カテゴリ:痛み考( 143 )
根性痛へのステロイド使用は、注射経路にも効果にも優越性はない!
痛みに対する局所麻酔薬とステロイド剤の比較調査からみええくること。

「腰椎椎間板ヘルニアに有効な局所麻酔薬」


腰痛や下肢痛を伴う痛みに、硬膜外注射を行って有効性を比較した調査の報告である。
注射の投与経路は椎間孔、椎弓間、仙骨部があるが、3つの投与経路に有意な差はないことが報告されている。

今回の調査は、ルイビル大学(米)で行われた無作為化二重盲検比較調査である。
対象は慢性腰痛と下肢痛のある患者120症例。
局所麻酔薬単独群(リドカイン)とステロイド併用群による比較である。
調査における投与経路は、椎間孔硬膜外注射による。
その結果を分かりやすくするためにグラフにしてみた。
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要するに、ステロイドを併用しても効果に優越性はないということだ。
むしろ、局麻単独群の方が成績もよい。
2年後の優位な成績も同じ結果である。
もしも炎症を考慮すべき病態であれば、ステロイド群の方がはるかに成績もよくなるはずだろう。
ステロイドは最強の消炎作用を持つとされ、局麻は神経の伝導を遮断することなくNaイオンチャンネルンを遮断する。
だから鎮痛経路を抑制する。

注射による投与経路に有意な差がないのであれば、トリガーポイント注射などの手法で末梢からの興奮を遮断する方がより安全で確実だということだろう。

加茂淳先生の新刊本
が出版された。
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一般向けに痛みの仕組みがやさしく解説されている。
しかも、セルフケアの方法まで紹介されていて、痛みの患者さんには有難い解説と指南本だろう。
ぜひ、多くの人に読んでもらい、痛みの理解につなげてほしいと思う。
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by m_chiro | 2014-09-04 09:04 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
痛みは、ホントに天候と関係ないのか?
疼痛疾患と気候は無関係

慢性関節リウマチの疼痛や機能障害と患者が住んでいる地域の気圧・気温・湿度を分析した結果、症状と気象条件との間に関連はなく、天候が関節痛に影響を与えたというエビデンスは存在しない。(redelmeierDA.et al,Proc Natl Acad Sci USA,1996)

慢性疼痛患者を対象に痛みと天候との関係を調査した結果、寒い地方の住人だからといって疼痛レベルも疼痛頻度も高いわけではなく、天候が疼痛に影響を与えるという思い込み。(Jamison RN.Et al,Pain,1995)
(「TMS Japan」からの情報)


天候の変化、例えば気圧、気温、寒冷、偏西風などなど、これらはすべて痛み刺激ではない。
だから、天候の変化が痛みを引き起こすという直接的な根拠はどこにもない。

当然、居住地区による痛みの症状の頻度にも関連する根拠はない。

以前も、このことを記事にしたことがあった。
「痛みや体調不良は、気候と関係するのか」
実際に臨床の現場では、天候の激変で痛みを訴える患者さんが多くなる。
テルマ(株)が、立正大学国土環境株式会社と共同で、そのことを調査した(2004)。
「健康と気候に関するアンケート調査」(調査対象は全国の40~60代の一般生活者および慢性疾患患者の1168名)

それによると、
81%が天候と体調に関係があると回答している。
ところが、実際に体験した割合は73%である。
思いと実体験の差は、単なる「思い込み」と片付けられない割合のようだが….。

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では、痛みと関係した実体験は、リウマチの85.9%がダントツに多く、次いで関節炎、神経痛、腰痛が53.1%、痛風が45.9%とベスト3を占めている。
後に、その他の体調不良が続いている。

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ところで、神経が切断されたり損傷されると「バスケット・フォーメーション」という現象や、C繊維にα2受容体の活性が増加することが知られている。
α2受容体とはアドレナリン受容体のことで、交感神経興奮作用に関わっている。

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図:「交感神経系と痛み系の間の可塑的な連結の模式図」(「痛みのケア」20pより)
この図に、熊沢孝朗先生が次のように解説している。
「交感神経系への刺激やノルアドレナリン動注によって、アドレナリンの受容体を介して皮膚ポリモーダル受容器の興奮が生じるという報告がある。」

要するに、Aβ神経などの大細胞を囲むように交感神経とコネクションができたり、C線維にα2受容体が作られる。
だから、交感神経の緊張が高まることで痛み系の神経が興奮することがあり得るのだ。
それに自律神経は痛みを修飾する神経でもある。
心理的な緊張が起こって、痛みが作られても不思議な話ではない。
神経障害性疼痛では、天気痛や気象痛もあり得るということだろう。

また自律神経の反応次第でも痛みが悪化することは想定できるから、天気によって痛みや体調に変化が起こるのはあり得ない話ではない。
天候によって体調不良を経験した人の症状を見ても、自律神経反応と思えるものばかりである。

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しかし、こうしたストレスによる自律神経反応は、「ストレス=悪」、「天候の変化=悪」とせず、視点を変えることが必要なようだ。

スタンフォード大学の健康心理学者・ケリー・マクゴニガルのストレスに対する提案を、先日記事にした。
『「ストレスが悪い」、この考え方を変えよう!』
「ストレスホルモンをコルチゾンから、オキシドシンへ」

だから天気痛や気象痛といえども、思い込みを捨てて参考にすべきことかもしれない。
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by m_chiro | 2014-06-23 18:46 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
筋骨格系疼痛の発症の共通因子とは?
「Pain」誌(2014.5月号)に掲載された論文をCareNet(2014.6.4)が公開した。
「筋骨格系疼痛の発症、男女で異なる職業関連因子」

その論文とは、フランスで1990年から5年間に渡って行われた筋骨格系疼痛(MSP)の疫学調査の結果である。

調査対象は12,591名(男性65%、女性35%)で、自記式質問票によって個人的因子や職業の関連性が調査されている。
筋骨格系の痛み(MSP)は、生物・心理・社会的因子が関わっているとされている。
それでも特定の局所痛と、多部位痛との関連は明らかでなく、それが今回の調査の目的のようだ。

以下は結果である
1.局所疼痛の発症率17%:多部位疼痛の発症率25.6%(1995年時点)
2.女性の予測因子:頻繁な反復的運動で首/肩の痛み、姿勢や振動で上肢痛/腰痛、道具を使う仕事で上肢痛
3.男性の予測因子:肉体労働と振動で首/肩の痛み、姿勢や肉体労働で下肢痛/腰痛、道具を使う仕事で上肢痛
4.肉体労働や振動は男女を問わず多部位疼痛と関連
5.心理的リスク因子:女性のみ、上肢痛および3~4か所の多部位疼痛


筋骨格系の痛み(MSP)には、多部位の痛みが多い傾向がある。
肉体労働、反復運動や姿勢など筋肉負荷が想定できるが、機能神経学的には姿勢運動制御系にかかわっているようだ。
興味深いのは「振動(vibrations)」の因子である。

運動や労働に伴う身体への振動が同相で干渉し合う(調和共鳴)ことで、強刺激が生まれるのだろうか。
逆に言えば、振動数によって物理化学的な性質を変化させる振動刺激は治療に応用できるということだろう。

「振動」のキーワードが、やけに目につくこの頃である。
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by m_chiro | 2014-06-09 16:05 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
老化で、筋痛はなぜ遅れてやってくる②
② 遅発性筋痛の生理学的要因

筋痛が起こりやすい運動は、特に伸張性収縮(エキセントリック・コントラクション)で生じやすいことがわかった。
例えば、階段を昇る運動よりも、降りるときの筋収縮。
あるいは物を持ち上げる動作よりも、挙げた物を降ろす動きで起こる筋収縮のことである。

でも、筋線維に痛覚線維はない。
それなのに、なぜ筋痛は起こるのだろう。
筋組織に痛覚線維があるのは筋膜組織である。

ネッター解剖図譜の筋構造の図をみると、一本の筋線維は束になって筋束を作り、その筋束がまた束になって一つの筋肉がつくられている。
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その筋肉は筋上膜で包まれ、筋束や一本の筋線維も内膜に覆われている。
この膜という結合組織に痛覚線維がある。
あるいは、その筋組織の筋腱接合部、そして細動脈の周囲に存在しているのである。

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さて、その筋線維には速筋と遅筋があり、その中間の筋も入れると3種類の筋線維があるとされている。
要するに速筋(FG線維)は、出力が高く短時間で無酸素性にATPがエネルギーをつくる白身の筋線維である。
遅筋(SO線維)は赤身で持久力があるが低出力の筋線維だ。
もうひとつの中間的な筋線維(FOG線維)は、遅筋と速筋の中間的な能力の線維である。

野球の投手でも、その筋線維の特徴で先発完投タイプとストッパータイプがある。
陸上競技でも、短距離走者、マラソン走者、中距離タイプの走者がいるようなものだ。
それも個々人のもつ筋線維の特徴に依存しているのだろう。

速筋(FG線維)は伸張性収縮で損傷しやすい筋線維とされる。
無酸素性だから早くに線維が硬くなり、元の柔軟性を回復しにくい線維である。
だから伸張性の筋収縮が長く続くと、遅筋が主導して活動するようになる。
硬く疲労した速筋(FG線維)は、持久力のある遅筋(SO線維)に無理強いされて活動するために線維自体に微損傷が起こりやすい状況が生まれることになる。

筋に損傷が起こると、修復のための炎症反応が起こる。
この炎症作用に関わるのが酵素やタンパク質で血中濃度に反映される。
炎症反応は浮腫をもたらして筋膜組織を機械的に刺激する。
筋膜組織の痛覚線維が痛み刺激として伝えることになる。
炎症と浮腫の活動については、以前の記事痛み学」NOTE 58. 炎症・腫脹にみる合目的活動のダイナミクス②」にまとめておいた。
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by m_chiro | 2014-04-11 17:34 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
老化で、筋痛はなぜ遅れてやってくる
やっと春めいてきて、東北の人たちは冬装備を解きはじめた。

車のタイヤ交換、春使用の衣類も入れ替わる。
庭の冬囲いを解き、田畑は種まきの準備がはじまる。
老齢期に入った人たちまで、急に慌ただしく身体を動かしはじめる。

当然のごとく筋痛が起こるが、老化した筋肉ほど直後の痛みではなく2~3日経って筋痛になる。
いわゆる「遅発性筋痛」である。
当人には、遅れてやってくる痛みは不可解らしい。

以前、「痛み学NOTE」に、この遅れてやってくる筋痛のことを記事にしたことがあった。
(「痛み学NOTE」42. 遅発性筋痛のメカニズム)

要するに、作業や運動で使う筋の収縮には3つのタイプがある。
1.等尺性収縮(アイソメトリック・コントラクション)、2.短縮性収縮(コンセントリック・コントラクション)、3.伸張性収縮(エキセントリック・コントラクション)だ。
その中で、筋に微損傷をつくりやすい収縮は「伸張性収縮」であるという話だ。
なぜ、伸張性収縮によって老化した筋肉は、遅れて傷みだすのか。
そのことを記事に書いた。

You-tubeに、動画「年をとると筋肉痛が2日後にでるのはなぜ?」が掲載されていた。
昨年の7月31日公開されたTV番組の内容らしい。

そのメカニズムや対処法、応急の手当てについても、分かりやすくまとめてある。



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by m_chiro | 2014-04-08 09:37 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「痛みの本態」とは(三木成夫)
故・三木成夫・解剖学者の著作には、大いなる学びを頂戴してきた。
人のからだを視る仕事に就くようになって、とてもワクワクしながら学んだ書物は多くあるが、中でも三木先生の著作は今でも座右に置いてある。

三木先生は、解剖学者としても異色な存在なのかもしれない。
生きものを「過去-現在-未来」という視点に立って看破しているのだろう。
だから三木学は、ただ単に生物の個体解剖にとどめずに、生命環境を織り込んだ壮大な生命論であり形態学だ、という印象を持っている。

その三木先生が「痛み」について書かれた一文がある。
短い文ではあるが、痛みの本質を的確に表現していて分かりやすい。
1975年に「東洋医学」誌に掲載された『「ツボ」の比較解剖学的考察―東西医学の源流について』の一節である(「生命とリズム」三木成夫著)。
以下にその一節の全文を紹介しておこう。
「痛みの本態」を筋肉由来とみている三木先生の卓説である。
(赤字は私が強調した部分)

「痛みの本態」(三木成夫)
われわれの日常で問題になる痛みといえば生理学の課題である皮膚のあの「痛点」由来のそれではほとんどない。一般に、痛点刺激の痛みといえば、それは文字通り“針でつついた”程度のもので、日常の生活でそれ以上の問題となることはまずありえない。

この人類の歴史において、医術の世界を生み出すにいたった“本物の痛み”といえば、そうした皮相なものではなく、もっと根の深いものでなければならない。それは、一般の生理学教科書では「内臓あるいは深部感覚」に所属する正体不明の痛みと記載されているものであるが、われわれはこの西洋医学の盲点とも思われる内なる痛みを、実は「筋肉」に由来するものと考える

したがって、人間のからだから一切の筋肉を取り除けば、本来の医の世界はあるいは生まれなかったであろうと考える。

筋肉の強い収縮が耐えがたい痛みをもたらすことは、骨格筋ではあの“こむら返り“を見ればよい。これに対して胃けいれん・腸閉塞・結石痛、そして陣痛などはその場の内臓筋の異常収縮に、またあの拍動性の頭痛・歯痛・化膿痛などはその領域の筋性細動脈すなわち血管筋の強い収縮に、それぞれ由来するのであろう。

われわれが冬の朝、冷水に手を入れた時、あるいは間違って、熱い風呂に片足をつっ込んだ時、その皮膚に生ずる瞬間の冷温覚から少し遅れて、あの手足の芯を締め上げるように襲ってくる激痛は、とりもなおさず付近一帯の筋性動脈がいっせいに反射を起こしたものと考える。

血管系の枝分かれに乗って、皮膚より内側の津々浦々に分布するその筋肉組織は、体内に張り巡らされた、もっと精密かつ高感度の“痛覚の発生装置”ということになろう

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by m_chiro | 2014-04-03 12:25 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
体内で炎症性物質を抑える食事を心がけることが大事
コレステロール悪者神話は本当なのか?
この疑問に明確な答えがアメリカCBNテレビで分かりやすく解説されている。

「コレステロールを悪者にする黒幕とは? (日本語字幕付き)」


体内環境を守るために食事の内容は重要な要件である。
痛みの身体的前段階には不飽和脂肪酸(Ω6)の過剰摂取が関与するとされる。
体内で炎症性物質アラキドン酸が作られるからだ。
どうもそれは痛みだけに限らないようだ。

コレステロールは、心・血管性疾患の諸悪の根源として忌み嫌われている。
ところがコレステロールは重要な役目を担っているとする意見もある。
このTV解説も、その立場からコレステロールの役割を述べている。
結論を急げば、コレステロールは血管の炎症を防いでいる、ということになる。

問題なのは血管に炎症をつくることであって、それをガードするために役割を果たしたコレステロールに罪はない。
体内に炎症をもたらす身近な因子は「脂質と糖質」なのだ。
だから動脈硬化の原因も「炎症」であって、コレステロールではない。
その根源である炎症物質の生成を抑えれば、コレステロールが血管を修復する必要もないわけである。
コレステロールは必要に迫られて役割を果たしているだけなんだ。

火事が起これば、消防士がやってくる。
炎症が起きているから、コレステロールがやってきた。

消防士は悪者? コレステロールは悪?

放火犯は火事場の野次馬に紛れ込んでいると言うが、コレステロールは炎症性物質ではない。
だから炎症の現場にあったからと言って、動脈硬化の原因とするのはあまりにも短絡過ぎる。
こうした疾患の真の犯人は、炎症性物質をつくりだしているトランス脂肪酸や精製炭水化物ということになる。

トランス脂肪酸は、アルツハイマー、パーキンソン、ADHDにも関与する可能性が指摘されていた。
自分の体は自分で守る。
そのためにも整合性のある情報に耳目を傾けて置くことが大事だと思う。
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by m_chiro | 2014-02-21 11:33 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「抑制+抑制=興奮」、「興奮+興奮=興奮倍返し」
アメリカ医療施設評価合同委員会(JCAHO)が「痛みの評価」を第5の必須バイタルサインに加えたのは2001年のことである。

それまでは、体温、血圧、心拍数、呼吸数の4つがバイタルサインのチェックが必須項目であったのだから、「痛み」は医療現場での重要な評価項目になったわけで画期的な制度化であった。

ところが、最近そのことの弊害を警告する論文が出てきた。
“Kindness kills: the negative impact of pain as the fifth vital sign.
「思いやりが仇になる:第五のバイタルサイン(痛み評価)におけるネガティブな衝撃」といったところだろうか。

単純に数値で痛みを評価することで過剰な投薬(オピオイドなど)が行われる。
そのことが痛み患者の活動障害を招き、あるいは生命を脅かされることになる。
そんな事態を警告した論文である。

だから痛み評価の数値をネガティブに受け取らないためにも、日常的な痛み評価を行うことには気を付けなければならない。

特に、患者自身が自分の痛みを数値化する「NRS(数値評価スケール)」には、ネガティブな心理的インパクトが大きいだろう。
数値は治療者サイドで参考にするものだから、患者さんに数字が見える必要はない。
その意味では「VAS(視覚的アナログスケール)」の方がより配慮されている。
だからと言って、日常的に評価することには気をつけたい。
特に気を付けるべき患者さんもいることだろう。

神経シナプスがもたらす作用から言えば、「抑制+抑制=興奮」という結果になるからだ。
言語や数字は興奮性物質ではないが、明らかに脳のプログラムに関与する。
だからプラシーボにもノンシーボにもなり得る。
医師が、痛みの数字評価を投薬不足と判断するのは更に問題である。
オピオイドの副作用が倍増する。

徒手療法家にも同じことが言える。
結果が出ないからといって、更に刺激量を増やしていくと過剰刺激になる。
「興奮+興奮=興奮倍返し」が起こり、過敏現象がもたらされるのだ。
効果としての数字にこだわるより、先ずは「なぜ?」と考えるべきなのだろう。
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by m_chiro | 2014-01-17 12:06 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
痛みの質…、それで何が分かるのか
「痛みの評価」が第5の必須バイタルサインに挙げられたのは2001年(アメリカ)のこと。ベッドサイドでは、基本的に5項目のチェックを1~2分で行うことが勧められている。

その5項目とは….、
1.増悪因子と寛解因子
2.性質
3.部位
4.強度
5.時間特性


で、これらを要領よく聴き出すようにしなさい、というわけだ。

痛みが増悪する因子、それが楽になる因子はあるか。
この情報は治療する上で重要な鍵になるから、聞き逃せない。

どの部位が痛むのかを知ることも重要だが、それが必ずしも障害(問題)とされる部位とは限らないことが多い。だから、ややこしい。

痛みの強度や時間特性については、各疾患の徴候と照らし合わせて判断する必要があるが、さて痛みの性質とは何だろう。

例えば、急性の痛みを訴える患者さんがみえたら、その痛みが体性痛であるのか、関連痛であるのか、あるいは内臓痛であるのか、この3者を区別しなければならない。

どうやって?

それは患者さんの訴える痛みの性質を聴きだすことで、ある程度の目安がつく。
後は触診である。
急性痛の多くは筋・筋膜に起源がある。
ところで内臓痛と体性痛では、その起源となる筋肉が違う。
内臓の筋肉は不随筋である平滑筋だ。
血管も平滑筋である。

一方、骨格筋は横紋筋である。そして、内臓でも心筋は横紋筋である。
だから平滑筋が過収縮を起こすと、「じんわりと締め付けられるような痛み」が起こるとされている。
それが更に悪化した攣縮状態が起こる。そうなると強度の持続的疼痛になる。
この痛みは疝痛とされ、内臓における平滑筋の攣縮による痛みである。
だから心臓疾患でも「締め付けられるような痛み」は、血管(平滑筋)由来の痛みである。

横紋筋由来の痛みは「重苦しい鈍痛」である。
これも筋の攣縮が起こると筋の痙攣性の痛みになる。

内臓痛であれ、疝痛・体性痛であれ、特徴的に「圧痛」があり、疝痛や体性痛には「筋性防御」がみられることがある。
ところが軽度の内臓痛では筋性防御は起こらない。

筋性防御とは、組織を押さえた時に筋収縮が増強して、それ以上の侵入を防ごうとする反応である。
筋性防御が起こるのは疝痛や体性痛に限られるようだ。
だから、筋性防御反応が起こる痛みであれば体性痛であり、あるいは内臓痛であれば「疝痛」に於いてということになる。

もうひとつ「反跳痛」という身体反応がある。
圧迫して行って、急に手を離したときに起こる痛みのことで、増悪した体性痛にみられる身体反応である。
肋間神経や腰神経を介して腹壁筋の緊張が反射的に亢進するのだ。

こうしてみていくと、平滑筋と横紋筋の神経支配の違いも影響しているのだろうと思えてくる。
平滑筋は、管状あるいは袋状の形態を造る内臓器官の壁を構成していて、支配神経は自律神経である。
横紋筋には神経-筋接合部があるが、平滑筋では違う形態になっている。
それはギャップ結合と言われる信号の伝達機構になっていて、消化管ではこの収縮作用を利用して消化物を運搬しているのだ。

ギャップ結合の形態をウィキペディアより引用しておこう。
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このギャップ結合を有する平滑筋は単元性平滑筋で、グループ化された組成である。
つまりユニットになっている。
グループ内の信号伝達は同時に行われ、神経支配も交感神経と副交感神経の二重支配を受けている。
一方、瞳孔括約筋のような平滑筋は多元性平滑筋でギャップ結合のようなユニット構成ではなく、神経支配も交感神経あるいは副交感神経のいずれかひとつの支配を受けているとされる。

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上の図はよく知られる骨格筋の神経-筋接合部のイラストである。
①の神経終末が②の筋組織の膜に接合し、③のアセチルコリン小胞から④のアセチルコリン受容体に伝達され、⑤のミトコンドリアがATPのエネルギ物質を産出するメカニズムが描かれている。

内臓痛か、体性痛か、これを鑑別できたら、優先すべきは内臓痛で専門医への紹介を視野に入れておかねばならない。
内臓痛を除外出来たら、後は体性痛である。
発痛部位がどこから誘発されているか、その見極めが治療家には重要な見立ての能力になるのだろう。
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by m_chiro | 2013-12-02 16:35 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
頭痛を見分けるために
今年は台風が続発である。26号は伊豆大島や関東の太平洋岸に甚大な災害をもたらした。
気象庁から警告が発せられていたものの、未曽有の土石流で街も人も飲み込まれる大参事になった。追いかけるように大型の27号が後に続いているらしい。

警戒感はあっても、未然に防ぐことは難しいこともある。同様に、重篤な障害を秘めた患者さんが、大事に至らないように病的サインを見逃さないことも念頭から外せない。
それは我々にとっても施術の心得である。

台風も北上するにつれ、崩れて低気圧が起こる。すると頭痛を訴える患者さんが多くなる。
これは天気痛とされる痛みだ。自律神経が関与するので治療の参考になる。

というわけで、頭痛には重篤な疾患が隠れていることがあり、特に注意が必要だ。

まず頭痛の患者さんには、その痛みが外傷性か否かを確認しなければならない。
外傷性であれば相当の対応をすることになるが、非外傷性であれば更に鑑別が必要になる。
要するに、一次性であるか、二次性の頭痛であるかを分けることである。

一次性とは機能性頭痛のことで、原因も近年まで明確ではなかった。
そして基本的に3つに分けられてきた。
1.片頭痛、2.緊張性頭痛、3.群発頭痛である。
それぞれに特徴的な兆候がある。

片頭痛は読んで字のごとく、片側性が6~7割の高率で一側性にでる。
残りの3~4割は両側性とされている。
緊張性頭痛は両側性に発症するので、もしも両側性の片頭痛であれば、緊張性頭痛との鑑別は他の徴候から分けなければならない。

それは、こんな徴候の違いで分けられている。
拍動する痛みは片頭痛で随伴症状(吐き気、嘔吐、光に過敏になる羞明、閃輝暗点などの前駆症状)があるが、緊張性頭痛には随伴症状はなく圧迫されるような締めつけられる痛みとされる。
誘因も異なる。
片頭痛はアルコールや赤ワイン、チョコレートなどの嗜好にかかわるが、緊張性頭痛は心理的ストレスが引き金になる。

ところが、この片頭痛と緊張性頭痛は「症状は異なるが原因は同じ」(1973、Waters)、とする説が認められるようになった。
その原因は「セロトニン」にあるとする説である。
だから、セロトニン受容体に選択的に作用させるトリプタン系の薬は、「夢の鎮痛薬」と呼ばれている。

群発頭痛は、必ず片側性で眼やこめかみ周辺に激痛を伴って発症する。
随伴症状には、同側の結膜充血、涙や鼻水、発汗を伴い、たばこ、アルコールの誘因物質がある。
こうした一次性の機能的頭痛には、徒手療法が効果的に反応することが多い。

さて、問題は二次性頭痛である。
これは器質の病態が関わって起こる頭痛である。
しかも重篤な問題があれば見逃せない。これも3つに分けられる。
1.頭蓋内病変、2.顔面頭蓋(頭蓋外)病変、3.全身性疾患の3つである。

全身性疾患では熱を伴うインフルエンザなどの疾患、アルコールなどの薬物によるものなどで、顔面頭蓋病変としては帯状疱疹や副鼻腔炎、顎関節症(MPSも含めて)、緑内障などがあるが、頭蓋内病変と同様に見逃せない疾患は側頭動脈炎で、失明の恐れがあると言われている。

さて、問題は頭蓋内病変であるが、これを鑑別する能力を我々は持たない。
特に重要視される疾患は、脳血管疾患、脳内感染症、脳腫瘍で命に係わる。
したがって病的サインを見つけたら、一刻の猶予もせずに専門医に紹介しなければならない。
その病的サインとは、意識障害や落下発作、項部硬直、発語障害、脳圧亢進徴候(クッシング徴候:血圧上昇と相対的除脈が起こる)、などが見られることである。こうした徴候は、我々のように診断能力を持たない治療家の臨床でも確認出るケースがあるので、こんな徴候の患者さんは専門医に紹介しなければならない。

それでも重度の片頭痛とクモ膜下出血による頭痛の鑑別は、臨床的にとても難しいとされる。この鑑別に関する新ルールがAMAのジャーナルに掲載された。
CareNetからの情報である。
「救急部門での急性頭痛、クモ膜下出血除外の新ルール」

この記事によると、クモ膜下出血に関する決定基準として(ルール1)、1.40歳以上、2.首の痛みや硬直、3.目撃者のいる意識消失、4.労作時の発症、この4項目を採用すると、クモ膜下出血に関する感度は98.5%、特異度27.5%だそうである。そこにオタワSAH基準である1.雷鳴頭痛(発症後、即座に痛みがピークに達する頭痛)、2.診察時の頸部屈曲制限、の2項目を加えると感度100%、特異度15.3%になるという鑑別診断ルールである。
感度が上昇すれば、腰椎穿刺などを省いて画像にいくことで、診断ステップを早めることにもなるだろう。
やはり、問診や身体所見を取ることは不可欠で重要な作業なのだ、と再確認させられる。
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by m_chiro | 2013-10-19 10:26 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)



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