カテゴリ:痛み考( 141 )
筋骨格系疼痛の発症の共通因子とは?
「Pain」誌(2014.5月号)に掲載された論文をCareNet(2014.6.4)が公開した。
「筋骨格系疼痛の発症、男女で異なる職業関連因子」

その論文とは、フランスで1990年から5年間に渡って行われた筋骨格系疼痛(MSP)の疫学調査の結果である。

調査対象は12,591名(男性65%、女性35%)で、自記式質問票によって個人的因子や職業の関連性が調査されている。
筋骨格系の痛み(MSP)は、生物・心理・社会的因子が関わっているとされている。
それでも特定の局所痛と、多部位痛との関連は明らかでなく、それが今回の調査の目的のようだ。

以下は結果である
1.局所疼痛の発症率17%:多部位疼痛の発症率25.6%(1995年時点)
2.女性の予測因子:頻繁な反復的運動で首/肩の痛み、姿勢や振動で上肢痛/腰痛、道具を使う仕事で上肢痛
3.男性の予測因子:肉体労働と振動で首/肩の痛み、姿勢や肉体労働で下肢痛/腰痛、道具を使う仕事で上肢痛
4.肉体労働や振動は男女を問わず多部位疼痛と関連
5.心理的リスク因子:女性のみ、上肢痛および3~4か所の多部位疼痛


筋骨格系の痛み(MSP)には、多部位の痛みが多い傾向がある。
肉体労働、反復運動や姿勢など筋肉負荷が想定できるが、機能神経学的には姿勢運動制御系にかかわっているようだ。
興味深いのは「振動(vibrations)」の因子である。

運動や労働に伴う身体への振動が同相で干渉し合う(調和共鳴)ことで、強刺激が生まれるのだろうか。
逆に言えば、振動数によって物理化学的な性質を変化させる振動刺激は治療に応用できるということだろう。

「振動」のキーワードが、やけに目につくこの頃である。
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by m_chiro | 2014-06-09 16:05 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
老化で、筋痛はなぜ遅れてやってくる②
② 遅発性筋痛の生理学的要因

筋痛が起こりやすい運動は、特に伸張性収縮(エキセントリック・コントラクション)で生じやすいことがわかった。
例えば、階段を昇る運動よりも、降りるときの筋収縮。
あるいは物を持ち上げる動作よりも、挙げた物を降ろす動きで起こる筋収縮のことである。

でも、筋線維に痛覚線維はない。
それなのに、なぜ筋痛は起こるのだろう。
筋組織に痛覚線維があるのは筋膜組織である。

ネッター解剖図譜の筋構造の図をみると、一本の筋線維は束になって筋束を作り、その筋束がまた束になって一つの筋肉がつくられている。
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その筋肉は筋上膜で包まれ、筋束や一本の筋線維も内膜に覆われている。
この膜という結合組織に痛覚線維がある。
あるいは、その筋組織の筋腱接合部、そして細動脈の周囲に存在しているのである。

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さて、その筋線維には速筋と遅筋があり、その中間の筋も入れると3種類の筋線維があるとされている。
要するに速筋(FG線維)は、出力が高く短時間で無酸素性にATPがエネルギーをつくる白身の筋線維である。
遅筋(SO線維)は赤身で持久力があるが低出力の筋線維だ。
もうひとつの中間的な筋線維(FOG線維)は、遅筋と速筋の中間的な能力の線維である。

野球の投手でも、その筋線維の特徴で先発完投タイプとストッパータイプがある。
陸上競技でも、短距離走者、マラソン走者、中距離タイプの走者がいるようなものだ。
それも個々人のもつ筋線維の特徴に依存しているのだろう。

速筋(FG線維)は伸張性収縮で損傷しやすい筋線維とされる。
無酸素性だから早くに線維が硬くなり、元の柔軟性を回復しにくい線維である。
だから伸張性の筋収縮が長く続くと、遅筋が主導して活動するようになる。
硬く疲労した速筋(FG線維)は、持久力のある遅筋(SO線維)に無理強いされて活動するために線維自体に微損傷が起こりやすい状況が生まれることになる。

筋に損傷が起こると、修復のための炎症反応が起こる。
この炎症作用に関わるのが酵素やタンパク質で血中濃度に反映される。
炎症反応は浮腫をもたらして筋膜組織を機械的に刺激する。
筋膜組織の痛覚線維が痛み刺激として伝えることになる。
炎症と浮腫の活動については、以前の記事痛み学」NOTE 58. 炎症・腫脹にみる合目的活動のダイナミクス②」にまとめておいた。
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by m_chiro | 2014-04-11 17:34 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
老化で、筋痛はなぜ遅れてやってくる
やっと春めいてきて、東北の人たちは冬装備を解きはじめた。

車のタイヤ交換、春使用の衣類も入れ替わる。
庭の冬囲いを解き、田畑は種まきの準備がはじまる。
老齢期に入った人たちまで、急に慌ただしく身体を動かしはじめる。

当然のごとく筋痛が起こるが、老化した筋肉ほど直後の痛みではなく2~3日経って筋痛になる。
いわゆる「遅発性筋痛」である。
当人には、遅れてやってくる痛みは不可解らしい。

以前、「痛み学NOTE」に、この遅れてやってくる筋痛のことを記事にしたことがあった。
(「痛み学NOTE」42. 遅発性筋痛のメカニズム)

要するに、作業や運動で使う筋の収縮には3つのタイプがある。
1.等尺性収縮(アイソメトリック・コントラクション)、2.短縮性収縮(コンセントリック・コントラクション)、3.伸張性収縮(エキセントリック・コントラクション)だ。
その中で、筋に微損傷をつくりやすい収縮は「伸張性収縮」であるという話だ。
なぜ、伸張性収縮によって老化した筋肉は、遅れて傷みだすのか。
そのことを記事に書いた。

You-tubeに、動画「年をとると筋肉痛が2日後にでるのはなぜ?」が掲載されていた。
昨年の7月31日公開されたTV番組の内容らしい。

そのメカニズムや対処法、応急の手当てについても、分かりやすくまとめてある。



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by m_chiro | 2014-04-08 09:37 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「痛みの本態」とは(三木成夫)
故・三木成夫・解剖学者の著作には、大いなる学びを頂戴してきた。
人のからだを視る仕事に就くようになって、とてもワクワクしながら学んだ書物は多くあるが、中でも三木先生の著作は今でも座右に置いてある。

三木先生は、解剖学者としても異色な存在なのかもしれない。
生きものを「過去-現在-未来」という視点に立って看破しているのだろう。
だから三木学は、ただ単に生物の個体解剖にとどめずに、生命環境を織り込んだ壮大な生命論であり形態学だ、という印象を持っている。

その三木先生が「痛み」について書かれた一文がある。
短い文ではあるが、痛みの本質を的確に表現していて分かりやすい。
1975年に「東洋医学」誌に掲載された『「ツボ」の比較解剖学的考察―東西医学の源流について』の一節である(「生命とリズム」三木成夫著)。
以下にその一節の全文を紹介しておこう。
「痛みの本態」を筋肉由来とみている三木先生の卓説である。
(赤字は私が強調した部分)

「痛みの本態」(三木成夫)
われわれの日常で問題になる痛みといえば生理学の課題である皮膚のあの「痛点」由来のそれではほとんどない。一般に、痛点刺激の痛みといえば、それは文字通り“針でつついた”程度のもので、日常の生活でそれ以上の問題となることはまずありえない。

この人類の歴史において、医術の世界を生み出すにいたった“本物の痛み”といえば、そうした皮相なものではなく、もっと根の深いものでなければならない。それは、一般の生理学教科書では「内臓あるいは深部感覚」に所属する正体不明の痛みと記載されているものであるが、われわれはこの西洋医学の盲点とも思われる内なる痛みを、実は「筋肉」に由来するものと考える

したがって、人間のからだから一切の筋肉を取り除けば、本来の医の世界はあるいは生まれなかったであろうと考える。

筋肉の強い収縮が耐えがたい痛みをもたらすことは、骨格筋ではあの“こむら返り“を見ればよい。これに対して胃けいれん・腸閉塞・結石痛、そして陣痛などはその場の内臓筋の異常収縮に、またあの拍動性の頭痛・歯痛・化膿痛などはその領域の筋性細動脈すなわち血管筋の強い収縮に、それぞれ由来するのであろう。

われわれが冬の朝、冷水に手を入れた時、あるいは間違って、熱い風呂に片足をつっ込んだ時、その皮膚に生ずる瞬間の冷温覚から少し遅れて、あの手足の芯を締め上げるように襲ってくる激痛は、とりもなおさず付近一帯の筋性動脈がいっせいに反射を起こしたものと考える。

血管系の枝分かれに乗って、皮膚より内側の津々浦々に分布するその筋肉組織は、体内に張り巡らされた、もっと精密かつ高感度の“痛覚の発生装置”ということになろう

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by m_chiro | 2014-04-03 12:25 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
体内で炎症性物質を抑える食事を心がけることが大事
コレステロール悪者神話は本当なのか?
この疑問に明確な答えがアメリカCBNテレビで分かりやすく解説されている。

「コレステロールを悪者にする黒幕とは? (日本語字幕付き)」


体内環境を守るために食事の内容は重要な要件である。
痛みの身体的前段階には不飽和脂肪酸(Ω6)の過剰摂取が関与するとされる。
体内で炎症性物質アラキドン酸が作られるからだ。
どうもそれは痛みだけに限らないようだ。

コレステロールは、心・血管性疾患の諸悪の根源として忌み嫌われている。
ところがコレステロールは重要な役目を担っているとする意見もある。
このTV解説も、その立場からコレステロールの役割を述べている。
結論を急げば、コレステロールは血管の炎症を防いでいる、ということになる。

問題なのは血管に炎症をつくることであって、それをガードするために役割を果たしたコレステロールに罪はない。
体内に炎症をもたらす身近な因子は「脂質と糖質」なのだ。
だから動脈硬化の原因も「炎症」であって、コレステロールではない。
その根源である炎症物質の生成を抑えれば、コレステロールが血管を修復する必要もないわけである。
コレステロールは必要に迫られて役割を果たしているだけなんだ。

火事が起これば、消防士がやってくる。
炎症が起きているから、コレステロールがやってきた。

消防士は悪者? コレステロールは悪?

放火犯は火事場の野次馬に紛れ込んでいると言うが、コレステロールは炎症性物質ではない。
だから炎症の現場にあったからと言って、動脈硬化の原因とするのはあまりにも短絡過ぎる。
こうした疾患の真の犯人は、炎症性物質をつくりだしているトランス脂肪酸や精製炭水化物ということになる。

トランス脂肪酸は、アルツハイマー、パーキンソン、ADHDにも関与する可能性が指摘されていた。
自分の体は自分で守る。
そのためにも整合性のある情報に耳目を傾けて置くことが大事だと思う。
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by m_chiro | 2014-02-21 11:33 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「抑制+抑制=興奮」、「興奮+興奮=興奮倍返し」
アメリカ医療施設評価合同委員会(JCAHO)が「痛みの評価」を第5の必須バイタルサインに加えたのは2001年のことである。

それまでは、体温、血圧、心拍数、呼吸数の4つがバイタルサインのチェックが必須項目であったのだから、「痛み」は医療現場での重要な評価項目になったわけで画期的な制度化であった。

ところが、最近そのことの弊害を警告する論文が出てきた。
“Kindness kills: the negative impact of pain as the fifth vital sign.
「思いやりが仇になる:第五のバイタルサイン(痛み評価)におけるネガティブな衝撃」といったところだろうか。

単純に数値で痛みを評価することで過剰な投薬(オピオイドなど)が行われる。
そのことが痛み患者の活動障害を招き、あるいは生命を脅かされることになる。
そんな事態を警告した論文である。

だから痛み評価の数値をネガティブに受け取らないためにも、日常的な痛み評価を行うことには気を付けなければならない。

特に、患者自身が自分の痛みを数値化する「NRS(数値評価スケール)」には、ネガティブな心理的インパクトが大きいだろう。
数値は治療者サイドで参考にするものだから、患者さんに数字が見える必要はない。
その意味では「VAS(視覚的アナログスケール)」の方がより配慮されている。
だからと言って、日常的に評価することには気をつけたい。
特に気を付けるべき患者さんもいることだろう。

神経シナプスがもたらす作用から言えば、「抑制+抑制=興奮」という結果になるからだ。
言語や数字は興奮性物質ではないが、明らかに脳のプログラムに関与する。
だからプラシーボにもノンシーボにもなり得る。
医師が、痛みの数字評価を投薬不足と判断するのは更に問題である。
オピオイドの副作用が倍増する。

徒手療法家にも同じことが言える。
結果が出ないからといって、更に刺激量を増やしていくと過剰刺激になる。
「興奮+興奮=興奮倍返し」が起こり、過敏現象がもたらされるのだ。
効果としての数字にこだわるより、先ずは「なぜ?」と考えるべきなのだろう。
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by m_chiro | 2014-01-17 12:06 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
痛みの質…、それで何が分かるのか
「痛みの評価」が第5の必須バイタルサインに挙げられたのは2001年(アメリカ)のこと。ベッドサイドでは、基本的に5項目のチェックを1~2分で行うことが勧められている。

その5項目とは….、
1.増悪因子と寛解因子
2.性質
3.部位
4.強度
5.時間特性


で、これらを要領よく聴き出すようにしなさい、というわけだ。

痛みが増悪する因子、それが楽になる因子はあるか。
この情報は治療する上で重要な鍵になるから、聞き逃せない。

どの部位が痛むのかを知ることも重要だが、それが必ずしも障害(問題)とされる部位とは限らないことが多い。だから、ややこしい。

痛みの強度や時間特性については、各疾患の徴候と照らし合わせて判断する必要があるが、さて痛みの性質とは何だろう。

例えば、急性の痛みを訴える患者さんがみえたら、その痛みが体性痛であるのか、関連痛であるのか、あるいは内臓痛であるのか、この3者を区別しなければならない。

どうやって?

それは患者さんの訴える痛みの性質を聴きだすことで、ある程度の目安がつく。
後は触診である。
急性痛の多くは筋・筋膜に起源がある。
ところで内臓痛と体性痛では、その起源となる筋肉が違う。
内臓の筋肉は不随筋である平滑筋だ。
血管も平滑筋である。

一方、骨格筋は横紋筋である。そして、内臓でも心筋は横紋筋である。
だから平滑筋が過収縮を起こすと、「じんわりと締め付けられるような痛み」が起こるとされている。
それが更に悪化した攣縮状態が起こる。そうなると強度の持続的疼痛になる。
この痛みは疝痛とされ、内臓における平滑筋の攣縮による痛みである。
だから心臓疾患でも「締め付けられるような痛み」は、血管(平滑筋)由来の痛みである。

横紋筋由来の痛みは「重苦しい鈍痛」である。
これも筋の攣縮が起こると筋の痙攣性の痛みになる。

内臓痛であれ、疝痛・体性痛であれ、特徴的に「圧痛」があり、疝痛や体性痛には「筋性防御」がみられることがある。
ところが軽度の内臓痛では筋性防御は起こらない。

筋性防御とは、組織を押さえた時に筋収縮が増強して、それ以上の侵入を防ごうとする反応である。
筋性防御が起こるのは疝痛や体性痛に限られるようだ。
だから、筋性防御反応が起こる痛みであれば体性痛であり、あるいは内臓痛であれば「疝痛」に於いてということになる。

もうひとつ「反跳痛」という身体反応がある。
圧迫して行って、急に手を離したときに起こる痛みのことで、増悪した体性痛にみられる身体反応である。
肋間神経や腰神経を介して腹壁筋の緊張が反射的に亢進するのだ。

こうしてみていくと、平滑筋と横紋筋の神経支配の違いも影響しているのだろうと思えてくる。
平滑筋は、管状あるいは袋状の形態を造る内臓器官の壁を構成していて、支配神経は自律神経である。
横紋筋には神経-筋接合部があるが、平滑筋では違う形態になっている。
それはギャップ結合と言われる信号の伝達機構になっていて、消化管ではこの収縮作用を利用して消化物を運搬しているのだ。

ギャップ結合の形態をウィキペディアより引用しておこう。
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このギャップ結合を有する平滑筋は単元性平滑筋で、グループ化された組成である。
つまりユニットになっている。
グループ内の信号伝達は同時に行われ、神経支配も交感神経と副交感神経の二重支配を受けている。
一方、瞳孔括約筋のような平滑筋は多元性平滑筋でギャップ結合のようなユニット構成ではなく、神経支配も交感神経あるいは副交感神経のいずれかひとつの支配を受けているとされる。

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上の図はよく知られる骨格筋の神経-筋接合部のイラストである。
①の神経終末が②の筋組織の膜に接合し、③のアセチルコリン小胞から④のアセチルコリン受容体に伝達され、⑤のミトコンドリアがATPのエネルギ物質を産出するメカニズムが描かれている。

内臓痛か、体性痛か、これを鑑別できたら、優先すべきは内臓痛で専門医への紹介を視野に入れておかねばならない。
内臓痛を除外出来たら、後は体性痛である。
発痛部位がどこから誘発されているか、その見極めが治療家には重要な見立ての能力になるのだろう。
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by m_chiro | 2013-12-02 16:35 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
頭痛を見分けるために
今年は台風が続発である。26号は伊豆大島や関東の太平洋岸に甚大な災害をもたらした。
気象庁から警告が発せられていたものの、未曽有の土石流で街も人も飲み込まれる大参事になった。追いかけるように大型の27号が後に続いているらしい。

警戒感はあっても、未然に防ぐことは難しいこともある。同様に、重篤な障害を秘めた患者さんが、大事に至らないように病的サインを見逃さないことも念頭から外せない。
それは我々にとっても施術の心得である。

台風も北上するにつれ、崩れて低気圧が起こる。すると頭痛を訴える患者さんが多くなる。
これは天気痛とされる痛みだ。自律神経が関与するので治療の参考になる。

というわけで、頭痛には重篤な疾患が隠れていることがあり、特に注意が必要だ。

まず頭痛の患者さんには、その痛みが外傷性か否かを確認しなければならない。
外傷性であれば相当の対応をすることになるが、非外傷性であれば更に鑑別が必要になる。
要するに、一次性であるか、二次性の頭痛であるかを分けることである。

一次性とは機能性頭痛のことで、原因も近年まで明確ではなかった。
そして基本的に3つに分けられてきた。
1.片頭痛、2.緊張性頭痛、3.群発頭痛である。
それぞれに特徴的な兆候がある。

片頭痛は読んで字のごとく、片側性が6~7割の高率で一側性にでる。
残りの3~4割は両側性とされている。
緊張性頭痛は両側性に発症するので、もしも両側性の片頭痛であれば、緊張性頭痛との鑑別は他の徴候から分けなければならない。

それは、こんな徴候の違いで分けられている。
拍動する痛みは片頭痛で随伴症状(吐き気、嘔吐、光に過敏になる羞明、閃輝暗点などの前駆症状)があるが、緊張性頭痛には随伴症状はなく圧迫されるような締めつけられる痛みとされる。
誘因も異なる。
片頭痛はアルコールや赤ワイン、チョコレートなどの嗜好にかかわるが、緊張性頭痛は心理的ストレスが引き金になる。

ところが、この片頭痛と緊張性頭痛は「症状は異なるが原因は同じ」(1973、Waters)、とする説が認められるようになった。
その原因は「セロトニン」にあるとする説である。
だから、セロトニン受容体に選択的に作用させるトリプタン系の薬は、「夢の鎮痛薬」と呼ばれている。

群発頭痛は、必ず片側性で眼やこめかみ周辺に激痛を伴って発症する。
随伴症状には、同側の結膜充血、涙や鼻水、発汗を伴い、たばこ、アルコールの誘因物質がある。
こうした一次性の機能的頭痛には、徒手療法が効果的に反応することが多い。

さて、問題は二次性頭痛である。
これは器質の病態が関わって起こる頭痛である。
しかも重篤な問題があれば見逃せない。これも3つに分けられる。
1.頭蓋内病変、2.顔面頭蓋(頭蓋外)病変、3.全身性疾患の3つである。

全身性疾患では熱を伴うインフルエンザなどの疾患、アルコールなどの薬物によるものなどで、顔面頭蓋病変としては帯状疱疹や副鼻腔炎、顎関節症(MPSも含めて)、緑内障などがあるが、頭蓋内病変と同様に見逃せない疾患は側頭動脈炎で、失明の恐れがあると言われている。

さて、問題は頭蓋内病変であるが、これを鑑別する能力を我々は持たない。
特に重要視される疾患は、脳血管疾患、脳内感染症、脳腫瘍で命に係わる。
したがって病的サインを見つけたら、一刻の猶予もせずに専門医に紹介しなければならない。
その病的サインとは、意識障害や落下発作、項部硬直、発語障害、脳圧亢進徴候(クッシング徴候:血圧上昇と相対的除脈が起こる)、などが見られることである。こうした徴候は、我々のように診断能力を持たない治療家の臨床でも確認出るケースがあるので、こんな徴候の患者さんは専門医に紹介しなければならない。

それでも重度の片頭痛とクモ膜下出血による頭痛の鑑別は、臨床的にとても難しいとされる。この鑑別に関する新ルールがAMAのジャーナルに掲載された。
CareNetからの情報である。
「救急部門での急性頭痛、クモ膜下出血除外の新ルール」

この記事によると、クモ膜下出血に関する決定基準として(ルール1)、1.40歳以上、2.首の痛みや硬直、3.目撃者のいる意識消失、4.労作時の発症、この4項目を採用すると、クモ膜下出血に関する感度は98.5%、特異度27.5%だそうである。そこにオタワSAH基準である1.雷鳴頭痛(発症後、即座に痛みがピークに達する頭痛)、2.診察時の頸部屈曲制限、の2項目を加えると感度100%、特異度15.3%になるという鑑別診断ルールである。
感度が上昇すれば、腰椎穿刺などを省いて画像にいくことで、診断ステップを早めることにもなるだろう。
やはり、問診や身体所見を取ることは不可欠で重要な作業なのだ、と再確認させられる。
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by m_chiro | 2013-10-19 10:26 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
慢性腰痛を抗生物質が治す..!?
デンマークの研究班がバーミンガムの医師たちの協力のもとで、慢性腰痛の20~40%がバクテリア感染に原因があることを突き止め、抗生物質で治癒させたというニュース。

そのバクテリアとは、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)というグラム陽性桿菌である。

ヒトの皮膚に常在し、不潔になると増殖してプロピオン酸を作りだす。
悪臭の原因にもなっていて、にきびの原因菌Propionibacterium acnesである。
アクネ菌は、歯垢中にも検出される細菌である。
歯磨きなどで血中に取り込まれて椎間板の毛細血管を成長させ、炎症による痛みを出し続けるのだそうだが…..。
ノーベル賞級の発見と讃えているが、はたしてその信憑性は?…..
ピロリ菌のような評価が得られるのだろうか。

その記事はこちら。
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腰痛を持っている女性:デンマークの科学者たちが、慢性腰痛の20%から40%が細菌感染によって起こされていたことに気づきました。

「The guardian」
“Antibiotics could cure 40% of chronic back pain patients”( 抗生物質で慢性腰痛患者の40%が治癒)

記事は、おおよそこんな内容である。参考までに...。

抗生物質で慢性腰痛患者の40%が治癒

科学者たちは、英国の50万人の患者が多くの手術を避けて、代わりに抗生物質を投薬する医学的前進を歓迎しています。
慢性腰痛患者の40%が、外科手術よりも抗生物質を選択して治癒しました。
これは医学的前進でありノーベル賞に値する価値があると、一人の脊椎外科医が言っています。

科学者たちが最悪の症例の多くが細菌感染によるものであったことを発見した後、英国と他の国の外科医たちは慢性腰痛患者をどのように治療するか調査しています。

衝撃的な発見は、大手術しかないとされている多くの慢性腰痛患者が、手術の代わりに114ポンドの費用による抗生物質を選択することで治癒することができるのです。

この発見は脊椎外科医人生の中で目撃した最も重要なものであったし、医学への影響はノーベル賞に値するものだと、英国の著明な脊椎外科医の1人が言っていました。

ロンドン大学病院のコンサルタントで神経・脊椎外科医ピーター・ハムリンは、「腰痛に対するすべての脊椎手術のおそらく半分は抗生物質に取って代わられるだろう。その影響は莫大なものがある」と話しています。

ラグビー選手・トム・クロフトは、頸の損傷でシーズンをダメにした後、先月行われた英国とアイルランドのライオンズ・サマー・ツアーに招集されたのだが、最近その彼を脊椎外科医ハムリンは手術しました。

腰痛を扱う専門医たちは、時に感染に責任があることを以前から知っていましたが、これらの症例は特別であると思われていました。
その考えは、慢性腰痛の20%から40%が細菌感染によって起こされたことに気付いた南デンマークの大学の科学者たちによって覆されたのです。

現在、英国の約4百万人が人生のある時点で慢性腰痛を起こすだろう、と予測できます。
最近の研究では、慢性腰痛患者の50万人以上に抗生物質が役立つと示唆しています。

これは、通常の腰痛(急性あるいは亜急性の痛み)を持っている人々に役立つわけではなく、慢性腰痛患者だけである」と、デンマークの研究班のハンナ・アルバート博士が「The guardian」誌に話しました。
「これらの患者さんたちは痛みによるハンデを持った人たちで、緊張した人生を過ごしている人たちです。我々は、そうした患者さんたちを決して予想していなかった普通の状態に戻しているのです。」

研究グループの高官であるクラウス・マニケが、この発見は10年間の努力の最頂点であったと言いました。
「今まで、それは難しかったのです。好調期と低迷期がありました。研究を始めた頃、多くの同僚たちが理解できなかったといった問題があったからです。腰痛の研究者として、このデータが示したすべてに、本当に関与するバクテリアを見つけるためでした」と彼は語りました。

デンマークの研究班は、2つの研究論文が ”European Spine Journal”に発表されたと述べています。
最初の論文で、研究者たちは椎間板変位における細菌感染がどのように周囲の脊椎骨に激痛を伴う炎症と微細骨折を引き起こすか説明しています。

デンマークの研究班は、バーミンガムで医師たちと共に取組み、感染徴候の患者から取り除かれた組織を調べました。
半分近くが陽性のテスト反応を示しました。
80%以上がプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes:ざ瘡プロピオンバクテリウム)と呼ばれる病原菌を運んでいたのです。

この微生物は、にきびを起こすことでよく知られています。
これらは我々の歯、毛髪根周囲そして亀裂に潜んでいますが、歯を磨くことで血流に入ることがあるのです。
通常は害を起こしませんが、人の椎間板変位があれば変化するかもしれません。
ダメージを治すために、体は椎間板の中に毛細血管を成長させるのです。
毛細血管は治癒効果をもたらすより、内部にバクテリアを運び、成長した毛細管でMRIスキャンに現われる重度の炎症と隣接する椎骨の損傷を起こすのです。

2番目の研究論文で、科学者たちが抗生物質の100日間のコースで慢性背部痛を治したことを証明しました。
無作為治験では、これまで6カ月以上のあいだ苦しみ、MRIスキャンで損傷した椎骨の徴候がみられた患者の80%が投薬によって痛みが緩和したのです。

アルバートは、抗生物質がすべての腰背部痛に有効ではないであろうと強調しました。
薬の過度使用は、病院ですでに重大問題視されていたより多くの「抗生物質 - 耐性菌」に導くことになったからでした。
しかしながら、彼女は同様に警告しています。
「多くの患者には、痛みを軽減することができた抗生物質の代わりに、効果的でない手術が待ってているだろう」、と。

「我々は大衆に説明し、臨床医を教育しなければなりませんし、それで適切な患者は適切な治療を受ければ、5年後には不必要な手術をすることはないのです」とハンナ・アルバートは言っていました。

将来の研究がバクテリアのターゲットとなる薬を使うことで、改良のために必要な時間を早め、抗生物質に応答する患者さんの数を増やすことを目指すべきだ、とハンナはと話しています。

NHS(National Health Service:イギリスの国営医療サービス事業)では、大多数の腰背部痛の脊椎手術に毎年480ミリオンポンドを使います。
マイナーな手術は、椎骨間組織の柔らかいクッションの1つが飛び出し、近くの神経を圧迫した状態の椎間板変位を定着させることができます。
外科医はただ椎間板の突き出ている部分を切除します。
しかしながら、すべての慢性痛患者は損傷を受けた脊椎骨を連合させるか、あるいは人工椎間板を移植するために大手術を申し出ることができます。

「我々が不必要なオペレーションを廃止することによって、 250ミリオン ポンドを NHS 予算から救うことができるかもしれません。 抗生物質治療の価格はたった114ポンドです。 それは外科手術とはスケールが違います。私は心からノーベル賞に値すると信じます」、と ハンナ・アルバートは言っていました。
他の脊椎外科医はアルバートに会い、抗生物質を患者に提供する施療を再検討しています。
衝撃的な発見は、慢性腰痛の多くの患者が大手術に耐える代わりに、約114ポンドの費用の抗生物質コースで治ることが可能であることを意味しているのです。

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by m_chiro | 2013-07-23 01:20 | 痛み考 | Trackback | Comments(1)
間質性膀胱炎の擬態をつくるMPS
加茂先生のブログ記事「医師よこれ以上患者に迷惑をかけるのはやめよう」に、ワシントン・ポストの記事が紹介されていた。

そのワシントン・ポストの記事は、こちら。
“Myofascial pain syndrome often leaves doctors baffled and patients untreated”

その記事を要約すると、次のような内容です。
長い間「間質性膀胱炎」と診断されてきた患者さんが、実はMPS(筋・筋膜性疼痛症候群)だった。いろいろドクターショッピングを重ねたが、なぜ誰も分からなかったのだろう、と疑問を投げかけながら、MPSの扱われ方を問題視して書いている。
「間質性膀胱炎」もMPSの擬態である可能性がある。


参考までに、ワシントンポストの記事内容も紹介しておきます。

「筋筋膜性疼痛症候群(MPS)は医者を困惑させ、患者は治療されないまま放置される」

私の症状が始まったのは2008年1月のことでした。
おしっこをするたびに膀胱に深刻な痛みを伴うようになったのです。 私は「間質性膀胱炎」と診断されました。
周知のことではありますが、この病気は治療法がないとされる慢性的な膀胱症状のことです。しかしながら翌月になると、痛みは腿、膝、腰、臀部、腹と背中に広がりました。

私の病状は3年後に正しく診断されることになったのですが、その時まで既に2人の 泌尿婦人科医(urogynecologists )、3人の整形外科医、6人の理学療法士、2人の徒手セラピスト、 リュマチ専門医、神経科医、カイロプラクターとホメオパスに診てもらっていたのです。

何が間違っていたのでしょう?
完全に予想外であった私の症状:筋筋膜性疼痛症候群(MPS)に従うとすれば、リリースされていないで縮んだ筋線維に原因があったことになります。
筋線維の絶え間のない収縮は緊張した筋肉に硬結を作り、あるいはトリガーポイントを作り、そこから完全に健全な部位にまで身体の組織に痛みを送るのです。
たいていの医者は、一度も筋筋膜性疼痛症候群(MPS)について聞いたことがなく、ほとんどの医者がそれをどのように治療するべきか知りません。

私の症例で、骨盤底(骨盤の底となる筋肉の容器)におけるトリガー・ポイントが、膀胱への関連痛となったのです。
歩くと、私の 太腿に沿ったポイントが鋭い痛みを作り、膝関節の上にも痛みを作ったのです。腰部と臀部と腹部のポイントは骨盤と腰部の関節面をずらし、背中のもっと上の方にまで痛みを引き起こしたのです。
痛みがとても激しかったので、座ることができたのはごく短い時間だけでした。

「なぜ、誰もMPSを知らなかったのでしょう?」
Dr.ティモシー・テイラーが、私の痛みの原因を正確に診断した直後に、私はドクターに尋ねました。
ドクターが応えてくれました。
「医者は筋肉を専門に扱わないから」。
「筋肉は忘れられた臓器なんです」。
「そこには神経線維がありません」

ジョンズ・ホプキンス大学・神経学のロバート・ゲルウィン准教授によれば、そこに関連痛が伴うという一部の理由だけで、ほとんどの医科大学と理学療法プログラムは筋・筋膜痛の教育を行っていないのだそうです。

痛みとリハビリテーション医学所長でもあるR.ゲルウィンは、最近になってやっと内科学科がこのタイプの痛みを理解するようになった、と言っています。

R.ゲルウィンが話してくれました。
「神経外科医と長時間話しあったことを思い出すのだが、(関連した)痛みには、接点もなく、神経線維もなく、連鎖もなく、血管もなく、神経もなく、この2つの部位を結び付けるものは何もないんだ」と、その神経外科医は言っていた。
もちろん、その外科医は「関連痛のメカニズムが脊髄を通して拡大されたものであることを理解していなかったね」。

緊張した筋繊維からの痛みのシグナルは、同様に身体の他の部位からのシグナルを受け取る脊髄の特定の部位にも移動するのです。
その痛みが他のどこかから来るかのように、筋肉からの痛みシグナルが神経系で印象づけられると関連痛が発生するのです。

関連痛は今日ますます医者に認められてはいるが、筋・筋膜痛の診断と治療に大部分の医者が対応するようになるまでにはもっと多くの時間がかかる、とテイラーは見ているようです。
開業者はトリガーポイントを識別するために、特定のトレーニングを必要とします。
そして筋線維に索状硬結を識別し特定するために、慎重に患者を診察し触診しなければなりません。

2000年の調査では、痛み専門家の88パーセント以上はMPS(筋筋膜性疼痛症候群)が正当な診断であったとことを認めていますが、それを診断することについての基準に関しては意見が違っていました。

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by m_chiro | 2013-07-16 17:48 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(0)



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