部筋群の胸腰移行部に過緊張と関節運動の固着化が著しい。こうした一側性の過緊張は、冬場になると除雪作業で痛めた腰痛患者に多くみられる。
だが、本人は何もしていない、と言う。

治療を終えたら、「あ、大丈夫になった! 動ける」と言って帰られた。
が、それから4日後に再び痛み出し、また治療にみえた。
「前の時は1回の治療でよくなったのに…..、何でだろう….??」
「何もしてないのに、何でまた痛み出したんだろう…?」と不安げである。

そこで、日本整形外科学会と日本腰痛学会がまとめた「腰痛診察のガイド「ライン」に関する記事(「腰痛診察の在り方が変わるか!?」に掲載)の新聞記事のことを話題にした。
その山形新聞の記事は読んでいないそうだ。
要するに、下の図のことだ。

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すべての腰痛で、原因を特定できるものは15%。実際、この15%の中にも腰痛との関連が疑わしい病態も含まれているように思うが、それはともかくとして、その他の85%は原因を特定できない腰痛である。ついては画像検査ではなくストレスのチェックをしなさい、というガイドラインである原因を特定できない85%の腰痛にはストレスが関与している、ということのようだ。

「さて、あなたの腰痛はどれでしょう?」
「……???」

「消去法で考えたら分かるんじゃないの…。外傷によるものは除外できるし、感染症でもない。神経学的な兆候も、内臓疾患の徴候もないわけだし、後は85%の原因を特定できないとされる腰痛だけど、それはストレスが関わっているとされている腰痛ということになるけど…。ちがう?」
「でも、私はストレスに強い方だから…..」

「そう! じゃ、15%の方を心配しているわけだ….」
「はい、何か悪いものがあるんじゃないかと….」

「えっ、癌か何か、とでも…?」
「ええ!」
そう思っているのなら画像検査などを優先しなければならない腰痛ということになるが、われわれの治療を求めるのはどういう心理だろう。

「癌で痛みが出ているとしたら病状が進んでいる可能性があるけど、最近体重が減ってきているとか、疲れやすいとか、検診で要検査の指導を受けたとか、その他で疑わしいと思っていることは…?」
「冬になって動かないから体重は増えています。健康診断では、何も….。でも、動かなくても痛くなるってくるので…」

それじゃ、問題を難しくしないで85%の方の腰痛を考えるべきでは? 
ところが、ストレスとなると精神心理的問題を想定する。
が、反復される物理・機械的ストレスも含めなければならない。
こんな研究もある。
”Repetitively stretched tendon fibroblasts produce inflammatory mediators. ”
「反復的に伸張された腱線維芽細胞は炎症性物質を産出する」(ピッツバーグ医療センター、整形外科)
(この記事は別項で紹介することにします。)

そのことを指摘すると、「何もしていない」ことを強調する。
では、何もしていないのに痛みのタネができるのは、なぜだろう?
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by m_chiro | 2013-01-18 12:20 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
腰痛診察の在り方が変わるか!?
「よくなてきたけどもう一歩だ」http://junk2004.exblog.jp/19760772/
加茂先生のブログ記事。
昨年最後の山形新聞(12.31付け)1面の囲み記事にも、同じ内容の報道があった。

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「腰痛にストレス関与」と題した記事は、決して新たな見解ではない。
が、日本整形外科学会と日本腰痛学会は、12月30日までに「腰痛の診療ガイドライン」をまとめたことを報じていた。

腰痛の発症やその慢性化には「心理的ストレス」が関与しているとする見解である。
だから画像検査の在り方が問われている。
重篤な脊椎疾患がない限り、マニュアル式に画像検査をすることを戒める診療指針である。

まずは発熱や胸部痛といった危険信号があるかないかによって、①癌、外傷、感染などの重篤な脊椎疾患、②まひ、しびれ、筋力低下などの神経症状のあるものと、原因を特定できない非特異的腰痛を分けなさい、としている。

それでも、麻痺、痺れ、筋力低下の症状が、必ずしも重篤な神経学的徴候とな限らないケースもあり、その鑑別には筋・筋膜問題を含めて課題がある。

それはともかくとして、危険信号および①と②に該当するケースでは画像検査が要求されるが、原因の特定できない非特異的腰痛に対してはストレス評価が必要であっても、画像検査は必要としないのである。

しかも非特異的腰痛は全腰痛の85%を占めるとしているわけだから、腰痛に対する画像検査の在り方が変わらなければならない。
変わってほしいものである。

こうした事例にも、医学的に不確かな時代の流行というものが見え隠れする。
盛んに「椎間板ヘルニア」などの構造的問題を指摘してきたものが、この診療ガイドラインでは対極にある「心理的問題」を強調している。

確かに「精神・心理的要因」は重要な因子だろうと思う。
だからといって、85%の腰痛を「生物・心理・社会的要因」とし、「心理的ストレス」を強調して終わりにしてはならない。

その因果が明らかにされなければならないし、何よりも生き物としての機能的側面の解明は重要な課題だと思う
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by m_chiro | 2013-01-03 11:47 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
マニピュレーションは急性腰痛に効く! 効かない! どっち?①
マニピュレーションは急性腰痛に効く! 効かない! どっち?
①「リンゴをリンゴと比較していないから紛らわしい」


脊椎マニピュレーション(SMT)の有効性を問う調査がでると、出所によって意見が割れる。
SMTを使う側(カイロプラクティックやオステオパシーなど)から出される結果は「有効」を裏付ける内容で、それ以外あるいは中立的な立場から出る結論には疑問とする意見が出る。
なぜ、こんなことが延々と続いているのだろう。

最近の調査結果の記事を読んだ。
「急性腰痛への脊椎マニピュレーション効果を支持する証拠はない:Evidence Does Not Back-Up Spinal Manipulation for Acute Lower Back Pain」という記事で、2012年9月12日付“AANS NEUROSURGEON”電子版に掲載されている。

このレビューに対して、トーマス・ジェファーソン大学病院のミッチェル・フリードマン,
D.Oがコメントした言葉が印象的だった。
「リンゴをリンゴと比較していないから、このようなレビューは紛らわしいかもしれない」

リンゴにもいろんな種類がある。どの種類で比較し、何を評価したいのか。色、形、味、匂い、果肉、歯ごたえ….。それが見えてこないと比較の結論も見えてこない、と言うことだろう。

さて、その電子版の記事の要点をまとめると、次のような内容である。
(情報源は“Health Behavior News Service”。調査を行ったのはコクラン図書館で、著者はJoan Vos MacDonaldである) 

急性腰痛は「6週間あるいはそれ以下の期間、持続する痛み」と定義されていて、ほとんどの症例では自己限定的(大抵は自然に消失する痛み)である。
脊椎マニピュレーション(SMT)は、カイロプラクターやオステオパスがよく使うが、NSAIDsやエクササイズより効果的だというわけではない。
脊椎マニピュレーション(SMT)は、時々起る腰痛や急性腰痛の治療としてポピュラーな方法であり、多くの健康保険プランでカバーされている。が、コクラン図書館が行った最近の調査では、SMTが他の治療選択よりも効果的であるとする証拠は見つからなかった。

NIH(アメリカ国立衛生研究所)によれば、10人中8人に腰痛があるとされ、一般的に損傷あるいは過活動に原因があるとしている。SMTはカイロプラクター、オステオパス、ナチョロパス、そして若干の医者によって使われるテクニックであり、椎間関節の可動域を改善することを目的としている。SMT は世界的に広範に行われ熟練した介入がされているが、急性腰痛の有効性には論争がある。

調査対象は持続時間が6週間以下の腰痛で、ランダム化比較試験(20)からの結果による。
SMT が痛みを軽減することがあっても、エクササイズや非ステロイド抗炎症鎮痛剤あるいは物理療法など他の治療法を選択するよりも回復が速まったわけではなかった。

驚くべきことに、効果的とされていない治療よりもSMTが効果的であったことを示す証拠も見いだせなかった。が、この最後の調査結果はもっと多くのリサーチが必要だとしている。

フリードマン,D.O.(トーマス・ジェファーソン大学病院にロスマン研究所)が、次のように語った。
「リンゴをリンゴと比較していないから、このようなレビューは紛らわしいかもしれない。
マニピュレーションの手法には異なる種類があって、いくつかはより侵襲的で、いくつかは限定的なストレッチを使う。また、SMTがすべての状況で有用というわけではなく、ある患者さんたちには用いることができる。調査は、全領域にわたり全体的に見る必要がある。もうひとつ複雑にしている要因は急性腰痛の質にある。「6週間あるいはそれ以下の期間続く」と定義づけられているが、それはすべてのケースでほぼ90%が自己限定的で自然に消えてしまう傾向にある。調査は、急性痛からそれとは異なる慢性痛に至るまで、亜急性におけるSMTの使用について進めるべきである。


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腰痛は85%が原因を特定できないとされ、急性腰痛の90%は自己限定的であるとされている。そんな中で治療法の有効性評価を行うのは実に厄介なことである。
「リンゴをリンゴと比較する」と言うフリードマン,D.O.のスタンスは重要であるが、何もしなくても解消される痛みが90%とされる中での評価は難しい。
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by m_chiro | 2012-11-03 12:52 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
鎮痛が起こったからと言って、そこが痛みの根源とは限らない
カイロプラクターが、痛みの患者さんにマニピュレーションを行うと、少なからず鎮痛が起こります。
困ったことに、これが錯覚や誤解のもとになります。
と言うより、「サブラクセーションが痛みの原因である」とする信仰を、より強固にしてしまいます。
こうした誤解は医療の現場でもあるようです。

「はつらつ元気4月号より」http://junk2004.exblog.jp/tb/13049330

「・・・・・神経根ブロックという注射ですが、火事場に水をまけば火が消えるわけですから当然でしょう?・・・・つまり、その部位が犯人と断定できたから手術を施行したのです。」
有名な脊椎外科医の見解のようです。

脊椎マニピュレーションを行うと、椎間関節の滑液胞内にある滑液の一部が気化します。
気泡がはじけると、ボキッと音を発することがよくあります。
滑液の一部が気化することで、関節包内の容量が増大し、受容器が興奮します。
すると、さまざまな反射作用が伴うことになります。

ゲート・コントロールの機序が作動することもそのひとつですが、これはマニピュレーションによって起こる特異的な応答ではありません。

また、運動ニューロンによる遠心性の過剰なインパルスも抑制されますから、周辺の筋組織のスパズムや過緊張を緩和してくれるでしょう。
関節周囲組織の短縮や癒着があれば、リリースされることもあるでしょう。

自律神経系を介した反射作用は、患部の血流を増大させるともいわれています。
かと言って、必ずしもこの反応がマニピュレションによる特異的な反応ではありません。

要するに、カイロプラクティックのアジャストメントは、こうした反射作用を通して筋を弛緩させ、痛みを減少させている刺激の応答だということになります。
椎骨のズレが痛みの原因ではないことの理由です。

神経根ブロックが功を奏したからと言って、そこが痛みの根源とは限らないということも同じ理屈になるでしょう。

「脊柱管狭窄症という診断から患者さんを守ろう」http://junk2004.exblog.jp/tb/18906864
「神経根は痛みの通り道だったということです。そこが原因だったということではありません。結局痛みのメカニズムを誤解しているのでしょう。」
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by m_chiro | 2012-08-31 13:03 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(4)
「かゆみ」と「痛み」感覚のメカニズムは違うらしい
人は「痛い」と逃げる。神経生理学的には「屈曲反射」(逃避反射)が起こる。
「かゆい」と掻く。これは「ひっかき反射」と呼ばれる。

反射のメカニズムからみれば、「ひっかき反射」の方が明らかに複雑だ。
おもしろいことに、ひっかけない部位に「かゆい」という感覚は起きないらしい。
そう言われれば、「胃がかゆい」と訴える話は聞いたことがない。でも、痛みは起こる。
だから「かゆみ」は、皮膚の表層と一部の粘膜に限られた感覚ということになる。

そもそも反射がこうも違うのだから、それぞれの感覚の機序が違っても不思議ではない。
ところが「痛み」と「かゆみ」は、同じ機序で起こっているように思える。
それゆえに「強度説」で解釈されてきた。

要するに「弱い痛み=かゆみ」で、痛み刺激のインパルスが微弱に伝導されるときに「かゆみ」として感じるのだという説である。

ところが、ヒスタミンを受容するレセプターが見つかり、その「かゆみ」を伝える神経経路も分かって、「かゆみ」は弱い痛みの感覚ではない、ということになった。
それだけではない。実は、認知領域も違うぞ、という研究論文が発表された。

それがsansetu先生から教えていただいたのが次の論文である。

"痒み"を感じる脳―"痛み"とは異なる"痒み"を感じる脳の部位を特定―/自然科学研究機構 生理学研究所

それによると、「かゆみ」は脳の「楔前部」で認知するそうだ。
「楔前部」とは、頭頂葉内側面の後方にある脳回のことである。

「かゆみ」の刺激を受容するのは、表皮と真皮の境界に分布するC線維の自由神経終末である。
この受容器が物理的刺激や化学物質(特にヒスタミンなど)によって刺激されることで活性化する。

もしも、このC線維の活動を局所麻酔薬で抑えると、当然、痛みは消失するし、「かゆみ」も消えるらしい。これも「痛み」と「かゆみ」が同じ機序だと勘違いするもとである。

また、ヒスタミンによる「かゆみ」を伝えるC線維は、機械刺激には反応しない。つまり閾が高い。
ところが、痛みのC線維は機械的刺激によく反応する。
これも痛みを伝えるポリモーダル受容器とは違っている。
皮膚の支配領域も違う。「かゆみ」の皮膚支配領域は、痛みの領域に比べて広い。

だから「かゆみ」に対して機械刺激を行うと、「かゆみの悪循環」が起こる。
掻くこと(物理的刺激)で末梢の受容器が活性化され、軸索反射が起こり、炎症の増幅をみるからだ。

「中枢性のかゆみ」(アトピー性皮膚炎、皮膚そう痒症、透析患者のかゆみなど)には、オピオイド受容体が関与しているようだ。
だから鎮痛薬のモルヒネを使うと「かゆみ」の副作用がおこるし、「中枢性のかゆみには抗ヒスタミン薬も効きにくいとされているのである。

「痛み」と「かゆみ」の機序は同じようで、実は違う。
かと言って、全く違うと断言するほど明らかでもない。類似点も多い。
そんなことから、「かゆみ選択的神経」と呼ばれることが多いのだそうである。
「かゆみ」のメカニズムには、まだまだ解明の余地がありそうだ。
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by m_chiro | 2012-07-06 22:43 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「ゼロか、100%か」②情報が認知的側面に与える影響には侮れないものがあるなぁ~。 
慢性痛を抱える患者さんは、とかく動きや運動に対して恐れている。
かと思うと、100%頑張る。
この「ゼロか、100%か」の性格特性にも一因があるようだ。

こうした痛みの裏付けとなるような研究がある。滋賀医科大学の芝野忠夫・小山なつ先生らが行った「駆血帯疼痛試験」の研究で、血行障害のある筋では容易に強い痛みが起こりやすいことを示唆している。
その研究も、以前記事にした。
「痛み学」NOTE30. 「訳あり筋」が痛むわけ①
もしも筋に血行障害が起こると、その筋は反復収縮によって容易に痛みが現れるという。
この現象を指標にしたのが「駆血帯疼痛試験」である。

例えば、上腕の血流を20分間遮断しても、安静位を保っていれば痛くない。
ところが、最大握力の半分の力で握力計を2秒間隔で握る運動を反復すると、1分以内に痛みが出て、3分以内に耐えがたい痛みが現れるという。
下のグラフは、その研究の結果である。
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上腕の駆血は、ゴム製のエスマルヒ包帯をきつく巻いて血圧計のマンシェッテに空気を送り、内圧を200mmHgに高めて調査している。

グラフの縦軸は痛みの強度をあらわしているが、痛み評価スケールは最大の痛みを20として独自に設定している。横軸は秒単位の時間軸である。

この調査では30秒ごとに最大握力の50%の力で2秒間握らせ、2秒間のインターバルの後で再び2秒間握ることを反復している。

その結果を30秒ごとに独自の痛みスケールで評価したグラフである。
3分で最大疼痛評価(スケール20)に至っていることが分かる。

1分を過ぎたころから疼痛強度が高まっていき、3分で最大強度の痛みが現れる。
慢性的な血流障害があれば、動きによって容易に痛みが出やすいことがわかる。

そこで、この研究を逆手にとって、「ゼロか、100%か」の患者さんへの運動指導をしている。
つまり、運動は1分以内で行う。そしてインターバルを3分取り、完全な筋活動の休息時間にする。これを反復させるのである。

こんな患者さんがいた。慢性的な膝痛で歩けないという女性である。動きを恐れて安静にしている。
整形外科では廃用性の委縮になるからと、リハビリや運動が勧められている。
ところが運動中から痛みだし、それからしばらく動くのが辛くなる。
だから、安静にしている。
少し良くなると、今度は筋の委縮で動けなくなるのではないかと気になりだし、また在宅エクササイズを熱心にはじめる。そして悪化する。その繰り返しである。

私は次の方法を指導した。例えば、歩行運動では家の廊下を1分間歩いて、3分休む。この反復運動を行わせた。すると、あまり痛みもなく歩けるし、運動後に支障もでない。
ところが、「そんな程度の運動で痩せた筋肉が太くなるんですか?」と心配そうに尋ねてくる。
そして、インターバルの間に「足首の伸展-屈曲運動ぐらいならしてもいいですか?」、とまで言う。
どうも中途半端は嫌いなようだ。

この「1分活動/3分休息」運動を行っているうちに、家事も大分できるようになってきた。
「少しいいみたい」と言うようになって暫く経った頃、TVを見たと言って嬉々としていた。
「NHKで、閉塞性動脈硬化の歩行運動をやってました。足の動脈が閉塞した患者さんが、新たに動脈のバイパスが出来てくるんですよ。ビックリしました。私にもいいはずですよね」。

私はその番組を見なかったが、彼女の脳裏には血管が造られる映像がしっかり畳み込まれたようである。それ以後、この運動にも気持ちが入ったようでグンと活動性が増した。
下肢の冷えも取れてきたそうだ。
今は散歩に取り組んでいる。同じような患者さんで、「1分動/3分休」歩行からはじめて、一日5000歩以上を歩くようになった人もいる。

情報が認知的側面に与える影響には侮れないものがあるなぁ~。

映像、恐るべし、でした。
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by m_chiro | 2012-06-14 17:06 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
「ゼロか、100%か」①
face bookのお友達が紹介していた記事「繊維筋痛症になりやすい人は、草むしりが好き?」「石井苗子の健康術」(YomiDr.)からのものである。
研修先の心療内科医の言葉を取り上げて、痛みの患者さんの性格特性とその対応について書いている。

それによると、線維筋痛症などの慢性痛に悩まされる人には、共通する性格特性があるようだ。
「とことんやる」タイプらしい。
次に「一番が好き」なタイプで、診察の予約も朝の一番目が好き。
待ちたくないタイプのようでもあるが、ちょっと違うようだ。
「とことんやるタイプ」とは「ゼロか、100%か、のとことん」のようだ。

例えば、草むしり。なぜか線維筋痛症の人は草むしりが好きらしく、それも調子が悪ければ全く何もしない。ところが調子が上向くと100%全力を尽くして草むしりをする。
「やるなら徹底的にやる、やらないなら何にもしない」といった性格の人が多いんだとか。
「だから朝の一番で最初の予約が好き」。
「この病と闘うには、性格を変えることも大事かもしれません」と石井苗子さんが書いていた。
が、性格をそう簡単には変えられないから悲しい。

この記事で思い出すのが、“Physical activity and low back pain: a U-shaped relation?”の論文。
不活動と過活動の痛みのリスクは同じだという研究である。
もっとも慢性腰痛との関連が示唆されたわけではないが、痛みとの関連性では興味深い内容である。

そのことを何度か記事にしたことがある。
「不活動と過活動」
「身体を動かさないことのリスク①」

不活動と過活動の痛みのリスクはU字曲線になるというもの。
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縦軸が痛みのリスクの高さを表し、横軸は活動の激しさを表している。
図表は「ゼロか、100%か」のように、両極で痛みのリスクが高い、という結果である。

私のところにも、痛みを抱える「ゼロか、100%か」の患者さんがみえる。
そんな方には、滋賀医科大学の小山なつ先生らの研究「駆血帯疼痛試験」を参考にして、日常の活動に応用する指導している。
(長くなるので続きは次回に)。

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by m_chiro | 2012-06-13 08:57 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
身体を動かさないことのリスク② 座って過ごす時間が長いほど、寿命は縮むらしい
身体を動かさないことのリスク
②座って過ごす時間が長いほど、寿命は縮むらしい

痛みだけでなく、動きを制限することにはいろんなリスクを伴うようだ。

こんな研究報告もある。
アメリカ癌学会(ACS:American Cancer Society)のサイトからの論文Abstract“Study Links More Time Spent Sitting to Higher Risk of Death”である。
より多くの時間を座って過ごすことが、死の高いリスクと関連するという研究である。

そのリスクは、身体の活動レベルに依存していることが分かった、というのである。
第一著者はアメリカ癌学会(ACS)のDr.Alpa Patelである。
癌学会からの報告と言っても、癌と身体の活動性との関連を調査したものではない。

肥満や体重過多の人に対して、運動の有益性が語られることは珍しいことではない。
Dr.Alpa Patelらの今回の研究は、座って長い時間を過ごす人の平均寿命は短くなる、というもの。
長時間の座ること自体と死亡リスクの関連性を調査している。
長時間の座位生活と寿命のリスク(総死亡率)との関連は、肥満や日常の身体活動とは関係なく認められるのだそうだ。

被験者は「癌予防研究Ⅱ」に参加した病歴のない成人123,216人が対象である。
1993~2006年の14年間にわたって追跡調査した回答の分析結果である。

座位生活が6時間/1日の人では3時間未満の人に比べて女性で37%、男性で17%も死亡リスクが高かったそうだ。
もし1日のうちに多少なりとも運動を取り入れれば、座位生活による死亡リスクは減少する傾向がみられるが、それでも死亡リスクが高いことには優位な差があるという。

これが余暇時間を長時間座位生活で運動や体を動かさない人の死亡リスクは、相当高い傾向である。
女性で94%、男性で48%というデータだ。

Dr.Alpa Patelの分析によれば、座位が長いほどエネルギーの総消費量が少なく体重増加や肥満になりやすいが、それ以外でも生物学的因子の可能性を否定できないとしている。
例えば、下肢の筋肉を動かさないとホルモン分泌が変化すること、そして中性脂肪やコレステロール、空腹時血漿グルコース、リポ蛋白、安静時血圧など心疾患リスクのマーカーに影響すると述べている。

こうした研究分野を「不活動性生理学(inactivity physiology)」と呼ぶそうで、この領域の研究論文が急増中なのだそうだ。
医学誌「Archives of Internal Medicine(内科学)」3月26日号に掲載された次の論文もそのひとつのようである。
“Sitting Time and All-Cause Mortality Risk in 222 497 Australian Adults”
オーストラリア成人の222,497人における座位時間と全死因死亡リスクを調査した論文で、ここでも同様の見解を示している。そして、公衆衛生プログラムは、身体活動レベルを増加に加えて、座っている時間を短縮することに焦点を当てるべきである、と結論づけている。

ただし、これら研究は座って過ごす総時間と死亡リスクの関連性を示したものの、その因果関係を証明したものではない。
要するに「不活動」に陥ることなく、かと言って「過活動」になることにも気をつけて、程よい運動を習慣化することが大切なのだろう。

エネルギーは適度に消費せよ! と言うことか。
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by m_chiro | 2012-04-12 12:38 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
神経障害性疼痛の活性化スイッチを特定(九州大学)
「激しい痛みが起こる仕組みを解明」
~脳の免疫細胞「ミクログリア」の活性化スイッチを特定~

http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2012/2012_04_03.pdf

九州大学大学院の津田誠准教授(神経薬理学)らの研究で、神経障害性疼痛の起こる仕組みを解明した論文が米国科学雑誌「Cell-Reports」電子版(2012年4月5日)に掲載された。

神経障害性疼痛や慢性痛症は鎮痛薬やモルヒネなども効果があまり期待できないとされてきた。
その激痛が起こる仕組みを解明したことで、慢性痛の解明や治療薬の開発が期待されるとしている。

神経障害性などの難治性疼痛にミクログリアが関与しているということは知られるところである。
以前、そのことを記事にした。

「脳が生み出す理不尽な痛み 慢性疼痛治療の新戦略」(日経サイエンス2010年2月号)
http://mchiro.exblog.jp/13475340/

では、なぜミクログリアが活性化するのか、その仕組みが謎であった。

今回の津田誠准教授らの研究では、「インターフェロン調節因子8(IRF8)」がその活性化スイッチになっていることを、マウスの欠損モデルで突き止めたと言うのである。

神経を損傷させたマウスの脊髄では、IRF8がミクログリアだけに劇的に増加するのだそうだ。
IRF8を発現しないように遺伝子操作した欠損マウスでは、神経損傷後の激しい痛みが軽減し、ミクログリアの活動を高める分子も減少していたことから、IRF8がミクログリア活性のスイッチの役割を突き止めたということである。

でも、なぜIRF8だけが増えるのか、それは謎である。
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by m_chiro | 2012-04-10 18:01 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
身体を動かさないことのリスク①
①不活動には過活動と同様に痛みの高いリスクを伴う

国際疼痛学会(IASP)発行のジャーナル“Pain”に掲載されている論文abstract
“Physical activity and low back pain: A U-shaped relation?”(身体活動と腰痛:U字型関連は?)

痛みのリスクは、身体の不活動と過活動では同様に腰痛のリスクが高いという研究報告である。
身体を動かさないこと(活動レベルの低さ)が身体機能や能力の障害をもたらすのではない。
動かさないこと自体が問題だ、ということのようだ。

これまで活動的であることは腰痛の防止と管理で重要であると言われてきた。
この単純な考察は、活動のレベルと背部痛の間の関係がU字型カーブかもしれないことを考慮に入れていないという。
要するに、不活動と過活動(背部にとって良くない動き)の両方が、背部痛を増加させるリスクとなる。

この研究は、オランダ人(性別25歳以上の年齢層サンプル:N = 3364)における筋骨格系の不調と結果についてのコホート研究から断面データを分析することにより結論付けられている。
身体活動と慢性腰痛(3ヶ月期間)の間にU字型の関連を探ったものである。

活動タイプについて(毎日のルーチン、余暇時間とスポーツ活動)、これらの活動がどの程度熱心だったか、どのくらいの時間を費やしたか、スポーツで背部の伸展を伴うスポーツか、などを考慮された。

これらの調査からは、身体活動と慢性腰痛(CLBP)との関連はみつけられなかった。
ただ、スポーツ活動に従事することは、僅かながらCLBP と関連していた。
そして、全体の身体活動パターンの両極は CLBP と関連していた。

CLBP の中程度の増加リスクは、動きが少ないライフスタイル、身体の不活動の両者に関係していた。
これは特に女性にみられた。
この研究は、身体活動と慢性腰痛の関係がU字型であるという若干の証拠でもあるようだ。

昨日の患者さんの痛みのリスクは両極端のものだった。
ひとつは初老の女性の痛みである。日頃からよくあちこちの痛みを訴える。
先日、家族が購入した運動器具が届いた。
日頃運動をしないから痛むのだろうと家族に勧められて、その運動器具に挑戦することになった。器械を使っての足腰の運動である。
5~6回も試したら随分と軽快に行えた。家族も驚いて、すごいなぁ~、やればできるじゃないの!とホメられ、ホントに痛かったの?と疑われたが、調子づいて更に続けた。
20回できた。
そして、翌日は40回に増やした。その次の日には60回やった。
あちこち痛いと訴えている人が、軽快に運動している様を見て、家族はみな驚いたらしい。
ところが4日目になったら、腰殿部から大腿部にかけて痛みだして歩くこともままならなくなった。
この女性、跛行して治療室にやってきた。遅発性の筋痛である。

もう一人は教師を務める働き盛りの女性である。授業以外にも部活動やらで、いつも忙しい。寝る間を惜しんで頑張っている。それであちこちに痛みをつくる。
その女性が移動を命ぜられた。新学期がはじまるまで時間ができた。ここはゆっくりと静養しよう、と3日間も自宅でゴロゴロして過ごしていたら腰が痛みだした。
「何もしないで休んでいるのに何で腰痛になるの?」と言って治療にみえた。

いずれも筋痛であるが、不活動と過活動の対極にある痛みの誘因である。
先の研究論文では、機能・能力障害を持たない活動レベルの低下と過活動は、痛みのリスクにおいてU字型の相関関連あるとしている。動き過ぎても痛みがでやすいし、動かないことも同様にU字型のトップで両極の高い腰痛リスクになるというのである。
そんなことを思わせる筋痛症の2態であった。
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by m_chiro | 2012-04-06 10:36 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)



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