「無知の姿勢」を学ぶ
「第10回・日本カイロプラクティック徒手医学会」における基調講演では、富山大学・斉藤清二教授による「物語の医療学-NBMとEBM-」についてのレクチャーを受けた。
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斉藤清二教授には、「はじめての医療面接」「ナラティブ・ベイスト・メディスンの実践」「健康によいとはどういうことか―ナラエビ医学講座』などの著書がある。

NBMは1998年に英国における一般診療医が中心となって提唱された。
これは全人的医療をめざしたもので、学際的な専門領域との広範な交流を特徴としている。
NBM(ナラテイブ ベイスト メディスン)の「ナラティブ」とは、「物語(語り)」と訳されており、ある出来事についての言葉(言語記述)を、何らかの意味を持つと思われる記述を継いでいくことで「意味づける」行為のことである。
医療では、患者さんの何らかの目的を持った行動について、時間配列を持った語りや記述から物語を紡いでいく手法が使われてる。

特に、印象深かったことは「論理実証モードVSナラティブ・モード」についての説明であった。
ある語りや記述について、それが正しいか間違いか、あるいは合理的か非合理か、といった視点から出来事や言葉を評価し、検証し、最終的にひとつの真実に至ろうとするスタンスを「論理的実証モードの思考様式」とするならば、「ナラティブ・モードの思考様式」は「この人はどのような物語を語りたいのか」を深く理解しようとする姿勢で接することだというのである。
つまりは「無知の姿勢」で臨むことなのだろう。
前提として、不確定で複雑しかも偶有性のある事象の多様性を認めた上で、世界をより豊かなものにしようという哲学が伺われる話であった。
NBMは、あくまでもEBMの過剰な科学性を補完するものとしての意義を持つもので、患者さんの「病の体験の語り」を最も重要なものとして尊重していくことにある。

確かに、慢性痛の患者さんは積極的な治療に思った効果が期待できずに悩んでいる。そんな患者さんの「病の語り」を聞いて行くと、痛みそのもの以上に、痛みの為に行動できない苦痛が浮かび上がってくる。
痛みの新しいモデルである「生物・心理・社会モデル」に照らすと、その実態がよく理解できるだろう。
病よりも「人」そのものにより焦点をあてて診ること、言葉かけや個人的な問いかけを通して、「物語の医療」というもう一つの視点を持つことが重要な姿勢であることに気づかされた。
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by m_chiro | 2008-10-23 18:12 | Trackback | Comments(2)
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Commented by bancyou1965 at 2008-10-23 20:18
守屋先生こんばんは!
自分の仕事以外に、このように精力的に色々な役をこなされる先生の姿勢を垣間見ると、ただただ頭が下がるだけです。

>痛みの為に行動できない苦痛が浮かび上がってくる。

以前のブログにもありましたが、ただ単に痛くても動かしましょうでは済む話ではありませんめ。
つくづく、慢性痛の治療には、双方の信頼関係の構築が重要だと思い知らされました。
Commented by m_chiro at 2008-10-23 23:26
bancyou先生、こんばんは。
おっしゃるとおり、痛み患者さん、特に慢性痛の患者さんへの対応は、信頼関係を築くこと、言葉かけ、問いかけ等など、学ぶべきものがありますね。
宿題です。
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