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経絡の遠隔療法
症例の記事を読んでいただいている方はお気づきだと思いますが、私は痛みに対して段階的なアプローチを行っています。

先ずは、痛みの原始的な反射である身体的に表現された「うずまき反射」をリセットします。次に、重力場における頭部からの圧変動をリリースしますが、これらは身体機能をみる治療家として重要視しているところでもあります。
そして最後に、痛みとして表現されている部位に対応します。
このときの一つのの方法として、経絡ルート上に表現されている痛みには経絡の遠隔療法を用いることがあります。

経絡を使った遠絡療法には、流派というべきなのか、学派というべきなのか分かりませんが、いくつかのシステマチックな方法があるようです。

ひとつはsyarurukさんのブログでも紹介されていました「陰陽二元論」の記事にある方法です。これはおそらく、「対角線療法」と呼ばれる鍼灸師の川井健董先生が開示している方法でしょう。

2つめは、sansetu先生のブログの「陰陽交叉法参考文献」に紹介されている方法もあります。この方法は記事の文献にも紹介されていました鍼灸師・吉川正子先生が、「陰陽太極鍼法」(陰陽交叉法)として発表した方法のようです。
陰陽交叉とは、つまり以下の対応になります。


1.肺経(手太陰)―胃経(足陽明) 
2.大腸経(手陽明)―脾経(足太陰) 
3.心経(手少陰)-膀胱経(足太陽) 
4.腎経(足少陰)―小腸経(手太陽) 
5.心包経(手厥陰)-胆経(足少陽)
6.肝経(足厥陰)-三焦経(手少陽)


3つめは、ケイしゃんの「腰痛掲示板」で、どなたかが紹介していました医師・柯尚志先生の「遠絡医学」という方法もあります。

ハタと困ったことには、この3つの方法で選択対応すべき経絡が、それぞれ微妙に違っていることです。遠絡医学の方法では、対角や交叉だけでなく同側を用いたりで、必ずしも単純に陰陽の交叉を用いていないことです。その対応する経絡を理論通りに選択するには、東洋医学や鍼灸理論に通じている必要がありそうです。と言うことは、なかなか一般家庭療法として使うには難しい面があるということかもしれません。更には、選択すべき経絡もそれぞれの方法で違っているのです。

私もこれには随分と悩まされました。この違いをどう考えていいのか、どれが正しいのか、考えあぐねました。私は鍼灸師ではありません。ですから、経絡の事情もよく飲み込めていませんでした。何といい加減な方法なのか、とも思ってしまいました。

しかし、よくよく考えれば、鍼灸は永い間の経験則に基づいて構築されているわけです。
しかも、れぞれが結果を出している状況を考えれば、その原理を考えた方が早道だと思いました。

結論を言えば、ポリモーダル受容器に注目したことで吹っ切れました。近年、経絡やツボはポリモーダル受容器が集まっているところと符合するらしい、ということを知ったからです。
そこで、熊澤教授の研究から学んだポリモーダル受容器の特徴を、このブログの「痛み学]NOTE⑩にまとめて「ポリモーダル受容器の活動は変幻自在、神出鬼没する」という記事にしました。

特に注目したのは、ポリモーダル受容器は反復刺激に対する再現性が極めて悪いこと、という特徴でした。つまり、ポリモーダル受容器は刺激に関する情報を忠実に伝えるということはしないということです。ということは、刺激によって生じた組織の変化に強い修飾を受けて、その組織の現状を伝えるために働いている、ということになるのでしょう。この特徴は、生体内の環境をリアルタイムで伝える重要な情報網そのものではないのか、と思ったわけです。

そう考えると、私たちの身体にはポリモーダル受容器による情報のネットワークが存在していると考えてもいいのでしょう。痛みは、この情報網のどこかのルートでフリーズしているか、あるいはブロックされているのだろう、と考えました。したがって、どの方法論が正しい経絡の設定をしているのか、などと詮索する必要はないのでしょう。いずれも、一つの標準的な提示に過ぎないのではないかと思っています。

では実際、どのように経絡を選択しているのか。どのように解除ポイントを決めているのか。ということについては、極めてシンプルに対応しています。
私には経穴に対する知識もないので、経絡上の異常な信号の表現を触診する、あるいは感知することで、対応するポイントを決めているわけです。

静かに経絡上に手掌から指先までをそっと添えると、ピンポイントで異和感を感じるところが現れます。その感じとは、例えば、冷たい感じ、あるいは凹んだ感じ、盛り上がる感じ、存在感の希薄なポイントなどなど。最も強く感じたポイントがどの経絡上にあるかによって、時には「対角療法」であったり、時には「陰陽交叉法」であったり、また時には「遠絡医学」の同側になったりで、経絡の選択はそれぞれの方法に固執していません。感知したポイントが、経穴に一致するのかどうかも気にはしていません。

ただし、必ず2ポイントを選択しています。最初のポイントはフリーズした情報経路の流れを回復させるポイントにします。次に最初のポイントからより末梢にポイントを探し、そこを「解除キー」として使いっています。
その他にも、刺激の方法や経絡の選択方法では私なりの選び方を持っていますが、鍼灸の先生方に荒唐無稽と揶揄されそうなので、これ以上は言及しません。

私は必ず症状部位と同調させていますが、最終的には症状のある部位を動かすように指示して、痛みの変化を確認させます。即座に消えることもよくあります。少なくとも6~7割の軽減をめざしますが、変化が乏しければポイントを別に探します。

解除がうまくいったら選択したポイント印を付けます(今では刺激ポイントの目印に金粒を貼ってあげます)。この目印は、在宅での刺激点として運動法と組み合わせて指導します。
痛みを軽減させて動かす。特に慢性痛に対応としては、ネガティブな神経の可塑性をポジティブな神経の可塑性に変える認知運動に導くことを狙っているわけです。
by m_chiro | 2008-07-07 14:58 | 痛み考
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