カテゴリ:痛み考( 143 )
神経根症状を重篤な疾患だと思わないこと
腰痛のエビデンスレビュー(ロンドン、一般開業医のロイヤルカレッジ)によれば、神経根症状とされる次の症状は「グリーンライト(自己限定疾患)」と評価されている。

「グリーンライト」というのは6週間以内に50%の患者さんが回復すもので、緊急性のある疾患ではない、とされる症状とされる。

その神経根症状とは、次の5つの症状である。
1.腰痛より重篤な一側性の下肢痛がある
2.足やつま先に放射する痛みがある
3.同じ方向へのしびれと知覚異常がある
4.SLR(下肢伸展挙上テスト)で下肢痛が再現される
5.局所的な神経症状がある


これらの症状は、一般的に最初の4週間は専門医への紹介が必要ではない。
したがって画像検査の必要性もない

そのように評価されている。
過剰に不安に思わないこと。
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by m_chiro | 2016-01-21 12:16 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
TVの影響力は凄いものがあるんだなぁ~
他県からみえる50代の女性。腰下肢痛としびれ、頸部痛や肩こり、時に不眠などの自律神経症状が加わる。いつも酷くなると遠方から治療にみえる。
治療にみえたときは具合の最悪のときなので、元気な姿は見たことがない。
その彼女が年明けに治療にみえた。
昨年6月にみえて以来、半年ぶりに顔を見せてくれたのである。

「今日はどんな具合なの?」
「最近は調子がいいです。調整もしておこうと思って…」。

「そう、調子がいいの、それはよかったね。何か、いいことでもありましたか?」
「去年、NHKで腰痛の番組をやっていて、それを見たんですよ。そしたら腰が悪いんじゃなくて脳の問題なんだとか。精神的なストレスが原因だ、と言ってました。あ~、そうなんだ! 守屋先生が言っていたことと同じだ、と思って納得できたんです。」

「今まで散々話してきたのに、テレビが言わないと納得できなかったの?」
「だって、整形に行っても、接骨院に行っても、どこでもそんな話はしてくれなかったし、腰の骨が曲がってるとか、変形してるとか言われていたから…」

「確かに、ストレスが重要な問題だけど、ストレスにも精神心理的なストレスもあれば、食などの化学ストレスも、身体的ストレスもあるわけで、この3つはリンクしているんだよ。精神心理的ストレスは一番多いかもしれないけど、それは身体にも影響することになるから、痛みも起こりやすいのだよ。」

テレビの影響力は大きいなぁ~、とつくづく思った。
TV力だね。啓蒙活動は大切だ!

彼女が見たというNHKの番組は、これかな。
NHKスペシャル2015年7月12日「腰痛治療革命~見えてきた痛みのメカニズム~」
ttp://pastel.website/youtsuu-3

「腰痛治療革命」
http://www.nhk.or.jp/kenko/nspyotsu/
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by m_chiro | 2016-01-14 18:53 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
急性腰痛は安静にすべきか! それとも運動療法を行うべきか?②
前回の記事で、ぎっくり腰(急性腰痛)対応への信頼できる調査の論文を紹介した。
記事で「日常的な軽度の活動が望ましい」だろうと結論したが、それを裏付ける調査が発表されていた。併せて紹介しておきたい。
次の論文である。

“The treatment of acute low back pain--bed rest, exercises, or ordinary activity?”
「ぎっくり腰(急性腰痛)の治療は―安静臥位、運動、それとも一般的な通常の日常生活を過ごす―」
この論文は、世界的に権威のある医学雑誌“NEJM”に発表されている(1995)。

その調査によると、急性腰痛患者186名3群に分けてRCT(ランダム比較試験)を行った。
❶「2日間のベッドでの安静臥位」群、67名。
❷「背部のモビリゼーション・エクササイズ:back-mobilizing exercises」群、52名。
❸「許容範囲での一般的な通常の日常生活を過ごす」群、67名。

これらの3群を、3週間後と12週間後に、痛みの持続時間、疼痛強度、腰椎屈曲、動作する能力、オスウェストリー腰部障害指数、欠勤日数などよる差を統計学的に比較している。

その結果、最も回復が遅かったのは「安静臥位」群で、運動療法群は欠勤日数でこそ「安静臥位群」に勝るものの、すべての面で「日常生活群」には及ばなかったのである。

この調査からみても、ぎっくり腰への対応は前回の記事で結論したように「できる限り日常生活を通常通りに過ごす」ことが、もっとも有効な対応であることが分かる。
ぎっくり腰でみえる患者さんがおられるが、運動療法的な対応は避けることが患者さんのためになるということのようだ。
それには激痛で動けない限り、安静臥位を勧めないこと。
許容範囲での一般的な通常の日常生活を過ごすこと。
それが快方への早道のようである。


●ある症例から●
先日、30代の女性が「ぎっくり腰」で治療にみえた。2歳の子供がいる。
その子供を抱き上げようと前屈姿勢になった時に、魔女の一撃を受けた。
何とか仕事(デスクワーク)に出て、仕事をしているうちに、痛みが強くなり座っていることも辛くなった。
やっとの思いで車に乗り込み、治療室にたどりついた時には、歩くことも座ることもできないほどの痛みになった。
身体は捩れて、直立位も辛そうだった。右の大腿前部にまで痛みが広がる。

ともかく一番楽な姿勢でベッドに寝てもらったが、寝ることも安静位も「楽」とは言い難かったようだ。
話をしながら、足関節と頭蓋から姿勢運動制御系をコントロールし、加えて右大腰筋の起始と停止部に手掌接触したままでトーンを調整した。
腰部には直接対応しなかった。

ぎっくり腰になる数日目から、右の肩甲骨下部が苦しくなっていたようだ。
ぎっくり腰は、心身の時間軸におけるプロセスの一つの断面にすぎない。
腰痛のほとんどが、背景にストレスがあるとされている。
ストレスの有無を尋ねると、「そんな気になっているほどのことはない!」という。
ストレス状態にあるという認識もなさそうだ。

質問を変えてみた。
「ぎっくり腰になって、腰のことでなくて、一番気になることや困ることは何かある?」。
「会社が移転するので、引っ越しが迫っている」
「引っ越しは業者に任せればいい話だから、そんなに気にしなくてもいいんじゃないの?」
「引っ越しの責任者なんですよ。それに、住まいもアパートから実家に引っ越すことになってるし…。引っ越しがダブってしまって…」。
期限付きの仕事もあるようだ。
聴いて行くと、公私を含めて盛り沢山のイベントが組まれている。
主婦に、母親に、仕事の役回りも含めると、張りつめて生活していることが窺がえる。

「それをストレスというんだよ。社会的、精神的、肉体的、3つのストレスが複合してるんじゃないの。思うように行かなくてイライラもするでしょう。呼吸が詰まってるから、横隔膜のところが苦しくなっていたんだと思うよ。自分が忙しいのに、頼まれると嫌と言えなくて、また背負い込んでんじゃないの? 頭でカッカしながら、顔で笑って、いい責任者になろうと…」。
「まったくそうです!」
そんな「ストレス」と「ぎっくり腰」が、どう関連しているかという話をしながら、対応すべきことのアドバイスを行った。

右大腿前面の痛みはなくなっている。
今日は動くのも辛いだろうから、会社は休んで1~2日間は無理をしない。
ときどき歩けるか動いてみること。
動けるようだったら、できる範囲で日常生活を通常通りに過ごすこと。
そして3日目に、もう一度治療しましょう。

約束通りに3日目に治療にみえた。
「動けるようになりました! 会社の引っ越しは分担して、自宅の引っ越しは業者に任せることにしました。
まだ腰をかばって動いてますけど….。明日から会社に出ます」

「職場では、あなたの右側には誰もいないでしょう? 社員はみんな左側にいるんじゃないの? 」
「そうですけど…、なんで?」
「下半身だけ正面を向いて、上体や顔は左を向くように、あなたの身体が教育されているようだからね。一方向の動きで長い時間止めないで、もっと動きを解放した方がいいよ」
「そうなんですか…。新しい社屋では左右に配置するようにしましたから、じゃ~、よかったんですね」

そんなわけで、激痛で安静が必要な急性腰痛もある。
だがそれは最低限に留めるべきだろう。
「できるだけ日常の生活を過ごすこと」が鉄則である。
治療者はもちろん、患者さんも心しておくべきことである。
決して無暗に患部をマニプレートすべきではないのだ。

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by m_chiro | 2015-06-04 12:21 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
急性腰痛は安静にすべきか! それとも運動療法を行うべきか?
“Bed rest: a potentially harmful treatment needing more careful evaluation."

この論文によれば、急性腰痛患者がベッドで安静にして寝ていることは有害だ、と結論づけている。
ただし、激痛で動けない場合はこの限りではない。
急性腰痛患者39例の安静臥床にしたRCT(ランダム化比較試験)で調査した結果である。

安静にして床に伏していても急性腰痛の改善が認められた研究はひとつも存在しないそうだである。
ということは、急性腰痛患者が安静に寝ているのは、有害で危険な行為という他ない。
効果のない有害な対応は止めるべきである。
「安静第一」は、激痛で動けないケースを除き迷信という他ないようだ。

また次の論文は、急性腰痛に対する運動療法は無効だとしている。
“A randomized trial of exercise therapy in patients with acute low back pain. Efficacy on sickness absence.”

急性腰痛患者363名を対象にした治療を3群に分けて、比較調査を行った結論である。
1つは標準的治療群、2つめは運動療法群、3つめはシャム(疑似治療)群に振り分けて、1年間追跡調査した。
RCT(ランダム化比較試験)によると、腰痛による欠勤率は運動療法群が最も高く、シャム群(疑似治療)が最も低かった。
この調査では、急性腰痛に対する運動療法には効果がない。
よって、ぎっくり腰などの急性腰痛に運動療法は効かない、ということになる。
世界各国の腰痛診療ガイドラインも急性腰痛に運動療法は勧めていないようだ。

では、急性腰痛になったらどうすればいいか。
もし激痛で動けないようであれば、最低限の安静が必要だろう。
動けるようであっても、運動や運動療法は効果がない。
要するに、安静にしないで日常的な動きをできるだけ行うことである。

急性腰痛による痛みで活動レベルは低下する。
が、これは機能や能力の障害ではない。
だから日常的な動き、歩行など低レベルの活動を取り入れて過ごすことは低リスクなのである。

したがって「安静臥位」は、激痛で動けない限り選択しない。
かといって、運動や運動療法のような過活動を強いることは悪化するだけである。
リスクが高い。
急性腰痛患者には日常的な軽度の活動こそが望ましい、ということになる。

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by m_chiro | 2015-06-02 17:00 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
変形性関節症(OA)には、ヒアルロン酸より羊水注入【米国疼痛医学会】
変形性膝関節症に、ヒアルロン酸を注入する処方が浸透している。

当院にも、ヒアルロン酸注入処方を受けているという患者さんが少なからずみえている。
その効果のほどを聞いてみると、よくなったと答える患者さんにはあまりおめにかからない。
ヒアルロン酸注入は1990年代に認可されていて、アメリカでは膝関節に限定して認可されているようだ。
もちろん日本でも、OAの一般的な処方としてヒアルロン酸注入処方は定着してきている。
が、その効果には疑問符がつく。

特に、65歳以上のOA患者への注入は臨床的な意義はなさそうである。
それでも一回の注入で7週間、複数回注入で12週間程度の有効期間とされているから、継続しなければ効果の判定も難しいものがあるのかもしれない。

そうした現状を踏まえて、最近ではヒアルロン酸に代わる安全で有効な治療となり得る研究が紹介された。
米国疼痛学会(AAPM)・年次総会からの報告である。

”Amniotic Fluid May be Safe and Effective Alternative to Hyaluronic Acid for Osteoarthritis Pain: Interim Results”

ヒアルロン酸注入に代わる方法というのは、「羊水」注入である。
米国ではヒアルロン酸注入は膝関節に使用する場合のみ認可されているが、「羊水」注入は「滑膜関節」全般に使用できるという広い応用性もある。
そのうえ「羊水」には、関節液と類似点が多く、腫脹や炎症を抑える性質もあるようだ。

研究は加工羊水製品(Amnio Clear LCT)の有効性を検討したもの。
調査対象は、グレードⅠ~Ⅲと診断されたOA患者170名である。
このグレード分類は、おそらくKellgren-Lawrenceの5段階分類によるものだろう。
つまり、以下の分類である。

 グレード0:正常
 グレードⅠ:疑わしいわずかな骨棘
 グレードⅡ:明確な骨棘、関節列隙の狭小化の可能性
 グレードⅢ:中程度の骨棘、関節列隙の狭小化が明確、硬化像中程度、
 グレードⅣ:著明な骨棘、関節列隙の狭小化が中程度、硬化像著明、
         関節輪郭の変形明確


報告によると、羊水注入後のVASとWOMAC指標で評価しているのだが、結果は下図のような高いレベルでの平均改善率であった。
長期的な治癒効果、あるいは腫脹・炎症も多剤と比べて発症率が低かったことを報告している。更に、無作為化対照試験などの追加研究が予定されているという。

       VAS        WOMAC
30日後  68.10%    70.90%
90日後  74%       82%


変形性関節症(OA)には、ヒアルロン酸に代わって「加工羊水」の注入処方が使われる時代になるのかも…。
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by m_chiro | 2015-04-09 18:20 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
慢性腰痛への過剰診療、後戻りできるの? 
“Overtreating chronic back pain: time to back off?”(2009)より

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1996年~2005年までの間に、循環器系疾患(Circulatory Conditions)と
呼吸器系疾患(Respiratory Conditions)は、僅かながらも減少傾向にある。


ところが、筋骨格系疾患(Musculoskeletal Conditions)は右肩上がりに増加して行く一方である

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にもかかわらず、MRIは307%増(図1a)、オピオイド鎮痛剤は423%増(図1b)、硬膜外ステロイド注射は629%増(図1c)、椎間関節注射は231%増(図1c)、脊椎固定術220%増(図1d)と、積極的治療と画像診断は軒並み大幅に増加しているのだ。

要するに、こんな治療は慢性腰痛に対して利益がないことの証でもある。

費用対効果が低く、不利益な方法を選択する意味がどこにあるのだろう? 
いつまで続けたら気づくのだろう?

慢性腰痛は極めて一般的な苦るしみであり、有病率も拡大する一方である。
これまでの治療法や診断の無駄に、いつまでも付き合っているわけにはいかないのだ。

今こそ、痛みのメカニズムの基礎科学や慢性疾患モデルの理解に基づいて、慢性腰痛を適切に管理する道に歩みを進めるべきである。
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by m_chiro | 2015-03-29 23:02 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「現象」と「潜象」の相関にかかわる仕組みがありそうだなぁ~
筋の拘縮や硬結がトリガーとなって、そこから遠く離れた部位に痛みが飛ばされる関連痛が起こる。

関連痛は、筋筋膜痛症候群(MPS)でよく知られている。

トリガーポイントに限らず、症状から遠隔の部位に原因を特定する考え方は少なくない。
それがトリガーポイントからのものであろうと、あるいはなかろうと、他覚的な兆候はほとんどないことがある。
だから遠隔の手法を用いる治療家には、それを探る技量が求められることになる。

痛み症状は「現象」に他ならないのだ。
急性の損傷でもない限り、痛み症状のある部位が原因とは限らないのである。

その現象が、トリガーポイントのように痛みの「現象」から遠く離れた部位に原因があるとき、そこを「潜象」の部位と呼んでおこう。

痛み症状に限らず身体の機能系には、「現象」と「潜象」の相関関係の存在を頻繁に体験するところである。
この相関する機能系は、どのような仕組みで成り立っているのだろう。

痛みは、刺激に対する受容器と脳を上下行する神経系の作用機序で発現する。
あるいは、その修飾作用による。
だから痛みの関連痛は、休止シナプスの活性あるいはポリモーダル受容器の相互間を繋ぐネットワークの存在から考えようと試みた。
ところが、そのような受容器を繋ぐ横の連絡網はない、と神経学者が断じていた。

それならば、受容器は筋筋膜連鎖における縦横な伸縮刺激によって活性するに違いない。
そう考えてもみたが、それでもどこかで腑に落ちない在りようを感じられもしたのである。

多くの徒手治療家やボディワーカーたちは、身体を様々な視点で捉えている。
そして、用いる刺激も多様である。

単なる皮膚タッチから、カイロプラクターの様に高速低振幅によるスラスト刺激まで幅広い。
筋・筋膜に対して直接可動させるタッチから、真逆の方向性で導く手法もある。
そうかと思うと、全く身体に触れずに痛みや身体機能を改善したりする。

言語を媒体にした精神心理の手法も、行動認知を使うプログラムも実施されている。

いったい、それらの背景にある共通する仕組みとは何だろう。
なにかしら、生き物の体や機能系をコントロールしている、もっと根源的な仕組みを思わずにいられないのだ。
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by m_chiro | 2015-03-13 14:03 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
「痛みを理解しよう-10分でわかる痛みの対処法 (Japanisch)」
「痛みを理解しよう-10分でわかる痛みの対処法 (Japanisch)」



「痛みへの理解:ブレインマンの選んだ快復への道すじ」


Facebookでシェアされていた動画「痛みを理解しよう」を紹介しておきます。

10分で分かりやすく痛みのことをアニメーションにしてまとめてあります。

痛みを恐れているだけでなく、誰でもが痛みのことを知っておくといいですね。

理解して、対処法を知っているだけで、こじれて慢性化することを防げることもあるはずです。

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by m_chiro | 2014-12-19 14:13 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
椎間板ヘルニアは、いつから痛みの中心的なドグマになったのか?
椎間板ヘルニアを痛みや根性痛の原因する解釈が定説となって、医療のみならず一般的にも常識的な認識になったのは何時頃からのことなのだろう。
そんな思いで過去の文献的記録を調べていると、20世紀初頭頃からのようだということが分かった。

椎間板ヘルニアを初めて文献的に記録したのは病理学者のウイルヒョーのようだ。
ウイルヒョウー(独)は著名な病理学者である。
なるほどと思うが、それはあくまでも「軟骨腫」としての病理所見の一例を自著の中で報告(1857)したものらしい。
だから症状と関連付けて報告されたものではない。

椎間板へルニアを症状と関連付けて提唱したのは、ボストンの内科医・ゴールドスゥエイト(Joel E. Goldthwait)とされている。
c0113928_2211238.jpgゴールドスゥエイトは、椎間板ヘルニアが腰痛や坐骨神経痛、そして下肢麻痺などを起こすと提唱した(1911)。
痛みと麻痺のどちらも発症するというのだが、その根拠は良く分からない。

ゴールドスゥエイトと言えば、カイロプラクターには馴染み深い。
ゴールドスゥエイト・テスト(Goldthwait’ Test)として知られる整形外科テスト法の開発者で、カイロプラクティックの検査法としても採用されることがあるからだ。
いわゆる硬膜外の障害であるか、硬膜内か、あるいは仙腸関節レベルか、椎間関節障害か、を鑑別する方法とされている。
SLRで下肢を挙上して行き、痛みが誘発される角度で鑑別する。
棘突起間に添えた指が、椎間関節の開く前か後かで障害部位を分けるとするものである。
私もよく使ったが、言われるほど確かなものとは思えない。
軟部組織が障害されていれば尚更である。

c0113928_2221924.jpgその後William Jason Mixterが、椎間板ヘルニアは変性した椎間板の突出であるとして19例の臨床病理所見を報告している。
そして髄節に応じた神経症状起こす、ということを確立したのである。






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こうして1937年ごろに硬膜外アプローチによって椎間板ヘルニアの髄核摘出手術が始まることになった。メイヨー・クリニックのJ Grafton Loveが初めとされる。
こうして椎間板ヘルニアの摘出手術は20世紀の初頭から普及していくことになる。





私の柔整学校時代、カイロプラクティック系統教育の学生時代は70年代後半~80年代であったが、椎間板ヘルニアは痛みの原因として定説だった。
この定説を反証する論文が出始めたのは1990年代に入ってからのことだったろう。
長い間、反証されることもなく椎間板ヘルニアは痛みとイコールにされてきたわけだ。

カイロプラクティックも、信念の基に治療が行われることが少なくない。
ともかく反証する精神が重要ではあるが、カイロプラクティックはそれ以前の段階で、まだまだ検証することが必要な領域でもある。
反証すべき概念すら確立がされていないということなのだ。
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by m_chiro | 2014-09-19 22:11 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
信仰を根拠に手術などされたらタマラン!
治療家の道に入ったころ、古本屋でアメリカの写真誌「LIFE」の「THE BODY」を見つけた。1965年の発刊だった。
その中に頭蓋外科治療のはじまりについて書かれていて、そこにこの写真が掲載されていた。この頭蓋骨は旧石器時代のもので、外科治療の手術痕があった。
c0113928_1244715.jpg

そんな一万年以上も前に、頭蓋骨に手術していたことに先ずは驚かされた。
しかもこうした手術痕のある頭蓋骨は世界中から発掘されていると書かれていた。
そのことにも驚かされたことを思い出す。
どんな患者さんが手術の対象になったのだろう?

その時代は理解に苦しむような症状や、突然、豹変するような症状に出会うと宗教信仰を根拠に考えたようだ。
バビロニアの書物にも、こんな記述がある。
「神をもたない男が通りを歩いていると、頭痛は彼を衣類のように包み込んでしまう」

普通に生活していた者が、急に偏頭痛発作に襲われて人が変わったように苦しみだす。
あるいは、てんかん発作や憂鬱、精神錯乱、ヒステリーなどを起こすと、それは信仰心がないためだと診断されたのだろう。
信仰心のない者は、神から守ってもらえない。
だから、悪霊に取りつかれてしまう。

悪霊に取りつかれるから、人が変わったような症状や病態に見舞われるというわけだ。
でも、なぜ頭蓋骨に穴を開ける外科手術をするのだろう。
頭蓋に開けられた穴は、取ついた悪霊に出て行ってもらう抜け道らしい。
骨増殖の見られる手術痕もあるから、術後も生き続けたのだろう。
痕跡によっては、間もなく死んでしまったと思わせるものもある。

信仰心(信念)を根拠に一か八かの手術をされたら堪らない。

そんな時代に生まれなかったことを幸運に思うしかない。
が、よくよく考えると、現代でも信仰に基づいて手術されることは間々あると思えてくる。

科学は検証に検証を積み重ねて定説が生まれる。
医学も科学の領域ではあるが、「医学は科学ではない」(米山公啓著・ちくま新書572)という医学者もいる。
きっと、検証実験がほとんどガラス容器の中で行われた結果に基づいているからだろう。
基本的に生体実験はできない。そうなると、ガラス容器での結果から得られた定説だからと言って、そのまま臨床応用のための確かな根拠になり得ない。
それでも、そうした検証の結果はセントラルドグマになって、誰も疑うこともなく手術の対象にされるとしたら、それも問題だろう。
カール・ポパーは「科学は検証可能性ではなく、反証可能性にある」と言った。
「反証できないものは科学ではなく信念(信仰)である」と警告している。

椎間板ヘルニアが、痛みや根性痛の原因であるとする説は医療の定説になった。
「椎間板ヘルニア=痛み」が反証されることもなく信仰・信念なって、それが手術の根拠となったら、大昔の宗教的信仰を根拠に頭蓋骨の開頭術を笑えない。
それは医学的信仰」と言わざるを得ないのだ。
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by m_chiro | 2014-09-18 12:49 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)



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